【第1回】インカレ直前特集『High voltage』福岡佑哉×太田翔×齋藤凌

男子ハンドボール

 ことしのテーマである「チームの底上げ」。全日本学生選手権(インカレ)ではその成果が試される。そして太田翔(スポ3=北海道・札幌月寒)、福岡佑哉(スポ3=北海道・札幌月寒)、齋藤凌(スポ2=岩手・不来方)の3人はそれを体現すべく、これまで練習に励んできた。結果を残し、勝利に貢献するためにはなにをすべきか――。任された役割と、意気込みを伺った。

※この取材は11月11日に行われたものです。

「前の試合出て次の試合出られないなんて当たり前」(太田)

一つ一つ丁寧に返答する太田

――まずは関東学生秋季リーグ(秋季リーグ)を振り返って

齋藤 秋季リーグはケガから復帰明けだったということもあって、ベンチに入ったり入らなかったり悔しい思いを多くしました。

太田 春の時にポストプレーがあまりなかったことが課題になっていて、秋は回数を増やそうと。それでもそんなに増えたわけではありませんが、かたちとしてつながったこともあったのでインカレでもうまくいけばいいなと思います。秋はチャンスをもらったから結果を残したいなと思っていましたが、そんなに甘くなかったですね。

福岡 荒木監督(進監督、平5人卒=熊本商)や大城コーチ(章コーチ、平18人卒=沖縄・那覇西)コーチからはディフェンスでチームの力になれ、ということを言われていました。それは自覚しているので最後の筑波大戦ではスタメンから出させてもらって、前半は結構自分の力を出せたとは思いましたが、後半になるにつれてムラが出てしまったので、インカレに向けて自信をつけるとともに、正確さを上げていこうと思います。

――特に印象に残っている試合はありますか

齋藤 明大戦はスタートから出たのですが、何をやればいいのか分からず、声を出すこともできず何もできないまま代わってしまって、とても悔しい思いをしました。なので、印象に残っています。

太田 自分も、出ていない明大戦ですね。ベンチ外で、負けた試合に出られない状態で、チームの役に立てなかったことで自分のレベルの低さが分かりました。他の試合に出ることができていても肝心な試合でチームの力になれないというのがベンチから外れて初めて分かったし、ベンチで盛り上げているのとベンチ外で見ているのとでも何かしらカベがあって。それでこそベンチに入ったときはみんなのためを思ってやろうと改めて思いました。

福岡 やはり筑波大戦が自分の中で大きかったと思います。1試合通して出たというのが初めてだったので、それはすごい大きな試合経験になりました。

――秋季リーグを迎えるまでの調整はそれぞれいかがでしたか

齋藤 ケガをしていたので筋トレとリハビリを頑張っていました。

太田 僕らは代表組がいない中での練習でしたが、自分たちの大きなチャンスだと捉えて、練習試合も自分たちが軸となって臨んでいたので、充実した練習ができていたと思います。

――福岡選手は6月の第2回U-22東アジア選手権の代表に選出されていましたが

福岡 自分がこのような舞台に立てていると思わなかったので、人生の中でも大きな経験でした。夏の練習は自分がそこで経験したことをチームに還元しようと思って臨みました。

――どんなことを意識していつもプレーしていますか

齋藤 とりあえず思いきってプレーしてこいと言われるので、前を強く狙う姿勢を意識しながらプレーしています。

太田 自分も5分間でつぶれてもいいから全力を出してこいといつも言われていて、自分が30分間出る必要はないと思っているので、その一本一本を集中して全力でプレーすることを意識しています。

福岡 3枚目のディフェンスですね。主力がずっと出ているわけにはいかないので、5分や10分休めるように、交代しても遜色なく守れるように意識しています。

――春秋通しての課題として何か感じていることはありますか

太田 僕はほとんどオフェンス専門なので、得点力が課題かなと思います。ポストなのでフローターからパスが来ないと点は取れませんが、いかに回数を増やせるかということですね。裏で自分がスライドしてフローターが決めてくれることも実際はありますがそれだけでは意味がなくて、自分が結果を残さないと生き残れないということを感じています。

福岡 試合中ディフェンスの場面で、隣で森田さん(啓亮、スポ4=岩手・不来方)や雄斗(東江、スポ3=沖縄・興南)がリーダーシップをとってくれていたのですが、ことしから上級生という立場になって、1年生の松本(光也、社1=神奈川・法政二)など下級生と組む場面も多くなったので、試合の中で上級生という立場を意識してやらなければならないのですが、まだまだ足りないと思っています。

齋藤 自分は内海さん(祐輔副将、スポ4=香川中央)など試合中に得点力のある人と交代することが多いのですが、試合に入ったときに僕が入って点を取れなくなるのは悔しいので、もっと自分からシュートを打ちにいくというのを意識しながらいまは練習しています。

――それぞれのお互いのプレーについて

太田 凌は、復帰後ロングシュートのスピードが一段と早くなって、やっぱりケガの間にリハビリ頑張ってたんだなと思ったし、それが戦力になってくれれば大きいかなと思います。

福岡 スピードにのった中での1対1だったりロングシュートだったりがとてもいいなと思いますね。

齋藤 ありがとうございます(笑)!翔さんは、あまり身長は大きくないのですが、下半身が強くて面を張るのが強いのでそこはすごいと思います。あと、最近は前を狙ってくれるのでフローターの僕からすると狙いやすいので嬉しいです。

福岡 ウェイトトレーニングとかやっていても恵まれた下半身を持っているなと思うし、試合中とかもポストとして面を張る、ブロックを張る技術がすごくうまいと思います。

太田 いまポストとして扱われる人数が4人以上いるので、その中で秀でていないと試合に出ることができないので、自分の役割を確認しながらやっています。それと、下半身は恵まれているので譲れないです(笑)。佑哉は、高校のときよりいまの方が、たくましさがあって頼れるようになりましたね。高校の時は一人にしちゃいけない感じで、大学に入ってやっと僕から自立してくれましたね。

齋藤 この後きついです(笑)。ディフェンスでの安定感があってすごいと思います。

福岡 自分の役割はディフェンスなのでそこを頼られる存在になりたいです。

――やはりチーム内のスタメン争いは厳しいんでしょうか

福岡 ベンチ入りは熾烈(しれつ)ですね。

太田 前の試合出て次の試合出られないなんて当たり前なんで。自分たちみたいに実力が安定しない選手は、毎日必死ですね。

ことしのワセダ

オフの日の過ごし方について語る齋藤

――ことしは体づくりに力を入れているということですが、成果などの実感はありますか

太田 ことしから外部からトレーナーの方が来てくださって、いままでと違うウエイトメニューをすることができました。試合を重ねるにつれて相手との差っていうのは強く感じましたし、当たり負けしないようになったかなと。こういうのはケガが少なくなったことにもつながったと思いますし、体づくりの結果は出ていますね。

――チームで昨年となにか変ったなと思う点はありますか

齋藤 キーパーとのコミュニケーションですね。ディフェンスをしているとき、キーパーといっぱい喋るようになりました。

太田 きょねんの4年生の方たちはみんな人格者だったので、その人たちがいなくなった後誰がチームを盛り上げるのか、っていうのは課題でした。でも、いまはインカレが近いからかもしれないんですけど、全員が主体で盛り上げてくれるから自分もそれに乗っていけるし、僕がテンション上げて盛り上げても付いてきてくれるので、全員がそういったことを考えてくれているなとは感じますね。

――ことしの4年生の印象はいかがですか

太田 個が強いですね。一人一人すごいところを挙げろって言われたら、簡単に挙げられるくらい個性があると思います。

福岡  みんなシャイだと思います(笑)。

――玉城慶也主将(スポ4=沖縄・興南)はどういった方でしょうか

齋藤 琉球のシーサー。

一同 (笑)。

太田 すごいしっかりしているんですけど、どこか抜けるところがあって、そういったところで後輩との仲をうまくつくれているんじゃないかなと思います。ちょっとモテる感じですね、ずるいです(笑)。

――福岡選手と太田選手は同じ高校出身ですが、そのときから同じコートに立つ機会は多かったのでしょうか

太田 ずっと一緒に立っていました(笑)。

――ワセダに来るというお二人で決断をしたということですか

太田 福岡が誘いました。

福岡 いや、これは太田ですね。ていうかこの話、絶対けんかになるんですよ(笑)。

一同 (笑)。

福岡 まあいろいろあって。どちらが誘ったって感じじゃないですね(笑)。

――では、齋藤選手がワセダを選んだきっかけはなんでしょうか

齋藤 僕最初は立大に行きたかったんですけど、顧問の先生に止められたんですよね。でもそこで、先輩の森田さんから連絡があって、「ワセダから声掛かってるけどどうするの?」って。で、悠太郎(川島悠太郎、スポ2=福井商)も一緒に声掛かっていたので連絡を取ったら、彼は「お前が(ワセダ)行くなら俺も行くよ」と(笑)。それで僕が決めたら、彼も来たって感じですね。

――入学前から川島選手とは面識があったのですか

齋藤 そうですね、中3くらいから知っています。

――他の対談で「チームのムードメイカーはどなたでしょうか?」と質問したところ、太田選手を選ばれる方が多かったのですがこれについてはいかがですか

太田 ありがたいですね。3年生で上級生なのに、誰でもいじれるっていうか、なんでも話せるっていうキャラだとは思います。大城コーチもガンガンいじってくるんで(笑)。そこは逆に自分の強み、というか特徴かもしれません。

――いま少しありましたが、大城コーチの印象はいかがですか

福岡 大学入って、初めてハンドボールを改めて一から教えてもらったというか。まさにハンドボールの全てですね。それと日常生活でも責任のもと行動することがチームにも、将来にもつながっているということ。ハンドボール以外のことも教わっています。

――大城コーチは試合中、選手たちにげきを飛ばす場面が良く見られますが、実際にコートで受けていかがですか

福岡 正直かなり怖いですね(笑)。最初はビクビクしてました。

一同 (笑)。

福岡  この3人は怒られっぱなしなんですよ。

太田 でも言ってくれるだけ、僕らにも怒ってくれているっていうのは本当にありがたいですね。

――齋藤選手はチーム内で貴重なサウスポーということで、そういったことは意識する場面、意識させられる場面っていうのはありますか

齋藤 この間の早関定期戦のときBチームで試合に出させてもらったんですけど全然ダメで。「背が高くて左利きなだけだろ」みたいな感じで言われたので、左利きだから出れる、とかそういったことは自分では考えてないです。

――プレー面や私生活で尊敬できる人は

太田 増田さん(増田翔、スポ4=神奈川・生田)です。自分たちと同じように受験でワセダに入って、これだけハンドボールを熱心にやりながら学業でも成績を残していて、本当にすごいと思います。

齋藤 やっぱり森田さんですね。森田さんはいくら夜更かししても朝ごはんはちゃんと食べるし、学校にも行って。それに地元の岩手に帰って、岩手のハンドボールを盛り上げようとしているので、尊敬しています。

福岡 いろいろな面で、各々尊敬しています。ハンドボールではもちろんみんな個性や特徴があって。私生活は、アクティブさという面では雄斗すげえなと(笑)。基本的に僕は家でごろごろしているので、見習いたいですね。

――マイブームとかはありますか

福岡 パズドラはずっとやっています(笑)。中野(裕通、スポ3=兵庫・神戸国際大付)もやっているんですけど、彼は師匠ですね。

齋藤  僕はゲームですね。

太田 これ初公開なんですけど、目的地まで歩くっていう…。家から電車を使わずに徒歩で目的地にたどり着くっていうことです。この間も家から1時間くらい歩いて中目黒まで行ったりとか。いや、たぶんこれ良さ伝わってないですね(笑)。

一同 (笑)。

福岡 それでなにか発見はあったんですか?

太田 それがですね、僕いつもバイク通学なので大通りしか知らなくて、裏の路地に行くと意外と良い店とか使えそうな店があったりとか。使う機会があるかどうかは分からないですけど、とりあえず引き出しだけためています(笑)。

『役割』

笑顔で答える福岡

――インカレを目前に控えて、みなさんのいまのコンディションはいかがですか

齋藤 僕は15分だけでも(試合に)出られたら良いと言われているので、その15分に全てを懸けてプレーをするように心がけています。全力でぶつかるだけなので、チームに貢献できるように頑張りたいです。

太田 自分でチームを盛り上げられるように、やれることは全てやりたいと思っています。

福岡 自分の役割を果たせるように、1分1秒でも練習したいです。

――いまのチームの状況はいかがですか

齋藤 疲れてきたときにチームの雰囲気悪くなりますね。練習中でも練習試合でも。

太田 疲労がたまってきているので、ちょっと辛い部分もありますけど、これから上げていきたいです。

――ことしは崩れたとき、チームの雰囲気があまり良くないときに立て直せない試合が多かったと思いますが

太田 そういう場面でこの3人みたいな途中から出る選手が流れを変えられるようにインカレまで練習しているので、それをインカレでは発揮したいです。

――キーマンを挙げるとしたらどなたでしょうか

齋藤 雄斗さんじゃないですか。

福岡 中野だと思います。性格上、自分一人じゃテンション上げられない選手だと思うので、いろんな人でフォローして精一杯サポートしたいなと思います。

――インカレで自身に求められているプレー、役割というのはどういったことだと考えますか

齋藤 思い切ったプレーだと思います。

太田 得点と得点を取った後の盛り上げだと思っています。

福岡 ディフェンスですね。チームの軸になれるように。

――それでは最後に、インカレに向けて意気込みをお願いします

齋藤 インカレ勝ったら『三冠連覇』という目標を達成できるので、絶対に勝って達成したいと思います。

太田 『三冠連覇』は自分たちだけではなく、ワセダのハンドボールに関わってきた人全員に意味があるものだと思うので、そういう思いも考えて戦いたいと思います。

福岡 あと1つなので、全員が笑顔で終われたら良いなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 松田萌花、佐藤凌輔)

「キ・モ・チ!」と1文字ずつそれぞれの色紙に書いていただきました!

◆福岡佑哉(ふくおか・ゆうや)(※写真左)

1993(平5)年10月19日生まれ。185センチ。北海道・札幌月寒高出身。スポーツ科学部3年。対談中、落ち着いて真面目に答える姿が印象的だった福岡選手。しかし誕生日にはサプライズでプレゼントをもらって号泣してしまった、とうれしそうに話し仲間思いな一面も垣間見えました。

◆齋藤凌(さいとう・りょう)(※写真中央)

1994(平6)年4月3日生まれ。184センチ。岩手・不来方高出身。スポーツ科学部2年。マイブームはずばり「モンスターハンター」。川島選手と森田選手と3人で良く遊んでいるそうです。そんな齋藤選手、ハンドボールの話をするときは真剣で、インカレへの意気込みも熱く語っていただきました。

◆太田翔(おおた・しょう)(※写真右)

1993(平5)年9月24日生まれ。173センチ。北海道・札幌月寒高出身。スポーツ科学部3年。太田選手は福岡選手と特に仲が良く、休日は2人でご飯を食べに行ったりしているそうです。そして実はチームのムードメイカーだとか。大舞台でもチームを盛り上げてくれるはず!