東京の学生団体戦の頂点を決める東京学生優勝大会がことしも武道館で行われた。この大会は全日本学生柔道大会の予選も兼ねており、強豪校が集中している東京では毎年ハイレベルな戦いが繰り広げられる。そんな中、女子三人制では圧倒的な強さを見せつけ見事6年ぶりの優勝を果たす。一方、男子は初戦で難なく立大を下したが、続く東洋大との戦いでは苦戦を強いられ、惜しくも敗戦。ベスト8という目標達成はならず、悔しさの残る結果となった。
主将としての意地を見せた山口
初戦で東京有明医療大を3-0で下した女子。準決勝は、一昨年、昨年と敗れている創価大との戦いとなった。先鋒の渡邊聖未(スポ1=山梨・富士学苑)は序盤から攻めの姿勢を見せ、開始2分で横四方固を決め一本勝ちを収める。しかし、続く中堅の小林真実子(社3=埼玉・常盤)は上四方固で一本負け。勝つしかない状況でバトンを受け取ったのは、大将の山口悠子女子主将(社4=佐賀商業)。一本勝ちとなりそうな場面を迎えるも技を決め切れず、勝敗は終盤まで拮抗(きっこう)した状態が続く。だが、残り3秒で勝敗は決まった。主将としての意地を見せた山口が有効を奪い、優勢勝ち。雪辱を果たし、今大会の山場を乗り越えた。早慶戦となった決勝戦では、またも渡邊が開始直後に一本を決め、勢いをつける。中堅を務めた滝澤美咲(社1=群馬・前橋育英)もその勢いのままに横四方固で一本勝ち。大将の山口も終始優位に試合を進め見事6年ぶりの優勝を果たした。
一本背負いを決め、一本勝ちを収めた井上
一方、2回戦から登場した男子は立大と対戦。6-1と良い流れで勝利を収め、山場となる東洋大戦を迎えた。しかし、早大は先鋒戦・次鋒戦で連敗を喫してしまう。流れを変えるべく五将の林孝樹(スポ3=富山・県立小杉)が果敢に攻め、中盤から後半にかけて有効を取り、優勢勝ち。しかし、その後の中堅戦、三将戦も引き分け、もう負けは許されない中で副将の井上昴亮(社3=山形・県立工業)が一本背負いでの綺麗な投げを見せ、一本勝ち。勝負の行方は大将・立浪祐主将(社4=富山・小杉)に託された。しかし、体格差のある相手になかなか技を繰り出すことができず。大将戦も引き分けてしまい、ベスト16という成績で今大会を終えた。
歓喜の優勝を果たした女子はもちろん、目標達成とならなかった男子も全日本学生優勝大会への切符は手に入れた。「チームの総合力を上げたい」(立浪)、「ここはあくまで通過点」(山口)と、両主将の目はすでに来月に控えた大舞台を見据えている。1カ月という短い期間でどれだけチームのレベルアップを図ることができるか--。勝利に向け、早大がまた新たな一歩を踏み出す。
(記事 笹澤桜、写真 山本葵)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
6年ぶりの優勝を果たした女子
結果
【男子】
○二回戦 対立大
先鋒 ○石井-山村 決まり技:腕絡み
次鋒 ○林-堀 決まり技:内股
五将 吉原-松尾○ 優勢勝ち
中堅 ○立浪-太田 決まり技:横四方固
三将 ○井上-成田 決まり技:跳腰
副将 ○中上-佐藤 優勢勝ち
大将 ○下田-星川 決まり技:体落
●三回戦 対東洋大
先鋒 下田-前田○ 優勢勝ち(内股)
次鋒 中上-木下○ 決まり技:大内刈
五将 ○林-山城 優勢勝ち
中堅 圓山-山本○ 優勢勝ち
三将 △熊田-△長井 引き分け
副将 ○井上-横田 決まり技:一本背負い
大将 △立浪-△上原 引き分け
【女子】
○二回戦 対有明医療大
先鋒 ○渡邊-原 決まり技:横四方固
中堅 ○滝澤-小銭 決まり技:袈裟固
大将 ○-山口 決まり技:払腰
○準決勝 対創価大
先鋒 ○渡邊-村田 決まり技:横四方固
中堅 小林-○岩佐 決まり技:上四方固
大将 ○山口-則武 優勢勝ち
○決勝 対慶大
先鋒 ○渡邊-難波 決まり技:肩車
中堅 ○滝澤-鬼谷 決まり技:横四方固
大将 ○山口-伴 優勢勝ち
コメント
立浪祐(社4=富山・小杉)
――ベスト16という結果に対する今のお気持ちはいかがですか
ベスト8を目指していたので、正直なところ目標達成できなかったので非常に残念です。
――団体戦は10月以来と長い期間が空きました。今大会に向けて重点的に取り組んだことは何でしょうか
体格を良くすることです。ウエイトトレーニングや朝のラントレ(ランニングトレーニング)を前より増やして、肉体改造をしてきました。きょうの結果からもわかる分かると思いますが、あまりうまくいっていないというか、実質的には成長できてないと思います。まだまだですね。
――それは、個人としてでしょうか
個人的にも、チーム全体としても言えることです。体がまだ他の学校と比べて小さいので、もっと(ウエイト)トレーニングは取り組んでいかなければいけないと思っています。
――新入生が入部して、4月から部の雰囲気は変わりましたか
そうですね。非常に元気な1年生が多くて、雰囲気も良くなってきました。ことしも多くの新入部員を獲得することができましたので、またより一層切磋琢磨(せっさたくま)して練習ができると思います。
――では、きょうの試合についてお伺いします。立大にはどのような気持ちで臨みましたか
きょうの難関は東洋大との戦いだと考えていましたので、立大戦は隙のない試合を目指していました。1点失点はしましたが、東洋戦に向けては非常にいい流れというか、鉄則を守ってできたと思います。
――山場と考えていた東洋大との戦いはいかがでしたか
2月と5月に2回(東洋大と)試合をやっているのですが、その時に大差で負けていたので非常にやりづらいという感覚はありました。きょうの日のために一人一人研究したり練習したりしてきたのですが、まだまだ足りないなと思います。
――オーダー順なども工夫したのですか
そこは監督が考えられたと思うのですが、当たりは良かったのではないかと思います。
――東洋大戦の前にチーム全体に向けて何か声掛けをしましたか
普段からやっていることが試合に出るということですかね。全力を尽くしてやれば結果は出てくると思う、と声掛けをしました。
――きょうの試合を経て、東洋大への印象は
ワセダよりも体が大きいです。そして、やはり競った試合になるということは予測できていたので、そこで勝ちきれなかったのは厳しい練習をしているかどうかだったと思います。東洋大の方が厳しい練習をしていた、自分たちよりも上回っていた、ということだと思います。
――きょうの結果を次の全日本学生優勝大会にどのように繋げていきたいですか
全日本も厳しい戦いになってくるとは思いますが、1か月間しかない中で自分の実力を上げることはもちろん、チーム全体の総合力をもっと高めていきたいと思います。
山口悠子女子主将(社4=佐賀商業)
――優勝おめでとうございます!いまのお気持ちは
とりあえず目標を達成できたので良かったです。でもここはあくまで通過点で、全日本で優勝しなければ意味がないと思うので、また気を引き締めて頑張りたいです。
――準決勝の創価大との対戦が山場だったと思いますが、どのようなお気持ちで臨みましたか
そうですね、対戦相手の組み合わせを見た時から創価大戦が一番の山場だと思っていて。でもことしのチームなら勝てるという自信があったので、小林(真実子、社3=埼玉・常盤)が取られたのはびっくりしました。私自身は指導をしっかり取っていければいいなと考えていて、ぎりぎりでしたが勝つことができてひと安心しました。
――先鋒戦と中堅戦はどのようにご覧になっていましたか
渡邊(聖未、スポ1=山梨・富士学苑)に関しては入学前から強いと知っていて、寝技ができるので安心して(試合を)見ることができました。絶対に1本取ってきてくれると思っていましたし、実際に勝っていい流れをつくってくれたので、本当に頼りになる存在だと思います。小林は本調子ではなかったということもあり負けてしまって。すごく悔しかったと思いますが、彼女自身が一番負けを自覚しているので、また全日本での活躍に期待しています。
――創価大戦は1-1という重要な局面での出場となりました。ご自身の試合を振り返っていかがでしたか
絶対に私が取らないといけないという状況だったのですが、なかなか技を決めることができなくて、このままでは代表戦にまわってしまうかもしれないと思いました。でも、さすがに1年生の渡邊に代表戦をさせるわけにはいかない、ということで頑張りました。めずらしく意地が出ましたね(笑)。自分の柔道に徹することができなくて本当にぎりぎりの試合だったので、チームをひやひやさせてしまったのが申し訳なかったです。
――決勝戦は早慶戦となりましたが、3-0で勝利しましたね
3-0で勝てたのは良かったのですが、私だけ1本勝ちができなくて。チームが勝てたことはうれしいですが、すごく悔しいです。1年生の2人がいい流れで大将戦までつないできてくれたのに、あと1秒抑え込んでいたら1本勝ち、というところで(技が)解けてしまったので、本当にもったいないことをしました。早慶戦ということで絶対に負けられないと思っていて、でも前の2人を信じていたので気持ち的には楽に試合に臨むことができたと思います。
――女子部には新入生が4人入部されましたが、チームの雰囲気などは変わりましたか
新入生が入ったことで女子だけでも練習できる人数になって、活気が出てきました。下級生の頑張りを見て上級生もいい刺激をもらっています。きょうは特に1年生が活躍してくれたので、3年生で試合に出場できなかった選手もそれぞれ感じるところがあったと思いますし、これからもっとお互い高め合いながら練習できればいいなと思っています。
――ゴールデンウィークには立命館大との合宿などもされていましたが、ことしから練習内容にも変化があったのですか
そうですね、合宿などの出稽古はことしから増えました。そういった練習があったから今回もいい成績を残せたのかなと思います。女子部の人数も増えましたし、渡邊などは海外で活躍している選手なので「渡邊はワセダに入って弱くなった」と言われることはあってはならないと思っています。そういった面でも部内の練習では足りないと思うので、実業団との出稽古なども含め昨年より練習量は増えていくと思います。
――全日本に向け意気込みをお願いします
昨年は3位だったのでことしは優勝したいです。別の地区からも鹿屋体大などが勝ち上がってくると思いますが、そうした相手に勝つことで自分たちの力を証明できると思うので、あと1カ月しかないですが練習を頑張りたいと思います。
渡邊聖未(スポ1=山梨・富士学苑)
――優勝おめでとうございます。今日の結果を振り返っていかがでしたか
ありがとうございます。1年生の初めての試合で最初から出場させていただけたので、勢いで勝っていこうとは思っていました。大将の山口先輩(悠子、社4=佐賀商業)は頼れる人なので、うまく繋げていけるように先手必勝という気持ちで臨みました。
――なぜ、ワセダに入学したのですか
私はフィリピンの代表で、(ワセダでは)文化的な国際交流があると聞いたので。あとは、先輩方も優しくて雰囲気が良かったので入部しました。
――入学して2か月弱が経ちました。環境の変化は感じますか
高校の時よりトレーニングに使える時間が減ってしまったので、不安はありました。しかし、大学ではトレーナーさんなどにもついていただき、とてもいい環境でトレーニングを行えています。早くこの環境に慣れて大学で頑張りたいと思っています。
――今日の試合では3試合とも先鋒を務めていましたが、そのことについて意識した点はありますか
後ろに強い先輩や同級生がいたので、みんなを信じて自分もしっかり一本とってバトンを繋いでいこうと思っていました。
――決勝では早い段階で一本を決めていましたが、その時のお気持ちは
早く決めようという意識はありませんでしたが、先輩にしっかり繋がるように勢いをつけようとは思っていました。
――きょうの結果を踏まえて、全日本学生優勝大会での目標は
全日本では優勝しか目指していません。しっかり練習して、あと一か月コンディションを整えてさらにレベルを上げていきたいです。
――短い期間ですか、何か具体的なトレーニングは考えていますか
筋トレや技術面に関してはまだ大学柔道のレベルではないので、しっかり大学柔道に慣れて、頼りになると思われるように頑張っていきたいです。