段違い平行棒で再び落下、一方で光明も

体操

 1ヶ月前の全日本個人総合選手権で涙にくれた内山由綺(スポ3=東京・帝京)。その大きな理由となった段違い平行棒では今も光を見出せていない。「練習をやっても意味がないのでは」、「試合が怖かった」という気持ちでいっぱいだったが、それでも今大会では他3種目で大きなミスのない演技を披露し「試合を楽しむことができた」と笑顔を見せた。

 最初の跳馬は着地は後ろに小さく一歩とまとめ、13.350と比較的高い得点を記録。そして続く2種目目が注目の段違い平行棒。本来は内山が非常に得意にしている種目だが、前回出場した大会では移動技で相次いで落下してしまい、悔しい思いをしている。その失敗の衝撃は1ヶ月経った今も癒えていないか。直前の練習でも移動技で続けて2度落下。不安を抱えながら迎えた本番では低棒から高棒へ後ろ向きに移動する技で落下。やり直して前向きの移動技に変えて試みたがそれでも落下してしまい、結局成功させられなかった。この種目で最上位と3.5点超の大差をつけられる形となり、個人総合での上位入賞は遠のいた。ここで実力を発揮しきれば十分上回れる可能性はあっただけに、非常に悔やまれる事態だった。

段違い平行棒で移動技を試みる内山

 それでも個人総合は4種目で争う競技。途中心が折れたとしても切り替えて全てをしっかりやり遂げる必要がある。全日本個人総合選手権では立て直しきれず、同様に段違い平行棒で崩れた後、次の平均台でも大きなミスが出てしまった。しかし今回似た状況で平均台を迎えた内山は強かった。今にも涙が溢れそうな表情から一転し、集中した面持ちで何度もフロア上で平均台の演技を辿り、直前練習でも良い状態で技を確認。平均台上での足を耳の横まであげてのターンは1回転に留まり、側宙と前宙は着地で非常に耐える形となった。しかし落下の可能性が1番高いとされるこの種目を最後まで無事に乗り切り、着地も1歩にまとめあげることができた。

平均台の演技を披露する内山

 最後の種目であるゆかはアクロバット系の技でいずれも着地後少しはねるような形になってしまったが大過失なくまとめる。平均台では1回転になった足持ちターンも2回転し、ジャンプの高さもよく出ていた。採点に非常に時間がかかったが13.000とまずまずの点数がでた。順位の上では段違い平行棒のミスが影響し、あまり良くない結果となってしまった。それでも先月の状況を鑑みれば非常に良い大会となったのではないだろうか。次回に向けて「試合を楽しんで自分のいつもの練習通りの演技ができることが1番」だと語った内山。今大会で試合を楽しむことはできたはず。あとは段違い平行棒での自信と彼女らしい一級品の演技を取り戻して、全日本種目別選手権に臨んでほしい。

(記事、写真 青柳香穂)

結果
女子個人総合
選手名 跳馬 段違い 平均台 ゆか 合計 順位
内山由綺(スポ3) 13.350 10.250 13.350 13.000 49.950 16位
コメント

内山由綺(スポ3=東京・帝京)

――全日本個人総合選手権から1ヶ月経ちましたが調子はいかがですか

全日本が終わってからしばらく練習やっても意味ないんじゃないかなみたいな時があったんですけど、体操自体を楽しめるように今回の試合はやってきました。失敗とかは段違い平行棒であったんですけど、全日本みたいな失敗の仕方はもうしたくなかったし、平均台とゆかで切り替えられたのはすごくよかったなと思います。

――同じように段違い平行棒でミスが出てその後の種目でも崩れた全日本と異なり、今回は立て直すことができたのはどうしてですか

全日本の反省点をここでちゃんと返さないとという気持ちが強くて、ここでどういう風に演技するかで今後が決まるかなと思ってやりました。

――段違い平行棒では続けて落下が出てしまっていますがいかがですか

練習と試合のギャップが大きくてちょっとうまくいかないなという感じです。

――落下することではなくて試合でミスすることが怖いという感じでしょうか

試合自体がちょっと怖いというのはあって、それは全日本のあとは全種目においてそうだったんですけど、今回はちょっとそこが克服できたかなという感じです。

――去年は大会の雰囲気にのまれたという風におっしゃっていましたが今年はいかがでしたか

今年は結構インカレの雰囲気自体も楽しめたと思いますし、失敗はあったんですけど試合自体を楽しむということもできたかなと思います。

――次の試合での目標は何かありますか

次の試合は全日本種目別になるんですけど、結果を求めていきたいんです、優勝とか。段違い平行棒はやっぱり優勝したいし平均台だって優勝したいしゆかも決勝に残りたいですけどまず試合を楽しんで自分のいつもの練習通りの演技ができることが1番だと思っています。