柏木が跳馬で3年連続本選へ

体操

 中学生から元世界選手権代表までもが一堂に会する全日本種目別選手権トライアル(トライアル)。前日に行われた全日本個人総合選手権の種目別での成績と合わせて、上位24名が6月の全日本種目別選手権(本選)へ進むことができる。種目によっては70名ものエントリーがあり、通過するのは至難の技。そんな中、早大からは柏木寅冶(スポ2=千葉・市船橋)が跳馬で3年連続の本選出場を決めた。

 トライアル通過を目指したのは佐藤崇太(スポ3=福井・鯖江)と柏木。会場に緊張感が漂う中、佐藤は自分のペースで演技をこなしていく。しかし、倒立の際に手をずらしてしまうなどの減点要素が響き、悔しい結果となった。柏木は大技ロペスに挑戦したが、着地が乱れマットから大きく出てしまう。それでも2本目の跳躍では10点満点のEスコア(出来栄え点)で9.1を得て挽回、2本の平均点により本選へと駒を進めた。柏木と高校時代もチームメートだった山田元大(スポ1=千葉・市船橋)は今大会が大学デビュー戦。けがの影響で練習を思うように積めなかったというが、新技を盛り込んだ構成で着地までまとめ上げる。「やり切れただけよかった」(山田)と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

見事本選への出場を決めた柏木

 トライアルと同時に、6種目の総合力で競う個人総合も繰り広げられていた。夏に開催されるユニバーシアードの代表選考のため、大学1部校や卒業後2年以内の選手が所属する社会人チームには一つずつ推薦枠が与えられる。早大の枠を勝ち取ったのは南亜蘭(スポ2=大阪・太成学院大高)。気合い十分で臨んだが二種目目のあん馬でまさかの落下、大きく後れを取ってしまった。「1つでもミスをしたら終わり。(あん馬の)後は気持ちが入らなくてきつかった」(南)。しかし、この脱力はダイナミックな演技を生み出す。余計な力みがなくなったことにより、後半種目は体を思い切り使った雄大な実施で14点前後の好評価を連発。結果には決して満足しないだろう。だが、今後に生きる経験を得た。

南はあん馬で落下してしまった

 次に控える試合は東日本学生選手権。夏の大一番・全日本学生選手権のいわば前哨戦だ。トライアルに出場した3名は得意種目で、そして南は総合力でチームに貢献することが求められる。残されたわずかな時間の中でそれぞれが自身の課題と向き合い、今回出すことができなかった納得の演技を見せてほしい。

(記事 大浦帆乃佳、写真 村田華乃)

☆OB浅野が鉄棒で本選へ

 悲願の鉄棒日本一へ、浅野佑樹(平28スポ卒=現早大大学院)が上々のスタートを切った。高難度の離れ技を車輪を挟まずに続けて成功させると、勢いそのままにフィニッシュへ。微動だにしない着地で本選出場を確実なものとした。ウオーミングアップの時点で会場からどよめきの声が上がるほど、見る人を引きつける浅野の鉄棒。本選では難度、完成度ともにレベルを上げて挑むつもりだ。頂点をつかみ取り、競技人生を有終の美で飾れるか――。

(記事 大浦帆乃佳)

結果

ゆか
選手名 結果(順位)
南亜蘭(スポ2) 13.750(55位)
跳馬
選手名 結果(順位)
浅野佑樹(早大大学院) 13.700(19位)
柏木寅治(スポ2) 13.650(20位)
平行棒
選手名 結果(順位)
佐藤崇太(スポ3) 14.000(35位)
南亜蘭(スポ2) 13.950(41位)
鉄棒
選手名 結果(順位)
浅野佑樹(早大大学院) 14.250(9位)
南亜蘭(スポ2) 13.850(28位)
山田元大(スポ1) 13.750(35位)
つり輪
選手名 結果(順位)
南亜蘭(スポ2) 13.200(61位)
あん馬
選手名 結果(順位)
南亜蘭(スポ2) 9.100(138位)
コメント

佐藤崇太(スポ3=福井・鯖江)

――今大会の目標は

この大会を通過して、さらに全日本種目別選手権の決勝に出るということを目標にしてきました。

――具体的な点数などは決めていましたか

一応、去年の点数をめどに設定して、14.300くらいは取らないといけないな、っていうのは自分の中でありました。(ルールが変わって)Dスコア(技術点)が単純に0.5下がるので、きょねんは14.800くらいを目標にしていました。

――惜しくも0.3届きませんでした

緊張感のある中で、自分の演技ができたなとは思うんですけど、細かいところまで詰め切れていなかったなっていうのがこの点数なのかな、と思います。

――練習ではもっと出来のいい実施が出ていたのでしょうか

一昨日の会場練習で、限られた時間の中でもバシっといい実施ができたので、本番でも良いかたちで出せればと思ったんですけど。とりあえず、大きなミスなくやり切れたのは自分の中で収穫ですね。

――自信にもつながりますか

そうですね。

――この試合に向けたコンディションづくりはうまくいきましたか

5月末にある東インカレ(東日本学生選手権)に向けて、6種目通しながら平行棒を重点的にやっていく、という方法で調整してきました。

――トライアルに向けて特に力を入れて練習してきたことは

去年とDスコアは変わらないんですけど、演技の質にこだわってやってきました。技の終わりに手ずらしっていう減点が要所要所で出てしまったので、そこはもったいなかったと思います。

――東インカレに向けて見つかったことはありますか

いままでは、自分は団体メンバーに入れるか入れないかくらいのポジションで。上の選手についていくっていう感じだったんですけど、自分が3年生になるということで、下級生や他の人を引っ張っていくという立場になるので、6種目通して失敗しないでやり切るっていう姿を後輩に見せて、活気づけるじゃないですけど、そういう役目を担っていきたいと思います。

――今シーズンの目標をお聞かせください

1番の目標はインカレ(全日本学生選手権)で良い演技をして、個人的な目標になるんですけど、大学選抜(U21)に入る最後のチャンスになるので、この冬場、それに向けてしっかり練習してきたつもりなので、ことしこそは。

柏木寅冶(スポ2=千葉・市船橋)

――どのような意気込みで臨みましたか

通過するのはもちろんなんですけど、しっかり成功させた上で通過するっていうのが目標でした。

――具体的な数字は

数字は特に考えていませんでした。

――ご自身ではどのくらい達成できたと思いますか

4割くらいですかね。

――演技全体振り返っていかがですか

練習から結構調子よかったんですけど、試合になったときに練習通りにできなかったっていうのが、ちょっと駄目だったかなと思います。入れ替えて2本目はうまくできたのでそれはよかったと思います。

――1本目の後、足を気にしているように見えましたが…

1本目でちょっとつまっちゃって足首とかちょっと痛かったんですけど…。

――2本目への影響は

それは大丈夫でした。

――1本目の失敗の原因はどのように考えていますか

つきがうまく合わなかったっていうのもあるんですけど、そんな悪い感じはしなかったのにそれで転んでしまったので、練習でその原因を見つけていかないとなという感じです。

――オフシーズンに強化したことは

跳馬は特になくて、つり輪の力技をちょっと頑張ったり鉄棒の離れ技を頑張ったりしていました。

――終わった後監督と何を話していたのでしょうか

なんで失敗したのか、何が原因だったのかっていうのを話していました。

――その時は監督に何と言いましたか

つきは悪くなかったんですけど、うまくできなかったです、と。あと、成功するポイントは何だと言われて、つきが入ったときですって言ったんですけど、今日は結構つきが入っていたのに立てなかったからそこがポイントじゃないんじゃないか、と言われて…。

――今回、得意種目のゆかにエントリーしなかったのはなぜでしょうか

得意なんですけど、出ても(予選を)通過しないので出ませんでした(笑)。

――次の試合への意気込みをお願いします

次は東インカレですかね、とりあえず(団体戦の)メンバーに入って、ミスなく演技することです。

――今シーズンの目標は

インカレが一番の目標なんですけど、インカレで団体メンバーに入って、(早大の演技グループを)元に戻すことと、個人的にはU21日本代表に入ることです。

南亜蘭(スポ2=大阪・太成学院大高)

――きょうの試合を振り返って

終わってしまったことは仕方ないって感じです。落ち込んでるとかではないですけど、1つミスしたら(決勝には行けない)厳しい試合だったので、あん馬で落ちてしまった時点で「もういいや」っていう感じでした。

――その後の演技はどんな気持ちで演技していたのでしょうか

結構きつかったです。気持ちが入らなかったです。

――ユニバーシアード枠での出場でしたが、どのようにして選ばれたのですか

試技会で自分が1番になったので出させてもらえることになりました。みんなからたくさん応援してもらってたので、頑張らなあかんなと思ってたんですけど…。二種目目でミスっちゃったんで、その後きつかったです。

――冬場に強化してきたことは

全種目でDスコア(技術点)をちょっとずつ上げていこうかなと思ったんですけど、そんなに上がらなくて。あんまり冬に成長できなかったのでこのような結果になったのかなと思います。

――今大会の目標は

(予選を)通過してNHK杯に行くことです。

――試合に向けてのコンディションはいかがでしたか

試合になると気持ちも上がって、それまで調子が悪くても試合になれば良くなったりするので。あんまり関係ないですね。本番のほうが力を発揮できます。

――ゆかでは上々のスタートを切りましたね

最初の種目だったし気合い入ってたので。いつも通りでした。

――つづくあん馬では惜しくも落下がありました

自分でも意識してるので、仕方ないかなと思いますね。

――その後の種目にもこのミスは響きましたか

次のつり輪では力が入らなくて。結構力の強化をしてきたんですけど、メンタルやられて力が入りませんでした。

――跳馬で着地を決めた後でも複雑な表情が印象的でした

「ここで(良い実施が)出るか」と思って(笑)。着地は結構止まるんですけど…なんとも言えなかったです。

――つづく平行棒、鉄棒は

緊張もなにもなくて。ただ、普段の通し練習みたいな感じでした。

――やはり、あん馬が悔やまれますか

そうですね。会場練習でも通せてて。でも、あん馬自体が練習してもあんまり伸びないです。練習の仕方を変えないとですね。

――東インカレに向けての課題は

あん馬以外は通用すると思っているので、あとはどれだけ安定してDスコアを上げられるかですね、東インカレまでに。

山田元大(スポ1=千葉・市船橋)

――大学生としての初試合でした。振り返っていかがですか

けがをしていてあまり練習を積めていなくて。良くはなかったですね。

――どこを痛めているのでしょうか

高校生の時から腰をずっとけがしていて。最近は痛みも強くなってきて良い練習ができませんでした。試合直前のきのうも一昨日も全然練習できなくて、やり切れただけよかったです。

――鉄棒の演技でこだわってきたことは

一つ課題として、開脚モズニクという技を。腰の影響であまり練習できなくて、本番でもかなり悪い出来になってしまいました。この冬から練習し始めて、初めて試合で(構成に)入れて使えたという点についてはよかったかなと思います。

――トライアルにもエントリーされましたが、得意種目は鉄棒なのでしょうか

そうですね。

――苦手種目は

跳馬ですね。

――今大会の目標は何でしたか

具体的に何点、っていう目標はなかったんですけど、ちゃんと自分の演技を通し切るということですね。一つ一つ思い切って演技するようにすれば、と。点数は全然気にしていなかったです。

――練習環境の変化には慣れてきましたか

年明けくらいから早大の練習に参加させてもらっていたので、いまはだいぶ慣れました。最初は器具が違ったりして合わせるのが難しかったです。

――早大での四年間はどんなものにしたいですか

この四年間で、自分が納得するまではやりたいんですよ。その後(競技を)続けるのかもこの四年間のうちに決めたくて。毎試合ミスが出ないようにやっていって、自分が納得できるように、っていう感じです。

――今シーズンの目標は

同世代が強いので、その中でも大学選抜(U21)に入れたらいいなと思います。

――東インカレへの意気込みをお願いします

けがもあって、このまま本調子で続けられないと思うんですけど、その中で、どうやって点を取りにいくかっていうのを毎回練習で考えながらやっていきたいです。

浅野佑樹(平28年スポ卒=現早大大学院)

――今回の目標は

大げさに言って(鉄棒で)『一番』を取ろうと思っていました。そのためにはDスコア6.4で、Eスコア8.4と思っていたんですけど、Dスコアが間に合わなかったので6.1にしてやりました。そうしたらもちろん順位が下がってしまうんですけど、確実に本選で戦うために、14.100をとりあえずノルマとして練習してきました。

――今回はそれを達成できたということで…

そうですね。ぎりぎり(笑)。

――跳馬の2本目で尻もちをついてしまいましたが、原因は

ビデオを見ないとちゃんとは分からないんですけど、自分の感じ的にはよく走れていると思って、しっかりつきもできた。それでタックルした時に回転してないなと思ったらこけていました。

――鉄棒は素晴らしい実施でしたが、ご自身ではいかがでしたか

会場入ってから慣れない体育館ですごい合ってなかったんですけど、最後にサブ会場でアップしていて、成功するまでアップしようと思ってたら、最後の最後にかみ合ったというか、自分の中でできるぞ、という自信が出てきて。最後の一本アップでも、一番心配だったコールマンからのとばしが成功できたので、これならいけるなって自信持ってやりました。

――もし予選通過できなかったら今大会が最後かもしれないというプレッシャーはありましたか

プレッシャーというか、それが実力なんだっていつも思ってるんですけど、良くても悪くても実力しか試合では出せないと思っているので、これで終わりなら終わりで、ただ死ぬこともないし、楽しんでやるしかないかなと思って試合に臨みました。

――次の試合への課題はありますか

最初のアドラー1回ひねりっていう技があるんですけど、まだ自分の中でしっくりきていないままとりあえず成功させることにしか重きを置けなかったので、倒立にはめる一部をもっと大事にして、あと姿勢欠点とかがないように。Dスコアを高める練習をやっていきたいと思います。

――本選までにDスコアを6.4まで持っていくということでしょうか

そうですね。技はそろっているので、あとは体力と、きれいにやったらあまり疲れないので、きれいにできるようになったら自然と技は入れられるんじゃないかなと思います。