「4年生へ恩返し」 臨んだインカレは涙の初戦敗退 激闘を戦い抜く

男子ハンドボール

全国学生選手権 11月6日 広島・東区スポーツセンター体育館

 11月6日、ついに今年度の集大成となるインカレ(全日本学生選手権)が開幕した。早大1回戦の相手は、一昨年にも1回戦で対戦し敗戦を喫した大同大。2年越しのリベンジを果たそうと臨んだ今試合は、立ち上がりに大同大に大きくリードを奪われると、一時は同点に追いつくも再び突き離され13-20で前半を折り返す。後がない後半、徐々に追い上げを見せた早大は、最後まで勝利を目指して懸命に戦い抜いたものの、あと一歩及ばず33-35で涙の初戦敗退。これが4年生最後の公式戦となった。

 立ち上がりは大同大が主導権を握る。大同大の先制直後、早大は杉田一輝(スポ1=岩手・不来方)のロングですぐさま追いつくが、ミドルを中心に失点が続き開始8分には1―7と大きくリードを許してしまう。これ以上の点差を避けたい早大はここで、けがで秋季リーグ(関東学生秋季リーグ)の出場を途中から見送りインカレに照準を合わせてリハビリに励んできた鍋島弘樹(スポ2=福井・北陸)をLBに投入。コートに立つとすぐさま1、2枚目間を割って、秋の悔しさをぶつけるような強烈なシュートをゴールに突き刺した。鍋島が大きなガッツポーズとともに雄たけびを上げるとベンチも湧き、ここから早大が勢いに乗る。「4年生に恩返ししたい」気持ちで試合に臨んだという所真大(社2=岡山・総社)の速攻やサイドシュートを中心に得点し前半19分、ついに試合を振り出しに戻した。一気に逆転を狙う早大だったが、ここで大同大も反撃を開始。早大がシュートを決めきれず攻めあぐねる間に、ミドルやカットインで得点を重ねられ13―20と突き離されて前半を折り返した。

得点後に吠える鍋島

 7点を追う後半は渡辺航平副将(人4=神奈川・桐光学園)の好セーブで幕を開けた。両者一歩も譲らずなかなか点差が縮まらない時間が続いたが、秋季リーグのけがから復帰した増井浩介(スポ1=愛知)の3連続得点をきっかけに早大が流れをつかむ。守屋雄司副将(スポ3=神奈川・法政二)のリバウンドを拾ってねじ込んだシュートや、外種子田崚汰(スポ3=鹿児島・国分)から鍋島へのスカイなど、気迫のこもったプレーで徐々に追い上げを見せると、残り7分でビハインドを4点とする。大同大の背中が見えたかと思われたが、ここで相手がスピードに乗ったオフェンスを展開すると、そのディフェンス中にキャプテン白築琢磨主将(文構4=東京・早実)がレッドカードを受けた。主将の退場に衝撃が走り、焦りが見えてもおかしくない場面。しかしワセダセブンは冷静に、ここで負けるわけにはいかないと再度ギアを上げた。ディフェンスでは結城颯太(スポ2=千葉・昭和学院)と小柴創(スポ2=千葉・昭和学院)の昭和学院3枚目コンビを中心に粘りを見せ、オフェンスでは外種子田が2連続で速攻を決める。早大の得点後には、時間をうまく使って戦う大同大に対し、早いスタートを促すように鍋島がゴールまで全力でボールを取りに走った。ラスト3秒の場面には所が体を張ったプレーでペナルティースローを獲得。速水駿太(文構4=東京・巣鴨)が『氣』持ちのこもった力強いシュートを放つと、ここで試合終了の笛が吹かれた。最後まで諦めず熱くプレーを続けた早大だったが、33-35で無念の初戦敗退となった。

ペナルティースローを放つ速水

 複数の選手が涙を見せた今試合。悔しい、やり切った、申し訳ない、不甲斐ない。抱く気持ちはさまざまだが、この試合に懸ける思いが溢れた涙だった。悔しい結果に終わったものの、ラストまで勝ちにこだわり、泥臭く懸命に戦い抜いた姿は、鍋島が言う通り「早稲田らしい」ものであった。試合後、同期や後輩への感謝と来年への期待を語った4年生と、4年生への感謝とリベンジを誓った後輩ら。このチームで戦うインカレは幕を下ろしたが、この感謝と悔しさを胸に、早大ハンドボール部の日本一を目指す1年が再び始まる。

試合終了後チームの元へと歩く白築

(記事 片山和香、写真 大村谷芳)

集合写真

全日本学生選手権(インカレ)
早大 33―35 大同大

13―20
20―15

スタメン

GK 渡辺航平(人4=神奈川・桐光学園)
CP 所真大(社2=岡山・総社)
CP 白築琢磨主将(文構4=東京・早実)
CP 結城颯太(スポ2=千葉・昭和学院)
CP 小柴創(スポ2=千葉・昭和学院)
CP 外種子田崚汰(スポ3=鹿児島・国分)
CP 増井浩介(スポ1=愛知)

コメント

白築琢磨主将(文構4=東京・早実)

――今日の試合にどんな気持ちで臨まれましたか

 この1年間の集大成として4年生として引っ張る立場で臨んで。秋リーグ(関東学生秋季リーグ)が終わってからの練習でディフェンスもオフェンスも色々なことを試してバリエーション増やして、 すごい良い感触で入ったんですけどこういう試合になってしまってキャプテンとしてまず申し訳ないなと思っています。

――試合を振り返っていかがですか

 出だしのところで相手に勢い乗らせてしまったことも敗因の1個なのかなとは思うんですけど、追い上げムードになっている時に僕が率先してやらなきゃいけないことができなくて。ああいうプレーで終えてしまったことに対して不甲斐ないと思いますし、 1試合通してオフェンスの中で自分たちがやりたいことができなかったというところには悔いが残ります。

――オフェンスでやりたかったことは具体的にどんなことですか

 コートを目いっぱい使ってクロスクロスの展開だったり、その中でのライン際のシュートを増やすっていうところをやってきてはいたんですけど、 パスミスだったりスピードの緩急があんまりつけられなかったりっていうところが今日の試合では出てしまったかなと思います。

――試合を終えてチームメイトへの思いを聞かせてください

 まずはこの1年僕がキャプテンをやるにあたって色々な思いがあったと思うし、僕としても最後の最後にこういう形になってしまうし、プレーでも精神面でも引っ張れてこられなかったというところはすごい申し訳ないです。3年生以下はまた来年、再来年もあるわけなので、そこに向かって頑張っていってほしいなと思います。

――キャプテンとして重圧もあったと思いますが、この1年を振り返っていかがですか

 僕が引っ張る立場ではあったんですけど、同期も少ない中でここまでやってきてくれて、みんな僕が(主将を)やるにあたって色々思うことはあったと思うんですけど、それでもついてきてくれたっていうところはすごい感謝してます。1人1人の力すごいあると思うので、 来年はリベンジして頑張ってほしいです。

――再来週にはこのチームでのラストゲームとなる早慶戦があります。早慶戦どんなゲームにしたいですか

 最後を締めくくる1試合にはなるので、まずは楽しめるように準備していきたいです。

渡辺航平副将(人4=神奈川・桐光学園)

――今日の試合、どんな気持ちで臨みましたか

 1個目勝って明日につなげたいなという気持ちだけでした。

――試合後には涙を浮かべられてましたが、試合を終えての気持ちを聞かせてください

 ばっっっり悔しいです。そんな気持ちと一緒に4年間終わったなというか、やり切ったなっていう気持ちもあって、そういう涙だったかなと思います。

――今試合、最後まで勝ちを目指して全員で戦われてた姿が印象的でした。同期や後輩への思いがあれば聞かせてください

 後輩たちには非常に感謝していて。4年間色々な先輩と色々な後輩と関わってきたんですけど、すごい楽しい4年間だったなという思いがまずあって。それは間違いなく先輩もですけど、後輩たちの性格とかキャラとかがあってで。プレーもあいつらが頑張ったらこっちも嬉しかったしっていうところでは本当に感謝しかないです。同期は速水(駿太、文構4=東京・巣鴨)も最後決めれたし、白築は退場してしまいましたけど最後まで戦い抜いた結果だと思うので、マネージャーの2人も含めて最後までやりきれたことはすごい良かったかなと思います。

――最後に早慶戦あると思うので、そこへの思いを聞かせてください

 今日悔しい負けしましたけど、最後早慶戦は伝統の一戦として恥ずかしくない試合をするとともに、同期と後輩たちと一緒にやる最後のゲームだと思うので、全部出し切って笑って終われたらなと思います。

鍋島弘樹(スポ2=福井・北陸)

――試合終えて率直な思いを教えてください

 僕も秋にけがしてからずっとリハビリやってきて、この試合この大会にかけてる思いは僕自身強かったので、本当に4年生に申し訳ないプレーをしてしまったなと。4年生のためにっていう思いがあったんですけど、悔しい気持ちでいっぱいです。

――今日の試合どのような気持ちで臨みましたか

 やっぱり4年生のためにっていう思いがあって。これまで入学した時から声かけてくれた4年生と一緒にハンドボールできてほんとに楽しかったですし、4年生のためにも勝ちたいって思いがあったので、この悔しさを忘れちゃダメだなと思います。

――ご自身のプレーを振り返っていかがですか

 僕自身はケガ明けでプレータイムもあまり伸びないかなと思っていた中で、チャンスをもらった分しっかり生かせた場面もあったんですけど、そうじゃない場面も多くて。まだまだやるべきことが僕にはあると再確認させられた試合になりました。

――最後まで追いかける姿勢、諦めない姿勢が印象的でしたが、ラストどんな気持ちでプレーされていましたか

 やっぱり4年生にとっての最後の全国大会で勝ちたい思いが強かったので、ああいう場面でボール取りに行ったり。ああいうのが僕は早稲田らしさだと思うし、ああいう姿を後輩1年生も含めみんなに見せて、「これが早稲田らしさなんだぞ」っていうのが少しはみんなに見せられたんじゃないかなと思うし。ああいうことをみんながやっていけば、自分たちのやっていることは間違ってないっていう自信を全員持てると思うので、来年に向けてまた頑張りたいなと思います。

――まだ気持ちの整理がついてないかと思いますが、次の目標などあれば教えてください

 来シーズンからは僕も3年生となって上級生なんで、今以上に責任がついてくると思うんですけど、 その責任やプレッシャーを楽しめるような人間になりたいです。1回1回の練習をひたむきにやらないとこういうゲームになるし、加藤会長(稲門ハンドボール倶楽部 加藤正博会長)からお話あったように、勝ち運が今日は相手にあって。日頃の練習から全力でやるとか、ゴミ一つ拾うとか、そういうところから僕らはやっていって、勝ちを自分たちのものにしないといけないと思うので、そういうところから、僕は来年チームをまとめる側になるのでしっかりできたらいいかなと思います。

所真大(社2=岡山・総社)

――今日の試合どんな気持ちで臨みましたか

 4年生最後の大会なので恩返ししたいって言う気持ちと、個人的にもインカレ初スタメンで緊張していたんですけどチームの勝利に貢献したいっていう気持ちで挑みました。

――ご自身のプレーを振り返っていかがですか

 サイドとセンター両方で出させてもらって、サイドは最初の方比較的調子が良かったんですけど途中から崩れていってしまって、決めないといけない場面で決め切れなかったのでそこは悔しいです。センターでも上手くゲームメイクできなくてまだまだだなと感じました。

――試合後白築琢磨主将のもとへ行かれていましたが、どんな言葉をかけましたか

 琢磨さんにはキャプテンとして1年間引っ張ってきてもらって感謝の気持ちもありましたし、すごく悩んで苦しんでることも相談受けたりして知っていたので近くに行こうと思って行きました。レッドカードで退場になってしまって最後までコートに入れなくて本人がいちばん悔しいと思うので勝利を届けたかったんですけど、それが出来なくて申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

――まだ整理がつかない状態だとは思うのですが、早慶戦への思いや来年への目標を聞かせてください

 早慶戦は4年生と一緒にできる最後の試合なので、勝つのはもちろんですが思いっきり楽しみたいなと思ってます。来年の目標は日本一。今回初戦敗退で遠いなって感じたんですけど、それでも僕たちならできるって信じてますしそこを目指すべきだと思います。今回の悔しさを糧に来年はサイドでもセンターでも与えられたポジションでチームを勝利に導ける選手になれるように頑張ります。