昨年に続き2位入賞!課題克服し、いざ世界へ

体操

 『ワセダの妖精』が意地の巻き返しを見せた。全日本学生選手権(インカレ)に、河崎羽珠愛(スポ2=千葉・植草学園大附)が出場。昨年の同大会では1年生ながら2位という好成績を収めており、今回も優勝候補の一角と目されての出場だった。ところが最初の種目フープでつまずき、まさかの8位というスタートに。それでも、その実力は本物だった。続くボール、クラブで圧巻の演技を見せると、最終種目リボンでも15.400の高得点をたたき出し、終わってみれば1位に0.7点差にまで迫っての2位。その地力もさることながら、ミスを引きずらずタフに踊り切った河崎の精神力が光る大会となった。

 1日目はフープ、ボールの2種目に挑んだ。1種目目のフープでは、今季はアップテンポの曲を使用している。最初の投げ技は高さ十分、余裕を持ってキャッチし笑顔を見せた。ここで勢いづいたかに見えたが、その直後。演技中にフープが手をすり抜け、まさかの落下。場外となってしまい、とっさの判断で予備の手具と取り換え演技を続行することに。その後は大きなミスなく個性的な振りを河崎らしく踊り切ったが、やはり序盤での落下が減点対象となり得点は13.800と伸び悩んだ。しかし、河崎は動じない。続くボールではフープでのミスを取り返す会心の演技を披露した。しっとりとした曲に乗せ、長い手足を生かしたのびやかな舞で15.550と全体トップの点数をマーク。底力を見せつけ、全体4位で1日目を終えた。

本来の青いフープではなく予備の白いフープで演技を続けた

 2日目の種目はクラブとリボン。先月の全日本クラブ選手権(クラブ選手権)では得点が伸び悩んだ2種目だ。また、前日のフープでの減点が響きトップとの差は1.6点。そんな中でも「順位を考えるのではなくて、自分の演技をしっかり決めよう」と平常心で臨んだことが結果につながった。情熱的な振り付けのクラブでは難易度の高い技を次々に成功させ、その表現力では観客をうならせる。体力的に厳しくなる後半もエネルギッシュに踊り切り全体2位の点数をたたき出した。そして迎えた最終種目のリボン。ここでの得点が総合順位を左右する正念場だ。しかし河崎はそんな気負いを全く感じさせない。リズミカルな曲に合わせたかわいらしいステップを見せたかと思うと次の瞬間には大胆な投げ技を見事に決め、さまざまな表情で観客を魅了する。高得点で総合点を伸ばし、総合順位を2位に押し上げた。

全体2位の15.000を獲得したクラブ

 昨年と同じ2位という結果に対し、河崎は「ちょっと悔しい」と口にする。しかし、今回の『2位』は全種目で表彰台に上った昨年と違い、8位スタートから巻き返した結果。後半2種目で崩れ「後半の集中力」を課題に挙げたクラブ選手権から1カ月もたたず迎えた本大会で、その課題をしっかりと克服してみせた。そして、何よりも印象的だったのは演技中のはじけるような笑顔。多彩な演技と表情で、大切にしているという『踊る心』を見事に表現した。2位という結果以上に収穫のあった本大会だが、河崎の夏はまだまだ終わらない。約1週間後にはユニバーシアードが控えているのだ。いよいよ、自身の中で最も大きな目標としている大舞台へ。『ワセダの妖精』がいざ、世界へと羽ばたく。

(記事 久野映 写真 大浦帆乃佳、村田華乃)

☆ワセダの妖精再び舞う――全力を注いだ種目別決勝

3日間の戦いをリボンで締めくくった

 3日目に行われた種目別決勝。河崎は4種目全てで決勝に進み、前日までの個人総合のミスを払しょくすべく挑んだ。個人総合の結果を踏まえ、1種目目のフープでは試技順は全体で1番。予選では手具を場外に出してしまい予備手具を使用せざるを得なくなったが、この日は失敗を感じさせないのびのびとした舞で観客を魅了した。「もたもたしてしまった」と語ったボールは演技前半のミスが響き、修正が間に合わず8位に沈む。得意のクラブは大技を次々と決め、細かなミスはあったものの個人総合に比べ得点が向上した。しかし演技中に足を痛めてしまい、最終種目のリボンに不安を残すことに。それによりリボンでは、ケガの影響を最小限に抑えるため技の難度を落としたが、高い対応力が功を奏し結果は2位。怒涛(どとう)の3日間8種目が幕を閉じた。

(記事 榎本透子、写真 村田華乃)

結果

個人総合決勝兼種目別予選
選手名 フープ ボール クラブ リボン 合計点 順位
河崎羽珠愛(スポ2) 13.800 15.550 15.000 15.400 59.750 2位
種目別決勝フープ
選手名 結果(順位)
河崎羽珠愛(スポ2) 16.550(2位)
種目別決勝ボール
選手名 結果
河崎羽珠愛(スポ2) 13.600(8位)
種目別決勝クラブ
選手名 結果
河崎羽珠愛(スポ2) 15.150(3位)
種目別決勝リボン
選手名 結果
河崎羽珠愛(スポ2) 14.600(2位)
コメント

河崎羽珠愛(スポ2=千葉・植草学園大付)

――インカレ3日間の自身のコンディションはいかがでしたか

ユニバーシアード前ということもあり、調整するための試合でもあったんですけど、身体的にも気持ち的にも悪くない状態でした。でもまだまだミスが出てしまうのでそこはユニバーシアード直前まで練習したいと思います。

――インカレの位置付けはユニバーシアードの調整、ということですか

そうですね。ユニバーシアード前というのもありますが、大学の1番大きな大会だったので、個人総合2位でしたが満足はしています。

――個人総合のそれぞれの種目を振り返っていかがですか

フープはちょっとアクシデントのような感じのミスがあったんですけど、そこから立て直せたので良かったと思います。ボールはフープのミスから気持ちを切り替えて、ノーミスで演技することができたのでよかったです。次の日のクラブとリボンはまた新たな気持ちで臨んで、順位どうこうを考えるのではなくて、まずは自分の演技をしっかり決めようということを重視しました。なので2種目ともうまくまとめることができました。

――フープでミスがあり、ライバルと差がついてしまいましたがどのように切り替えましたか

ミスしたときは「やばい」って思って、場外もしてしまったのでそこから予備手具に切り替えて、ミスを引きずらないように、今まで練習してきたことを考えながら演技しました。

――「2位」という順位についてはどのように考えていますか

昨年よりはコンディションはいいので自分の今できることを出せたのは良かったんですけど、昨年と同じ順位なのでそこはちょっと悔しいです。

――河崎選手への応援が聞こえましたが、どなたが来ていらっしゃったのですか

ワセダの体操部の方はいないんですけど、昨年から他の大学の方々が応援してくださっているので力になっています。

――ここから種目別選手権についてお伺いします。全体を振り返っていかがでしたか

個人総合からミスしたところを修正できればいいなと思っていたので、ボールはちょっともたもたしてしまって残念でした。身体も悪くはなかったんですけど最後の方に足を痛めてしまったので、その中でもできることはできたかなと思います。

――足を痛めてしまったのはいつですか

クラブでジャンプをした時に痛めてしまいました。

――その後のリボンへの影響は

かかとを上げる技の難度を下げたりしました。

――ボールの得点がふるわなかった印象がありましたが、うまくいかなかった点は

最初の(ボールを)転がして側転、という技で、右側を転がそうと思ったんですけどそこが転がってなくて背中から落ちてしまったので、そこからもたついてしまって修正するのに時間がかかってしまいました。

――フープは個人総合に比べて成功していましたが、どのように修正しましたか

ミスした技のコツを思い出してやりました

――種目別で全て1位を獲得した立澤孝菜選手(国士舘大)についてはどうお考えですか

同じクラブチームで練習している子なので、いい刺激にもなります。ユニバーシアードも一緒に頑張ります。

――ユニバーシアードに向けての意気込みをお願いします

大学生の世界選手権ということで、自分でも挑戦する気持ちを持って最後まで楽しんで踊れたらいいなと思います。