「チーム戦としては100点」(高橋一矢主将、スポ4=岐阜・中京)。日本一の大学を決める全日本学生選手権(インカレ)で、早大体操部は4年ぶりの団体4位に輝いた。ここ数年のインカレでは思うような戦いができずに、涙をのんでいた早大。しかし今年は、昨年の7~12位の大学で構成されたB班で、『別格』の強さを示しトップの点数を獲得すると、昨年の上位6チームからなる最終班の猛追に耐え切ってみせたのだ。悪夢のB班降格から2年、ようやく果たした悲願の最終班復帰。この栄光は、メンバー全員で演技をつなぎ、チームとしての実力を十分に発揮してつかんだものだった。
その実力は、1種目目のゆかから大いにふるわれた。トップバッターの山田元大(スポ2=千葉・市船橋)がノーミスの演技で勢いづけたのを皮切りに、それぞれが着地まで止め切る気迫のこもった演技を見せ、ガッツポーズを連発。6人全員が13点台後半を獲得し、最高のスタートを切った。続くあん馬は、昨年落下者が相次ぎ大きく得点を落とした種目。しかし今年は1人の落下者も出さずに点数を重ねると、最終演技者の原田脩(スポ2=東京・帝京)が丁寧な旋回で締め、ここで完全に流れをつかんだ。このまま上昇気流に乗りたいところだが、3種目目は今年のチームの弱点だというつり輪。しかし前半の3人が何とか耐え切ると、「完璧でした」と語る南亜蘭(スポ3=大阪・太成学院大高)は14.050、全日本種目別選手権でつり輪日本一に上り詰めた高橋は14.550の高得点をたたき出す。序盤で得た流れを保ったまま、前半を折り返した。
みんなでつかんだ「最終班」
後半も早大の勢いは止まらない。跳馬では、4番目に登場した高橋がローチェを決め、会場をどよめかせる。続く南は着地で膝をついてしまったが、柏木寅冶(スポ3=千葉・市船橋)がEスコア(出来栄え点)9.2という質の高さで大技・ロペスを決め、大きくガッツポーズ。続く平行棒は、細かいミスは散見されながらも何とか耐え切り、最終種目の鉄棒へ。4人目の南と続く原田が離れ技で落下してしまったものの、最後は山田がつま先までそろった演技で締めくくった。全種目を終え、種目ごとの上位5人の合計点は406.150。笑顔でフロアを後にした早大は、最終班の日体大、順大、鹿屋体大に続き、見事4位に食い込んだのだった。
活躍を見せた山田、個人総合では10位に
目標としていた3位には届かなかったが、「これ以上ないくらいの出来」(高橋)と、選手たちは笑顔を見せた。そして今回特筆すべきは、チームの雰囲気の良さだ。上級生だけでなく山田や鈴木海斗(スポ1=千葉・市船橋)といった下級生も、好演技には大きなガッツポーズで盛り上げ、ミスに対しては励まし合った。個人個人の演技には課題が残る部分はあったものの、それを互いにカバーし合うという、団体戦として理想的といえる戦いぶりで、4位を勝ち取ったのだ。今回のような戦いが展開できれば、インカレでの3位、そしてその上も、決して夢物語ではないだろう。「頼もしい後輩も育ってきたし、安心して卒業できる」(高橋)。来年につながる結果を胸に、一層の成長を誓う『チームワセダ』から、目が離せない。
(記事 村田華乃、写真 脇田真悠子)
結果
男子団体総合 | ||||||||
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選手名 | ゆか | あん馬 | つり輪 | 跳馬 | 平行棒 | 鉄棒 | 合計点 | 順位 |
高橋一矢(スポ4) | 13.950 | 13.150.900 | 14.550 | 14.100 | 13.300 | 12.550.100 | 81.600 | 19位 |
南亜蘭(スポ3) | 13.750 | 11.850 | 14.050 | 13.300 | 13.900 | 12.050 | 78.900 | 40位 |
柏木寅冶(スポ3) | 13.950 | 13.600 | 12.700 | 14.800 | 13.250 | 13.350 | 81.650 | 17位 |
原田脩(スポ2) | 13,800 | 13.900 | 12.550 | 12.850 | 13.800 | 12.200 | 79.100 | 39位 |
山田元大(スポ2) | 13.600 | 13.550 | 13.600 | 13.650 | 14.450 | 13.800 | 82.650 | 10位 |
鈴木海斗(スポ1) | 13.550 | 13.250 | 12.150 | 13.250 | 12.750 | 12.500 | 77.450 | 57位 |
チーム得点 | 69.050 | 67.450 | 67.450 | 69.100 | 68.700 | 64.400 | 406.150 | 4位 |
コメント
高橋一矢(スポ4=岐阜・中京)
――結果を受けて率直にいかがですか
個人的にはかなり良くない試合だったので、まだまだだなとは思うんですけど、チーム戦としてはかなりいい出来だったので、キャプテンとしてチームをつくってきて、こういうチームがつくれたっていうのはすごくうれしかったですし、強い後輩たちも出てきたので、頼れる後輩たちができてよかったなっていう感じです。
――団体4位という結果についていかがですか
素直にうれしいです。目標は3位というふうには言ってて、そこには及ばなかったのでもうちょっとやれたかなとは思うんですけど。でも内容が内容だったので、これ以上ないかなっていうくらいの出来での4位だったので、十分うれしいですし、結果自体にはすごく満足しています。
――3位という目標に対して、Dスコアを上げるかEスコアを狙いにいくか、といった作戦はあったのでしょうか
特にその辺の指示はしてないですね。僕の中では1カ月半から2カ月くらいあれば仕上がると思ってたので、そこまではみんな自由にやらせて、南がヨー2跳べるようになったのも最近のことだし、そういうのもあったので結構自由にやってもらってました。最後1カ月ちょっとくらいでみんなでミーティングして、ここからはもう技は入れないよ、Eスコアを0.1でも拾っていく練習をしていこうっていうふうに切り替えてやってきた結果がこういうことになったので、いい練習ができてたからこういう結果が出たんじゃないかなと思います。
――ご自分の演技が良くなかったというのは具体的にどの部分でしょうか
あん馬でバランス崩したり、平行棒でぶつけたり、鉄棒を離れ技1個抜けてしまったり。点数が全然伸ばせてない、たぶんトータルで2点近くは落としてるので、エースとして申し訳ないなというのはかなりあります。
――つり輪の日本一としてプレッシャーなどはありましたか
当然勝たなきゃいけないなって思ってはいましたけど、力技の決め方だったり、実際やってみてかなり良くなかったので・・・。あした種目別があると思うので、しっかり修正して優勝しにいきたいと思います。
――跳馬やつり輪では会場をどよめかせました
つり輪に関しては注目されてるんだなっていうのは分かりましたし、観客席がざわついてたり下がざわついてたりっていうのはやりながら聞こえてたので、見てくれてるんだなというのは自信になりました。跳馬は技が技なので、派手な技ですし成功すればわーって沸いてくれるので、そういう瞬間ってすごくうれしいなと思いますね。
――跳馬は昨年のインカレでの失敗がありました
当然思い出しましたし、ちょっと嫌な気もしましたね。ローチェって技自体成功しにくいので、やる前によぎりはしましたけど、そんなネガティブなことを考えても良くないので、チームのためにもここでしっかり立って、後ろの2人が大技をやるっていうのは分かってたので、僕がしっかり成功して、いい状態でつなげてあげられればなと思ってやりました。
――チームの雰囲気はいかがでしたか
100点じゃないですかね(笑)。去年とかは最終種目行く前くらいから顔がどんよりして誰も声出さない、みたいな状況だったんですけど、それだけはやめようって試合前入る時に言ってたので。
――最後のインカレでしたが、心境はいかがですか
やっぱり鉄棒入る前とかは最終種目なので「これで最後か」って思ったりもしましたけど、あんまり考えすぎないように、それで失敗しても良くないので、自分の持ってるものを出そうっていう感じでした。いざ終わってみると、終わったなあと(笑)。実際チーム戦的にはかなり良かったので、最後がこれなら満足して次の代に引き継げるかなって感じです。
――他のメンバーの演技はいかがでしたか
かなり良かったんじゃないですかね。亜蘭に関してはちょっとぽろぽろとありましたけど、失敗してないところではつり輪とかかなり良かったですし、練習してきたものは全員しっかり出せたんじゃないかと思います。よくやってくれたと思います。
――きょうの演技に点数をつけるとしたら何点ですか
個人的にはもう30点ぐらいですね(笑)。チームは100点ですけど。
――このインカレで大学4年間が一区切りとなりますがいかがですか
早かったな、あっという間だったなっていうのが一番に来るし、かなり辛い時期もあったし、結果がまだ分からないんですけど、これで最終班残れれば、もうやり残したことはないかなと思います。いいチームをつくれたし、頼もしい後輩も育ってきたし、自信を持って送り出せるというか、僕も安心して外に卒業していけるかなっていうのがあります。楽しかったです。とにかく。
南亜蘭(スポ3=大阪・太成学院大高)
――団体を終えて今日は少し悔しそうな表情が目立ちましたがいかがですか
今日はちょっと・・・まあでも練習通りなんで何も言えないです(笑)
――悔しさというのはご自身に対してということでしょうか
そうですね・・・自分が悪いんで・・・自分で結構点数を落としちゃったんで僕が悪いんですけど・・・まあ終わったんでなんも言えないですけど。練習頑張ります(笑)
――4位という結果に対しては率直にいかがですか
まあ実際自分は結構失敗をして迷惑をかけた側なので、4位は嬉しいんですけど悔しいです。ちょっと素直には喜べないですね。チームとしてはまとまった点数が出てたので、今までの中では一番いい演技ができたんじゃないかなと思います。
――最初のゆかやあん馬は良かったように思いましたが6種目はどのような流れで進んでいったのでしょうか
ゆかからみんな13点後半がでて、今までこんないいペースで1種目が終わったことが無かったのでいい流れでいってるかなって思ったんですけど、前半が終わって後半切り替えの時に僕がミスをしてそこから・・・最後の鉄棒も僕がミスをしてそのあと脩もしちゃって点数をかなり落としちゃったんでそこはあと1年で詰めなければなあと思います。
――チームの雰囲気はいかがでしたか
回り方としては・・・トップバッターがしっかり演技をしてあとみんなが続けていくっていう流れが出来ていてチームとしては良かったかなと思います。答え
――6種目の中で良かった種目はなんですか
つり輪だけ完璧でした(笑)
――今日はご家族が見に来られているということですが
そうですね(笑)ちょっとはうまくなってるところは見せられたとは思います。
柏木寅冶(スポ3=千葉・市船橋)
――きょうの結果を受けて率直にいかがですか
個人的には大学来て一番いい試合ができたかなと思います。チームとしても個人としても。
――団体4位という結果に関してはいかがですか
すごいチームの雰囲気も良くて、練習から調子上がってきたので、目標の3位には届かなかったですけど、来年のインカレにいい形でつながるような順位と演技ができたんじゃないかなと思います。
――チームの雰囲気はいかがでしたか
練習よりも盛り上がってましたね。楽しくやってました(笑)。
――滑り出しがとても良かったのではないかと思いますが
そうですね。ゆか、あん馬で耐えたので、そこで勢い乗ったんじゃないかなと思います。
――ご自身の演技を振り返っていかがですか
ゆかは着地を丁寧にできたかなって感じで、あん馬はとりあえず落ちないで通すのを心掛けて、まあ落ちなかったので。つり輪はケガもあってちょっと(難度を)落としたんですけど、そんなにいつもと点数が変わらなかったのでよかったです。跳馬は久々にロペス立てたので、結構うれしかったですね。平行棒、鉄棒は耐えるって感じでした。良かったです。
――他のメンバーの演技はいかがでしたか
耐えるところは耐えて、取るべき人が取って、ちょいちょい惜しいところはありましたけどそれもカバーして、めっちゃ低い点数だった種目がたぶんなかったので、よかったです。
――今回得た課題はありますか
やっぱり平行棒とつり輪が相当穴になってるって感じなので、そこをもうちょい細かいところまで丁寧にできたらいいかなと。0.1とか着地を1つでも多く止められたら、全然合計点が変わってくるんじゃないかなと思います。
山田元大(スポ2=千葉・市船橋)
――4位という結果を受けて率直にいかがですか
まあ目標は3位だったんですけど中身がそこまで悪くはなかったんで頑張った結果かなあと思って、来年はもっと上を目指せるようにもっと練習していこうかなと思います。
――406、150という点数に関してはいかがですか
本当は410に乗せたいっていうのがみんなの目標で、まあ試技会も406点だったんですけど・・・でもチームの雰囲気は良くて耐えるところは耐えてしっかり回れたので。まずまずの出来だったのかなって思います。
――今日はガッツポーズも多くみられました
全体を見て大きなミスもなく耐えて耐えてできたので・・・チームを雰囲気良くさせるためにガッツポーズしたり・・・しました。
――対談では「緊張を楽しむ」ということをおっしゃっていましたが今日はいかがでしたか
緊張めっちゃしました(笑)過去一くらいしました(笑)でもそこは自分に言い聞かせてずっと作り笑いをずっとして「ここを楽しんでいこう」ってやってました。
――チームの雰囲気はいかがでしたか
最初の3種目は大きなミスもなく波に乗って行けたかなと思います。跳馬で1本ミスが出ましたがそれもしっかりカバーしてできたかなって思います。
――後半の種目では少しミスも出ましたが
跳馬終わった後に少し時間が空くんですけど、その時も土屋先生が声をかけてくださってしっかりここから行くぞって気持ちで雰囲気良く回れたと思います。絶対最後まであきらめないっていう気持ちで行けたんで良かったです。
――今日特に良かった種目はありますか
平行棒は自分の中では良かったかなって思います。
――今大会で高橋主将のチームは一区切りつきました
やっぱり一矢さんが7月にナショナル入りをしてチームがそこで一回引き締まってここに臨めたと思います。去年の団体の時からチームとしてはまとまりが出来てきてたんですけど、1人1人が何をしなきゃいけないかっていうのもわかってて・・・一矢さんの作るチームは本当にやりやすかったです。
原田脩(スポ2=東京・帝京)
――4位という成績については率直にいかかですか
結構嬉しいです。
――今日の406.150点という結果を受けていかがですか
僕の鉄棒のミスが無ければもっといい点数が取れたかなと思うので申し訳ないです。
――鉄棒のミスはどうして起きてしまったとご自分ではお考えでしょうか
もともと鉄棒は不安で、早稲田の器具でしかこれまでやってきたことがなかったので・・・
――今日は最終演技者を務めることも多かったと思いますが
みんな前の選手が完璧にやっていたのでプレッシャーもあって正直やりづらかったです(笑)
――今回のご自身の出来は何点くらいですか
60点くらいです。
――以前の対談ではまだ団体メンバーに入った実感が沸かないと仰っていましたが
今日は他の選手の人を見たうえで自分の演技だったので、自分が前の人を見てできることをやろうって思えて・・・実感はわきました(笑)
鈴木海斗(スポ1=千葉・市船橋)
――結果を受けて率直にいかがですか
チームの雰囲気がかなり良かったと思うので、その結果がしっかり出たんじゃないかなと思います。
――1種目目のゆかは上々の滑り出しでした
やっぱり最初のスタートがしっかりできるとエンジンかかってくるので、スタート種目大事だなっていうのはあって、そこで乗れるか乗れないかによるんじゃないかなと。結構みんなで声を掛け合って、しっかり雰囲気つくっていったので。
――ご自身の演技を振り返っていかがですか
大過失、大きなミスはなかったので、そこはよかったかなって思います。でもちょっと平行棒に関して、大過失まではいかないけど中欠点がちょっと多かったかなって感じで、僕が目標としていた点数までは届かなかったので、そこが課題かなと思います。後はいい感じで演技できたかなという感じだったので、全体的にはよかったかなと思います。
――初めてのインカレで団体メンバーとしての出場となりました
高校の時はこういうふうに一度も全国大会に団体戦で出場したことがなかったので、すごいなって感じだったんですけど(笑)、団体戦は誰かにミスが出ても他の人でかばうっていう大切さを、初めて団体戦で出場してみてすごい理解できたので、これからもワセダのチームはそういうところを大事にしていって、もっと雰囲気良くなってくれば、今大会よりももっと上に行けるんじゃないかなと思いました。
――一緒に戦った先輩たちはいかがでしたか
非常に頼もしかったです、僕からしたら(笑)。僕はやっぱりまだペーペーなので(笑)、先輩たちにしっかり頼って、でも自分ができることは精一杯やり切りたいっていうのが自分の中であったので、平行棒はちょっとあれだったんですけど、他はできたかなという感じです。
――次に向けて今回得た課題はありますか
小欠点と中欠点の取りこぼしをしっかり拾っていく練習をするのと、やっぱり上位選手と比べるとまだ技の難度が低いところがあるので、そこを少しでも新人戦までに、1つ2つだけでもいいので増やしていけたら、もうちょい上がっていけるかなという感じがあります。