それぞれの「想い」を抱いて、インカレ個人戦

体操

 8月10日から3日間にわたって行われた全日本学生選手権(インカレ)。この1年に1度のワセダの大勝負は個人戦からスタートした。早大からは2部女子に内山由綺(スポ2=東京・帝京)が、1部男子に佐藤崇太(スポ4=福井・鯖江)、中村唯都(スポ2=愛知・名城大付)、竹端健太郎(スポ1=京都・洛南)の3名がそれぞれ出場した。

 早大のトップバッターを飾ったのは今大会後にアジア競技大会(8月20~24日、インドネシア・ジャカルタ)を控えている内山由綺。試合前の対談で「アジア(競技大会)と同じ演技が出来るように」(内山)と意気込んでいた内山は、2部での出場だけにまさに『別格』の演技を見せる。演技1種目目はアジア競技大会の種目別選手権でも演技予定の代名詞、段違い平行棒。本番では思わぬ落下が見られ本人は「大切にしていた種目だけに結構残念」(内山)と悔しい結果となった。しかしさすがの内山は他を寄せ付けない高い演技構成でこの種目を1位で終えた。続いて2種目目に演技をしたのは平均台だった。この種目は内山にとって今季特に力を入れてきた種目だ。「平均台もぜひ見てほしい」(内山)と意気込んで臨んだ演技は今季の中で1番といえるほどの高演技を見せる。今季に目立っていた落下もなく、見事な演技で得点は14.100。こちらも1位をマークした。続くゆか、跳馬も大きなミスなく演技をまとめ、内山は今大会全種目1位を獲得して2部完全優勝を成し遂げた。また今回の内山の総合53.950点という得点は1部校の選手がマークした得点と照らしてもトップの成績だった。なお内山は2日後に行われた個人総合選手権の結果によって得た種目別選手権の出場権はアジア競技大会に向けた調整の為全て放棄している。

2部完全優勝の内山

 続いて大会2日目に登場したのは男子の3選手。演技はつり輪からスタートした。ここではインカレ初出場の竹端が好演技を見せる。「緊張して脚が震えた」(竹端)と試合後こう漏らしていた竹端は、ピタっと決まった着地に小さくガッツポーズを見せ、幸先の良いスタートとなった。続いて迎えた跳馬では3人ともに着地で乱れが出る。チームトップの演技を見せた竹端は、高いEスコア、8.850点で13.650をマークした。3種目目の平行棒では中村にバーの持ち直しや着地の乱れなど、細かいミスが目立ち少々悔しい結果となった。一方の佐藤は演技中、腕が曲がってしまうなど細かいミスはあったものの見事に着地を成功させ、後の鉄棒でも着地をピタリと止めたまとまりのある演技を見せた。佐藤はこの鉄棒の演技に思わず笑みをこぼした。続くゆかでは竹端に尻もちをついたり、着地で前かがみになったりするミスが見られ、中村も同じくバランスを崩すなど、演技の出来栄えに少々の低さが露呈する結果となった。最終種目のあん馬では中村、竹端に落下などのミスが出る中、佐藤は「気持ちよく終わることが出来た」(佐藤)と本人も納得の演技を見せた。佐藤にとって「最後のインカレ」となった今大会は同時にワセダとして出場する最後の大会でもある。「あん馬の手を上げる直前くらいで、「もうこれ本当に最後だな」って・・・」(佐藤)とこんな想いを抱きながら佐藤にとって特別な6種目は終わった。「ちょっと甘いかもしれないけど、今大会は80点くらい(笑)」(佐藤)、佐藤はやり切った表情で試合を振り返っていた。

最後のインカレに挑む佐藤

 「別格」の演技でその強さを見せつけた内山に始まり、「最後のインカレ」、試合後のインタビューではその特別な想いに大粒の涙を流した佐藤。緊張しながら「初めてのインカレ」に挑んだ竹端や、東日本学生選手権での団体メンバーから今大会惜しくも悔しい個人戦出場となった中村。それぞれがそれぞれの「想い」を抱えて臨んだこの個人戦。今大会が新たなステージへのステップとなったことを確信し、これからも挑戦は続く。

(記事 脇田真悠子、写真 村田華乃)

結果
女子個人総合
選手名 跳馬 段違い 平均台 ゆか 合計点 順位
内山由綺(スポ2) 13.500 13.200 14.100 13.150 53.950 1位
男子個人総合
選手名 ゆか あん馬 つり輪 跳馬 平行棒 鉄棒 合計点 順位
佐藤崇太(スポ4) 13.150 12.400 12.700 12.550 12.550 12.950 76.300 69位
中村唯都(スポ2) 11.750 11.550 13.150 12.700 12.700 12.350 74.200 90位
竹端健太郎(スポ1) 11.950 10.800 12.900 13.650 13.300 12.100 74.700 74位
コメント

佐藤崇太(スポ4=福井・鯖江)

――演技を終えて率直にいかがですか

ようやく終わって少しずつ、最後のインカレだったんだなっていう実感が湧いてきましたね。

――ご自身の演技を振り返って

元々腕を痛めていたのでDスコアを下げての演技になったんですけど、大きいミスはできるだけ出さないように、大過失なく終わろうっていうのを目標に頑張って取り組みました。

――その目標通りミスの少ない演技だったと思いますが

そうですね、こらえながらの演技ではあったんですけど、何とか粘って、最後のあん馬とかもすごい緊張したんですけど、気持ち良く終わることができたかなって感じですね。

――あん馬の後のやり切った表情が印象的でした

感無量じゃないですけど(笑)、練習の成果出せたなっていうか、頑張った分出せたのでよかったなと思います。

――個人戦での出場にはなりましたが、その点についてはいかがですか

去年くらいから団体に入りたいなっていうのはあって、最後の最後まで団体メンバーを争って、結局漏れちゃってっていう流れにはなったんですけど、自分がやることやってそれで漏れちゃったってことだったので、当然悔しいですけど、自分の力通りだったので、そこはしょうがないとは思ってますね。ただ、個人でも団体でもやることは変わらないと思ってたので、自分にできる限りのことをしようと思って、精一杯やりました。

――最後のインカレということで、心境も例年と違ったのではないでしょうか

試合にいざ入ってみると、いつも通りの試合って感じだったんですけど、あん馬の手上げる直前くらいで、「もうこれ本当に最後だな」って思って。最終種目のあん馬は、本当に気持ちが今までと違うような、ちょっと特別な思いっていうのはありましたね。

――今回の演技に点数をつけるとしたら何点ですか

ちょっと甘いかもしれないですけど、80点くらいつけてもいいのかなって(笑)。

――残りの20点はどのような部分でしょうか

やはり細かいところを詰め切れてないところがあったかなって思うんですけど、まあ20点は反省点で、80点は練習通りのことが出せたなっていうところですね。長い間ずっと体操だけやってきたので、本当にその成果が出せたかなって感じです。

――今後の予定は

ワセダとして出る試合は今回が最後で、2週間ほど後に国体予選があって、それで一つ区切りをつけようかなって感じです。その後はちょっと個人的なこと、将来的なことがあって、あと教育実習があったりとかでなかなか忙しくて。そっちの方に時間割かないといけないので、次の国体予選で最後ですね。

――体操は国体予選をもって終えられるということでしょうか

一応ちょっと考えてるのが、将来的に教員になりたいんですけど、もし体操部のある高校とかに就けたら、指導者として、また選手とは違うかたちで体操に携わっていけたらいいなっていうのは思ってます。

――早大での4年間はいかがでしたか

本当に特別才能もセンスもないですけど、自分なりに頑張ってこれて、こうやって大会にも出させてもらって、いろんな人に応援してもらって、支えてもらって、最後までやり切ることができたので、よかったかなと思ってます。

内山由綺(スポ2=東京・帝京)

――今日のコンディションはいかがですか

朝が早くてまだ起ききってなったんですけど、悪くはなかったかなって感じです。

――全種目1位での完全優勝でしたがお気持ちはいかがですか

段違い平行棒を失敗してしまったんですけど、それ以外の種目はまあまあだったかなって思って、全部優勝っていう部分では結構嬉しいです。

――以前見てほしいと仰っていた平均台についてはいかがですか

今までの中ではまあまあ・・・試合の中では良かったのかなって思います。

――演技全体を振り返っていかがですか

段違い平行棒は自分の中でも大切にしている種目なので、失敗してしまった部分は結構残念なんですけど、平均台は力を入れてやってき端で、そこの部分はまあまあ結果が出てよかったなあと思います。

――コーチであるお母様からはどんな言葉をもらいましたか

段違い平行棒に関しては「起きなくてもよかったと思う」ってことを言われました。平均台は「あれがいつも試合で出るといいね」っていう感じでした。

――今日は応援席に手を振る仕草が多く見られました

今までずっと個人でやってきて応援とかもあんまりなかったんで、楽しかったです。

――最後に今後の課題をお願いします

アジア大会は段違い平行棒と個人総合団体で金メダルを目指してやって、課題は段違い平行棒の部分と、平均台のふらつきを完全になくすことで、ひとつひとつ減点をなくすことを意識していきたいです。

中村唯都(スポ2=愛知・名城大付)

――今回の演技を振り返っていかがですか

前半は良かったんですけど、最後の2種目で崩れてしまったかなっていう感じです。ゆかの着地とかあん馬で落ちてしまったり。跳馬もあんまり良くなかったんですけど・・・。

――後半は疲れがあったのでしょうか

疲れはちょっとあって、腕は疲労があったんですけど、絶対通そうっていう気持ちであん馬はやったんですけど、落ちてしまいました。

――コンディションはいかがでしたか

コンディションは良くて、アップの段階でも、きょうはノーミスでいけるんじゃないかなって思ったんですけど、それでもできなかったっていうのは、ここからの課題でもあるし、練習しなきゃいけないなっていうのは思いました。

――後半に崩れてしまった原因について何か思い当たるものはありますか

僕、練習の時から6種目ノーミスっていうのはなかなかできてなくて、2ミスとか3ミスとか普通にしちゃってたので、練習で出ることが試合でも出ちゃったなという感じです。

――今回は個人戦での出場となりました

団体メンバーに入ることを目標にしてずっとやってて、東(東日本学生選手権)の時は入れたんですけど、結果は良くなくて。インカレでは外れてしまって、目標は達成できなかったんですけど・・・。来年はメンバー入りたいなと思います。

――今回得た次への課題はありますか

全日本団体とかには貢献できればって感じですけど、来年に向けてやっていかなきゃいけないなと思います。

竹端健太郎(スポ1=京都・洛南)

――今日のコンディションはいかがでしたか

体は動いていてコンディション的には良かったです。

――今大会がご自身にとって初めてのインカレでしたがいかがでしたか

めっちゃ緊張しました(笑)結構演技にでるタイプなんですけど、今日も脚とか震えたりしました。

――今日の演技を振り返っていかがですか

体は動いていたんですけど、ミスが出て残念です。平行棒が練習よりいい感じで演技できました。あと鉄棒とゆかがあんま良く無くて・・・鉄棒とかゆかは練習でもあんまりミスが出なかったので悔しいです。

――つり輪ではガッツポーズも見られました

着地が決まったんで・・・って感じです(笑)

――今日の出来は何点くらいですか

まあ3~40点くらいです(笑)