【第4回】インカレ直前特集『High voltage』玉城慶也主将×東江雄斗

男子ハンドボール

 全日本学生選手権(インカレ)直前特集も最終回。最後を飾るのは玉城慶也主将(スポ4=沖縄・興南)と東江雄斗(スポ3=沖縄・興南)の2人。主将とエース――。見据えるのは「日本一」、ただそれだけだ。『三冠連覇』という偉業を果たし有終の美を飾るため、どんな意気込みで臨むのか。その心境に迫る。

※この取材は11月5日に行われたものです。

「メンバー的には圧倒しなくてはいけない」(東江)

大一番に向け気合いを入れるため髪を短くした東江

――インカレを目の前に控えて、いまのチームの雰囲気はいかがですか

玉城  春秋の課題がはっきり見えて、それを修正している段階ですね。練習試合も何回かやっていて、きのうの明大との試合でも良い成果は出ていたので、残り2週間と短いかもしれないですけど、十分完成できる雰囲気です。インカレまでにはもっと良いチームになると思います。

――きのうの練習試合の結果は

玉城 前半で大きく点差を広げて、後半はメンバーを入れ替えて差を縮められはしましたが、出だしの部分は良かったと思います。課題の底上げっていうのは以前よりは仕上がってきたんじゃないかなと。

――春と秋のリーグ戦振り返って、印象に残っている試合はありますか

玉城 そんなないかな(笑)。

東江 負けた試合とか引き分けた試合っていうのは、強く印象に残っています。でも全体で見て、みんな代表練習とかで全員そろって練習した回数は少なかったんですけど、その少ない回数でもリーグ期間中にどんどんレベルアップしていった実感はありました。

――関東学生春季リーグ(春季リーグ)と関東学生秋季リーグ(秋季リーグ)では、それぞれ1敗ずつしてしまいましたが、その両方は一試合通して雰囲気があまり良くなかったという印象がありますが

玉城 ミスが続くとすぐ立て直せないという悪い部分が負けたときと引き分けのときは出るので、ムードを自分たちで変えなくちゃいけないんですけど、そこを切り替えられないのが課題ですね。春と秋リーグ終わったあとのミーティングでは、精神的な切り替え、プレー的な切り替えをしっかりやろうというのが出たのでインカレは大丈夫じゃないですか。

――先日は早関定期戦がありましたが、振り返っていかがですか

玉城 向こうには土曜(11月1日)の朝に着いて、午後は大経大と関大と練習試合をして、日曜日に早関戦でした。関西の3チームとやれたっていうのは良かったんじゃないですか。やっぱり関東のチームとは違った攻撃だったり、リズムがあったりするので、インカレ前に経験できたっていうのは大きいと思います。

――秋季リーグは上位が混戦になって、その中でも早稲田が頭一つ抜けているといった印象ですがいかがでしょうか

東江 メンバー的には圧倒しなくてはいけないメンバーがそろっていると思います。でもそこで、上位チームと当たったときに引き離せないっていうのがリーグの課題でもあったかなと。

玉城 雄斗が言ったように、メンバー的にも他のチームとは差がないし、むしろ上に立てるメンバーだと思っています。でも、さっき言ったように切り替えができない部分が、競るときの自分たちの悪いところなので、それを直していけばどのチームにも勝てるんじゃないかなと思います。

――ことしは昨年よりもさらにディフェンスに力を入れているということで、その成果は発揮されたと感じていますか

玉城 毎年ディフェンスの練習はやっているんですけど、ことしはウェイトトレーニングが多くなって、その成果でみんなパンプアップしているので、それがディフェンスに生きているのかなと思います。

東江 ウェイトに力を入れてパンプアップしたのをディフェンスに生かせるようになってから、守り方にも一工夫、二工夫加わってさらに良くなったと思います。練習もレベルの高いところでやれているので、全員が互いに高め合うことが良いディフェンスにつながっているんじゃないかなと思います。

――特に強い当たりやセットディフェンスは昨年よりも強みになっているといった印象ですが、夏もウェイトトレーニングをしていたんでしょうか

玉城 夏だけじゃなくて春から筋トレしていて、その成果っていうのはすぐには出ないので、秋季リーグには効果は出ていましたね。

 全員で戦う 

――後輩か同期でこれからの活躍に期待している選手は

玉城 福岡(佑哉、スポ3=北海道・札幌月寒)と太田(翔、スポ3=北海道・札幌月寒)かな。北海道の二人ですね。福岡は秋季リーグで3枚目を守るようになって、戦力として計算できるくらいの選手になってきているのでこれからが楽しみです。太田も2年まであまり出てなかったんですけど、3年生になって自分の考えを僕に伝えるようになりました。そういう主張は大事だと思うので、きっと良い選手になるんじゃないですかね。

東江 誰だろうなー。やっぱりいま言った二人は、意識というか、ハンドボールに対する考え方がこの1年ですごく変わりましたね。福岡はディフェンスでは要としてもやっていけるし、太田翔もことしはレギュラーを取りたいってことで積極的にやっていって、その成果がいま出始めていると思うので期待しています。あとは、一年の西山(尚希、社1=香川中央)や、齋藤(凌、スポ2=岩手・不来方)もインカレではチームを助けてくれるんじゃないかなと思っています。

――ことしは1年生もリーグ戦に出場する機会が多かったですが、それについてはいかがですか

玉城 西山はオフェンスだけ、松本(光也、社1=東京・法政二)はディフェンスだけっていうイメージで。試合に出たときに自分の仕事をやろうというのは伝わるんですけど、なかなかプレーでそれを表現するのは難しいと思うので、僕ら上級生が出しやすい環境をつくらないといけないのかなと春は思っていました。秋は、自分たちのプレーができていたのかなと見ていて思いますね。

東江 1年生ってやっぱりいろいろプレッシャーがあると思うので、僕らがやりやすい環境づくり、雰囲気づくりを意識しながらやっていました。いまは伸び伸びとプレーができているんじゃないかなと思います。

――みなさん学年通して仲が良いといった印象ですが

玉城 僕とか雄斗が1年生の時は4年生と絡むっていうことは、正直言って全くなかったですね。それで僕らは、学年関係なく何でも言い合えるチームにしたいと思っていて。まず4年と3年が仲良かったっていうのもあって、それで3年と2年… と、少しずつ広がったって感じですね。昔に比べたら仲良いかなと(笑)。

東江 僕が1年生で入ったときも、全然先輩に圧倒されてうまく自分のプレーもできないし、伝え切れないっていうのがありました。2年生になって肩の荷が降りたっていうのもあったんですけど、上の代がどんどん雰囲気を良くしてくれて、僕自身も小中高と上下関係なしにやってきていたので、いまの雰囲気は良いと思います。3、4年生は普段もフレンドリーな感じです(笑)。

――第22回世界学生選手権では山田選手(平26スポ卒=現・トヨタ自動車東日本)や岩下選手(平26スポ卒=現・トヨタ紡織九州)とお会いしていかがでしたか

玉城 半年ぶりに会って一緒にプレーして、実業団の選手になると体も大きくなったりして、また一段と良いプレーヤーになっているんじゃないかなと。学生のときと実業団の選手になってのモチベーションの違いっていうのは、凄いなと感じました。

東江  実業団に入って、また違った人に見えるというか。考え方とかもプレーに出るし、学生と実業団との差じゃないですけど、そういうのが見られて刺激になりました。

――世界と戦って感じた日本との違いとかはありますか

玉城 簡単に言うと、体格の差だけですよね。スペインの試合とかは前半は僕らがリードしていて、最終的には体の大きいポストの選手に全部やられたって感じで。それだけだと思います。

――体格以外の部分は競っていたっていうことですか

玉城 スピードは僕らの方が絶対に上なので、いかに守って逆速攻につなげるかっていうことでしたね。

――世界の戦い方を見て、印象とかは

東江 横の動きっていうのは僕らの方が勝っていたので、そこにプラスで縦のスピードを生かしていけば全然戦えると思いました。相手は最初リードされていても焦らずじっくり攻めてきて、僕らはまだ勢いだけでどうにかしようとしてしまい、結局相手の攻め方を攻略できないまま60分が終わってしまったって感じですね。あ、負けちゃったみたいな。ハンドボールの戦術、戦い方っていうところが、スタッフ選手合わせて向こうの方が上だったのかなと。

――玉城選手はどちらの実業団に行かれるのですか

玉城 トヨタ車体というところです。

――おめでとうございます!そのお話があったとき、どんなお気持ちでしたか

玉城 そういうお誘いがあったのはうれしいです。この前の第69回国民体育大会でも2位になった上位のチームなので、そこでらいねんからプレーできるっていうのはすごく光栄です。

――お互いのプレーの印象は

東江 慶也先輩は昔から裏をついてくるのが得意なんですよね(笑)。なに考えているんだろうなあと観察していても分からないので、相手からしたらやっかいだな、と感じていると思います。

玉城 雄斗とは長いこと一緒にプレーをして、絶対的エースとずっと言われていて、チームを引っ張る選手ですね。全てがバランス良くできる選手っていうのは普通に数えてもあんまりいないので、そこは素晴らしいと思います。

――いつから一緒にプレーをしていたんですか

玉城 中学校からですね。

――ちなみに先日、お二人の母校である興南高校も高校三冠を達成しましたが、やっぱりうれしいですか

玉城 それはうれしいですね(笑)。

東江 やっぱり母校だし(笑)。 小学校からちょっとだけど一緒にやっていた後輩たちもいたりして、うれしいですよね。

――昨年から変わったこととか、変えようと意識したことは

玉城 きょねんのチームが僕的にはやりやすかったので、変える必要がないのかなと。そのまま継続して、新しい1年生には慣れさせるだけでいいのかなと思っていました。変えようというのはなかったです。

「1つずつ倒していくだけ」(玉城)

インカレへの意気込みを語る玉城

――お二人にとってインカレとは

玉城 唯一、学生の日本一を決める大会ということで、関東で優勝しているからってそこでも優勝できるわけではないので、そういった面では楽しみですね。4年間ずっと決勝の舞台に立っているんですがそのうち一度しか優勝できていないので、ことしは連覇も懸かっていますし、最後の年なので絶対に獲りたいっていうのはあります。

東江 全国にワセダの強さを知らせることができる大会だと思うので、すごく特別な大会だと思います。

――昨年のインカレを振り返っていかがですか

玉城 自分は2年のインカレでケガして、3年のインカレで復帰して。公式戦としては久しぶりの出場だったので、最初は慣れる感じで出ていましたけど、やっぱり3回戦くらいから緊張感も出てきて、久しぶりにそういった緊張感を味わえました。

東江 1年生のころは途中出場とかだったんですけど、2年生になってから中心というかスタートで出させてもらって、不安や緊張ではなく楽しみとかワクワクが多かったです。

――プレッシャーを感じたりは

玉城 そんなに…。 自分的にはないですね。楽しみっちゃ楽しみだし。優勝候補とは言われてもリーグ戦では負けているわけですから、他のチームからするとチャンスはあると思っているはずなので、それを1つずつ倒していくだけですね。

――勝ち上がるためにはチームになにが必要になると思いますか

玉城 インカレはやっぱりムードじゃないですかね。どうやって盛り上げていくかだったり、試合の終わり方だったり、全てにおいてのムードづくり。次の試合のためにどうつなげるかが、インカレの5連戦においては重要だと思います。

東江 一発勝負なんで雰囲気っていうのは一番大事だと思うし、あとはチームワークというかチーム全員でやること。試合に出る選手一人一人の強さを合わせること、まさに総力が大事になると思います。

――インカレで自分に任された役割はどういったものだと

東江 エースという立場から得点を量産することも当たり前だと思うんですけど、上級生になったので声を掛けたり、チームを盛り上げたり、そういったリーダーシップ的な発揮も必要だと思っていて。そういうところも、僕はやっていかないといけないんじゃないかなと思います。

玉城 キャプテンとしての役割は絶対としてやらないといけないし、雄斗が言ったように盛り上げるときは盛り上げて。自分にとってはチームが悪くなったときにどう切り替えられるかっていう一声、それを大事にしたいです。

――では、最後にインカレへの意気込みをお願いします

玉城 自分たちの目標である『三冠連覇』まであと1つなので、一試合一試合を最後の試合だと思って大切にやって、全員で勝ちたいと思います。

東江 『三冠連戦』っていう目標まであと1つ。さっき言ったように全員で勝ちにいって、大好きなハンドボールを楽しんでやっていきたいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 細川香衣、佐藤凌輔)

インカレに懸ける意気込みを色紙に書いていただきました!

◆東江雄斗(あがりえ・ゆうと)(※写真左)

1993(平5)年7月6日生まれ。183センチ。沖縄・興南高出身。スポーツ科学部3年。いまやチームに必要不可欠な存在に成長した東江選手。ことしも沖縄の方言で色紙に一言書いてくださりました。書いた言葉は「ちゅーばー」。これは、良い意味で“ばかになる”といった意味だそうです。インカレでもその得点力で、必ずやチームを勝利に導いてくれるはず!絶対的エースの本気を全国に知らしめてください!

◆玉城慶也(たまき・けいや)(※写真右)

1992(平4)年11月21日生まれ。178センチ。沖縄・興南高出身。スポーツ科学部4年。ほかの対談では、琉球のシーサーとも呼ばれていた玉城選手。最初は色紙に「なんくるないさー」と書こうとしたところを、やっぱりやめて「三冠」と書いていただきました。これまでワセダをけん引した主将は、日本一の懸かった大一番でも最高の活躍を魅せてくれること間違いなし!全力で勝利を目指します!