公式戦の初戦は難しい。ハンドボールに限らずスポーツではよく言われることだが、まさにその言葉がぴったりの展開だった。関東学生春季リーグ(春季リーグ)第一試合。相対したのは順大だ。快調なフットワークで前半優位にたった早大だったがそう上手くはいかない。後半、相手のアグレッシブなディフェンスからリズムを作られ同点とされると、その後は1点を交互に取り合う展開に。順大の速攻やポストプレーから何度もピンチを迎えたが、最後は早大の攻守がわずかに勝りスコアは28-27。辛くも白星発進することができた。
「自分たちの流れができていました」(山﨑純平、社4=岩手・不来方)と立ち上がりは上々。相手の先制点にも動じる姿はなかった。7分すぎの小畠夕輝(スポ4=岡山・総社)の連続シュートを中心に着々と点数を積み重ねる。小畠はきょう11得点。「キーパーが全然僕のボールを見えてなかったので、打てばいいかな」という言葉の通り、ミドルの位置からもどんどんとシュートを打ち込み、オフェンス陣を引っ張った。さらに、途中出場の宗海皓己(スポ4=高知・土佐)や宮國義志(社3=沖縄・浦添)にもゴールが飛び出し、点差を広げていった。一方守備時は、相手の高い位置を取る3-3ディフェンスとは対照的に、早大は0-6ディフェンスで対応。スピードを生かしてくる順大オフェンスをきっちりと阻止した。前半終了時のスコアは17-12。攻守ともに好調な滑り出しを見せた。
小畠は終始オフェンスの軸となった
しかし、前半終了間際に順大に決められた連続得点が、ほころびの前兆だったのかもしれない。後半に入ると早大セブンの足が止まり始めたのだ。一方の順大はさらにディフェンスラインの位置を上げ、あわやマンツーマンにもなろうかという守備陣形を敷いた。当然、運動量の多い方に流れは傾く。順大の攻撃機会が増えた。新戦力の福田友貴(スポ1=神奈川・法政二)や、昨年から出場経験のある前田理玖(スポ2=福井・高志)を投入し応戦するも、「役割分担が少しあいまいだった」(荒木進監督、平5人卒=熊本市立商)。5点あったリードは13分すぎにはなくなった。そして終盤、1点を争う展開に。攻守の移り変わりが早くなり、陣形も互いに流動的になった。伊舎堂博武副将(社4=沖縄・興南)のカットインやステップシュートなどから得点をあげるが突き放すことはできない。残り1分、スコアは27-26。順大が速攻によりノーマークでゴール前へ。同点は不可避かと思われた。しかし、ここでGK羽諸大雅(スポ3=千葉・市川)がきょう一番のビッグセーブ。会場が一番沸いた瞬間だった。その後は清原秀介(商3=東京・早実)がサイドシュートで効果的に加点。1点を返され残り15秒からも攻め込まれたが、何とか守りきり勝負を決めた。
最後の2得点は清原から生まれた
まずは初戦を何とかものにした早大。結果にこだわる以上、1点差であろうと勝てたという事実が重要だ。いい面も悪い面も色濃く出た試合だったが、次節は明日に迫っている。一戦必勝を忘れずに、あくまで「いいイメージを持って試合に臨むというのが、明日への方針」(荒木進監督、平5人卒=熊本市立商)だ。悲願のリーグ制覇を目指して――。新制ワセダセブンの戦いは始まったばかりだ。
(記事 小松純也、写真 宅森咲子、村上萌々子)
関東学生春季リーグ | ||||
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早大 | 28 | 17−12 11−15 |
27 | 順大 |
GK 羽諸大雅(スポ3=千葉・市川) LW 三輪颯馬(スポ4=愛知) LB 小畠夕輝(スポ4=岡山・総社) CB 山﨑純平(社4=岩手・不来方) PⅤ 高橋拓也(人科4=群馬・富岡 RB 伊舎堂博武(社4=沖縄・興南) RW 清原秀介(商3=東京・早実) |
コメント
荒木進監督(平5人卒=熊本市立商)
――新チームの初戦、ご覧になっていかがでしたか
やはり春リーグの1戦目ということもあって、硬さが残っていたというのはあります。けどやはり硬さを十分意識して、前半の中盤くらいまではいいゲーム内容、ゲーム展開だったのかなとは思います。
――後半リードを追いつかれてしまった要因は何でしょうか
フレッシュな選手、入ってきた選手の役割分担が少しあいまいだったというのはあるのかなと思います。やはり前を攻め切れていないというか、1対1でパスを探すような感じで、もっとどんなスポーツであれ相手がいる以上1対1を狙っていかなければならないと思いました。
――順大のディフェンスには何か対策をしていたのですか
まあやっぱり重々対策はして、小畠がポストに入るなど、そういういい部分も通用したというところで、通用しなかった部分は、次自分たちでこういう風にしていこうという考える力が今後の課題なのかなと思います。
――明日に向けて1日で何かできることはありますか
もう1日しかない部分があるので、あとは体をケアしていいイメージを持って試合に臨むというのが、明日への方針ですね
山﨑純平(社4=岩手・不来方)
――まず試合を終えて率直な感想をお願いします
とりあえずまず勝ったことが大きいと思います。
――試合を振り返って
スタートは自分たちのペースで完璧な立ち上がりができて、自分たちでディフェンスを固めて、ディフェンスからしっかりオフェンスにセットでとるという自分たちの流れができていました。後半、相手のディフェンスがアグレッシブな形になってきたときに、オフェンスの対応力が全然なかったのでもう少しそこは練習しなければならないこれからの課題ですかね。
――重要だった初戦入り方としては上手くいったということでしょうか
入りとしては、すごく足も動いていて完璧でした。
――先制されても落ち着いていたように思います
そうですね。開始10分までは相手の様子を見て、そこから自分たちに自然にかみ合っていけるだろうという練習をしてきたので、先制点に関しては大丈夫でした。
――自身のプレーはいかがでしたか
要所要所ではシュートを決めることはできていましたが、ディフェンスで真ん中からシュートを決められることが多かったので、ああいう苦しい中でキャプテンとしてもう少しチームを引っ張っていけたらと思います。
――順大のディフェンスラインがかなり高かったですが、強化してきたボール回しは上手くいっていたのでしょうか
想定して練習していたよりもアグレッシブにきていて、ボール回しという点では前半は上手くできていました。後半さらに浮いてきたときに、ポストが絡むとか、もう少しボール回しが上手くいっていれば、スムーズに勝つことができたのかなと思います。
――明日に向けて修正点はありますか
きょうみたいな、自分たちのミスから速攻という形で決められると乗ってきてしまうので、修正点があるとすれば、オフェンスのミスを減らすこと、ディフェンスではもっとアグレッシブに当たることだと思います。
――最後に明日への意気込みをお願いします
チーム全員で勝って開幕2連勝したいと思います。
小畠夕輝(スポ4=岡山・総社)
――初戦でしたが、どのような意気込みで挑みましたか
もちろん優勝を目指しているので一戦必勝、まずはここを勝とうという気持ちで挑みました。
――最上級生になって意識は変わりましたか
めっちゃ意識高くなりました。同級生とかも最後だし意識高くなって。1週間前にもミーティングしたんですけど、みんなで気持ちを高めていこうと、練習も雰囲気良くできていると思います。
――きょうの試合を振り返っていかがですか
前半は結構良かったんですけど、後半は相手のディフェンスが高くなった時に対応が遅かったかなと思います。それでリズムが崩れて結構危ない場面もあって、最後羽諸(大雅、スポ3=千葉・市川)が止めてくれて良かったみたいな感じだったんですけど、課題が残ったかなと思います。
――前半は特に小畠選手の得点が多くみられましたが、調子が良かったのでしょうか
なんか打ったら入っていました。キーパーがいないんじゃないかと思うくらい(笑)。キーパーが全然僕のボールを見えてなかったので、打てばいいかなと思っていました。
――後半は逆にチームとして苦しい場面が続きました
全体的に足も止まりだして。ディフェンスの3人がすごく上がってきていて、フローターの機能を止められた時にポストとサイドのミスが多かったです。そこでポストをフローターの選手に変えるなどという戦術もやったんですけど、まだまだ練習不足というか、流れは悪かったですね。
――改善すべき点はどのような所でしょうか
ダブルポストとかも入れつつ、下でもっと2対2を狙うみたいな。日大とかも高いディフェンスをしてくるので、そこまでにはそういう戦術ももっと練習していけたらなと思います。
――あすに向けて意気込みをお願いします
中大は練習試合などをやっていても一番強いというか、山場のような感じです。あしたからの中大、日大、筑波大の3連戦が一番の山になってくるので気持ちを入れて頑張ります。
羽諸大雅(スポ3=千葉・市川)
――きょうの初戦どのような気持ちで臨まれましたか
去年もそうだったのですが、今年もインカレ日本一という最終目標を掲げているので、春リーグ秋リーグ絶対に落とせないなという気持ちで臨みました。
――ご自身のセーブの調子はいかがでしたか
前半順天堂のパス回しの速さに圧倒される部分があって、もう一人のキーパーの永田さん(永田奈音、スポ4=宮崎・小林秀峰)がうまくリズムをつくってくれて引き離せました。後半は自分もそれに刺激されて自分のキーピングを取り戻すことができて、いくつかビッグセーブもできたかなと思います。
――ビッグセーブされた時のご自身の気持ちを教えてください
苦しい時間が続いていたので、やっと出たという安心感ともう何個か出して早く試合を決めたいという2つの思いがありました。
――キーパーからみたきょうのディフェンス陣の調子はいかがでしたか
ディフェンスは順天堂に特に対策していて、1年生の福田選手とかを中心にできるだけ後半もずっと足を動かそうという声かけは続けていたのですが、足が止まってしまったシーンがあったのでこれから改善していくべき点だと思います。
――早大は一線ディフェンスを取っていましたが、これからのディフェンスの基本陣営なのかきょうのための対策なのか教えてください
最終的に勝負所が相手の遠い位置からのシュートなのですが、僕はそういうシュートが比較的得意なので、そういうシュートを打たせて僕がしっかりセーブするというシステムは、インカレまでずっと続けていきますし、完成度を上げていきたいです。
――明日への意気込みをお願いします
明日の対戦相手である中大はハンドボールをよく知っている人が多いのが特徴で、なおかつ今年の1年生はU19を経験しているフレッシュな1年生が入っているので、彼らの勢いに負けないように、きょう調子が良かった人も悪かった人もそれを一旦忘れて切り替えることが必要だと思います。