雨がしとしとと降る梅雨の6月30日。今年も伝統の早慶戦がやって来た。慶大日吉キャンパスにて行われた今大会は今年で72回目の決戦となる。相手の応援に負けず劣らずの熱気を見せる応援席に見守られ、早大体操部は計6名のメンバーで攻めの演技を次々と披露した。
通算66勝目をかけて戦う今大会はゆかの演技からスタートした。たった1人の演技者に会場全体の視線が集まる。早大勢トップバッターを務めたのは竹端健太郎(スポ2=京都・洛南)。早慶戦ならではの独特な雰囲気に緊張したと話す竹端は、各技着地をピタッと止めるブレの無い演技を披露した。この種目で早大勢トップの得点をたたき出したのは1年生ルーキーの武井優介(スポ1=東京・松陰)。圧倒されるようなダイナミックで高さのある数々の技に、本人も控えめなガッツポーズを見せていた。
ゆかの演技を終え小さくガッツポーズをする武井
次に迎えたあん馬では全メンバーが落下することのないまとまりのある演技を行った。この種目で早慶戦デビューを果たした、藤尾拓海(スポ1=岡山・関西)の足を大きく使った迫力のある演技には会場から歓声が上がった。しかし藤尾は予定していた技と降りの難度が1段階落ちてしまったことを冷静に振り返り、反省の色が浮かんだ。3種目目の跳馬では相手に早大勢のレベルの高さを見せつける。この種目のエース、柏木寅治主将(スポ4=千葉・市船橋)は大技ロペスを披露し、着地こそ乱れたものの会場には大きな喝采が沸き起こった。
平行棒の演技をする南
後半の種目には南亜蘭(スポ4=大阪・太成学院大高)に熱視線が注がれた。平行棒では前半に2度の落下。南の苦しそうな表情に観客は心配そうに見守ったが、後半は見事に演技を立て直し、全日本学生選手権(インカレ)に向け新たに組み込んだ大技「ササキ」を見事に決めた。この演技に会場の空気は一変し、大歓声が起こった。演技後疲れ切った表情を見せた南。執念で決めたともいえるこの技に「腕がパンパンだった」(南)と振り返った。平行棒の演技後すぐに迎えた鉄棒の演技でも南は大きな歓声を受ける。「全然力が入らなかった」(南)とまさに満身創痍での演技だったが、高難度の「カッシーナ」や「コールマン」を見事に披露した。また、鉄棒で全体トップの得点をたたき出した竹端は、新しい技を組み込んだ攻めの演技を見せた。自身も「鉄棒の演技が一番良かった」(竹端)と手ごたえをつかみ、インカレに対する強い意気込みをアピールする演技となった。
全種目を終え、総得点は223.30点。慶大の216.45点に差をつけ、66回目の勝利を勝ち取った。インカレまで早2か月を切った今日。選手が揃えて口にするインカレ団体3位という目標に向かって好調をアピールできた今大会。早大プライドを胸に今年こそ3位を現実へ-。早稲田の熱い夏は始まった。
(記事 脇田真悠子、写真 鬼頭遥南)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
結果
◯早大223.30-216.45
男子団体 | ||||||||
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選手名 | ゆか | あん馬 | つり輪 | 跳馬 | 平行棒 | 鉄棒 | 合計点 | 順位 |
柏木寅冶(スポ4) | 12.95 | 13.45 | – | 14.50 | – | – | – | – |
南亜蘭(スポ4) | – | – | 13.75 | 13.70 | 11.40 | 12.85 | – | – |
中村唯都(スポ3) | – | 12.40 | – | – | 12.40 | – | – | – |
竹端健太郎(スポ2) | 13.30 | – | 13.20 | 14.40 | 12.60 | 13.65 | – | – |
武井優介(スポ1) | 13.85 | – | 13.20 | – | – | – | – | – |
藤尾拓海(スポ1) | – | 12.60 | – | – | – | 11.95 | – | – |
チーム得点 | 40.10 | 38.45 | 40.15 | 42.60 | 36.40 | 38.45 | 223.30 | 1 位 |
コメント
柏木寅冶主将(スポ4=千葉・市船橋)
――きょうの試合振り返ってチーム全体としてはいかがでしたか
全体的にはまあ意外と大過失なくまとまった試合にはなったかなと思うんですけど、まだ詰めが甘い部分とかミスが出てしまった種目とかあったので、その辺りがインカレまでの課題かなと言う感じです。
――チームの雰囲気としてはいかがでしたか
そんなに悪い雰囲気ではなかったと思います。
――大会としては客席の近さだったり、1人ずつの演技だったりいつもと違った部分があったと思いますが、その辺りは個人的にはいかがでしたか
4年目なので、慣れている部分はあったんですけど、1人1人やるというところはちょっと緊張しました。あと6-3-3だったのでミスができないという状況も少し緊張しました。
――ご自身の演技自体はいかがでしたか
ゆか、跳馬、あん馬の3種目でて、ゆかはプレッシャーを感じて思うように着地がとれなかった部分があったのでそこは直さないといけないなと。あん馬は落ち着いてできたかなと思います。跳馬はあんまり良くなかったんですけどまあ立てたのは良かったです。
――インカレに向けて意気込みをお願いします
まずは4年生2人で団体に入ること、それからインカレ団体3位というのは目指せない目標ではないと思うので目指していきたいと思います。
南亜蘭(スポ4=大阪・太成学院大高)
――きょうのコンディションはいかがでしたか
きょうはいつも通りです。こっちで器具を調整したんですが思ったよりも器具が自分に合わなくて…会場練習で合わせようと思っていたんですけど全然合いませんでした。どうしようかなあと迷いながら試合をやっていました(笑)
――早慶戦は4年目の出場ですが、雰囲気はいかがですか
いつもの試合では応援部の方もいらっしゃらないので、今回場を盛り上げてくれる方がたくさんいて心強いです。
――多くの人の前で1人で演技するのは緊張しますか
いや、緊張というよりも、思い切って演技して技を決めてみんなを騒がせたいなあという気持ちです(笑)今日はそんな気持ちで臨んだんですけど、体力がそこを突きました…平行棒ははじめのほうでたくさんミスをしてしまって、そこでは腕がもうパンパンでした。そのあとすぐに鉄棒の演技をしなくちゃいけなくて全然力が入りませんでした。
――きょうは全体の選手の中で最も歓声を受けられる場面が多かったように思います
歓声が上がった技は今回インカレに向けて新しく入れた技だったのでそこが成功したのは大きな収穫かなと思います。
――具体的にはどういった技なのでしょうか
平行棒の「ササキ」もそうですし、鉄棒の「カッシーナ」「コールマン」もそうです。今回成功出来てインカレに向けた良い手ごたえが得られたと思います。
――跳馬についてはいかがでしたか
練習の時全然飛べなくて、これではけがをすると思っていたので本番だけきちんとした技をやろうと思っていました。けがをするかなあと思って慎重にいったら逆に良すぎましたね(笑)でも今回は良い失敗だったし無事に終われたので良かったです。
――最後にインカレに向けた意気込みをお聞かせください
自分は技も出来上がっているのであとは最後の着地まで仕上げられるようにしたいです。チームのみんなの中にはまだ技も完成していないというメンバーもいるのでそこは主将と自分とでチームを作り上げていきたいです。今年は本気でインカレ(団体)3位を狙えると思うのでしっかりやっていきたいです。
中村唯都(スポ3=名城大付)
――きょうのコンディションはいかがでしたか
きょうは良かったです。
――早慶戦の独特の雰囲気はいかがでしたか
いつもの試合とは違った緊張感がありました。平行棒はあまり緊張しませんでしたがあん馬はとても緊張しました。
――あん馬の演技はいかがでしたか
通っただけという感じだったので耐えただけですね。
――平行棒の演技はいかがでしたか
途中の技でダブルスイングといって2回スイングしてしまうミスをしてしまって、まあ大欠点ではないんですけど0.5点引かれてしまうので、そこがあまりよくなかったです。
――インカレに向けて今どんなことを考えていますか
ミスしないで、ケガしないで、楽しく頑張りたいです。これっていう何かより絶対失敗しないことが今の目標です。
――今ケガなどは大丈夫ですか
今足が折れていて、注射を打ってやっているという感じなんですけど…頑張りたいです。
竹端健太郎(スポ2=京都・洛南)
――きょうの試合を振り返っていかがでしたか
良かったです。
――1番良かった種目は何ですか
鉄棒です。鉄棒は新しい技を入れていたので、そこで成功できたのが良かったです。
――どんな技を入れましたか
伸身で飛び越すのに半分ひねりを加えた技です。
――跳馬も良かったです
跳馬は得意なので、いつも通りです。
――きょうの跳馬の技の名前は何ですか
ドリックスという技です。
――早慶戦の雰囲気についてどのように感じましたか
1人ずつ演技するので緊張したのですが、去年も同じような感じだったので自分的には落ち着いてできたと思います。
――インカレに向けての改善点は何かありますか
あん馬と平行棒が苦手で少し失敗しやすい種目なので、そこで失敗しないようにしたいです。
――今後の意気込みをお願いします
U21という日本代表のような試合があるので、そこを目指して頑張っていきたいです。
武井優介(スポ1=東京・松蔭)
――きょうの試合振り返っていかがでしたか
きょうは2種目しか出ていなくて、完璧ではないんですけど自分の思った通りに演技をすることはできたかなという感じがします。
――初めての早慶戦の雰囲気はいかがでしたか
こういう雰囲気は初めてなので緊張もあったんですけど、逆に自分の気持ちを高めることができて、種目別の決勝に出たらこういう雰囲気なんだろうなと思いながら演技しました。
――ゆかの演技はいかがでしたか
まず1節目でラインオーバーしてしまったのでそこでちょっと焦ったんですけど、2節目3節目がすごく良かったので自分のペースを取り戻してできました。最後の2節では着地を止められたのが良かったなと思います。
――つり輪の演技はいかがでしたか
つり輪は新しくいれた力技の振り上がり上水平がちょっと姿勢の部分で課題が見つかったので、次のインカレに向けて改善していきたいです。
――インカレなどが控えていますが今後の意気込みを教えてください
東インカレで悔しい思いをしたので、そこから練習で失敗したらなぜ失敗したかなどを考えながら練習してきたので、悔しかった思いをインカレで晴らせるように頑張りたいです。練習通りいったらインカレでもうまくいくと思うので自信持ってやれるようにこれから練習していきたいと思います。
藤尾拓海(スポ1=岡山・関西)
――きょうの試合振り返っていかがでしたか
2種目出て、大きなミスはなかったんですが自分の思うような演技はできなかったかなと思います。
――初めての早慶戦の雰囲気はいかがでしたか
初めての経験だったので、新しい緊張の仕方が分かって勉強になりました。
――あん馬の演技はいかがでしたか
最初にEフロップっていう技をいれていたんですけど、そこが崩れて難度が落ちてDフロップっていう技になってしまって、そこがちょっと演技の流れが自分の中で崩れちゃって最後の降りもD難度で降りる予定がC難度になってしまったのは今回反省すべきところかなと思います。
――鉄棒の演技はいかがでしたか
今回新しくチェコ式車輪を入れて、そこは綺麗にやり切れたんですけど、その前の伸身トカチェフで近すぎて本来は車輪に回さなきゃいけないところを車輪にいけずにミスをしてしまったのは改善していきたいです。
――インカレなどが控えていますが今後の意気込みを教えてください
インカレは1年生からメンバーに入って、体操部の目標である団体3位に貢献できるように頑張りたいです。