春の訪れとともにハンドボールファンの胸躍る季節がやってきた。関東学生春季リーグ(春季リーグ)第一試合。3年ぶりのリーグ優勝を目指す早大の対戦相手は東海大だ。おととしの春季リーグ優勝を経験しているチームだけに気合の入る一戦は、序盤から西山尚希主将(社4=香川中央)らフローター陣を中心に畳みかける。加えて早大の一番の武器である守備もしっかりと機能する。中盤もつれるかのように思われたが、地力で勝る早大は流れをなんとか引き止めて、28-22で勝利を収めた。
今季のリーグ戦初ゴールは早大の主将から始まった。「チームの勝ち負けの責任は自分にある」と西山は言う。その言葉通り、試合開始からエンジン全開の西山はパスカットからのワンマン速攻を決め、早大にリズムを作り出す。その後もミドルシュートにステップシュート、ジャンプの落ち際にシュートを放つ駆け引きをする余裕も見せ4連続得点。去年からより一段と質の上がったプレーを見せれば、積極的にチームメイトに声を掛け60分間チームを鼓舞し続ける。この勢いに続いたのが三輪颯馬(スポ3=愛知)や小畠夕輝(スポ3=岡山・総社)ら3年生たちだ。三輪がスピードに乗った速攻や角度のない位置からのサイドシュートを決めれば、小畠は強靭なリストを使ったパワーのあるシュートでゴールネットを揺らす。奮闘するコートプレーヤーに応えるようにGK羽諸大雅(スポ2=千葉・市川)も持ち前のセービング力を披露。前半終了間際に西山が2分間退場となるも6点のリードを保って試合を折り返すこととなった。
チームトップタイの7得点をマークした小畠
それでも後半に入ると早大のディフェンスに暗雲が立ち込める。立ち上がりこそ得点するものの、疲れから足が止まり始め簡単に中央突破を許す場面が目立ちだす。声を掛け合うものの、一時は8点あったリードも気付けば3点に。しかしここでビッグプレーが飛び出す。早大の大型フローター陣へのマークを強くするため、ラインを上げた相手ディフェンスを崩しに切り込んだ三輪に長谷川大耀(政経4=東京・早実)からのノールックパスが通り、見事にシュートが決まる。小柄な両サイドによる芸術的なプレーにより再び流れをつかんだ早大。残りの10分間は3年生によるゴールラッシュとなり、最後は伊舎堂博武(社3=沖縄・興南)の豪快なミドルシュートが決まって、新体制の初勝利を飾るゲームセットを告げる笛が鳴った。
新主将の西山がチームを盛り上げた
リーグ優勝に向けてまずは一つ勝ち星を挙げた早大。エースの西山を軸に、小畠、伊舎堂、山﨑純平(社3=岩手・不来方)といった実力あるフローター陣とスピード感あふれるサイド攻撃は順調な仕上がりだった。自慢の堅守速攻を遺憾なく発揮したようにも思えたが、監督をはじめ選手の口から出るのは最高のディフェンスへの飽くなき執念だ。勝利後にも慢心のない早大には、さらなる進化を遂げることに期待がかかる。これからも一つずつ確実に勝利を重ねていきたい。
(記事 比留田孟徳、写真 佐藤慎太郎、田中一光)
関東学生春季リーグ | ||||
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早大 | 28 | 16−10 12−12 |
22 | 東海大 |
GK 羽諸大雅(スポ2=千葉・市川) LW 三輪颯馬(スポ3=愛知) LB 小畠夕輝(スポ3=岡山・総社) CB 西山尚希(社4=香川中央) CB 山﨑純平(社3=岩手・不来方) RB 伊舎堂博武(社3=沖縄・興南) RW 長谷川大耀(政経4=東京・早実) |
コメント
荒木進監督(平5人卒=熊本市立商)
――いよいよ春季リーグが開幕しました。新チームをご覧になっていかがですか
一試合だけ見てどうのこうのってのはないですけども、まあまだ初戦ということもあって緊張していて、練習していることのちょっとしか出せてないように見えました。
――その中で、初戦を勝利したのは大きいですね
負けるよりも勝つ方が当然いいですし、初っ端ということで、緊張の中でそういう経験ができたのは良かったと思います。
――ことしのチームの特色はどういう風に見ていますか
全員で守って全員で攻めるというか、トータルハンドボールというか、そんな感じです。やっぱりうちはディフェンスからやっていかなければならない部分はあるので、ディフェンスからという感じで。まあきょうは機能していたし及第点かなという感じですね。頑張っていたと思います。
――コート上よく声が出ていたなという風に見えましたが
声は出ていたんですけどね、なかなか足が動いてなかったですね。やっぱり(流れが)悪い時こそ自分で動こうという意識が必要ですね。不調の時に打破するような、そんなメンタルを身に着けてほしいなと思いますね。
――あすに向けて一言お願いします
あしたもしっかり勝ちに行きます。
CB西山尚希主将(社4=香川中央)
――きょうの試合を振り返っての感想をお願いします
出だし10分はいいかたちでいっていて、前半終わった時点で6点差つけられていたのでそれはすごい良かったと思います。ただ、後半に中だるみというか、一気に引き離さないところがあったのでそこは修正していかないといけないなと思います。
――一気に離せなかった要因はどういった部分にあったのでしょうか
一気に10点差まで持っていこうとハーフタイムに話していて、オフェンスでミスしてバックチェックでやられるという去年からあったミスはやめようと言っていたんですけど、合わない部分があったり打つべきところじゃないところで打つなど個人の判断の部分でミスがあったりして、それを引きずってしまったのが原因かなと思います。
――自身のプレーを振り返っていかがですか
初戦ということもあってやる気十分で、最初の3、4本を自分で連取できたのは良かったかなと思います。後半の中だるみした時間にもっと点を取ったり、周りを動かしたりできればよかったかなと思います。
――後半は1得点でしたが、やはり周りを動かしていこうという狙いもあったのですか
そうですね、前半あれだけ攻めたのでマークが厚くなるかなと予想はしてたんですけど、もう少しいけた部分はあったのかなと思います。オフェンスで、クロスプレーの継続ができず、一人が攻めてフリースローという分断された攻撃が増えていたのでそこをつなごうと思って他の選手を絡めようとしていました。
――ことしから4年生、主将と立場が変わりましたがいかがですか
チームの勝ち負けの責任は自分にあると思っているのでそこは責任を取れるプレーをしなければいけないと思っています。そして、下級生をいかに引っ張っていくか、どうモチベーションを上げて勢いに乗っていくかということを考えるようになりました。
――去年のチームとはどういった部分で違いますか
そこまで大きく変わったという点はないんですけど、チーム全員で守って攻めるということと、全員がお互いに意見を言い合える環境を作るようにしているのでそこは良くできているなと思います。
――春休みの練習の成果はどういったかたちで現れましたか
2対2で引き付けて次がうまく間を割ったり間からシュートを打てたりできたというところですね。ディフェンスでは一人がしっかりコンタクトして枝を張ってキーパーと合わせるという部分ができていたと思います。
RW長谷川大耀(政経4=東京・早実)
――白星発進となりました。お気持ちをお聞かせください
安心したというのが率直な気持ちです。
――ほとんどフル出場でしたが、疲れなどはありましたか
大学に入って公式戦でここまで長く出たのは初めてだったんですけど、そんなに疲れというものは感じてないですね。試合中は感じなかったんですけど、試合が終わってから疲れが来た感じがします。
――前後半それぞれ得点されましたが、自分が最上級生になってプレーしているという意識はありますか
4年生になって得点したという特別な思いはないですね。プレー面であんまり引っ張っていける立場ではないので、気持ちの面では強く引っ張っていきたいと思ってます。
――三輪選手へのノールックパスも見事に得点につながりました。あれは作戦ですか
いや流れですね。あのパスを出したときにやっちゃったと思ったんですけど、颯馬が取ってくれたんでありがたかったです(笑)。
――信頼関係というところですかね
そういうことにしておきます(笑)。
――長谷川選手から見たことしの早大はどんなチームですか
チームが始まってから西山が本当によくまとめてくれて、みんなもいい雰囲気でやれています。西山のためってわけではないですが、そういう気持ちはみんなあるのかなと思います。西山を中心に盛り上げていってます。
――中盤は差を詰められた場面もありましたが、課題などはありますか
まさにそこですね。終わり方というか、しっかり逃げ切って勝ち切れなかったというところですね。これから戦っていく中で、途中で気を引き締めていくというのが重要かなと思います。
――あしたの日大戦にご自身とチーム、それぞれどんな目標を持って臨みますか
僕の目標としては日大は高いディフェンスシフトを敷いてくるからサイドはもっとボールに絡んでいかなきゃなと思います。チームとしてはきょうはディフェンスでうまくかみ合ってない部分があったので、そこを絶対に修正していきたいです。
LB小畠夕輝(スポ3=岡山・総社)
――開幕を迎えましたが、どのような心境で試合に臨みましたか
思ったよりも緊張せずに試合に入ることができたのでよかったです。
――28ー22で勝利しましたが、きょうの試合を振り返って
もう少し点差を離すことができる場面がありましたが、そこで僕が単発でシュートを打ったり、簡単なシュートがあったので、そこを修正していきたいと思います。
――シュートの精度が課題ということでしょうか
精度というよりは、打たなくてよいタイミングで打ってしまうことがあったので。あと最後に僕がバテてしまったので、そこをもう少し頑張りたいなと思います。
――それでもチームトップタイの7得点を挙げました
でも、無駄なシュートが多かったので。無駄なシュートがない中での7得点ならいいと思うので、次はそこを修正していきたいと思います。
――ディフェンス面については
最後の方に僕のアウトで、カットインをやられる場面がありました。シュートは羽諸が止めてくれましたが、そういう場面をつくらないようにしたいです。
――西山選手からディフェンスの時に指示を受ける場面もありましたが
西山さんのリーダーシップはすごいなと思いました。
――「下がるな」などの指示を受けているように聞こえました
そこは二人でしっかりコミュニケーションを取るようにしていました。相手の左利きの選手がよく攻めてきていたので、どう守るかという話をよくしていました。
――西山選手が退場でコートにいない時間もありましたが、その時はどのようなことを心掛けてプレーしていましたか
西山さんがタイムアウトを取ってオフェンスの指示を出してくれたので、それをそのままやるという感じでした。うまく決まったのでよかったです。
――最後に次戦に向けての意気込みをお願いします
あしたも頑張ります。
LW三輪颯馬(スポ3=愛知)
――きょうの開幕戦はどのように意気込んで臨みましたか
新チームになって最初の公式戦で、初戦が大事で、ここで勝てば勢いに乗れると思っていたので、勝ちに行こうという気持ちでした。
――前半のオフェンスは良かったように思いましたが、どこが良かったと思いますか
全体としては、ワセダの持ち味であるロングシュートが入ったので、他も勢いに乗れて、点が取れたのかなと思います。僕個人としては、速攻がメインだと思っているので、そこで点が取れたのは良かったと思います。
――狭い角度からのサイドシュートも決めていましたね
こっちが1人退場して5人のときに、上のマークが厚かったので、自分自身は狭くても飛び込もうという気持ちを持っていたので、いいかたちで得点につながって良かったと思います。
――後半は得点が止まる時間帯がありましたが、そこをどう変えたらいいと思っていますか
みんなちょっと後半疲れが出てて、ワセダはディフェンスのチームですけど、足が止まってディフェンスが機能しなかったので、後半はなかなか波に乗れなかったですね。後半も、しっかり前半のように足を動かして、ディフェンスからできるようにしていきたいです。
――去年より(得点後の)パフォーマンスに力が入っていましたね
ことしは上級生にもなりましたし、自分から盛り上げていかないとな、と思って。大げさっちゃ大げさだったんですけど、パフォーマンスをしていました。
――次への意気込みをお願いします
あしたの日大は変則のディフェンスで、あまりワセダが得意としているかたちではないので、しっかり崩していけたらいいかなと思います。
GK羽諸大雅(スポ2=千葉・市川)
――きょうの開幕戦、どのように意気込んで臨みましたか
2年目に突入したので、しっかりワセダの一員として、自覚を持って臨みました。チームとしては優勝、個人としては新人賞を取るという目標を持って臨みました。
――自身のセーブの調子はいかがでしたか
きょうは50点くらいですかね。前半はビッグセーブはなかったんですけど、要所要所で、危なげないキーピングができたと思います。後半は、みんなが疲れてきちゃって、途切れてきたときに入っちゃったなって。そこは反省です。そういう意味で50点ですね。
――後半は間を割られる場面もありました
1試合60分を、フルで、100パーセントの力で走り切るのはきついと思うので、どこで勝負するかというのを明確にしたいですね。きょうの試合は45度のアウトカットイン勝負にしていて、そこをしっかり勝負できたので、ディフェンスは足が止まっていましたけど、及第点かなと思います。
――ディフェンスシステムは一線でしたが、少し高めに当たってサイドが広めに思いましたがその点はいかがですか
東海大に合わせたということではないんですが、それは逆に弱点でもあって、当たりにいかなくてもいいところでいっちゃって裏のポストでやられるとか、そこをスライドでやられたというのも結構ありましたね。意識的にそうやる部分はあったと思うんですけど、僕はあんまりいいとは思わないですね。東海大は基本サイド勝負なんですけど、きょうはあまりサイドが当たらなかったので、アウトカットインにシフトしたって感じですね。
――後半のリズムが悪いときに間を作ろうとしているように見えましたが、意識はしていましたか
前半は6点差あったのに、僕が焦って追いつかれて逆転されて、というのは避けたかったので。3点差とかになってもすぐに得点を取れば問題はないので、こないだ練習試合をしたときからワセダと東海大は少し差があったので、こちらがどっしり構えて戦えば強いのはワセダだと思っていました。なので不安とかはなかったです。間を作ったら一本取れば、普通に差が開いていくと思っていました。
――あしたの日大戦に向けて一言お願いします
きょうフルで出たのでその疲れをあしたに残さないことが一つで、あした(日大)は2対2と、サイドで展開していくというスタイルなので、そこに気を付けることです。(日大の)センターの田中さんのブラインドシュートに対してどう取るのかということと、勝負どころのアウトカットインに対して自分がどう取るのかというのをもう一回ビデオで研究して、備えたいなと思います。