華の早慶戦、笑顔で完勝！岩本軍団有終の美を飾る

　ことしで第６４回を迎えた早慶定期戦（早慶戦）。今回は早大のホーム、東伏見で開催された。この試合をもって引退となる４年生たちは慣れ親しんだ体育館での最後の６０分間に気合いを入れて臨んだ。試合は序盤から早大ペースで堅守速攻の持ち味を存分に発揮。フィジカル・スピード・テクニック全てにおいて慶大を上回り、着実に点差を広げた。後半には相手も意地を見せ反撃を開始したが、地力の差を見せつけ完全勝利。会場いっぱいに詰めかけた観衆も選手たちのプレーに熱狂し、大盛況で伝統の一戦を終えた。

　応援部のにぎやかな声援により会場のボルテージが一気に高まるなか試合は始まった。開始早々、西山尚希（社３＝香川中央）のシュートで先制すると、岩本岳主将（スポ４＝東京・早実）がＧＫの頭上を越す絶妙なサイドシュート、萩原侑（文４＝東京・早実）が相手ＤＦを吹き飛ばしながらのブラインドシュートで続く。練習後、毎日のようにサイドシュートの自主練を積んできた岩本、自らの４年間を「常に上を目指し、もがくような努力をしてきた」と振り返った萩原の得点に、ベンチは全員総立ちで喜びの感情を爆発させた。慶大はＧＫをプレーヤーと交代させる７人攻撃でディフェンスを崩そうと挑んできたが、堅守速攻を最大の武器とする早大には通じなかった。フィジカルを生かした激しい当たりで相手にシュートを打たせることすら許さない。そして、マイボールになるやいなや、速攻に転じる。齊藤凌副将（スポ４＝岩手・不来方）は豪快なシュートで立て続けに得点し、会場を沸かせた。これまで幾度となくチームを勢いづけてきた左腕はこの日も速攻で４得点を挙げ、チームを盛り上げた。そのまま終始リードを保ち、１４－７とダブルスコアで前半を終えた。

ことしのチームの大黒柱・岩本岳

　チアリーダーによる華やかな応援に後押しされ、後半開始。華麗なプレーで常にチームを率いてきたエース川島悠太郎副将（スポ４＝福井商）がローリングで相手ＤＦを振り切り、得点を挙げる。萩原らも果敢に攻め込み、慶大ディフェンスを翻弄（ほんろう）する。そして、１０分が経過すると、いよいよ待望の瞬間が訪れる。４年間、ケガに苦しんできた戸部大悟（教４＝大阪・桃山学院）が代名詞の豪快なディスタンスシュートでこの試合初得点。苦楽をともにしてきたチームメイトは満面の笑みで戸部を称えた。その後も早大がリードする展開は続いたが、慶大も意地を見せポストプレーやステップシュートで連続得点を挙げる。一瞬、流れは相手に傾きかけたが、ここで主将・岩本が強烈なサイドシュートをねじ込む。「ことしは岳さんのチーム」と選手たちが口にするように、キャプテンとして率先して常にチームを盛り上げてきた男の得点にチームは大盛り上がり。そこから相手に１点も許さず、２６－１７と大差で慶大との一戦を制した。そして、早慶戦の連続優勝記録を３１に伸ばした。

ベンチも全員で試合を盛り上げた

　４年生が過ごしてきた時間の偉大さを感じる試合となった。転がるボールに全力で飛び込んだ齊藤の闘志あふれるプレー。フィジカルを鍛え上げてきた萩原のパワフルなディフェンス。戸部の思い切りの良いアウトカットイン。プレーのひとつひとつにこれまで積み上げてきた何千時間の努力の痕跡がはっきりと見て取れた。また、この１年間のチームを象徴する内容でもあった。堅守速攻を軸に、川島がプレーで引っ張り、岩本がチームを鼓舞する。下級生も最上級生の晴れ舞台に全力を尽くした。４年生以外で唯一フル出場した松本光也（社３＝神奈川・法政二）はディフェンスにおいてもシュートにおいても気迫を前面に押し出してプレーした。ベンチから見守る選手たちは得点ごとにガッツポーズを上げ、４年生の活躍を心から喜んだ。苦しいときも嬉しいときもいつも一緒に戦ってきた選手たちが最後の６０分間を惜しむように試合を楽しむ姿に保護者・観客も自然と笑顔になった。早大ハンドボール部という素晴らしいチームの１年間の最後にふさわしい試合だった。

晴れやかな表情を見せてくれた

　早慶戦をもって４年生は引退。社会人としての新たなステージへと踏み出す。岩本は早大で過ごした日々を「これからの人生で大きな武器となる４年間」と語った。言葉では表せないほどの濃密な経験を生かし、今後さらなる飛躍を遂げることを期待したい。そして下級生。４年生がプレーで、言葉で、姿勢で伝えてくれた思いを受け継ぎ、より強いチームを目指して欲しい。来年は石川の地で、徳島の雪辱を晴らしてくれるはずだ。

（記事　田中一光、写真　佐々木一款、尾澤琴美、篠原希沙）