次につなげるベスト16

柔道

 今季初の全国大会である全日本学生優勝大会がことしも日本武道館で開催された。28日に1回戦、29日に2回戦~決勝戦が行われ、毎年ハイレベルな熱戦が繰り広げられる今大会。チーム力を強みにベスト8を目指す早大は、ルーキーの齋藤光星(スポ1=静岡・加藤学園)の活躍などもあり2回戦を突破。気合いを入れて臨んだ3回戦だったが、桐蔭横浜大を相手に0-4で敗北、ベスト16という結果で今大会を終えた。

 1回戦を7-0で快勝し、迎えた2回戦。「新興大学でよく鍛えられた素晴らしいチーム」と吉村監督が語る皇學館を相手に、苦戦を強いられることになった。先鋒・中上駿(社2=大阪・清風)が技ありを奪い優勢勝ち、好スタートを切った早大だったが、その後は引き分け、一本負けが続く。相手に向かうかに思われた勝利の流れを断ち切ったのは、ことし早大に入学したばかりのフレッシュな顔だった。「いつも通りに行け」という先輩の言葉に励まされ、中堅戦に臨んだ斎藤。試合開始後30秒ほどで払い腰による鮮やかな1本を決め、チームを鼓舞する。この奮闘に応えるかのように、三将・立浪祐(社3=富山・小杉)も横四方固による1本勝ち。このまま最後まで逃げ切った早大は、苦しみつつも3-2で皇學館を退けた。

先鋒としてチームに勢いをつけた中上

 ベスト8を懸けた3回戦は、関東地区の強豪・桐蔭横浜大との対戦となった。先鋒戦を落とすも、続く次鋒戦を林孝樹(スポ2=富山・小杉)が引き分けに持ちこむ。しかしその後の2戦を立て続けに落とし、ここまで良い活躍を見せていた斎藤も「(相手が)背中に全部乗ったのに、最後の決めが甘かった」と、技を決め切ることができない。副将戦、大将戦でも白星をあげることは叶わず、0-4で敗退。ベスト8進出とはならなかった。

全日本デビューを果たした斎藤

 「きょねんよりはベスト8に近づいてきている」。試合後、小林将来主将(社4=三重・四日市中央工)はこのように語った。厳しい練習に耐え、本気でベスト8を目指した選手たちは、昨シーズンより成長できたという手応えを確かにつかんでいる。その一方で、自身に足りない部分も明らかになったはずだ。この悔しさをバネに、8月下旬の個人戦でさらなる進化を遂げた姿を見せてくれることに期待したい。

(記事 山本葵、写真 中澤奈々、水落真央)

※掲載が遅くなり、申し訳ありません

結果

ベスト16

○1回戦 対福井工大

先鋒 ○齋藤-白川 決まり技:内股

次鋒 ○林-松山 決まり技:大外刈

五将 ○立浪-島田 決まり技:体落とし

中堅 ○圓山-堀 指導4

三将 ○浅賀-ボルドバータルバヤンドゥーレン 優勢勝ち

副将 ○熊田-高島 優勢勝ち

大将 ○小林-北 優勢勝ち

○2回戦 対皇學館

先鋒 ○中上-熱田(桂) 優勢勝ち

次鋒 △圓山-△大木 引き分け

五将 林-○奥村 決まり技:内股

中堅 ○齋藤-稲田 決まり技:内股

三将 ○立浪-花田 決まり技:横四方固

副将 △熊田-△八幡 引き分け

大将 小林-○伊藤 合わせ技

●3回戦 対桐蔭横浜大

先鋒 中上-○酒井 決まり技:大外返し

次峰 △林-△小林 引き分け

五将 浅賀-○手塚 優勢勝ち

中堅 圓山-○能登 決まり技:内股

三将 △齋藤-△竹内 引き分け

副将 立浪-○深川 決まり技:内股返し

大将 △熊田-△丹澤 引き分け

コメント

吉村拓郎監督(平成3年卒)

――シーズン前はどのような練習をされたのですか

練習に関しては、学生と指導陣が目標を達成するには何が必要かということをしっかり打ち合わせ、主将を中心にメニューを組んでいました。中でも特徴的なのは、一分稽古といって一分間技をかけ続ける稽古を5セットやることですね。この稽古のように自分のすべてを出し切るような練習をことしは組み込んでいました。

――団体戦に向け、特別に取り組んだことはありますか

自分たちの現在の立ち位置を知ること、そして同じ実力を持つ者同士が競り合い評価し合うということを目的に、東京のベスト16校を道場に招待し稽古をしました。その成果としては、早大の中で新たな人材が出てきたというのがあります。団体戦に向け、非常に有意義な取り組みだったと思います。

――東京学生優勝大会では15年ぶりのベスト8入りを達成されました

東京でベスト8になることは僕が監督になってからの一つの目標であったし、柔道界としてもステータスだったので。多少の運にも恵まれましたが、そこできちんと勝利をつかむことが出来たのは今までの努力の積み重ねがあったからだと思います。とても嬉しい結果でしたね。

――今大会の各試合を振り返って、いかがでしたか

福岡工大との対戦では、こちらの方が力があるということが分かっていたので、通常のレギュラーを一人外して他の選手を試しました。その結果がよかったので、次の皇學館のメンバーに加えるということをしました。皇學館との対戦は、向こうも新興大学でよく鍛えられた素晴らしいチームだったので、非常に苦しみましたね。三番目の選手までは悪い流れだったのですが、1年生の齋藤がその流れを断ち切ってくれたので何とか勝てたかなという印象です。最後の桐蔭横浜との対戦では、力の差が出てしまったと思います。

――力の差とはどういった点でしょうか

まず体幹力の差ですね。早大の選手もかなり体の力がついてきてはいるのですが、相手の方が優れていました。あとは、試合の組み立てがまだできていないという点です。相手のペースにのまれてしまうというのもありますが、自分の得意技を最初に出してしまうので。足技などを含めた技の組み立てができていないと感じました。

――ベスト16という結果をどのように受け止めていますか

ベスト8を達成できなかったことは非常に悔しいですし、残念です。ただ、ここ数年の成長の仕方を考えると、昨年はもうベスト16になった段階でいっぱいいっぱいという状態だったのですが、ことしはワンランク上のベスト8を本気で狙いに行ったので。そこで負けて悔しい思いをしたということは、チーム全体の成長につながると思います。こういった経験を何回か繰り返すことで、本当にベスト8に入れるチームになれるのではないかという気がします。

――個人戦まで少し期間があきますが

そうですね。ことしは合宿も2回に分けてやる予定で、かなり厳しい練習計画を立てているので、しっかりと鍛えていけるのではないかと思います。

小林将来主将(社4=三重・四日市中央工業)

――今大会を振り返って

きのうは7-0という良い形で終え、きょうはベスト8目指していたのですが、それを懸けた試合で負けてしまいました。去年も同じところで負けてしまい、ことしも4-0という内容ではありましたがきょねんよりはベスト8に近づいてきていると思います。しかし、まだ足りないところがあったなと思う試合でした。

――足りないところとは具体的にどのようなことでしょうか

低身長のチームなので、いかに大きな選手からポイントを取るかというのが今の課題であり、これからも課題です。

――自身にとって最後の全日本学生でしたが

自分は全く活躍も出来ず、最後の試合も出れなかったのですが、チームをしっかりサポートし送り出そうと頑張りました。

――ベスト16とういことで、主将としてどのように受け止めたか

目標は達成出来ませんでしが、今後に繋がる大会になったと思います。

――個人戦まで期間があきますが、その間の過ごし方について

団体戦と違って、同じ階級の相手となるのでまた違った柔道になると思います。そこはしっかり切り替えて頑張りたいと思います。

斎藤光星(スポ1=静岡・加藤学園)

――今回の全日本を振り返って、いかがでしたか

東京学生の時はあまり出番がなかったのですが、全日本学生で先輩が怪我をしてしまって。その分勝ちたいという気持ちが出たと思います。自分としては2勝1分で、よい結果が出せたのではないかと思っています。

――1回戦では先鋒として出場されましたが、どのような気持ちで試合に臨まれましたか

先鋒は高校1年生の時以来で。あまり先鋒の経験がなかったので不安でしたが、1本取れてよかったです。

――2回戦、3回戦は重要な局面での出場でした。特に二回戦では、流れを引き寄せる結果となりましたが

2回戦は、先輩が取られてしまってどうしようかと思ったのですが、先輩が自分に「いつもの練習通りに行け」と言葉をかけてくださって。いつもの自分の力が出せて、良い結果になったと思います。

――1年生ということで、今回が初めての全日本出場でした

周りが先輩ばかりなので、迷惑をかけたくないとずっと思っていて。悪くても引き分けに持って行きたいと考えていました。

――今大会で得た課題や収穫はありますか

課題としては組手の遅さもありますけど、今回は相手が小さかったので。技をかけてちゃんと(相手が)背中に全部乗ったのに、最後の決めが甘かったので、しっかり決められるようにしていきたいと思います。

――個人戦まで少し期間が空きますが、どのように過ごされたいですか

今回の試合の経験と反省を生かして、まだ一年生なので挑戦者として次の大会に臨んでいきたいなと思います。