関東学生春季リーグ(春季リーグ)最終節の結果を受けて行われた入れ替え戦。25年ぶりの入れ替え戦を迎えた早大は、2部リーグ2位の桐蔭横浜大と対戦した。前半戦、立ち上がりから調子を上げきれない早大は2点ビハインドで試合を折り返したが、後半戦では勢いを盛り返し同点に追いつく。しかし桐蔭横浜大も早大にリードを許さず、試合は拮抗した展開が続いていき延長戦に突入。今までの試合とは異なる独特な緊張感が会場を包み込む中、手に汗握る熱戦が繰り広げられた。残り1分を切ったところで桐蔭横浜大に得点を許したものの、1点リードの早大が逃げ切るかたちで試合終了となった。2部降格のピンチを乗り切り、1部残留を果たした。
前半戦、ワセダセブンは立ち上がりからうまく自分たちのペースに持ち込むことができずにいた。先制点を挙げることはできたが、シュートミスやパスミスによって相手に得点チャンスを与えてしまい失点が続いていく。特に、桐蔭横浜大のサイドシュートが早大を追い詰めていくかたちとなり、11分までに連続6失点となってしまう。しかし早大も為すがままではなかった。12分の7メートルスローをLW前田理玖(スポ3=福井・高志)がしっかりと決め切ると早大も反旗を翻す。相手のパスミスを見逃さなかったPV遠藤瞭(スポ3=神奈川・法政二)の速攻や、RB山本慶(スポ3=長野・屋代)のサイドシュートが着々と決まっていく。また、16分を過ぎるとRW清原秀介(商4=東京・早実)が速攻を仕掛けGKの足元をうまく狙い得点。その後も相手のパスをカットし前田の速攻につなげた。早大がペースをつかむこと23分。ボールを奪った前田は敵陣に果敢に攻め込み、華麗なスカイプレーで同点となるシュートを放った。DF岡本隼(商3=滋賀・彦根東)やDF福本友貴(スポ2=神奈川・法政二)の体を張ったディフェンスも相まって、早大は相手との5点の溝を埋めた。一歩抜きん出たいところではあったが、1部昇格がかかっている桐蔭横浜大もそう簡単にはリードを許してはくれず、11-13と桐蔭横浜大が2点をリードし試合を折り返すこととなった。
力強いシュートを放つ主将・清原
同点に追いつきたい早大は、序盤から着々と点を刻んでゆく。山本はキレのあるサイドシュートで相手に必死に食らいついていった。また、けがから復帰したCB青沼健太(社2=千葉・昭和学院)も相手ディフェンスを打ち破るシュートでチームに貢献。また、同点で迎えた23分、相手に7メートルスローを許してしまうというピンチに交代で入ったGK中村匠(スポ2=千葉・市川)がシュートを止め切り会場が盛り上がる場面もあった。しかし、早大は勝ちこしの1点がなかなか決まらない。両者一歩も許さず一進一退の攻防が続いていった。だが、残り時間2分となったとき相手選手にレッドカードがあがった。突然訪れたこの好機を逃すまいと、7メートルスローも含め前田が連続で2得点とし、25-24とついに1点をリード。残り1分を切った中での、この逆転は早大に勝利の二文字をもたらすはずだったが、敵もさるもの、残り10秒ほどで点を決めてきた。前田が必死にシュートを放ち、ボールは相手ゴールに吸い込まれたものの時間切れとなってしまった。
点を刻み付けチームの勝利に貢献した前田
迎えた延長戦。今までの春季リーグの試合とは異なった緊張感で会場は満たされていく。ここで負けてしまえば2部降格という大きなプレッシャーと、早大としてのプライドがそこにはあった。延長戦前半開始後、早大は有利に立とうと幾度もシュートを放つがすべてはじき返されてしまい、リバウンドを取られ25-27と2点ビハインドに。青沼がフェイントを仕掛け点を入れ返したが、その後同点打は放たれないまま前半の5分が終了。残されたわずかな試合時間が早大の焦燥感を煽る。少しの休憩の後、後半戦が開始された。ここで決め切りたい早大は開始直後の相手のこぼし球を見逃さなかった。「相手にリードされる展開が続いても、心配せずにプレーしていました」と試合後に振り返ったように、相手のミスを活かした前田が得点し、同点に追いつく。この得点がきっかけとなり早大に勢いが増していった。清原のパスカットからつながった前田の速攻や、山本、遠藤のシュートも立て続けに決まり残り時間1分を切ったところで30-28と2点をリードした。残り30秒となったところで早大側は2分の退場により1人少ない状況となってしまい1点を失うが、それでも残された時間が早大に味方した。鳴り響く試合終了のブザーに安堵の表情を見せるワセダセブン。30-29と1点差で逃げ切ることができた。
早大の勝利が決まり盛り上がる応援席
会場にいる誰もが固唾をのんで見守っていた今回の入れ替え戦。春季リーグで幾度も悔しい思いをしてきたワセダセブンが意地を見せつけて1部残留を決め切った。1点を競る戦いが多い早大。今回つかんだ勝利の要因を青沼は「ディフェンスで粘れたこと」だと振り返る。チームの持ち味としているディフェンスからの速攻がうまくいかない場面があっても、相手の攻撃の好機をつぶしていく守備陣のディフェンスは確かに光っていた。昨年と選手層が大きく変わった新体制の中、自分たちのプレーの在り方を模索し続けた春季リーグ。多くの試合を通して収穫や、目標、課題といったものが見えてきたことだろう。春季リーグ戦の後に控えている大会の中で肝心なのは東日本インカレだ。「まず東日本インカレはインカレ出場権がかかっているので、そこを取らないと始まらないので当たり前のようにそこは勝っていきたい」と主将・清原は意気込んでいる。東日本インカレや関東学生秋季リーグといった大会に向けて、さらなる飛躍を遂げるワセダセブンに期待は高まるばかりだ。
(記事 栗林真子、写真 稲葉侑也)
関東学生春季リーグ入れ替え戦 | ||||
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早大 | 30 | 11−13 14−12 1-2 4-2 |
29 | 桐蔭横浜大 |
GK 羽諸大雅(スポ4=千葉・市川) LW 前田理玖(スポ3=福井・高志) LB 阿南遼星(スポ3=大阪・大体大浪商) PV 遠藤瞭(スポ3=神奈川・法政二) CB 青沼健太(社2=千葉・昭和学院) RB 山本慶(スポ3=長野・屋代) RW 清原秀介(商4=東京・早実) |
コメント
清原秀介主将 (商4=東京・早実)
――延長戦の末、勝利となりました。試合を終えた今の気持ちをお願いします
入れ替え戦というのはリーグ戦と違って、どういう内容であろうとその試合の結果が全てという部分があったので、そういう状況で最後1点差で勝てたというのはすごくよかったなと思います。
――今回入れ替え戦ということでしたが、どのような気持ちで試合に臨まれましたか
入れ替え戦が決まった後に、25年前の入れ替え戦で3年生だった先輩たちにお話を聞いていて、その時に入れ替え戦独特の雰囲気があるからリーグ戦と同じ雰囲気で行くとのまれるよという話を(先輩方が)してくれたので、チームの中ではその雰囲気に対応しつつ自分たちらしく楽しくやれば絶対いけるなというふうに話していました。
――試合全体のチームのプレーについてはいかがでしょうか
前半の立ち上がりも悪くて、1点を争う戦いが続いていたと思うんですけど、結構勝負どころでも退場者が出ていたりしていたし、速攻もチームとして全然行けなかったです。
――ご自身のプレーについてはいかがでしょうか
春リーグを通して個人としては、点数で言うと100点中10点ぐらいの本当に低い点数だなと自分でも思っているので、何が悪かったのかとかを考えて練習の中でも修正して、秋季リーグや東日本インカレに向けて立て直していきたいです。
――春季リーグを通して、チームとして得たものや見えてきた課題などはありますか
結局接戦となるチームなので、いかに競っている場面で集中して3点差とか離すかとか、去年のチームと比べてルーズボールだとか早稲田らしい泥臭いプレーが少なかったので1本1本を大切にするプレーが勝ちにつながる大切な部分になるんじゃないかと思います。
――次に控える東日本インカレや秋季リーグに向けての意気込みをお願いします
まず東日本インカレはインカレ出場権がかかっているので、そこを取らないと始まらないので当たり前のようにそこは勝っていきたいです。次の秋リーグはまたチームのミーティングで目標を設定して、何が必要なのか考えて立て直していきたいなと思います。
前田理玖(スポ3=福井・高志)
――勝利の感想をお願いします
きょうは試合前から内容云々よりもまずは勝とうと話していて、勝ちが求められる試合だったので、延長で1点差というヒヤヒヤした展開にはなったんですけど、勝てたのは大きかったかなと思います。
――きょうまでの1週間、チームとしてどのように取り組んできましたか
モチベーション的にもチームの雰囲気的にも春季リーグ後半戦の3連敗で下がっている部分があって、そこは一度切り替えて、OBの人から入れ替え戦の話をしてもらって、入れ替え戦に向けて気持ちを入れていったという感じです。
――きょうのチームのプレーはいかがでしたか
予定していた展開とは少し違う展開になってしまったんですけど、相手よりも練習量は多いと思うし、真面目に取り組んでいる成果を出せれば絶対に勝ちは見えてくると思っていて、相手にリードされる展開が続いても、心配せずにプレーしていました。
――春季リーグは僅差での敗北が多かったですが、きょう勝ちきれた要因は何ですか
そこは普段の練習の質だったりが相手より上だったのかなと思います。逆に、1部で勝ちきれないのは、1部のチームに比べると練習の質が低いのかなと思います。
――入れ替え戦を終えて、秋季リーグへの意気込みをお願いします
このチームは落ちるところまで落ちてもう成長しかないと思うので、この嬉しさ、悔しさを忘れず秋季リーグにぶつけたいと思います。
青沼健太(社2=千葉・昭和学院)
――勝利の感想をお願いします
25年ぶりの入れ替え戦ということで早稲田の歴史としても慣れていない試合だったので、入りは大事にしようという話はしていたんですけど、少し相手に飲まれてしまって、ただその中でも延長までいって勝ち切れたというのは僕たちの大きな財産になったかなと思います。
――きょうまでの1週間、どのような意識で練習されましたか
自分は怪我をして先週まで3週間ずっと練習をしていなくて、今週1週間で急いで間に合わせないといけないということで正直チームのことを考えている余裕はあまりなくて、自分のリズムを取り戻すということだけを意識してやってきました。試合の中で味方と合わない部分もあったんですけど、きょうをマックスの状態で迎えられたのは、1週間の取り組みが上手くいったということだと思います。
――怪我からの復帰戦が入れ替え戦という厳しい試合でしたが、どのような気持ちでしたか
4年生の宮國義志(社4=沖縄・浦添)さんがいないという状態で、その状態で入れ替え戦に自分が出なければいけないとなったときに、1人いなくなって1人戻ってきて負けてしまったら、簡単に言えば自分の力が足りないということになってしまうので、まずは勝ちきれるようにしようと思っていました。
――春季リーグでは僅差の敗北が多かった中、きょう僅差でも勝ち切れた要因は何ですか
きょうはディフェンスで粘れたことだと思います。退場とか多く取られた中でも、点差を離されずに食らいつけていけたので、最後は早稲田と相手の練習量の差で勝ち切れたと思います。
――秋季リーグに向けて意気込みをお願いします
春季リーグは9位ということで、OBの方や保護者の方には凄く申し訳ない、不甲斐ない結果になってしまったんですけど、秋季リーグでは1つでも多く勝って、インカレに繋げたいと思います。