立ち上がりに苦戦、惜敗を喫す

男子ハンドボール

 関東学生春季リーグ(春季リーグ)優勝のため、もう負けられない早大は日体大と対戦。勝利への気持ちとは裏腹に厳しい一戦を強いられた。前半は相手の得意とする速攻に圧倒され、失点を重ねてしまう。開いた点差を埋めようと食らいつくも、4点ビハインドで前半を終える。迎えた後半は攻勢に転じた。ルーキー伊舎堂博武(社1=沖縄・興南)の活躍が光り、一気に相手に詰め寄っていく。一進一退のゲームが続いたが、思わぬかたちで最後に決勝点を奪われ悔しい敗戦を喫した。

 「敗因は前半のスタート」と大城章コーチ(平18人卒=沖縄・那覇西)が語るように、立ち上がりの悪さが如実に現れた。序盤から相手の速攻や切り替えの早い攻撃に翻弄(ほんろう)されてしまう。ペースを乱された早大はオフェンスが噛み合わずミスを連発。気付くと点差は広がり、苦しい状況に追い込まれた。しかし、途中出場の伊舎堂が攻守で活躍を見せる。19分に相手のディフェンス2枚を破りシュートを決めると、22分にはパスカットからの速攻でゴールを奪取。この攻撃を皮切りに、26分には西山尚希(社2=香川中央)が果敢にゴールを狙い相手のファールを誘い出す。それに伊舎堂も続き、相手2選手が退場。7対5と早大に有利な状況を作り出した。しかしここぞというところでミスを招き、追い付くことはできず16-20で前半を折り返した。

気持ちのこもったプレーが際立った西山

 巻き返しを図るべく臨んだ後半、前半で健闘を見せた伊舎堂を中心に攻撃を仕掛けていく。9分、川島悠太郎(スポ3=福井商)のカットボールを受けた桐生副将のシュートで同点まで追い上げると、その直後太田翔主将(スポ4=北海道・札幌月寒)がポストから意地の一本を放ち逆転。流れをつかんだと思われたが、ここからは1点を争う展開となる。高い位置からボールマンを潰そうと試みるも次第にディフェンスが連携を失い、いま一つ踏ん張ることができない。試合を左右することとなったのは、同点で迎えた試合終了30秒前。タイムアウトを取り攻撃を確認して臨んだ早大であったが、相手の強いプレスに動揺したのかパスの精彩を欠き、逆速攻を狙われてしまう。すかさず守備へと戻った西山のファールにより、ノータイムフリースローを献上。観客の願いも虚しく1点を決められ、32-33で試合終了となった。

相手GKの意表を突いたペナルティースローで会場を沸かせた川島

 チャンスが無かったわけではない。幾度となく点差を広げる機会を目の前にしながらも、あと一歩が及ばなかった。この敗戦で優勝は厳しい状況となったが、下を向いている時間はない。まずは目先の勝利へ――。「自分たちがチャレンジするつもりでやらないといけない」(太田主将)。ひた向きに上位を目指すべく、早大の挑戦はまだ終わらない。

(記事 中澤奈々、写真 後藤あやめ、佐藤凌輔)

関東学生春季リーグ
早大 32 16−20
16−13
33 日体大
スタメン
GK 中野裕通(スポ4=兵庫・神戸国際大付)
CP 桐生正崇(人4=群馬・富岡)
CP 川島悠太郎(スポ3=福井商)
CP 齊藤凌(スポ3=岩手・不来方)
CP 西山尚希(社2=香川中央)
CP 田中佑星(スポ4=兵庫・神戸国際大付)
CP 田崎裕晃(スポ4=神奈川・桐光学園)
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大城章コーチ(平18人卒=沖縄・那覇西)

――きょうの試合を振り返っていかがでしたか

前半の出だしが悪かったですね。1週間日体大相手にセットオフェンス、バックチェック、セットディフェンスこの3つをしっかりやりましょうという話をして臨みましたが、最初の出だしでバックチェックの部分で集中できずに大きく点差が開きましたよね。敗因は前半のスタートです。

――後半のスタートで一気に点差を縮められましたがそれは思い通りでしたか

そうですね。ハーフタイムにしっかりディフェンスをしようという話はしたので、そこを彼らが意識したのか、また相手に徐々に合ってきたというところもあると思うんですけど、後半の出だしのディフェンスは非常に良かったと思います。

――後半には1対1での守備が目立つように見えました

1対1で守るという戦術は取っていないので、これはディフェンスとしては失敗でしたね。1対1になると一人一人のスペースが大きくなってその間を割られて失点したケースが何度か見られました。やはりそれは我々がやってきたディフェンスとは違うと思います。高く出るケースもあると思いますが、隣の選手とのカバーリングだとかそういったことでケアしていこうと話をしていたんですけども、本当に1対1になってしまいましたね。

――最後のタイムアウトを取った時にはどのようなお話をされましたか

やるプレーの確認をまずしました。ラスト30秒あるかないかの時に(タイムアウトを)取りましたが、ラスト15秒まではパスを回す。そこからスピードを上げてプレーしよう、と。ただワンツーマンで付いてくることは想定内だったので、ワンツーマンで付かれたらポストプレーヤーの田中(佑星、スポ4=兵庫・神戸国際大付)がサイドに行って真ん中で5―5をやろうという話まではしていたんですけど、思いの外相手のディフェンスのアグレッシブさが我々の選手を動揺させてしまって、パスカットからの逆速攻を食らったという感じですかね。

――次戦の相手・国士舘大の印象はいかがですか

国士舘大はきょうの試合、余裕を持って気持ちよく勝っているので、そのままの勢いで挑んでくると思います。我々も敗戦はしましたが、前半のスタート、そしてディフェンスと敗因は明確なので、そこをあしたしっかりと修正していくだけですね。

太田翔主将(スポ4=北海道・札幌月寒)

――このGWの3連戦がひとつ山場だと思いますが、この山場に向けてチームで取り組んできたことはありますか

先週の日大戦で真ん中の4対4が守れなくて負けてしまったっていうのがあったので今週はそこの修正と、変わらずウェイトトレーニングで体作りを継続して自分たちなりに調整して挑みました。

――セットディフェンスでなかなか守れずに苦しめられたという印象ですが

練習からもあまり守れていた感じがなかったので、その守れていない時にどうして守れていないのかちゃんと考えられなかったのが原因かなと。それをチームで話せなかったり僕が指摘できなかったりとか、チーム全体で解決しようとしなかったのが今回に結び付いたのではないか思います。

――春季リーグ優勝がかなり遠のく一敗となってしまいましたが、この結果についていかがですか

もう優勝の可能性はほぼ0になってしまいました。このまま優勝とか言う前に下位リーグとか2部降格になる可能性もあるので、あさってから戦う国士舘大も東海大も勢いがあるチームですからそこに負けて下位に落ちないように切り替えてやりたいと思います。

――きょうの対戦相手の日体大に対して対策などはありましたか

対策と言うよりは課題だった4対4をメインにやっていて、あとはリスタートも早いのでバックチェックの練習もしました。ただ、きょうの試合では前半から相手のプレーに対応できずにズルズルと最後まで引きずってしまったっていう印象ですね。

――我慢するべきところではしっかり我慢できていたかなと言う印象もあるのですがそれでも最後は1点差で負けてしまったということで、どういった点に課題があると考えますか

章さん(大城コーチ、平18人卒=沖縄・那覇西)もよく言うのですが、うちのチームは点取り合戦になったら勝てないっていうところですね。いかに点数を取ってそこで守れるかっていうのが課題でした。セットオフェンスとセットディフェンスで軸を分けていて、セットオフェンスで点を取れても守れないと自分たちの良さは出ないと思っているので、得点を奪って盛り上がってそのあとも守ってまた盛り上がって一本つくれればよかったですね。

――前半の序盤は点取り合戦になってしまいましたが、あの序盤の点差が響いてしまったのでしょうか

自分たちは立ち上がりがいつも悪いんですけど、その悪いのを早め早めに止められることができたらもっと良い流れに持っていけたかなと思います。

――後半は太田選手自身も逆転の一本を決めるなど活躍がありましたが、自身のプレーを振り返っていかがですか

伊舎堂(博武、社1=沖縄・興南)が今回も一対一でキレていたので、自分がそのスペースつくってあげようと考えていました。下で相手をかき乱してスペースをつくっていたんですけど、シュートチャンスももらったのでそこはチームのために外せないなと思い死ぬ気で決めました。

――残りの2連戦への意気込みをお願いします

完全にチャレンジャーなので相手も格上だと思ってやります。成績も実績も向こうの方が残してきていて、自分たちがチャレンジするつもりでやらないと食われると思っているので、変に大きい気持ちを持たず一戦一戦集中して臨んでいきたいと思います。

桐生正崇副将(スポ4=群馬・富岡)

――前節この連戦が山場だと言っていたということで、どんな意気込みで臨みましたか

優勝するためには1敗もできない状況だったので、負けないという思いで迎えました。

――日体大は速攻を特徴とするチームですが、その対策は

しっかり中から止めるという、バックチェックはチームとしてやろうと話していました。

――前半はパスミスが目立ちましたが

若干、思い通りのオフェンスができなくてパスミスであったりキャッチミスというイージーなミスが続いてしまったのかなとは思っています。

――その思い描くオフェンスとは

できるだけ両45度が大きく動き、走り込んで良いシュートが打てることであったり、それに合わせてクロスでサイドまでずらして、コートの幅を広く使って攻めることが理想的なオフェンスかなと思います。

――前半相手にリードを許してしまった原因は

バックチェックですね。相手の速攻が早いというのは分かっていたのですが、リスタートであったり、速攻であったり相手の両サイドに走られて、ワンパスで決められてしまったというのが20点という失点の理由だと思います。

――ハーフタイムにチームで話したこと

セットディフェンスになればある程度守れるというのがあったので、相手の速攻を抑えることと、4点差をラスト10分までに焦らずに追い上げて行こうという話をしました。

――後半のDFは高い位置からボールマンにプレスしていましたが

博武(伊舎堂、社1=沖縄・興南)が2枚目に入った時に、彼は運動量があるのでキーマン中心に潰すように好きに動かして、下のところを5人で守って逆45度で勝負するのがディフェンスの意図だったのですが、ちょっと全員が上がりすぎてしまいました。そのせいで1対1の幅が広くなってしまい、やられたのかなと思います。次節ではもう少しディフェンスのラインを下げるようにしようかなと思っています。

――点数が追いついてから1点を争う展開になりましたが、その中で考えたこと

2点差に離す場面というのが何度かワセダにチャンスはあったのですが、そこでシュートミスなどで1点から2点に離せなかったのが、最後までズルズルいってしまって最終結果の負けにつながったと思います。

――その中でも桐生さんは冷静にシュートを打つ印象を受けましたが

自分とキーパー、他何人かの4年生が試合に出ていて、その四年生がブレたらチーム全体もぶれると思います。両45度下級生だったので自分が落ち着いてプレーして、下級生を自由にやらせてあげようという考えはありました。

――試合終了30秒前でのタイムアウトでは、どんな話をされましたか

多分相手が上がってくるなという予測があったので、最初は大きい動きからの展開というのを意識してやろうと話していました。予想通り上がってきたので、焦らずに攻めようという考えだったのですが、そこでフリースローになった時まだ10秒あったのですが、西山が焦ってああいった展開になってしまったのかなと思います。そこで声掛けできなかったというのが自分の責任でもあるなと感じています。

――この敗戦をどう受け止めますか

自分たちには優勝がなくなったので、優勝、優勝言ってますけど、2敗1分けという結果を残してしまいました。まず目先の勝利を貪欲にこだわりたいなと思ってます。

――次節、国士大戦に向けてチームで改善すべきことは何ですか

ディフェンスを安定させるということです。きょうの日体大は攻撃力はありますが、日体大相手に得点争いをしていては勝てないと思います。ワセダがどのチーム相手にも得点の争いをしたら勝てないということはわかっていることですし、国士大とかには強力なバックプレイヤーがいるので、もう少しディフェンス力を安定させたいなと思っています。

川島悠太郎(スポ3=福井商)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

もう負けられない試合でしたが、前半に点を取られすぎて、流れが良くなかった中で、大事なところでの自分のシュートミスが目立ってしまいました。そこで流れに乗れなかったというのが負けてしまった理由なのかなと思います。

――後半は前半の点差を一気に詰めました

前半に点を取られすぎたので、ディフェンスをもう一度修正しようということで、真ん中を固めてやりました。それがしっかりできたのだと思います。

――最後のタイムアウトではどのような話をされましたか

簡単なオフェンスの確認と、取っても取れなくても戻りまでの意識だけはと話し合いました。

――相手チームの速攻に対しては何か対策はありましたか

日体大はずっと速攻が速いチームだったので、練習からそのような意識はありました。

――川島選手のペナルティースローのフェイントは前々からやろうと思っていたのですか

海外の選手がやっているものを練習からやったりはしていました。

――きょうの試合で試してみたのですね

そうですね。キーパーも出てきたのでやってみようかなと思いました。

――次の国士舘大戦への意気込みをお願いします

優勝は厳しくなってしまいましたが、一個一個大事にしていきたいので、次は思いっきりやって勝ちたいと思います。

西山尚希(社2=香川中央)

――きょうの試合を振り返っていかがでしたか

前半はロングシュートが決まっていて良かったですが、何本か外した部分もありました。全部決めていれば勝っていたと思うので反省です。

――気持ちを前面に出したプレーが印象的でした

まだ雄斗さん(東江雄斗副将、スポ4=沖縄・興南)が出られないという中、きょうも負けられない状況でした。自分がどうにかしなくちゃいけないという風に思っていたので、最初から気持ちは出していきました。

――チームの雰囲気はいかがでしたか

最初点差を付けられたとき、みんなで声出してディフェンスから速攻で巻き返せたのは良かったと思います。

――開幕戦から連続で試合に出場して得たことはありますか

関東学生春季リーグ(春季リーグ)の最初の方は試合に出てもチームに全く貢献できないという印象だったのですが、きょうは大城さん(大城章コーチ、平18人卒=沖縄・那覇西)からもいままでの試合で一番良かったと言われたのは良かったです。でも結局勝てなかったので、そのことに関してはまだまだだと思いました。

――個人的に変わったと感じる部分はありますか

きょねんと比べて試合に出させてもらえる機会が増えました。理由としてはディフェンスで3枚目を守れるようになったということと、オフェンスでもボールをもらう前の動きができるようになったということですね。

――今回の相手・日体大について対策などされていましたか

日体大がシュートを決めた後のリスタートが速いことは事前から分かっていて練習もしてきました。それでもシュートを決めた後にリスタートで得点されてしまったので、練習の成果が出ていないと僕は思います。

――この試合の敗因は何だと思われますか

僕がシュートを決められなかったことです。最後のディフェンスに関して周りは気にするなと言ってくれていますが、そこから1点を返す力があれば勝てたと思っています。4年生の優勝が無くなってしまったということに関しては責任を感じていますが、ここで切り替えて1点を取れる選手になりたいと思います。

――次戦に向けての意気込みをお願いします

優勝は厳しい状況ですけれど、そこからどこまで順位を上げていくかが大事だと思うので、1点でも多く勝って、自分もまた気持ちを前面に出して頑張っていきたいと思います。