激戦をものにし早慶戦4連覇!

柔道

 ことしで69回目を迎える早慶対抗戦(早慶戦)。柔道の聖地・講道館には多くの観客が集まり、激戦の行く末を見守った。結果は早大が勝利し、早慶戦4連覇を達成。1年間の集大成をみせてくれた。

 先んじて行われた女子の対抗戦では全勝を決め、早慶戦の始まりを飾る。そして、男子の20人勝ち抜き戦が始まった。先陣を切った柳川昴平(社1=三重・四日市中央工)の引き分けで始まり、冒頭から少しずつ差を広げていく。ことしの早慶戦で最初の盛り上がりを見せたのは、6番手の伊藤悦輝(スポ3=福井・藤島)。「一週間でひたすら足持ちの練習をした」と述べた練習の成果も現れ、2人を順調に勝ち抜く。3人目を迎えると、疲れの影響からか繰り返し指導を受けるも一本勝ち。会場のボルテージも上がっていく。体力的にも追い詰められた中で4人目へ。試合終了6秒前に奪った技ありで合わせ技一本勝ちが決まった瞬間は、会場中に歓声が響いた。伊藤悦の4人抜きで早大のリードは5に。この奮闘には、ことしの最優秀選手賞が送られることとなった。

最優秀賞に輝いた伊藤悦

 早大にとって最大の強敵となったのは、11番手である蓜島剛(慶大)だ。圧倒的な強さを前に5連敗。慶大との差はゼロに縮められてしまう。蓜島の猛攻撃を止めたのは11番手の瀨川勇気(スポ2=北海道・東海大四)だ。なんとか引き分けに持ち込み、下田将大主将(スポ4=三重・四日市中央工)が述べた「負けないで引き分けるという作戦プラン」が遂げられた。その後は慶大に大きな連勝を許すことなく進んでいく。11番手の空辰乃輔(スポ1=広島・崇徳)は、得意の寝技で3人を抜くなどの活躍を見せる。ついに慶大の残りは2人に。対するは16番手の田中大勝(社3=青森北)だ。試合開始後1分も経たないうちに、一本勝ちで副将の西村康佑(慶大)を倒し、続く主将の井上頌悠(慶大)を迎える。勝ち切りたかった田中は積極的に技を仕掛けるが、相手のパワーと意地が立ちはだかる。相手の内股で技ありをとられ敗退。田中は「僕が最後取れていた方がチームとしても良かったと思うので、自分の練習不足で悔しい」と振り返った。しかし、河田満(人4=三重・皇学館)が井上の力を封じ引き分けに持ち込み、早大は副将と主将の2人を残しての4連覇を達成。激戦を終えた両校に、会場からは拍手が送られた。

得意の寝技で慶大を追い詰める空

 今回の早慶戦は4年生の最後の大会である。部が強い思い入れを持つ早慶戦で、それぞれが役割を意識して団体の力を出せたことは、今年度の締めくくりとして最高のものになっただろう。優勝をつかんだ部員たちの表情は晴れやかなものであった。次年度は新主将の田中を中心の体制となる。新たに目標を掲げ戦う彼らの活躍が楽しみだ。

(記事 赤根歩、写真 江藤華、喜柳純平)

見事4連覇を果たした柔道部

結果

▽女子エキシビジョン

○早大3-0慶大

○藤原   一本   宮下
○渡邊   優勢   平野
○岡田   一本    伴

▽男子20人制勝ち抜き戦

○早大-慶大

 柳川  引き分け  齋藤
○清水   優勢   篠原
 清水  引き分け   堤
 加藤  引き分け 小田原
○高波   一本   澁沢
 高波  引き分け  渡邉
 平沼   一本   中野○
○伊藤悦  一本   中野
○伊藤悦  一本   森下
○伊藤悦  一本   湯㘴
○伊藤悦  一本   廣谷
 伊藤悦  一本   蓜島○
 伊藤哲  一本   蓜島○
 坂田   一本   蓜島○
 佐藤竜  一本   蓜島○
 間瀬   優勢   蓜島○
 瀨川  引き分け  蓜島
○佐野   一本   山根
 佐野   一本    林○
○空    一本    林
○空    一本   大畠
○空    一本   内山
 空    一本   長田○
 中嶋   一本   長田○
○西山   優勢   永田
 西山   一本   人見○
○矢野   一本   人見
 矢野   優勢  小田島○
○田中   一本   小田島
○田中   一本    西山
 田中   優勢   井上○
 河田  引き分け  井上

※2人残しで早大の優勝

コメント

下田将大主将(スポ4=三重・四日市中央工)

――優勝おめでとうございます、今の気持ちを教えてください

とりあえず、ホッとしています。

――チームを振り返っていかがですか

だいたい想定内の展開でした。ただ伊藤(悦輝、スポ3=福井・藤島)が予想外の働きをしてくれて、そのおかげで、相手の蓜島(剛、慶大)をどう止めるかをみんなで作戦を練っていたのですが、一応その働きがあって、6人かかったのですが、無事止めることができました。一人一人が負けないで、引き分けるという作戦でプラン通り働いてくれたので作戦通りいけたかなと思います。

――途中の蓜島選手との接戦も作戦通りということでしょうか

そうですね、あんなに早く次に行けるとは思わなかったのですが、もう少し後ろで佐藤とかからスタートと。佐藤と当たれれば引き分けれるかなと思ったのですが、最後一本取られてしまいました。しかし、後ろもしっかりしてるので、レギュラーでもあるので、まあ想定内です。

――今試合では自分の番まで回ってきませんでしたが、心境を教えてください

欲を言えば、大将同士でやって、勝ちたかったっていうのはあるのですが、慶大とこれだけ差をつけれたというのは次にも繋がると思うので、満足しています。

――4年間を振り返って

1年生の間はケガとかで試合に出れなくて苦しんだ時期もあったのですが、4年生になって主将になったら、責任が出てきたと思います。その結果が今回の結果であったり、尼崎のちょっとした成果で出てきたので、自分の役割を柔道部で果たせたかなと思います。

――後輩に向けて、メッセージをお願いします

東京学生、全日本学生、全日本学生、この3つでベスト8と、早慶戦で優勝という目標をここ数年掲げているのですが、去年もそうなのですが、東京学生、早慶戦優勝は目標達成はできているのですが、どうしても全日本で、ベスト8という目標を達成できていません。なので、来年主力メンバーは残っているので、ぜひ、その壁を超えてもらいたいなと思います。

齋藤光星副将(スポ4=静岡・加藤学園)

――早慶戦優勝おめでとうございます。今のお気持ちをお聞かせください

やはり4連覇がかかった試合だったので、勝利という結果で終われたのでよかったと思います。

――ご自身は試合には出場されませんでしたが、出たかったという思いはありますか

最初は出ないなら出ないでいいかなと思っていたんですけど、最後の試合だったので出たかったなという気持ちはありました。

――試合展開はどう見られていましたか

自分は副将という立場で、最後から2番目で出るか出ないかわからなかったのでハラハラした試合展開だったので、気疲れしてしまいました。結果的には出なかったのですが、すごく心臓に悪かったのですが、いい試合でした。

――試合には出ない予定でいたのですか

自分の中では出ないのかな、と思ってたんですけど、来たら来たで自分の役割を果たせるようにしっかりやろうかな、と思ってました。

――副将としての1年間を振り返っていかがでしたか

自分はほとんど何もやっていないに等しいです。キャプテンがしっかりチームを引っ張ってくれて、自分は実力というか練習などで後輩たちに示すことができていたのかなと思います。

――最後に4年間を振り返っていただけますでしょうか

高校3年間と大学4年間比べると長いのですが、自分の中では短かったのかな、と感じています。自分はまだ警察で柔道を続けるので、まだ練習とかには出ると思うのですが、これからも頑張りたいと思います。

矢野雄大副将(社4=京都共栄学園)

――優勝おめでとうございます。今のお気持ちをお聞かせください

ほっとしたって感じですかね。

――1勝を挙げてから2戦目に挑むときは体力面や、精神面でつらかったことなどありましたか

体力的にはもちろんきつかったです。後輩たちがいい流れできてくれてしっかり自分の役割、引き分けるんだと気持ちでいったのですが、力及ばずでポイントを取られてしまいました。最後までしっかり時間使って戦って次の戦い、次の田中(大勝、社3=青森北)につなげることはできたかなと思います。

――前半の流れは結構ハラハラする展開だったと思うのですが、どのように見ていらっしゃいましたか

やっぱり予想通りにいかないな、というところがありました。うちで言ったら例えば、伊藤(悦輝、スポ3=福井・藤島)とかが4人抜いたりして、佐藤(竜、スポ2=東京・修徳)は相手のポイントゲッターの蓜島くん(剛、慶大)を止められるんじゃないかと思ったのですが、あと2秒のところで負けてしまったのは残念だったんですけど、こちらのもともとのプランでもし竜とかが取られても、瀨川(勇気、北海道・東海大四)だったり佐野(安大、社3=静岡学園)であるとか、しっかり引き分けられる選手がいたので安心して見てました。ハラハラしましたが、信頼していたので、想定の範囲内ではあったかな、という感じです。

――大学4年間を振り返って今のお気持ちをお聞かせください

まだ実感がわかないというところが正直なところではあります。後悔していないかと言われると、後悔しているところはあるところはあります。でも、最後こういったかたちで、最後の試合を終えることができた点はよかったのかなと思います。

――最後に後輩へメッセージをお願いします

本当に個人個人が強い選手がそろっているので、このままこの調子で練習に取り組んでいってもらいたいです。今の姿勢を続ければどんどん強くなっていってもらえる、ということが期待できる選手がそろっていると思います。来年以降キャプテンになる人間を中心にしてまた一致団結して一回り二回り成長した姿を見るのを卒業生として、見られるのを楽しみにしています。

田中大勝(社3=青森北)

――まずは早慶戦を終えての感想を教えてください

主将と副将を残して勝てたことは嬉しかったですね。下田先輩(将大主将、スポ4=三重・四日市中央工)を筆頭に頑張ってきたことが出せたと思います。

――早慶戦に対してはどのような目標で挑まれましたか

部としての目標は慶大に勝つことで、達成することができました。ですが、僕が井上さん(頌悠主将、慶大)には、最後意地で耐えきることができず負けてしまったので、そこは僕の練習が甘かったですね。

――慶大の主将と副将との対戦を通して、他の選手との違いを感じる点はありましたか

相手は1年の頃からずっと負け続けていて、4年生になって何が何でも勝つという気迫を試合が始まった後も伝わってきました。なので、ここで気持ちで負けるわけには行かないと思って攻めたんですけどね。僕が最後取れていた方がチームとしても良かったと思うので、自分の練習不足で悔しいです。これからまた1年間あるので頑張ります。

――課題がある中にも、練習の成果が出た点はありますか

早慶戦はでルールが変わるので、対策してきた結果が本番に出たので、やってきたことは間違っていなかったと確信しています。

――今大会で4年生が最後の大会を終えました。これからの抱負があれば教えてください

4年生が今大会で引退されて、今度は僕が主将になるので、さらに高い目標を持ってチームを引っ張っていって、1年間頑張っていきたいと思います。

伊藤悦煇(スポ3=福井・藤島)

――優勝おめでとうございます。また、最優秀選手賞をとりましたが、今の気持ちを教えてください

自分は体力がない選手なので、抜き戦は向いていないと思っていたのですが、実際やってみるとこんなことになるとは思ってなくて。自分でも結構驚いています。

――チーム全体としてはどうでしたか

蓜島選手(慶大)が強かったので、そこを瀨川君(スポ2=北海道・東海大四)が止めたのは良かったです。それが勝因だと思います。みんな選手が強いので、勝って引き分けるという、そういう試合ができていたので、全体的に良かったと思います。

――足持ちを有効に使われていましたが、練習をたくさんされていたのですか

自分は1週間前まで、講道館杯の練習で足持ちの練習をずっとしていなかったのですが、残り1週間でひたすら、足持ちの練習をしました。

――4人抜きの時は体力的にも精神的にも辛かったと思いますが、いかがでしたか

もう2人目あたりから、ずっとどっかで引き分けたいなって思ってて。これ言っちゃダメだと思うんですけど。ずっとお腹が痛くて、どっかでやめたいと思ってたんですけど。最優秀選手賞を取れたので、やりきって良かったです。

――これからは、最上級生となりますが、来年度に向けた意気込みをお願いします

来年度は、副将か後ろの方で今回みたいに前で抜くという感じではなく、しっかり、前の選手がやってきた流れを崩さないように大将に繋げるという役目だと思うので、もう少し体力をつけて、今回だめだった、勝ってるのに疲れてて負けているような雰囲気をなくしたいと思います。

空辰乃輔(スポ1=広島・崇徳)

――初めての早慶戦を終えての感想を教えてください

疲れました。勝ち抜き戦が大学では早慶戦しかなく、高校以来でした。しかも4人相手にしたのでめちゃくちゃ疲れています。でも、最低限のことができて良かったです。

――試合内容を振り返って、練習の成果を出せた点はありますか

今日は全部寝技で勝つことができました。大学に入ってから寝技に力を入れていて、少し前にはサンボという寝技に強いロシアの格闘技を練習に取り入れたこともありました。今日は寝技を決めきれたので、練習の成果ですね。

――相手に抑え込まれて返す場面もありましたが、焦りは感じましたか

いや、あれは狙ってやっているんですよ。ああいうの結構得意で、わざと相手にかけさせて、その時こっそり決めるポイントだけ決めて、チャンスがきたら返す、というのを狙ってすることができました。トリッキーで自分以外やっている人もいないと思うので、うまく仕掛けることができました。

――早慶戦の場の雰囲気に感じたことはありますか

講道館という柔道の歴史がある建物で、観客みんなが同じ試合を見ている中でできたことが楽しかったですね。先輩からの激励や応援の方の声が聞こえてきて、もう少し頑張ろうという気持ちになれました。

――今大会で4年生が引退となり、新たな体制になると思います。俺からの抱負を教えてください

4年生は人数も多く強いのですが、ごっそり抜けてしまい、自分の台は選手が3人しかいないので、みんなでがんばっていかないといけない状況です。自分はまだ1年生ですが、成績でも行動でもしっかりチームを引っ張って、全員で頑張っていきたいです。