【連載】『令和4年度卒業記念特集』第33回 西本京平/男子ホッケー

男子ホッケー

楽しむ気持ち

慶大相手にシュートアウト(SO)戦までもつれ、仲間を応援する早大選手たち

「完全燃焼した4年間だったからこそ、ホッケーを今後も続ける予定はない」。今年度の男子ホッケー部の主将を務めた西本京平(スポ4=大阪・大阪星光学院)は、こう語った。2年前に行われた全日本学生ホッケー選手権大会(インカレ)から主将になることを決意した西本。早大の男子ホッケー部は、選手である学生が主体となって練習内容を考える。西本のポジションは、GKであったためフィールドプレイヤーについて一から分析することから始めた。自分の方法で、悩みながらときに仲間を頼りながら、チームを1年間まとめてきた。卒業を前に何を思うのか。これまでのホッケー人生を振り返ると共に、後輩へ託した思いに迫る。

 西本がホッケーを始めたのは、高校生のとき。高校のホッケー部のGKが足りず、友達に勧誘されたことがきっかけだった。仲の良いチームメートと過ごした高校での部活の時間が、ホッケーを大学でも続けたいという気持ちに繋がったという。早稲田大学を選んだ理由は、1部リーグに所属し、強豪校からの推薦入学者もいて、勉強面でもホッケー面でも充実した学生生活が送れると考えたからだ。実際に、早大に入学してみると、「怒られ役で、1番怒られた」と西本は振り返った。早大ホッケー部は、上下関係なく練習外では先輩と後輩が友達のように仲良くする。この雰囲気と西本自身の親しみやすい人柄が相まって、先輩によくかわいがられた下級生時代だった。

体を張ってゴールを守るGK西本

西本が4年間で1番悔しかったと試合として挙げたのが、3年生のときのインカレ初戦学習院大戦であった。「シュートをほとんど止めることができなかった」と自分のプレーに苛立ちを覚えた。さらに、試合の展開が悪くなるにつれてチーム内の言い争いや分裂が進んでいった。下級生がチームの主力となっていた中で、チームをまとめる最上級生の存在の必要性を強く感じた。その試合の夜に前主将に直談判し、次期主将に立候補した西本。早大を強くするという熱意と覚悟の1年の幕が上がった。フィールドプレイヤーの経験がない西本が、フィールドプレイヤーの練習内容を考えることになる。「しゃべったこともない強豪校のフィールドプレイヤーの選手にSNSで連絡をとった」と積極的に、貪欲に、ホッケーを研究し続けた。

印象に残っている試合として真っ先に挙げたのが、4年生のときの秋季リーグ対慶大戦であった。2年半、宿敵慶大に勝利がない中、西本らしく徹底的に相手のポジション、どういう形でペナルティーコーナーを獲得しにくるか分析を重ねた。慶大を意識し、自分の分析結果をもとに日々の練習メニューを作った。「自分が出場していない試合だったけど」と嬉しそうにこのときの勝利を語った。

主将西本を筆頭に試合後の挨拶に向かう早大選手

最後に後輩たちに伝えたいこととして語ったことは2つ。1つ目は、「なるべくホッケーを楽しんでほしい」。「嫌々取り組んでも、伸びることはない」。劣勢な試合中でも、負けた試合の後でも、常に前向きな西本の姿があった。楽しむ気持ちを忘れなかったから、前向きであれた。きっと主将の明るい姿をみて、多くの選手が励まされたことだろう。2つ目は、「とにかく勝ってほしい」。ここ数年、スポーツ推薦による入学者が減少し、厳しい状況にある早大。それでも、『勝利』にこだわって、早大らしいホッケーで日本一を目指してほしいと語った。

西本は、大学卒業をもってホッケーからは離れる予定である。大学4年間、全力でホッケーに取り組み、向き合った。そして主将として、常にチームのために行動してきた。この時間は、きっと人生において大きな財産になるだろう。持ち前の親しみやすさ、分析力、前向きさで新しい道を歩む。

(記事 板東萌 写真 坂田真彩 大幡拓登)