全日本学生体操競技選手権大会(全日本インカレ)直前対談最終回となる今回は、最高学年の藤尾拓海主将(スポ4=岡山・関西)、武井優介(スポ4=東京・松蔭大松蔭)の二人が登場。団体戦メンバーに選ばれた二人の、最後の全日本インカレに懸ける思いに迫る。
※この対談は、8月5日にオンラインで行われました。
「今までやってきたことが熟練されている」(藤尾)
笑顔で話す藤尾
――まず他己紹介をお願いします
藤尾 スポーツ科学部4年生の、武井優介くんです。高校は東京の松蔭大松蔭高校ってところ出身で、体操に真面目に取り組んでいる、いい子だと思います。
武井 (笑)。そんなかしこまった感じなんですか?
――では武井選手お願いします
武井 藤尾くんは関西高校出身で、どっちかっていうと本人は緩い感じでやっていると思うんですけど、見てる側からしたら結構真面目にやってるし、体操に対してすごく高い意識を持ってやってるんじゃないかなと思います。表には出さないけど真面目に頑張るタイプです。
藤尾 なんか恥ずかしいですね。
武井 確かに(笑)。改まってそんな言うことないから。
――4年生同士ですが、部活以外でも接点はありますか
藤尾 たまに飯に行くくらいですかね。ご飯っていうよりかたまに飲んだりとか。
――ここからは全日本インカレ寄りのお話に移りたいと思います。お二人とも団体戦のメンバーに選ばれましたが、今の心境は
藤尾 最後のインカレなので、しっかりやれることをやって試合に臨みたいなと思っています。
武井 今藤尾も言ってたんですけど、最後のインカレなので、1年から3年までの集大成として、しっかり日頃の練習の成果が出せたらいいなと思います。
――団体戦メンバーの選考会での演技を振り返っていかがですか
藤尾 いい演技もあれば、まだまだ上げられるような演技もあるので、細かいところまで意識してここから試合までの間練習できたらいいなと思います。
武井 メンバー選考では少しずつ点数を上げていって、最終的に試合前に自分のベストの演技とか体の状態とかをつくれるように、技一つ一つの完成度とかを上げていって臨めたかなと思います。
――お二人の現在の調子はいかがですか
藤尾 僕は絶好調です。全体的に体の方はいいですね。あとはメンタル面だけです。緊張はしてないんですけど、どれだけ自信持っていけるかみたいな。
武井 2週間前くらいにベストな調子がきてて、このままいったら体もきついって思って、ちょっとずつ調子が上がりすぎないような練習とか、その辺まで考えて練習できていました。今は調子がとてもいいかと言われたらそうでもないんですけど、このままいったら試合で一番いい状態に上げられるんじゃないかなと思います。
――チームの現在の雰囲気は
藤尾 めっちゃいい雰囲気だと思います。しっかり体操に向き合って試合に臨んでいってるみたいな雰囲気が見えるので、これを壊さずに試合までつなげたいなと思います。
武井 体操に向き合う気持ちは今まで以上にみんなあると思うし、(体操は)個人競技なんですけど、団体総合ということでみんなが気持ちを一つにできているんじゃないかなと思います。
――田口陸斗(スポ3=福岡・自由ケ丘)選手と向中野蓮(スポ2=千葉・市船橋)選手の対談では「怖い主将からプレッシャーをかけられてる」というお話がありました
武井 (笑)。
藤尾 いや絶対かけてないですね。…え? 怖いんですかね? 優しいと思うんですけど(笑)。
武井 怖いのかあれは(笑)。二人にはそれだけ期待があるってことだと思います。これを機にもっと厳しくした方がいい(笑)。
――今回の団体戦は3、4年生が中心のチームとなりましたが、どのように捉えていますか
藤尾 3、4年生が中心だからこそ、今までやってきたことがだいぶ熟練されていると思います。あとはどこまでやり込めるかって言うのもあるし、やりこみ方とかも分かってる学年だと思うので、すごく期待はできるかなと思います。
武井 上級生が結構多いので、しっかり4年生が引っ張って、2、3年生を鼓舞するような団体戦にできるんじゃないかなと思っています。
――今回の団体戦でキーパーソンとなりそうな方は誰ですか
武井 僕は藤尾ですね。やっぱり藤尾が得意としてる後半のあん馬とか中盤の鉄棒とかで、点数もそうですけど、会心の演技ができたらチームの気持ちも上がってきて、いい団体戦になるんじゃないかなと思います。
藤尾 ありがたいですね。僕としては全員に期待はしてますね。団体戦なんで、全員が一個一個の演技をつないでくれたらそれだけで試合中に「自分もやんなきゃ」ってテンションも上がっていくものなので。そうなった時は自分は強い気がするので頑張ります。
――向中野選手も藤尾選手をキーパーソンに挙げていました
藤尾 頑張ります。
――ちなみに田口選手は自分がキーパーソンだとおっしゃっていました。「(主将を)見返してやりたい」とも
武井 (笑)。
藤尾 かっこいー。かっこいいなあ。(田口に)頑張ってほしいですね。期待してます。
「一気に体操に対する気持ちが大きくなった」(武井)
丁寧に応じる武井
――藤尾選手は1、2年生の時も全日本インカレの団体に出場されていました。振り返っていかがですか
藤尾 1年生の時はインカレに出ること自体が目標になっていて、それをクリアできているから良かったなと思っていて。2年生になって自分の目標というところに目が行くようになってきて、でも目標があっても、2年生の時はそれを達成できるだけの実力とかもなかったので。それを考えたら、今4年生として挑むインカレというのは自分の体操に自信もちょっと持ち始めているし、少しずつ結果というものを狙えるところまで来ているなと思うので、自分らしさを出して、最後に結果がついてきたらいいなと思っています。
――武井選手は1年時に団体、2年時には個人で全日本インカレに出場されました。振り返っていかがですか
武井 1年の時から団体に入って、自分はその時からU-21の代表とか、全日本選手権の権利獲得とかを目標にやってたんですけど、いまだに全然達成できていなくて。1年生の時は実力不足でどちらも達成できなかったので、2、3年生でしっかり目標達成しようと思ったんですけど、ケガとかいろいろなことがあって達成できませんでした。でもそういう経験があったから、今になってすごく技術とかの面でも、メンタルとかの面でも体操にしっかり向き合えるようになったので、その経験を生かして4年生として臨めるんじゃないかなと思います。
――今年度の大会を振り返って、手応えはありますか
藤尾 4月の個人総合(全日本個人総合選手権)では、今まで自分が個人総合でああいう上のレベルの人たちと戦っていけるとはあまり思っていなくて、それが「戦っていける」というふうなレベルにまで来たのかなと。6種目でNHK杯とか、そういうところまで見ながら練習していってもいいなと思ってきて。自分の個人総合に可能性を感じられるような試合だったなと思います。東日本インカレは団体戦をメインでやってきていたので、1種目目の平行棒とかでミスが出てしまったのが課題ではあるんですけど、それ以降の試合の立ち回り方はすごく良かったので、反省点もあるけどいい試合はしたかなと思っています。種目別(全日本種目別選手権)は自分の課題しか見えなくて。自分のメンタルの弱さと直面した試合だったので、そこを克服して、来年はしっかりいい結果を取れるように頑張りたいなと思っています。早慶戦(早慶対抗定期戦)はやっぱり最後だったのと、主将っていうポジションもあるのでいろいろと大変なところもあり、思い入れがちょっと強いような試合だなって感じています。あの時は種目別の直後でメンタルをやられていたので、あそこで演技しただけでも優秀だったかなって思っていて。あと早慶戦って雰囲気が普通の試合と全然違って違う緊張感があって、それをもう味わうことはないので、ちょっと寂しい気もするんですけど、楽しく試合はできました。
武井 全日本の個人総合は初めて出たんですけど、結果で言うとちゃんと6種目出た選手の中では最下位になってしまって、終わった直後とか数日は受け止められなかったです。でも今はその結果が今年の試合に全部生きているのかなっていうふうに思っています。練習からそうなんですけど、悔しい気持ちとか失敗とかをしたくないし、気持ちのいい試合をしたいっていうのは全日本(個人総合)の時からすごく芽生えたというか、そこで一気に体操に対する気持ちが大きくなったっていう試合でした。東日本インカレは全日本個人総合からそんなに日がなかったんですけど、すごく詰めて練習できて、技術的にも高い状態で臨めたと思ったんですけど、試合になったらいろいろ違う…器具の状態とかがあって、そういうところもちゃんと自分で合わせられるように、細かいところをもっと直せるなっていうのに気付けた試合でした。早慶戦はつり輪と跳馬に出たんですけど、跳馬が、個人総合と東日本インカレで両方とも失敗しちゃったんで、それを挽回するっていう面でも決めていきたいなっていうところでしっかり決められたのはすごく良かったなって思います。試合の雰囲気が僕は結構好きだったので、ああいう試合が全日本インカレとかでも発揮できたらもっと楽しい試合になるんじゃないかなって思います。
――今年度一番調子が良かったのはいつ頃ですか
藤尾 むしろ今です。4月からやってきたことがだいぶ熟練してきて、ゆとりが出てきているので、全日本インカレに期待してほしいと思います。
武井 僕は7月の中旬くらいにあった関東ブロック(国民体育大会関東ブロック大会)の時が一番良かったと思います。いろいろつり輪の力技が評価されたりとか、逆に駄目だったところもあったりしたんですけど、体の調子とか、自分が思っていたよりもいい演技ができたのはその時で、すごくいい試合でした。
――東日本インカレでは目標の395点には届かなかったものの、392.550点で団体5位という結果でした。どのように捉えていますか
藤尾 平行棒で最初に失敗がばーって続いたので、そこがなければ全然クリアできた点数だと思うし、今現在は400点を超えるか超えないかというところなので、確実に全員成長してるし、ちゃんと試合を見据えてやることをやっていると思います。あれがあったからこそ、今さらに意識が高くなって練習できてるのかもしれないです。
武井 東日本インカレで、出だしの種目が一番肝心っていうのはみんな多分受け止められました。今しっかりできているんですけど、試合でどうなるか分からないっていうのもみんな分かっていると思うので、しっかり一種目目に安定した演技ができればいいんじゃないかなと思います。p>
「早稲田が強いということを見せられたら」(武井)
歯を見せて笑う武井
――お二人の得意種目を教えてください
藤尾 あん馬と鉄棒ですかね。
武井 つり輪と平行棒です。
――現在力を入れている種目もその得意種目になるのでしょうか
藤尾 あん馬は力を入れているって感じですかね。鉄棒っていうよりかは平行棒を意識していやっています。(平行棒は)苦手でも得意でもないんですけど、僕の中で平行棒とあん馬がうまくいけば個人総合でだいぶしっかり点数が取れるっていうイメージがあって、その2つを大切に、気持ちを入れてやっています。
武井 得意種目よりも逆に苦手種目を引き上げるように頑張っています。あん馬と鉄棒ですかね。Dスコアも6種目の中では低い方なので、その2種目を失敗しない、かついい演技ができるように力を入れて練習しています。
――演技全体として何か変更したところはありますか
藤尾 僕は今回はないですね。質を上げて臨む感じです。
武井 自分も東日本インカレからは特に変わっていないです。精度を上げて、失敗しないようにしようっていう感じです。
――全日本インカレに向けて意気込みをお願いします
藤尾 団体での目標はやっぱり3番ですが、順位っていうよりも点数で頑張っていこうって思っているので、ひとまず400点は超えて、そこからどこまで上げていけるかっていうのが今回の自分の団体としての目標です。個人としては来年の全日本選手権に出場するための権利を獲得するっていうのと、やっぱりあん馬でちょっとでもいい順位にいけたら良いなと思っています。
武井 団体はずっと目標にしている3位。今まで団体戦で経験してきた失敗とかも生かして、僕たちが卒業した後とかにもそれが生きるような…早稲田が強いということをしっかり全日本インカレで見せられたらいいかなと思います。個人の目標は全日本個人総合の権利を獲得するのと、個人総合で表彰台に乗れたらいいかなというふうに思います。
――普段であれば対談の最後に目標を色紙に書いていただいています。今回はオンラインなのでありませんが、もし色紙を書くとしたら
藤尾 僕だったら、今は「楽しむ」って(書きます)。楽しんで体操をやってる時の方が自分らしさが出るし、いい試合とかいい体操ができるので、楽しむって言うのが一番かなと思います。
武井 「団結力」ですかね。僕は結構今までずっと、高校も結構そうだったんですけど、一人で体操やって一人でいろいろ抱え込んで、失敗して落ち込んでっていうのが多くて。僕はここまでの全日本インカレの練習でチームのみんなに支えられて、それが今すごく印象にあります。団結力が一番印象にある言葉です。
――ありがとうございました!
(取材・編集 荒井結月)
◆藤尾拓海主将(ふじお・たくみ)
岡山・関西高出身。スポーツ科学部4年。最近はジョージアのフルーツオーレにはまっているそうです!
◆武井優介(たけい・ゆうすけ)
東京・松蔭大松蔭高出身。スポーツ科学部4年。これまであまり行ったことのなかったカラオケに、夏休み中はまりそうだと教えてくださいました!