終わりを迎えた『宮崎王国』――この悔しさは次の世代へ

男子ホッケー

 今体制最後にして最大の戦い、全日本学生選手権(インカレ)が開幕。早大は関東第2代表として2回戦に登場した。相手は過去に対戦経験のない朝日大。猛者がそろう関西学生リーグ戦において春季リーグ戦2位、という好成績を残している。「まずは一勝、朝日大に勝とう」。意気込んで臨んだ今試合、攻撃においてはつかんだチャンスを決めきれず、守備においては相手の個人技に翻弄(ほんろう)され、早大の良さである組織力が発揮できない厳しい戦いとなった。

 阿須の地にひときわ大きい叫び声が響く。試合前、いつも通り円陣を終え、気合十分でフィールドに立ったエンジの戦士たち。朝日大のセンターパスから始まった今試合、試練は早々に訪れた。前半3分、次々と抜き去っていく相手FWを止めきれず、ミスから失点。幸先の悪さを感じるプレーとなった。その後、早大は8分にFW関修平(商2=東京・早大学院)、10分にはMF宮口和樹(スポ3=滋賀・伊吹)がチャンスを作るもボールは枠をとらえられない。13分に獲得したペナルティコーナー(PC)も相手GKの正面。19分、PCからDFをかわし1点を追加される。得点につながるプレーが見られるも、あと1歩のところで決めきれない苦しさにさいなまれた。

前線で得点のチャンスを狙った関

 勝てば次、負ければ終わりのトーナメント戦。このままで終わるわけにはいかない。後半に入り、より激しい攻防が始まった。逆転の機をうかがい攻勢を強める中訪れた後半4分。相手FWの鋭い一撃が早大ゴールに吸い込まれていく。3失点目。チームは苦境に立たされた。厳しい状況でDF斎藤湧大(スポ1=栃木・今市)やFW宮崎俊哉主将(スポ4=福井・丹生)が打ち込み、得点のチャンスを演出。しかしサークル内でのタイミングが合わず、相手DFに阻まれた。ピンチを必死でしのぎ失点を抑えるも、相手ゴールを揺らすことはできず、フィールドに無情なブサーが鳴り響く。試合終了。あっけない幕切れに、選手たちは肩を落とした。

攻守両方でチームを支えた斎藤

 1年間チームを支えてきた4年生は今試合をもって引退する。宮崎から宮口へ、キャプテンマークが手渡された。今シーズンの最終戦、秋季関東学生リーグ入替戦は新体制で挑むこととなる。主将に就任してから宮崎が中心となって戦い続けたチームを、自身は『宮崎王国』と形容した。来シーズン、宮口に託された新チームはどのような色になるだろうか。「自分たちを超えてほしい」「悔いのないように」――様々な願いを込めて、ワセダで過ごしたホッケー生活の幕を閉じた4年生。後輩たちの新たな戦いが、始まる。

一様に悔しさをにじませた

(記事、写真 榎本透子)

全日本学生選手権
早大 0-2
0-1
朝日大
コメント

松本剛毅監督(平6卒)

――きょうの試合を振り返っていかがでしたか

先週末の早慶戦でいい形の戦いができたので、その勢いを元に勝負にこだわりたかったんですけど、なかなかきょうはいい面が出なかったのが心残りですね。

――朝日大はどのようなチームでしたか

選手が非常にそろっていますので、個人技ですとか、チーム力が強くて我々より格上のチームですので、勝とうと思うと特別なことをしないといけないというのは分かっていたんですけど、きょうはその気持ちが足りなかったのかなと思います。

――ことしの4年生はどのような学年でしたか

宮崎主将中心に、よく考えて実行してくれるというチームで、私は4年間監督をしてきたのですが、1番いい練習をしていましたし、結果っていうのはあくまでも結果なので、プロセスといったところで1番まとまりがあって1番いい練習を熱くできたんじゃないかと思います。

――4年生に向けてメッセージをお願いします

結果っていうのはなかなか出ないわけで、彼らが苦労してもがいてきたことは将来必ず役に立つ場面が出てくると思いますんで、誇りを胸に社会に出ても頑張ってほしいと思います。

FW宮崎俊哉主将(スポ4=福井・丹生)

――今試合を振り返って
いかがですか

早慶戦からいいリズムと勢いでチームが出来上がってきて、最後のインカレで強豪相手に一矢報いたかったところですけど、あっちのほうが一枚上手だったというか、悪くはなかったんですけど最後に決めきれないし守り切れないところがありましたね。

――朝日大とは初めての対戦でしたが、プレーはいかがでしたか

関西で戦っているだけあって、ドリブルのテクニックであったりボールの競り合いであったりは強いと思いました。でもやっぱり関東のチームならではの組織力であったり一体感っていうのは正直あんまり感じることはなかったので、そこで一枚上手にいきたかったところですけど、個人技にやられてしまった部分がありました。結果としては負けたんですけどもう少ししっかり詰めてやっていけば勝てたんじゃないかなっていう悔いが残りました。

――ホッケー部での4年間はいかがでしたか

単純に、あっという間の4年間でしたね。僕がワセダに入る前の年は春季リーグ優勝、王座(全日本大学王座決定戦)準優勝、という輝かしい成績を残していて、1年生の時は春季リーグで入替戦に回ったものの秋季リーグは優勝っていう形でまた輝かしい成績を残して。決して順風満帆とは言えないんですけど、1年1年がいろいろな意味で収穫のある濃い1年で、特に最後の1年間は主将をやらせてもらって、チーム運営を任せてもらって、本当に勝たせてあげたかったんですけど最後まで勝たせてあげられなくて、申し訳ない気持ちとやり切った感と、どっちもあります。本当に濃い4年間だったな、と、だからこそ短くてあっという間の4年間だったなと思います。

――次期主将は宮口選手ですが、どのような主将になってほしいですか

優しい子なので、その優しさと厳しさをしっかり出してチームを引っ張っていってくれたらいいなって思います。僕は正直厳しさはあるけど優しさはあんまりなくて、それを他の4年生に求めたというか、フォローしてもらっていたので優しさと厳しさを同時に出すことはできませんでした。でも和樹は優しさの方が強い人間なので、その中で厳しさを入れて、チームを強く引っ張っていってくれたらより強いチームになるだろうし、頑張っていってほしいです。

――後輩たちにメッセージをお願いします

厳しい練習を1年間してきて、必ず自分の力になったものもあると思うので、それを自身にして、今までやってきたことを糧にして、残りの時間を全員が悔いのないようにまた春シーズンから頑張っていってほしいなと思います。

MF岸本昌樹副将(教4=鳥取・八頭)

――きょうの試合を振り返っていかがでしたか

早慶戦の流れでいきたかった部分はあったんですけど、インカレっていう舞台になるとあまり力を発揮できなかったのかなと思いました。

――朝日大はどのようなチームでしたか

個人個人の能力が高くて、そこはワセダの今後のチームも見習うべきじゃないかなと思いました。

――ワセダでホッケーをしてきた4年間はいかがでしたか

1年生から4年生まですごく楽しくやらせてもらえたかなと思います。ワセダに入れてよかったなと思います。

――副将として戦った1年は苦労もありましたか

俊哉がいなくなって、僕がチームの練習を考えたりするのが大変な時期もありました。

――後輩に向けてメッセージをお願いします

最終学年としてあまり教えることもできず、勝たせてあげることもできなかったんですけど、来年は和樹が主体となって今よりも強いチームになると思うので、しっかりと勝っていって僕らよりもいい成績残していってほしいと思います。

GK戸田翼副将(スポ4=滋賀・伊吹)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

早慶戦がいい結果だったので、その勢いに乗ってインカレも初戦から戦えたらいいかなと思っていました。

――朝日大の優れている点はどこだと感じましたか

(早大の)チーム力は劣っていなかったんですけど、個々のドリブルの能力とかは朝日大のほうが高いと思いました。

――ワセダでホッケーをしてきた4年間はどのようなものでしたか

小中高とそれなりに強いチームに所属していて、高校まではホッケーだけをやってきたって感じだったんですけど、大学に入ってホッケーをやりながらも勉強であったりとか、様々な社会経験を多くする中で、両立は難しかったけどホッケーだけじゃない人生というか、いろいろなことを学べたと思います。

――後輩に向けて一言お願いします

俊哉が主将で、僕が副将として、いろいろなことをやってきたけどうまくいかないことがほとんどで、本当に最後の早慶戦でしか先輩としての背中を見せられなかったです。でも特に思うのは、悔いないようにするのは難しいことですけど、できることは絶対に行動に移した方がいいです。話すべきことは話した方がいいですね。

FW渡邊崇仁(法4=東京・早大学院)

――きょうの試合はいかがでしたか

いろいろあってチームを離れていた時期もあったんですけど、春季リーグが始まったときは4年生として王座ベスト4、インカレで全日本に食い込むというのを目標にしていました。そういった意味で、秋になってなかなか勝てなくて結果が出ない中で、早慶戦を6-0で快勝できて、このインカレに弾みをつけるような形になった個人的にも「いけるんじゃないかな」という部分もありました。とりあえず一勝、朝日大には勝とうという気持ちで早慶戦から切り替えてやってきたので悔いが残る試合でした。

――朝日大の強みはどこにあると考えられますか

前線の選手がスピードあるなって思いました。ビデオとかで研究する時間もなかったので、感覚で、ボールを持てる人が何人かいるかな、って感じで、全体的に穴がない印象でした。

――ホッケー部で過ごした4年間はいかがでしたか

同期4人のうち、高校2年生から始めたこともあって経験が浅くて、いろいろな経歴を持った選手が集まっているのがワセダのホッケー部であって、自分もなんとかそこでやっていこうと思ったんですけどやっぱり技術レベルの差だとかに苦しんだ4年間でもありました。最後負けちゃったんですけど、早慶戦も快勝できましたし、最後のシーズンを今のチームで締めくくれたことはよかったなと思います。

――後輩へメッセージをお願いします

僕なんかが全然アドバイスできる立場ではないんですけど、ワセダのホッケー部は人数も少なくて、横のつながりや縦のつながりで支え合っているのを日常からひしひしと感じるので、先輩後輩関係なくコミュニケーションを取って支え合って、チーム一丸となって戦うっていうスタイルを貫いて、後輩たちらしい色を出していい結果も残してもらえたらなと思います。

MF宮口和樹(スポ3=滋賀・伊吹)

――今試合を振り返っていかがですか

チーム的にも早慶戦もあって調子がよかったんですけど、決めるところで決められなかったっていうのが敗戦につながったんじゃないかと思います。

――早大に比べて朝日大が優れている点はどこだと感じましたか

得点力ですかね。FWがしっかり点も取れていたんですけど、うちは宮崎主将に頼ってばかりだったんで、他のFWがもうちょっと輝ければ得点につながったんじゃないかと思います。

――では早大が優れている点は

DFが安定してきたかなと思います。前だったらサイドで囲まれたときもバタバタしちゃってたんですけど、両ハーフともボールがきたらすぐ縦に打つっていうのを徹底していたので、よく前線にボールがつながってて、チーム的にもよかったんじゃないかと思います。

――次期主将ということですが、重みは感じますか

そうですね。僕はキャプテンぽくはないんですけど、宮崎主将とは違った色になると思います。僕1人でみんなを引っ張ることはできないんで、同期に協力してもらいながらみんなでチームを作っていきたいと思います。

――どのようなチームにしたいとお考えですか

僕1人がチームを引っ張っていく感じというよりも、みんなで楽しく勝利に貪欲になれるように精一杯頑張りたいです。