4年生にとって最後の大舞台となる全日本学生大会(インカレ)。今季の男子ハンドボール部の柱ともいえる太田翔主将(スポ4=北海道・札幌月寒)、東江雄斗副将(スポ4=沖縄・興南)、桐生正崇副将(人4=群馬・富岡)の3人に、チームやインカレにかける思いなどを語っていただいた。
※この取材は10月18日に行われたものです。
「結果自体には満足していない」(桐生)
主軸としてチームを引っ張って来た桐生副将
――関東学生春季リーグ(春リーグ)と関東学生秋季リーグ(秋リーグ)を振り返っていかかでしたか
桐生 結果自体には満足していないというのが素直な気持ちです。両リーグともそれぞれ課題が見えたので、いまはインカレに向けてやっていってます。
太田 結果は伴っていないので、現実は受け止めなければいけないと思います。春と秋の違いとしては、終わりに向けて成長できて、どういう風にチームを持ってけばいいのかというのが綺麗に分かったと思います。その部分ではいままでと違って、成長するワセダを見せられたのかなと思います。
東江 納得いく結果が出ていなくてすごく悔しかったのですが、さっきキャプテンが言ったように力を発揮できて成長できたところもありました。持っていた力を出せる試合、出せていない試合があると思ったので、インカレまでにはそれを常に発揮できるようなチームにしていきたいと思っています。
――昨年までと違いシーズン中苦戦を強いられましたがそういった中でのチームの状況はどいったものでしたか
太田 きょねんはインカレで優勝した時のメンバーが揃っている中で、どういう風にチームを組んでいくか、それに対してどんな新しい選手を取り込んでいくかというのが課題でした。ことしはそれが一転して、インカレ優勝メンバーもいない、チームの核となる人が少ない中で、誰が新たにリーダーシップを組めるか、ここ一番で試合に貢献できるかという、本当にボトムの部分が重要でした。なので、チーム育成とゲームの作り方もとにかく違ったなと思います。
――チームで見つかった課題は
桐生 1つは勝ち切れないということです。春秋共に勝てる試合や競った試合、またリードした試合でも最終的には負けてしまうというのが何回もありました。ことしのチームはそういった競った試合に弱いなという印象を持ってます。いまはそれを想定して、点差をつけたら一旦ゲームを切るだとかの練習をしているので、インカレまでには克服していこうと思っています。
――ご自身のプレーを振り返っていかがでしたか
東江 僕はシーズンの初めに膝をケガしてしまって。ケガが完治しないままこれまできていて、その中でやらなきゃいけないというプレッシャーもありました。いま思うと秋シーズンが始まる前まで自分の中では「いけるんじゃないか」という手ごたえがあったのですが、リーグに入ると全然自分の思うようなプレーができず、カベにぶちあたりました。それでもチームのみんなや親など色々な人に支えてもらって、終盤に向けていいプレーができました。春から途中までダメだったのですが、いまはしり上がりに良くなっているので、その調子のままインカレで大爆発させたいなと思っています。
太田 僕はちゃんとベンチに入っているのは2年間くらいなのですが、ことしが一番必要とされている部分も必要とされていない部分も感じられました。春に負けている試合に出てチームを鼓舞できると分かっていながらも、秋リーグでは大事な場面で試合に出る機会もなくて。ディフェンスはもちろん、チームに得点で貢献できないなど現実を突きつけられたなと思っています。これは自分の実力ですが、このまま得点決めないインカレも個人的に意味がないと思っているので、何を必要とするかを考えながらやらなければいけないと思っています。
桐生 調子自体はそんなに悪くないと思っています。春と比べて秋の方が自分自身も調子は良かったです。それをどうチームにいい影響として与えられるのかというところで、もう少し自分の中でできることがあったのかなと思っています。なのでインカレではこのまま自分の調子をキープしつつ、いかにチームにいい影響を与えられるかを意識して取り組んでいきたいと思っています。
――主将副将という立場になって変化したことはありましたか
桐生 お前はいっぱいあったでしょ(笑)。
太田 ありすぎて分かんないな(笑)。
東江 いままで通り自分の言いたいことは言うし、聞かなければいけないところは聞くし、話し合えるところは話してやっていました。でも一つ気づいたことは、最初にまず全体を見渡すようになったということですかね。小中高とキャプテンはやってきていたのですが、大学になってから周りを見ることがすごく多くなったなというのがあります。
太田 ことしに入っての初めての体験として、練習メニューを組む機会が多くありました。テーマを決めることから始めて練習メニューを組んでいくのですが、プレー中にそのテーマからチームの方向性がずれていないかを確認するというのはことしに入って初めてしたかなと思います。いままでは章さん(大城章コーチ、平18人卒=沖縄・那覇西)とか先輩方に任せていた部分もあったのですが、そこに関してはこだわって、せめて自分だけでもチームの約束事を実践しようというのはありました。
桐生 基本的には雄斗と同じで僕も変わってはいないと思います。頼れる人たちが多く抜けた部分もあって最初は不安でしたけど、練習を重ねていくにつれてチームの一人一人が自覚を持って発言してくれました。センターですけど僕だけが攻撃を組み立てるわけではないですし、チームの助けもあるからそんなに変わらずにいるのかなとは思っています。強いて言うならチーム(の調子)が下がった時に意識して声掛けをするようになったのかなという感じですね。
――練習メニューというのは主将がメインで作られるということですか
東江 キャプテンが考えたのを僕たちが見て、そこでちょっとこうした方がいいんじゃないとかは言ったりします。
――練習テーマの大筋は主将の方が決められるというかたちなのですね
太田 そうですね。章さんがいない時はやっていますけど、いっぱい指摘をいただいてみんなで作っているようなものです。
――秋リーグの途中では大城コーチが一時チームから離脱されていらっしゃいましたが、そのときは太田主将がチームを率いるというかたちだったのでしょうか
太田 初戦の国士館大戦での一番の反省として、この展開で章さんならどうしていたかというのを試合中に考えることができなくて。ただそのプレー自体の課題を伝えたりだとか、ピンチの時に盛り上げたりそのことばっかりしていて、結果的に国士舘大には負けてしまいました。競って負けてしまったということですごく反省して、自分がベンチにいながら何もできなかったのが悔しいと思い、その日の夜に章さんに電話しながらすべきことを話し合いました。日体大戦もある程度方向性を決めて、自分がベンチにいるときは支えていこうと思ったのですがあまりうまくいかなくて。章さんの存在ので大きさというか、自分たちがどれだけ依存していたのかというのが分かったと思っています。
――チーム力の向上ということで春から2チーム制を取られていましたがいかがでしたか
太田 僕個人の考えなのですが、普段雄斗や正崇に頼っているメンバーがピンチの時に自発的にリーダーシップを取らなければいけない環境を作ることによって、チームを自発的に動けるような環境にしていこうというのが狙いだったのではないかなと思いました。それが試合に勝てないこともあったのでそこで少しぎくしゃくしたというのはありました。
――チームではどういった戦略でここまで戦ってこられましたか
太田 これまでフィジカルをきたえて頑張ってきたので、そのフィジカルを生かして当たり負けしない体でディフェンスしていこうと考えていました。春秋やってきた一線ディフェンスだったり、秋で雄斗が出てきて1-5ディフェンスになってきた時に、いかに相手に押し込まれず守り切れるかというのを課題としてやってきたと僕は思っています。
チームについて思うこと
リオ五輪予選の強化指定選手に選ばれた東江副将
――4年生のカラーは
桐生 自由みたいな感じじゃないですか。結構みんな自分の意見を持ってる人が多いのかなという感じはします。
東江 すごく自分を持っていて、それが1つになり切れたらすごいと思うんですけど、まだ練習でも1つになり切れていないところがありますね。そこが4年生の難しいところなのかなと思います。
――ではかなりまとめるのは難しいのではないでしょうか
太田 僕は正直信頼し切っているというのがあるので、自分がどれだけ泥くさくかっこ悪いプレーをしても周りが守ってくれると思っています。自由にやってもらっているという部分はありますね。
――昨年と雰囲気は違いますか
東江 ずっと最近は仲良い感じですね。
桐生 こんな感じだよね。キャプテンがからかわれるようにはなりました(笑)。
太田 キャプテンが情けないくらいじゃないですか(笑)。
桐生 たくさんからかわれるからね。笑う場面は多くなったよね。
――後輩の選手も試合に多く出場されていますが、期待する選手はいらっしゃいますか
東江 一緒にプレーしていて、みんな春と比べて確実に成長していると感じますね。みんなに期待しているんですけど、その中でも戸部大悟(教3=大阪・桃山学院)はずっとケガで苦しんでいて、秋リーグは1年ちょい振りの公式戦でした。本当に久しぶりの試合だったけれど、すごく良いパフォーマンスをしてくれていて。それを残り何戦も継続できていて、インカレでも助けてくれるんじゃないかなと思っています。やっぱり後はうちの後輩(伊舎堂博武、社1=沖縄・興南)をやらさないといかんのや(笑)。
桐生 ディフェンスだったら光也(松本、社2=神奈川・法政第二)ですね。秋ちょくちょく出ていて、いま西山(尚希、社2=香川中央)がケガしていて回復も(インカレまでには)微妙なので、光也が主力になってくると思います。練習中からいいプレーもしますし、雰囲気も盛り上げてくれるので光也のことは本当に信頼しています。ガッツもあるので、インカレでもしっかり活躍してくれる選手だと期待していますね。オフェンスでは戸部大悟は僕もとても期待している1人ですが、雄斗が言っちゃったのでもう1人小畠(夕輝、スポ1=岡山・総社)っていう1年生を出します。結構独特のシュートタイミングであったり、個人で打開できる選手だと思うので、まだ1年生なので荒っぽいプレーやミスもありますが、もしワンポイントで(インカレに)出てきたりしたら、得点を取ったり何かチームのためにしっかり貢献してくれる選手なのかなと思って期待しています。
太田 僕からしたら、みんな努力していて向上心も見えているので選びにくいのですが、インカレなどを気にしないのだったら高橋拓也(人1=群馬・富岡)という1年生がいます。入部する前に病気になってしまってなかなかハンドボール部にも1年間参加できなかったのですが、やっぱり同じポジションとして格別にうまいなと思います。自分なんか比にならないくらい位置取りもうまいですし、ポストのシュートの基礎もあります。ようやくワセダにちゃんとしたポストが現れたというか。田中もいますけど、僕と田中は信頼できないんで(笑)。
桐生 おい、田中スポ推(笑)。
太田 信頼できるポストが現れたかなと。すごい努力家なんでこのまま頑張ってほしいなと思っています。
――お互いのプレーの印象は
東江 翔のプレーの印象…。けつがでかい(笑)。
一同 (笑)。
東江 オフェンスでは背がない分、足元付近のボールのキープ力があると思います、ケツを活かしてナイスブロックで(笑)。
太田 ブロッキングなんだけどね(笑)。
東江 下でのキープ力はあると思っていて、あとはそれをしっかりシュートまで決めてくれると期待してのプレースタイルだと思っています。ディフェンスではフットワーク力があって、すごく激しく当ってきて粘り強いなという印象があります。最近AチームとBチームでの試合でもマッチアップをする場面もあって、いつもなめてかかってやるんですけど、最近はガチでやらないといけないなという場面が増えてきましたね。
太田 正崇は僕からしたらすごいんですよ。試合中に落ち着いてゆっくり考えてられるんだろうなと。ゲーム経験が豊富だし判断力もあるのですごく羨ましいです。そういった一面もあるし、実際のプレーでも(ゲームを)作るだけでなく、自分も決めるそのパワーがあると思います。同じ身長なのにこれだけ差があるんだなという思いと、羨ましさもあります。
桐生 雄斗は全ての能力において頭一つ飛び抜けているというのはもちろんなのですが、1対1でディフェンスを抜くだけじゃなくシュートで点を取るという部分で、そうそう守れる選手はいないんじゃないかと思います。フィジカルもあって、そこからまたさばけたりするので個の強さという部分ではオフェンスディフェンスともに他の選手に負けない強さというのがあると思います。
――東江選手は日本代表の合宿に参加されているというお話が有りましたが
東江 11月にリオ五輪予選があるのですが、その強化指定選手に選んでもらって合宿とかに何回か参加させてもらいました。実業団のトップの選手が集まってやる場所なのでいままでにやったことのないような経験もできるし、すごく刺激があって成長させてもらっている場所です。
――東江選手はユニバーシアードの代表の方にも選出されていらっしゃいましたが、世界の大舞台で戦うということでワセダのハンドボールと関係する部分は何かありますか
東江 試合を経験して思ったことはワセダでこれだけウェイトをやっているだけあっていつもはフィジカルというハンデがあったのですが、それで多少カバーできて試合ができていたのかなと思います。その分オフェンスだったら1対1を押されても突破して、得点にまでつなげられるようなプレーが増えたりしました。ウェイトをやるという習慣がこれまでなかったのでそれに関しては助かりましたし、新たに成長できた部分かなと思いました。
「ワセダの強さは『粘り』」(太田)
インカレへの思いを語る太田主将
――最後のインカレになると思いますがそれそれの思いというのはどのようなものでしょうか
桐生 来年からは就職して社会人になるので、ことしが16年間のハンドボール人生の集大成という位置づけでやってきています。そういった面でもハンドボールの最後の大きな大会になりますし、ワセダで2年前に日本一を経験した時のあの感動をもう一度味わいたいと思っています。お世話になった人々に感謝する思いでインカレには臨んで優勝したいとです。
太田 僕は日本一の環境でハンドボールをして、またそれに対して自分が挑戦して成長したいと思ってワセダに入りました。4年間の中で日本一になった経験もありますし、勝てなかった経験もあって(ことしのインカレは)多くの経験の詰めだと思っています。あとせっかく自分がキャプテンになったので、ワセダが優勝することで何か影響を与えられればいいなと思います。
東江 僕は中高と自分の最後の代で全国制覇をしているのですが、自分の代になってからの過程とすごく似ているんです。中学も高校も勝てる勝てると言われていて勝てなくて、悔しい思いをして最後に花を咲かせるみたいな感じでした。いまのワセダの感じもそれにすごく似ていて、だから可能性があるんじゃないかというのが感覚ではあります(笑)。期待してくれている方々、お世話になった方々に感謝の気持ちとしてもう一度優勝して恩返ししたいですし、みんなで笑顔で終わりたいです。
――現在のチームの状況はいかがですか
太田 個人的にインカレ前日までの持っていき方で、勝つか負けるかはだいぶ左右されると信じています。1日1日何かしらの課題が見つかり、次はこうしようという提言が出ているので、すごく実りのある練習期間になっているとは思います。それを一つ一つ改善していけばチームとして成長するのは間違いないですし、そのために練習前のアップだったりチームの雰囲気作りは本当に大事にしたいので、そこはしっかり4年生が意識していると思います。いまは毎日がすごく楽しいですね。
桐生 全体的にいい練習ができていると思ってます。インカレまで3週間あっていまはまだ強度を上げる期間なのですが、みんな疲労がたまっている中でもモチベーションは高く保っているのかなと感じています。体は正直なので疲労がたまっている分ミスやらしくないプレーも出ますけど、いままでのみんなとは違ってモチベーションの部分ではしっかり保っていると思います。
――トーナメント表のほうも発表されましたが相手を意識しての練習もされていますか
桐生 若干意識はしてるよね。
東江 色々な想定をしてやっています。
――今回のインカレは太田主将の出身地である北海道で行われますが特別な思いなどはありますか
太田 1番は家族や地元の方、恩師など支えてくださった方々に、生で見てもらえる、恩返しの場があるというのは感謝しなければいけないと思っています。北海道の強くないチームから出てきた自分がワセダで頑張っているということを、次の世代の人たちが見てどういう風に受け取ってくれるかは意識しています。
――インカレでのご自身の役割は
東江 勝たせること。
太田 ゲームをコントロールする立場なので、もちろん誰よりも相手チームのことを知るというのは僕の役目だと思っています。試合の中でもどういった戦略であったりだとか試合の流れを読んでフォーメーションを使ったり、調子のいい選手がいたらその人を積極的に出すだとか、チーム全体を見渡して判断することが大事なのかなと思っています。最終的には勝ちにつなげられるようにやっていきたいなと思っています。
太田 少し抽象的なのですが、ことしのチームの強さは『粘り』なんですよね。いい場面でも粘ってさらに点差を広げたり、悪い場面でもこらえてこらえて最後に食いつくというのが必要だと思います。一見してかっこいいイメージではないのですが、チームの全員に粘るという意識を持たせるのが僕は一番大事だと思っています。
――では優勝のカギというのは何でしょうか
東江 いかにまとまって早く波に乗って、そのまま突っ走れるかじゃないですかね。トーナメント戦という負けたら終わりの一発勝負では、いままで経験した中だとチーム力で爆発するチームが優勝すると思っています。
太田 1回戦の出だし10分だと思います。
――最後にインカレへ向けての意気込みをお願いします
桐生 優勝というかたちでお世話になった方々に恩返ししたいと思っています!
太田 ことしのワセダが優勝することで、学生スポーツに大事なものが何かを証明できればいいなと思っています。
東江 優勝していろいろな方々に恩返しをして、それぞれの道のステップにつなげていきたいです。頑張ります!
――ありがとうございました!
(取材・編集 藤巻晴帆、後藤あやめ)
全国の頂点に立つ準備は万端です!
◆東江雄斗(あがりえ・ゆうと)(※写真)
1993年(平5)7月6日生まれ。183センチ。沖縄・興南高出身。スポーツ科学部4年。おすすめのご当地グルメはタコライスだそうです。中でも「キングタコス」というお店がおすすめだとか。ですが家で食べるタコライスが1番だと話す東江選手からは家族想いな一面も伺えました!函館では優勝というかたちでお世話になった人たちへ恩返しをしたいという熱い思いを語ってくださいました。
◆桐生正崇(きりゅう・まさたか)(※写真)
1993(平5)年4月10日生まれ。171センチ。群馬・富岡高出身。人間科学部4年。ホルモンあげという富岡のB級グルメがおすすめだそうです!最後まで悩みながらも普段の取材同様に丁寧に答えてくださいました。インカレでは常に冷静に攻撃を組み立てる姿に注目です。
◆太田翔(おおた・しょう)(※写真)
1993(平5)年9月24日生まれ。173センチ。北海道・札幌月寒高出身。スポーツ科学部4年。生まれてからずっと家族で通っているという「かみや」というお店をおすすめしてくださいました。そこのカキのたたきが絶品だそうです!色紙を書いている最中にもチームメイトから「からかわれ」ていた太田選手。チームの仲の良さを感じられました。