強大すぎる『四強』のカベ。立命大に敗れ、インカレ準々決勝敗退

女子ホッケー

 近づいては離れていく。『四強』の背中にはまだ、手が届かなかった。雲ひとつない秋晴れの空が彩る全日本学生選手権(インカレ)準々決勝。早大は『打倒四強』を目指し、立命大との大一番に臨んだ。守り切って、少ないチャンスをものにする。強豪相手に目指すゲームプランはいつも通りだが、やはり立命大の力はそれを許すほど甘くない。前半5分の失点からじわりじわりとその背は遠ざかり、0-4で決着。敗北を知らせるホーンの音とともに、選手からはため息、そして涙が漏れ出した。

 ここが1年間の目標だった。FB片柳陽加(スポ4=栃木・今市)を主将とした現チームが発足したのは、昨年11月9日、インカレ初戦の日。『打倒四強』を掲げて天理大に挑んだ当時の早大は、後半20分まで1-1という大接戦を見せながら惜しくも敗れる。『四強』に肉薄しながらも届かなかった昨年の4年生が「絶対来年には四強を倒してほしい」と次の世代へバトンを渡し、それを受け取った片柳らがその日から、この舞台で勝つために今のチームを作り上げてきた。この試合は、まさに現チームの集大成ともいうべき試合。強い思いを秘めながら、選手たちはいつも通り円陣を組んで声を上げ、コートに散っていった。

 立命大のセンターパスで試合が始まると、立命大優位にゲームは進む。早大もしばしば敵陣へ攻め込んでいたが、FW稲田くるみ副将(スポ4=佐賀・東明館)が「向こうのほうが、勢いがあった」と振り返るように、立命大はひとつひとつの攻撃の質が高い。早大の攻撃がシュートまで持ち込めずに終わるのに対し、立命大は何度もサークルに入ってGK南有紗(スポ4=埼玉・飯能)が守るゴールマウスを脅かした。そして前半5分、立命大の先制点が生まれる。右サイドからサークル内に入った敵選手に対して南が果敢に飛び出していったが、逆サイドにこぼれたボールを押し込まれた。一方早大は、自陣でボールを持ったFB片倉優季(スポ2=山形・米沢商)のスクープなどから稲田やFW井上燦(スポ4=福岡・玄界)が敵DFの裏へ抜け出し、両サイドのエンドライン際からサークルインを目指す。しかし立命大の守備は固く、たとえサークルに入ってもPCを奪えないまま機を逸してしまう状況が続いた。せめて1点差のまま試合を折り返したいところだったが、29分に与えたPCから痛恨の2点目を献上。0-2で前半を終える。

相手の攻撃を阻む片柳

 後半に入ると立命大の攻撃は一層勢いを増した。後半3分に与えた5つ目のPCから3点目を奪われると、その後も立命大の攻勢を前になかなか攻撃へ移ることができない。南や片柳らディフェンス陣も決死の守備で点差を広げまいとするが、後半28分、左サイドからサークル中央へセンタリングを通され4点目を失った。残り5分を切って4点差と、せめて1点取って一矢報いたいという試合展開。すると32分、敵陣中央でボールを持った片柳がそのままサークルへ入り、初めてPCを獲得する。ここで決めて残り少ない時間の攻撃につなげていきたい場面。しかしシュートは敵DFに阻まれ、得点を奪うことはできない。さらに34分には右サイドを突破され、懸命にボールを追いかけたFB安達里奈(スポ4=神奈川・洗足学園)が敵選手に衝突。イエローカードで5分間の退場処分を受けた。時間は無情にも過ぎてゆき、得点板のタイマーが残り10秒を切る。選手から「時間ないよ」と声が飛び、自陣でボールを持った片倉が何とか前線へつなごうとスクープを放った時、試合終了のホーンが鳴り響いた。勝利を称えあう立命大の選手とは対称的に、肩を落として引き上げる早大。最後の瞬間をコートの外で迎えた安達の目からは、悔し涙が零れた。

スピードある立命大FW陣に苦しめられた

 試合後、井上が審判員と話をしている姿が目に入った。何を話していたのか井上に尋ねると、自身がグリーンカードを出された場面について確認していたという。同じ失敗を繰り返さないために、判定の根拠を確認する。次の戦いへつなげるための行動だった。この敗北でインカレの戦いを終えた4年生だが、まだ引退を迎えたわけではない。来週には関東学生秋季リーグの順位決定予選という舞台で『四強』山梨学院大との戦いを控えている。最大の目標であった試合の敗戦直後、それでも井上は次の試合を見据えていた。そしてそれは井上だけではない。4年生全員の気持ちは既に『打倒四強』のラストチャンスへ向かっている。稲田が「立命大よりも厳しい試合になってくる」と予想するように、ことしの7月に発表されたシニア日本代表に3選手を輩出する山梨学院大は『四強』の中でも屈指の実力。それでも勝利という目標が揺らぐことはない。『打倒四強』を掲げたあの日から積み上げてきたもの、そしてきょうの悔しさを、関東無敗の女王にぶつけるだけだ。勝利を目指してプレーするその姿は、勝っても負けてもきっと次の世代に勇気を与えるだろう。

(記事、安本捷人 写真、成瀬允、榎本透子、新藤綾佳)

全日本学生選手権
早大 0-2
0-2
立命大
コメント

FB片柳陽加主将(スポ4=栃木・今市)

――試合前の心境はいかがでしたか

やっと来たなという感じで、新チームになってから新しい目標を立てて、四強を倒すという目標のために、春からの基礎などをやって来たので、集大成だと思って勝つ気で臨みました。

――きょうの試合を振り返っていかがでしたか

最初に守りに入っちゃうかなと思っていたんですけど、攻めることが出来ていて、ゴール付近までボールを運ぶことが出来ていて、春にも同じことを言っていたと思うんですけど、全員で攻めれたところが良かったと思います。でもDFは守ることは出来ていたんですけど、ボールを渡した時にもう少し攻める態勢を作っていった方が、攻撃に厚みがでてFWも攻めやすかったのかなと、思います。

――攻めながらも、なかなかシュートを打たせてもらえませんでした

きのうの試合も私たちがサークルに入った途端に、パスが無くなってしまって、自分たちのキープで抜こうとしてしまうので、跳ねたボールでもいいので早めに、中にパスをしてタッチを狙うであったり、もう少し、サークル内やサークル付近での工夫が必要だったかなと思います。

――相手FWはスピードがありました

きのうはDFでいろいろ話はしていて、もし相手に2対1を組まれた時とかにはこうやって守ろうと、共通理解をしていたので、おどおどせず守ろうとしていたんですけど、1対1とか少人数で攻められてしまった時に、いかに時間をかけられるかがカギになってくるんですけど、極端にサイドから中に攻められることは少なかったので、寄せることは出来ていたので、後はしっかりサークル前で取り切ることが課題かなと思いました。

――春の対戦と比べてきょうの試合はいかがでしたか

スピードの対応は春に比べてトレーニングを積んできたので、DFは対応出来ていたかなと思いました。でも、攻撃面で決定率とかを上げられたかというと、シュートは打ててないですし、PCも一本しか取れていないので、守りというよりかは攻めの面では、ちょっと攻撃する機会が多くなったぐらいで、決定率の面では、まだ足りなかったなと思いますね。

――四強を倒していくには決定率がカギになりますか

チャンスが少ないので、きょうも何回もサークルに行けたものの、PCで終わらせられなかったり、すぐに取られてしまうことがあったので、あと一歩のシュートであったり、攻め切ることが少ない点は大きかったと思います。

――次戦は順位決定予選で山梨学院大との戦いになります。そこへの意気込みをお願いします

きょう立命大と戦うことが出来たので、それを忘れずに出来なかったことを山梨学院大戦では出来るように調整することと、山梨学院大もしっかり倒さなくてはいけない相手なので、しっかり自信を持っていけるように、やって来たことを出し切って頑張りたいと思います。

FW稲田くるみ副将(スポ4=佐賀・東明館)

――立命大との試合になりましたが、勝ち試合のイメージはどういうものでしたか

みんなでしっかり守って、一本つながる場面でPCを取って得点するという感じで、1,2点をしっかり守りきるのが勝ち試合になってくるイメージでした。

――前半、数では立命大と同じくらいのチャンスをつくり、しっかり攻められているように見えました

向こうのほうが勢いがあったので、どちらかといえば自分は守る側が多いなというのがありました。本当に、ちょっと前に出てチャンスがあってみたいな感じのがちょこちょこあるな、という感じでした。

――サークルに入ってもなかなか得点やPCにはつながりませんでした。立命大のディフェンスの強さを感じましたか

ディフェンスが強いのもあったんですが、自分たちもしっかりみんなで押し上げて攻めに参加することができなかったので、そこが最後までシュートにつながらなかった要因かなと思います。

――なかなかドリブルでの突破も許してもらえませんでしたが、敵の守備をどう崩していくイメージでしたか

自分の場合は、ドリブルでエンドラインまで持っていくのが得意なので、スピードに乗ってエンドまで持って行ってサークル内に入れるというイメージでした。

――実力そのものは出し切れた、と感じますか

出し切れたわけではないのですが、練習してきたことはしっかりできたのかなと思います。

――インカレは終わりましたが、まだ関東学生秋季リーグが2試合残っています。今後どう戦っていきたいですか

まず次は山梨学院大戦なので、立命大よりも厳しい試合になってくると思うのですが、そこでも守りに徹するのではなくて攻撃的に、点にもっとどん欲にやっていきたいと思います。

GK南有紗(スポ4=埼玉・飯能)

――今試合の意気込みは

1年間の目標が「最後、ここ(インカレ)で四強を破る」ということだったので、それを目標としてやりました。

――試合全体を振り返って

すごく雰囲気はよくできたのかなというのがあって、自分自身強く言う場面もあったんですけど、通して言うと、みんなもいいプレーを褒める声もあって、声を掛け合ったりとか、プレーに関しても迷いはあったかもしれないんですけど、今までやってきたことを出せたのかなと思います。

――立命大のFW陣はいかがでしたか

個人技もすごくあって、プレー中によく声も出しているな、という感じでした。動きも統一されているというか、しっかり共通認識で動いてるな、と思ったのでスピードもあって技術もあって、怖いなと思いました。

――PCを取られる場面が多かったですが、守備についてはいかがですか

PCの守備はDFで、早慶(定期)戦とインカレに向けていっぱい確認してきたので、それでどういう風に出るか、というのも毎回確認したりとか、「あれで来るからこう出よう」というのはDF同士で確認できました。2点入ってしまったんですけど、守備はすごく良かったかなと思います。

――来週に控えた秋季リーグ順位決定予選、山梨学院大戦への意気込みをお願いします

今回の試合とインカレ、早慶戦を通して課題も多く出た分、いいところもいっぱい出たかなと思っているので、あと1週間なんですけど課題はちょっとずつ克服して、少しでもいいプレーをいっぱいできるように、自分も自信を持って声かけして、いい試合ができるようにしたいのと、あと絶対勝ちたいと思います。

FW井上燦(スポ4=福岡・玄界)

――きょうの試合への意気込みと振り返りについて教えてください

きょうやった立命館大は春の全国大会である王座でもあたっていて0対3で負けていた相手であったので、厳しい戦いになるということは分かっていました。しかし、夏にラントレする中で技術を上げてきてしっかり勝ち切ろうという思いで挑みました。戦ってみてやはり相手の方が個人の技術であったり、チーム力が上であったりといろいろ対策はしたのですが結果的に負けてしましい悔しいです。

――きょうの試合でのFW陣の動きはいかがでしたか

相手が上手いということは分かっていたので、守って自分たちで速攻で攻めるという戦術でやっていこうと思っていたました。守る面に関しては、きのう話し合いで「ハーフプレスに挑戦しよう」ということになったのですが最近あまり練習ができていなかったので難しかった部分かなと思います。何度か速攻で相手のサークル誓うに攻め込んでPCを取れたという点では攻撃としてはできた部分もあったかなと思います。

――試合終了後に審判とお話しされていましたが、差し支えなければどのようなことを話していたのか教えてください

そうですね、私は結構審判とコミュニケーションをとることが多い方で、きょうは自分自身カードも取られていたということもあり、次に同じ失敗をしないためにもどのようなことが審判に反則として見えたのかとかを、しっかり聞こうと思い、その確認をしていました。

――4年生で最後のインカレでしたがいかがでしたか

私自身は全国大会で得点をしたことがなかったので自分の目標としては得点をしたかったなという思いはすごくあるのですが、きのうもきょうもそれがかなわなかったことが1番悔しい部分ではあります。チームとしてもまずベスト4を倒すということと全国優勝という目標がある中で、ことしもベスト8のカベを超えられなかったことが悔しいという一言でまとめられないのですが、自分たちはもう後輩に託すしかないので悔しいとは思いつつも来年こそは頑張ってもらいたいという気持ちです。

――秋季リーグの試合がまだ残っていますが、それについての意気込みを教えてください

全国一はもう達成することができなくなってしまいましたが、今度は順位決定戦で関東一には挑戦できるので次は絶対王者の山梨学院大と試合なのでチャレンジャーとしてしっかり、もう自分たちは捨てるものは何もないので自分たちらしいホッケーをして私としては得点を決め勝てるように頑張っていきたいです。

MF梅村雅子(人4=岐阜・可児)

――今試合の意気込みは

1年の目標であった『打倒四強』を実現するための試合だったので、「勝ちにいくぞ」ってことだけをチームで再確認して臨みました。

――試合全体を振り返って

相手がすごいパス回しが上手、とか1人1人の技量が私たちよりも1枚も2枚も上手だったのでプレスの確認など基本的な事項を確認してからやったんですけど、前半から向こうのペースに飲まれてしまって、なかなか私たちらしい攻撃はできなかったなと思います。

――ご自身のプレーについてはいかがでしたか

もともとはライトのポジションをやっているんですけど、相手のMFが上手ということで、守備固めで私が左に行ったんですけど、なかなかキーマンを抑えることができなくて、守備から流れを作りたかったんですけどなかなかできなかったなって思います。

――立命大とは今シーズン2回目の対戦でしたが、きょうは王座と比べていかがでしたか

駿河台大戦で「自分たちも攻撃できるんだ」っていう自信をつけることができたので、立命大に対しても攻撃するところはしようと話していました。結果的にPCを最後に1本取れて、そういった点では守ってる時間は多かったんですけど攻撃する時間も増えたなと思っているので、ちょっと感触はあります。

――来週の、『四強』の一角である山梨学院大戦への意気込みをお願いします

インカレでは『打倒四強』を果たせなかったんですけど、まだまだ『打倒四強』の望みは残っていると思うので、そこに向けてきょうの立命大戦を振り返って、関東リーグの決勝に行けるように頑張りたいと思います。

FB安達里奈(スポ4=神奈川・洗足学園)

――試合前の心境はいかがでしたか

DFとしては、無失点で抑えれば負けることはないので、絶対に守り切ろうと気合いを入れました。

――相手が四強の立命大ということで、強く意識されましたか

四強の中でも勝ち目のある相手だったので、全然負ける気は無くて、みんなで勝とうと意気込んで試合に臨みました。

――相手のスピードある攻撃はいかがでしたか

相手のFW陣のスピードが速くて、特に20番の子が速くてマークが大変だったのですが、こっちも負けずについていく意識で追いました。

――サークル内で攻撃を防ぐ場面も多く見られましたが、意識されたことはありますか

サークルに入られてからは、キックもファールも出来ないので、バックラインに寄せていくディフェンスを心掛けました。

――戦い終えての心境はいかがでしたか

悔しい思いもあるのですが、自分のせいで2点取られたのと、自分がファールを取ってチームに迷惑をかけたので、責任を感じて、申し訳なさと悔しさがありました。

――次戦は山梨学院大との順位決定予選になりますが、そこへの意気込みをお願いします

私たちは四強を倒すことを目標にやって来たので、もう一回きょうの立命大戦を反省して、絶対に勝ちたいと思います。