【連載】『平成27年度卒業記念特集』 第8回 立浪祐/柔道

柔道

『精力善用』

 団体戦で毎回活躍するようなエースではなかったが、ワセダの柔道部とは何か、どういう柔道をするべきなのか、誰よりも考えてきた人物がいる。立浪祐(社=富山・小杉)、2015年度の柔道部をまとめた男子部主将だ。

 もともとは肥満対策として始めたという柔道だったが、強豪校と呼ばれる中高に進学。部活動に励み、高校時代には主将を務める。卒業後は国立大学に行って教師になろうと考えていた立浪の進路を変えたのは、部活の監督の一言だった。「ワセダ行けば?」。唐突な言葉だったが、立浪は自己推薦入試を見事に突破。ワセダの門を叩いた。

立浪はチームをまとめ、この一年を部員全員と戦い抜いた

 高校までとは異なり、自主性が求められる環境に戸惑いもあった。それでも徐々になじみ、地道に努力を重ねる姿勢が監督に評価される。主将をやってみないかと持ちかけられたのだ。しかし、部員に強く言えるような自分ではない。本当に務まるのかという気持ちもあったが、立浪は「できることを地味でもいいから一つ一つやっていこう」と決心し、主将として4年目に臨んだ。

 最初のうちは、部員それぞれに任せる部分が多かったという立浪。一人一人考えて強くなっていってほしいという思い故だが、すぐにそれでは駄目だと気づいた。「力を合わせ、一体感で勝負するのがワセダの柔道なのかなと思った」。スター選手のいないワセダが強豪校に対抗するには、総合力で勝つしかないと思い始めたのだ。それからは全員でトレーニングに励み、練習を活気づけようと新しいウォーミングアップを取り入れた。「チームの総合力が上がってきた」と振り返るのは全日本優勝大会だ。強豪・天理大をあと一歩のところまで追いつめる健闘。10月の早慶対抗戦でも総力戦を勝ち抜き、講道館での2連覇を成し遂げた。

 ワセダに進学したことに悔いはないかという問いに、「ないです。楽しい、有意義な4年間でした」ときっぱり答えた立浪。卒業後は教員養成の大学院に進み、ゆくゆくは柔道を指導したいと語る。「自分が思うに、柔道は教育」。これまで、柔道を通じて『精力善用』『自他共栄』の精神を学んできた。自分の力を世のため人のために役立てること、自分だけでなく他人と共に栄えていくこと。いつかは教師として、柔道が教えてくれたことを子どもたちに伝えてゆく。

(記事 熊木玲佳、写真 笹澤桜)