一年間の集大成となる全日本学生選手権(インカレ)。昨年団体5位という結果に涙をのんだ早大は、ことしこそ長年の悲願である3位を取ろうとリベンジに燃えていた。しかし、理想の試合運びをインカレの大舞台で行うことは難しかった。得意のつり輪、跳馬で好スタートを切ったが、その後ミスがだんだんと露呈し始める。なんとか演技をつないでいくも、最後に迎えた鬼門の種目・あん馬で得点を大幅に落としてしまった。総合順位は1部校12チーム中7位。目標である3位どころか、上位6校で構成される最終班から降格してしまった。
滑り出しは思いのほか順調であった。この大会で引退となる岸本邦秀(スポ4=兵庫・市尼崎)がトップバッターを務めたつり輪で丁寧な実施を行うと、高橋一矢(スポ2=岐阜・中京)は気迫のこもった演技を披露。得意種目で14.950とハイスコアをマークした。続く跳馬では、メンバー全員が実力を十分に発揮する。最初の2種目で全員が着地をそろえた早大。この調子でいけば団体3位は夢ではないかもしれない――。そう思われた矢先、平行棒で岸本が終末技で失敗。また近藤宏紀(スポ3=福井・鯖江)が離れ技を行う際に落下してしまう。チームの歯車が徐々にかみ合わなくなっていった。
チームに暗雲が立ち込める
第4種目の鉄棒で悲劇が襲った。序盤に近藤が落下し、演技を続行できなくなる予想外の事態が発生したのだ。「本来ならば、あそこで船は沈んでいるはずでした」(馬場亮輔監督、平18人卒=埼玉栄)。しかし直後の演技者である竹中貴一(スポ3=福井・鯖江)はこのアクシデントに全く動じず、自身最高の演技を行う。ピタリと着地を止め、チームに勢いをもたらした。浅野佑樹主将(スポ4=東京・明星)は難度の高い離れ技を次々と成功させ、15.100という高得点をたたき出す。その後のゆかで近藤が痛みをこらえながらの演技を披露。唯一の1年生である南亜蘭(スポ1=大阪・太成学院大高)も勢いのある実施で試合を活気づけた。だが、最終種目のあん馬でチームの勢いが止まる。第一演技者の南が落下。続く選手が粘りの演技を見せるも、思うように点数を伸ばせず。ここまで力強い演技でメンバーを引っ張ってきた浅野主将も、落下してしまう。結果として早大は、この種目で得点を大きく落としてしまった。
1部校の上位6チームで構成される最終班からも降格してしまった
団体3位を取るために、どんな苦労もいとわなかった。この日のためだけに、何度も調整を重ねてきたはずだった。だからこそ突きつけられた『団体7位』という現実は、あまりにも残酷だった。「みんな悔しい気持ちで、今までにないくらい真剣に体操を考えるきっかけになった」(浅野主将)。この経験を無駄にせず、確実に次につなげなければいけない。それぞれの実力をメンバー全員が出し切り、互いを支え合うチーム力が発揮されたとき、団体3位への道は必ず切り開かれる。
(記事 中村ちひろ、写真 大浦帆乃佳)
結果
男子団体総合 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
選手名 | ゆか | あん馬 | つり輪 | 跳馬 | 平行棒 | 鉄棒 | 合計点 | 順位 |
浅野佑樹(スポ4) | 14.450 | 11.500 | 14.300 | 15.000 | 14.350 | 15.100 | 84.700 | 23位 | 岸本邦秀(スポ4) | 14.100 | 14.050 | 13.350 | 14.400 | 13.500 | 14.300 | 83.700 | 36位 |
近藤宏紀(スポ3) | 13.800 | 12.400 | 14.000 | 14.250 | 12.900 | 0.000 | 67.350 | 112位 |
竹中貴一(スポ3) | 14.100 | 13.700 | 14.650 | 14.350 | 14.050 | 14.100 | 84.950 | 18位 |
高橋一矢(スポ2) | 14.400 | 13.950 | 14.950 | 14.800 | 14.300 | 13.750 | 86.150 | 8位 |
南亜蘭(スポ1) | 14.200 | 11.350 | 13.650 | 14.400 | 14.150 | 13.100 | 80.850 | 70位 |
チーム得点 | 71.250 | 65.600 | 71.550 | 72.950 | 70.350 | 70.350 | 422.050 | 7位 |
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コメント
馬場亮輔監督(平18人卒=埼玉栄)
――団体戦が終わった直後のお気持ちをお聞かせください
竹中や高橋は我慢して良い試合ができていましたね。すごく良い選手と、すごく悪い選手、その両極端がいました。なので、気持ち的には半分半分でしたね。個人のことを考えると、実力を出せてUー21代表に入って目標を達成できた選手がいて。チームで考えると、せっかく良い演技で引き上げたのを足を引っ張ったっていう残念さはありました。
――東インカレでも同じようなことをおっしゃっていました
だから、変わってないんですね。東インカレとメンバーを変えても、弱いやつらが結局強くなってない。強い選手は東インカレと一緒でした。そこを叩き上げたつもりだけど、僕の叩き上げ方も悪かったというふうに思っています。後から、「あの時こうすればよかった」と、たらればですけど。選手もそういうふうに思っているし、指導者も考えさせられる部分があるなと。
――叩き上げる、というのは
たとえば、会場練習でノルマの練習を決めたり通し練習をさせたりするんですけど、平行棒の練習だけは選手自身に任せるフリー練習にしました。短い時間と決まっていたので、自信があるやつは通さなくてもいい、心配なやつは1本通しておけ、というふうに選択制にしました。僕は選手を信頼していたから、任せきりにしていたけど、この時に、心配なやつに「お前は1本やれよ」と伝えておけば、また結果は違ったかな、と思います。
――7位という順位について
(6位までが入れる)最終班から漏れたということは、レベルが1つ下がった体操をしてしまった、そういう試合をしてしまった。この事実を真摯(しんし)に受け止めなければならないです。その一方で、ここから学べることもあるし、ここまでなあなあにしていた部分を見つめ直すタイミングが来たのかな、と思います。僕が早大体操部にきて4年目で、浅野と岸本が4年生で。それで7位だったから、結局は僕の指導の仕方が全て表れたような試合でした。他の大学に強い選手が入ったとか、いろいろありますけど、今回は自分の指導の成果が表れる試合だと思っていたので、「全て僕の責任だ」「選手は一生懸命やってくれました」と選手には伝えました。
――前半2種目を振り返って
素晴らしいと思います。シナリオ通りでした。
――続く平行棒・鉄棒は
練習も、いつも平行棒から崩れていました。これも、ある意味練習通りのものが出てしまいました。鉄棒はすごく頑張ったと思います。本来ならば、あそこで船は沈んでいるはずでした。けど、これ以上失敗できないという土壇場だったので、選手も腹を割って演技したと思うんですよね。鉄棒を乗り切ったのは評価するし、やってきたことが出せたと思います。ゆかも同じように頑張ったと思います。
――平行棒では負傷者が出るアクシデントがありました
それは鉄棒で落下したときに初めて知りました。平行棒が終わった時点ではそういう話はなくて。鉄棒のウォーミングアップでもけがしてるやつの動きじゃなかったし。失敗すると痛がる癖があるので、いつも通りだな、って思っていました。
―ゆかとあん馬について
近藤は負傷もあったし棄権すると思ってたんですけど、本人も相当な覚悟でゆかに臨んだと思います。
――選手のみなさんの雰囲気は良かったと感じました
雰囲気は良かったですね。浅野はみんなのことをよく見てるし、主将としてよくやってくれたと思います。
――試合後、選手のみなさんに何か話されましたか
お互い興奮した状態で話しても吸収できないと思うので。高橋と貴一には「よくやった」と伝えました。これから1週間、解散になるので、その間に頭冷やして見つめろ、とは言いました。
――来年のインカレに向けて、どんな対策が必要になってきますか
強い選手は調子の波が小さくて安定していて、弱い選手はその波が大きいんです。早大はその弱い選手も使わざるを得ない選手層なんですよね。ここをどうにかしたいです。貴一と高橋は最終的にチームを引っ張っていく存在になると思います。自分も、指導者としていろいろと振り返る年になりました。監督になる前までは土屋先生(土屋純、昭61教卒=県長野)に甘えてましたね。でも監督になって、選手に任せる部分が多くなって。今までコーチとして臨んだインカレと、今回のインカレは全然違います。僕が選手をまとめる立場になってこういう結果になったので、これは僕の責任です。
浅野佑樹主将(スポ4=東京・明星)
――団体戦を終えた率直な気持ちを教えてください
率直な気持ちはとっても悔しいです。
――7位という結果をどのように受け止めますか
最後自分のあん馬が通っていればもしかしたら6位だったかもとか、少しでも順位を上げられたかもとかいうふうに思うと割り切れないです。でもやることをやって、こういう準備をしてきた結果がこの結果だったのかなと思うので、それを受け止めるしかないです。
――団体戦後メンバーで何か話をしましたか
時間がなかったのでまだ全然できていないです。宏紀(近藤宏紀、スポ3=福井・鯖江)がここまで本当に頑張ってきていたので、最後けがしちゃったことがキャプテンをやってきて一番悔しいことです。
――悪い内容ばかりではなかったと思います。ご自身的にはいかがですか
良いところは練習してきた成果だと思います。やっぱり大事にしてきた着地は、いろんな種目で止められて、それについてはすごくうれしかったです。
――着地という点では、最初の2種目はすごく良い流れだったように思います
跳馬はちょっと違うかなと思うんですけど、つり輪は練習から着地を止める意識をしていて、どうやったら着地が止まるかをすごく考えてきたので、本当にあの場で(成果を)出せたのでやってきて良かったと思います。
――試合直前のチームの状態はいかがでしたか
もともとまとまって、みんな同じ方向を向いて頑張っていこう、みたいなキャラでもチームでもなかったので、みんなが自由にやれることをやればきっと3位になれるっていうふうに信じてやってきました。気持ちの面では「まとまろう」とか「もっと周り見ろよ」とか思うところがあったんですけど、でもやっぱり練習していたら「団体3位を取りたい」とか「団体3位を取るために自分がどんな点数を取らないといけないか」とかを部員ひとりひとりがすごく考えてくれていたので、そういった点では共通の意識を持ったチームができあがったのではないかなと思います。
――中盤、チームに大きなミスが出ましたが雰囲気はどうでしたか
つり輪、跳馬で試技会でも出したことがない点数をみんながそろえて出して貯金があったので、「少しくらいのミスならちゃんと(他の)5人がそろえて6種目終えられれば行けるだろう」という空気だったり、気持ちで負けちゃいけないというのはあったと思います。僕自身平行棒は絶対失敗してはいけないトップバッターを務めたので、普段は手ずらしとかがないように練習しているんですけど、そういうリスクを犯すくらいだったらちゃんと一歩動かそうとかいうふうに、成功のためだけに平行棒をやりました。鉄棒はもうやるしかなかったんですけど、やることをやってあとはチームを信じるしかなかったので、その辺は部員に聞いてみないと分からないです。
――近藤選手の鉄棒の落下があった後、動揺はありましたか
そうですね。僕は正直動けなくなってしまいました。宏紀の失敗がどういう失敗だったかという理解がまずできなくて、1つ目の「本当にそんなところで失敗するの?」というところでミスが出てしまって。「どうしたんだろう。プロテが切れたんだったらもう一回通せるかな」とかそういうふうに考えてたんですけど、まさかけがをしているとは思わなくて。ただやっぱり良い意味で空気の読めない貴一くん(竹中貴一、スポ3=福井・鯖江)が本当に頑張ってくれて。着地まで止めてくれて流れを引き戻してくれたというか、そこに執念を感じ、先輩も負けてられないなと思って根性で通し切りました。自分がすくんでいたらチームは止まるなと思ったので、動き続けなきゃいけないなと思いました。
――その鉄棒の演技を振り返ってみていかがですか
正直言ってあんまり思い出せなくて。着地が止まった瞬間くらいしか覚えていないです。どんなふうな成功だったとか全然思い出せないです。
――最後の2種目のチームの雰囲気はいかがでしたか
宏紀がゆかの演技ができるかできないか分からない状態だったんですけど、残りの5人がしっかりと点数を取れる選手だったので、そこはあんまり心配していませんでした。ただしっかり通さないといけないので、着地を狙ってこけるようなところは着地一本前に戻って通し切らないといけないという思いでゆかは臨みました。
――あん馬ではミスが出てしまいました
あん馬はもともと(自分が)弱いことも6種目目でつらいというのも分かっていて。必ずこういう事態が起こることも予測できて、そういう練習をしてきたんですけど、やっぱり試合は練習とは違った気持ちになっているんだなと感じました。僕自身正直5種目が終わった時点で点数なんて全然把握していなくて。これは通せば大丈夫という気持ちでゆかを終えていたんですけど、一人目で亜蘭(南亜蘭、スポ1=大阪・太成学院大高)が失敗しちゃって。宏紀が通せないかもしれない、自分の点数が入るかもしれないといったことをプレッシャーに感じたときに、やっぱり成功してやろうと前に前にいく気持ちが強くなって出たのがあの失敗でした。
――浅野選手自身はいい演技がたくさんあったように思います。振り返っていかがですか
一種目一緒目練習してきたことが出て、ちょっと満足している自分もいるんですけど、さっき言った平行棒の手ずらしとかの取り切れていないとかの自分でも意識的に成功したいなと思っていた部分っていうのが、そういう試合をしたから最後あん馬でああいうことになっちゃたのかなというのはあるので、もっと自分に厳しく練習から見つめ直していきたいなと思いました。
――団体戦を戦い終わったメンバーに主将としてどのような言葉を掛けてあげたいですか
本当に個性が強いので、みんなにというかひとりひとりに言ってあげたくて。まず一矢(高橋一矢、スポ2=岐阜・中京)はやるときやってくれるし、やっぱり一番信頼できる選手だなと思いました。東インカレ(東日本学生選手権)で87点ぐらい取って強いなって思ったんですけど、それがただのまぐれじゃなくてこうやってインカレ(全日本学生選手権)に照準を合わせてきて。練習が一緒にできない日もあったんですけど、インカレのために全力を尽くしてくれた後輩がいたのが僕にとってすごく頼もしい限りです。竹中は不思議なところがあって。自分のこだわりを持ってるし、つかみどころのないというかうまく話がかみ合わないところがあったんですけど、試合にかける思いはすごく強いものを持っていて一生懸命やってくれたので、僕はそれに引っ張られたし負けてられないなと思っていました。宏紀は今回失敗して。正直言うと「頑張れよ!」って思ったんですけど(笑)。宏紀は宏紀の精いっぱいがあったし、その精いっぱいぎりぎりまでやってあんなに体がぼろぼろになっちゃったことに気づかなかったのは僕の責任でもあったし、なにか一言声を掛けてあげられれば良かったなと思います。体操に関してはまじめなのですが、私生活とか体操以外にはちょっと自分に甘いところがまだまだあるので、試合で何が起こるか分からないことを考えたら体操だけにまじめになるんじゃなくて、悔しい思いをしないようにしてもっともっと頑張ってほしいなと思います。亜蘭は頼もしいですね。普段練習時間でいうと「短いな」というのも正直あるんですけど。でもそれは自分の体と向き合って真剣に取り組んできて。真剣にというか一番自分のことをよく分かっている選手なんだなと思っています。インカレではちょっとのミスはあったんですけど、でもすごく熱い気持ちでゆかとか頑張ってくれたし、跳馬も着地こけずにああやって踏ん張ってくれたのはチームの弾みにもなりますし。そういった1年生の力があって、ワセダが動き出していたのではないかなと思います。岸本(岸本邦秀、スポ4=兵庫・市尼崎)は本当に頑張ってくれましたね。平行棒は失敗しちゃったんですけど、跳馬で練習してきた着地など一つ一つをしっかりこなしていってくれました。正確できれいな体操というのがやっぱり岸本の魅力なので、それが今回の団体ですごく発揮できたのではないかなと思います。それに加えてあん馬ではちょっと技が成立しない部分があったんですけど、それでもなんとか粘り切って耐えきって技もその後抜かずに最後までやり切ってくれたので、そのへんのタフさは本当にすごいなと思いました。僕には達成できなかったので。きれいさとタフさを持った岸本を本当に尊敬しています。
岸本邦秀(スポ4=兵庫・市尼崎)
――団体戦を終えての率直な感想を教えてください
自分はこの大会で引退と決めていたので、ノーミスで試合することを第一の目標にしていました。それをやり切れなかった、特に平行棒でのミスは本当に悔しく思っています。
――7位という順位については
6位までじゃないと来年の最終班で回れないので、後輩にはきつい思いをさせることになっちゃったなと、申し訳ないというか心残りです。最終班かそうでないかというのは大きな差があるので。気持ち的にも厳しくなってくるでしょうし、最終班は重圧もあると思うんですけど、演技のしやすさや雰囲気も楽しいところがあるので、申し訳ない気持ちが大きいです。
――試合全体が悪いわけではなかったと感じましたが、ご自身ではどう捉えていますか
出だしは良くて、平行棒で失敗してしまってチームに迷惑をかけてしまったんですけど、鉄棒・ゆかと切り替えられて演技することができて。最後のあん馬では、自分が課題としていた粘り強い演技というのがやっとできたかな、というのが大きな収穫でした。粘るということ自体が試合においてあまりよくないんですけど、最後の試合で、さらに追い込まれた状況でよく頑張れたな、と。良い試合だったと思います。
――前半2種目のチームの雰囲気はいかがでしたか
最初の種目のつり輪は早大が得意としている種目なので、自分がある程度まとまった演技をして流れをつくって、と思ってうまくできたし、後の選手がもっと良い演技をしてくれたので、いつも以上に好スタートを切ることができました。続く跳馬でも3人着地が止まって。これ以上ない風が吹いたと言いますか、好発進でした。
――団体戦全体のトップバッターでしたが、特別な思いはありましたか
とりあえず、つり輪に関しては失敗しないやつが後ろに控えているので、その2人に思い切って良い演技をさせるためにも失敗してはいけないし、1種目目の一番手っていうのはその試合の流れを決めると言っても過言ではない大事な部分なので、あまり得意ではないですけどしっかりした演技ができたことはうれしく思います。
――プレッシャーは感じましたか
珍しいくらい緊張していました。プレッシャーというか、妙な緊張感がありました。練習時から想像はしていたんですけど、その想像以上になんとも言えない空気感がありましたね。
――続く2種目については
この試合に向けた練習が始まってから、平行棒で崩れるっていうケースがほとんどで。そこを課題としていただけに、前半3人がつくってくれた良い流れに自分が乗っていけなかったのは本当に悔しいです。鉄棒に関しては、2人目の選手が指を脱臼してしまって。鉄棒は結構点数を取らなきゃいけない種目で思わぬハプニングで失速してしまって。そこは悔しいですし、こういう、何があるか分からないというのが体操の難しさなのかなと思いました。
――平行棒の降りでミスが出て、でも鉄棒では切り替えた演技をされていました。演技間にはどんなことを考えていましたか
馬場監督にも「終わったことは仕方ないから、いまは考えずに次の演技のことを考えろ」と言われて。自分の中でも鉄棒で与えられた仕事をこなしてチームに勢いをつけることなので、平行棒のことは一回忘れて鉄棒に臨みました。
――最後の2種目について
ここでは結構苦しい流れがあって。負傷者が出るといういままでにない事態になって、ミスできない状況に追い込まれて。全員が動揺していました。それが結構プレッシャーになったんじゃないかな、と思います。その中でも近藤は痛みに耐えながらしっかりと演技をしてくれて心強かったですし、あん馬でも構成の難度を落としてでも絶対通すと言ってくれて。「一人でも点数を取っておかなきゃいけない」と言っているあいつの姿を見て、「こいつが頑張っているし絶対落下できない」と思いましたし、励まし合いながら試合ができました。きつい状況だったんですけど、個人的にはチームワークが発揮されていたかな、と思います。
――体操人生最後のあん馬の演技、振り返っていかがですか
1人目が失敗して、これ以上ミスできない状況でしたし、「これで体操できなくなるんだな」と思うと、緊張していないつもりでも手が震えていました。自分の中では、これが最後だと思わないようにしようと心がけていたんですけど、演技前になるとどうしても思い出してしまうというか。固くなっちゃう部分もありました。もっと良い演技ができたはずなんですけど、固くなってもあれだけ粘ってやってこれたのは、馬場監督にしつこく「粘れ」と言われてきたり、朝練で構成に入っている技を3回連続で通してから降りるとか、できるまできつくてもやってきたので、そういう部分が最後の最後で生きたのかな、と思います。
――試合後にチームのみなさんで話したことはありますか
特にないです。「7位か」と。
――岸本選手にとって、このインカレはどのような大会になりましたか
自分のいつも通りが出たな、って感じです。平行棒の失敗は珍しかったんですけど、跳馬の着地とか良かった部分はたくさんありましたし、「これが僕の体操だな」というような大会でした。
――引退を迎えたいまの心境は
またあしたから練習が始まるんじゃないかと思ってます(笑)。実感がまだないです。
――体操部で過ごした4年間はいかがでしたか
1年生の頃は、何も考えずにと言ったら何ですけど、先輩についていくことが必死で。いざ、上級生になってみると考えることも多かったです。この部に来れて、人間的にも大きく成長させてもらったな、と思います。いろいろ感じることが多かったですし、先輩からも後輩からも見習うことが多かったです。早大体操部で過ごせて幸せでした。
――最上級生として、副将として過ごした約半年はいかがでしたか
副将と決まってから、自分の中で「しっかりしなきゃ」と思って。主将の浅野はもうずっとしっかりしているイメージがあって。でも、あいつにばかり任せているのもだめだし、あいつがカバーできなくても自分だったらできることもあるんじゃないかな、と考えるようになって。そういうところを分担してやったりすることで、良い雰囲気で練習できていたと思います。すごく充実してたと思います。
――チームメートに伝えたいことはありますか
最初に思うことは、最終班に残してやれなくてごめん。この試合で悔しいと思っても、それをすぐに忘れちゃいけないと思うし、強くなりたいと思ってもすぐには強くなれるわけじゃないので、そういう思いを絶対に忘れずに1年間を過ごすことができれば、来年には最終班に戻ることができるし3位の達成できる実力はあるやつらばかりだと思います。単純に、本気になって体操に打ち込んでほしいな、と思います。
近藤宏紀(スポ3=福井・鯖江)
――試合を終えての率直な気持ちは
一緒にできる最後の試合になってしまう4年生もいたので、途中でけがをしてしまってチームの得点に貢献できなかったことがすごく悔しいです。
――団体7位という結果はどう受け止めていますか
422点いったんで、練習からそれくらいだったので他のところが強くなったんだなという印象がありました。あとはみんながちゃんとやっていて、自分は途中でけがをして戦力にならなくなってしまったのがすごく悔しいです。
――見ていて悪いところばかりではなかったと思うのですが、ご自身を振り返っていかがですか
最初の方はよかったので、途中で崩れてしまったのが、そこでけがをしてしまったのが1番の原因でした。指を脱臼してしまったのでゆかもあん馬も上手くできなくて、痛くても無理にやった感じがありました。うまくできなかったですね。
――平行棒の演技には気合いが入りすぎましたか
得意種目なので、点数取らなきゃ、と意気込んでいた部分はありました。
――次の種目の鉄棒に向けて気持ちの切り替えはできていましたか
はい。気持ちは大丈夫だったんですけど、最初の技をやった瞬間に指がはずれちゃいました。
――試合後団体のメンバーとはどのような話をしましたか
申し訳ない、と4年生には伝えました。
――その時のチームの雰囲気は
そんなに悪くはなかったですね。みんないい演技をしていたし、来年に向けて頑張らなきゃな、と思いました。
――試合中のチームの雰囲気は種目が進むごとに変化しましたか
いや、去年よりよかったと思います。
――今試合の経験をこの先どうつなげていきたいと考えていますか
来年はもう最後の年になるので、ことしの4年生が引っ張ってくれたみたいに、自分もなれたらいいなって思います。演技で引っ張るのはもちろん、普段の生活とか練習とかでも引っ張っていけるようになれたらなって思います。
――この大会は近藤選手になってどのような大会になりましたか
地元開催で、どうしてもU-21代表に入りたかったし、結果を残したいっていう思いが強すぎて、うまくいかない方向に行ってしまったので、気合い入れすぎてもだめだし、なんか難しいですね。もっと練習しないといけないです。
竹中貴一(スポ3=福井・鯖江)
――団体戦を終えた率直な気持ちを教えてください
正直団体戦のことはあんまり考えていなくて、やれることだけを粘りながら頑張りました。
――団体7位という結果についてはどのように受け止めていますか
相当ショックです。らいねん最後だから頑張っていこうと思ったんですけど、(らいねん)最終班じゃなくなることが大ダメージです。
――最初の2種目はすごくいい流れだったように感じました
最初の2つは安全種目なのでいつも通りでした。
――鉄棒では演技直前に近藤選手の落下がありました。動揺はありましたか
動揺というよりも、準備時間が短くなって焦りました。
――試合終盤のチームの雰囲気はいかがでしたか
全体的につらそうでした。
――そんな中、竹中選手個人としてはどうだったのでしょうか
いつも通りです。あん馬だけやたらと緊張しました。
――なにか理由あったのですか
こっちに来てから全然器具が合わなくて。試合前日も合わなかったので、これは本当にまずいと思いました。でもなんとか本番に合わせられたので良かったです。ちょっと安心しました。
――個人的に良かったものは
鉄棒が確実によかったです。今までにないくらいの出来でした。
――何点つけてあげたいですか
100点です。
――課題が見られた種目はありますか
平行棒と跳馬ですかね。点数的にいつもはもっと取れるんですけど、ちょこちょこ落としていく感じでした。
――この団体戦は竹中選手にとってどういう大会になりましたか
相当悔しいです。
――個人としてはいかがですか
出し切れない感じがちょっと嫌だったかな、と。大きいミスはなかったんですけど、小さいミスでちょこちょこ取りこぼしがあったので、ちょっと満足はいかないですね。
高橋一矢(スポ3=岐阜・中京)
――団体戦を終えた直後のお気持ちはいかがでしたか
苦しかった、ですね。つらい試合だったな、って思いました。7位って聞いて、こういう結果で終わったのは本当に悔しいし。悔しいっていう気持ちが多かったです。
――個人的に試合を振り返って
まあまあ良い出来だったな、と思うんですけど、まだ点数を取りそびれているところもありました。チーム的に言うと、負傷者が出てしまい、その時点でチームの雰囲気が悪い方向に流れているなと感じていて。このまま試合を進めるとまずいことになると思ったので、なんとか雰囲気を変えようと、盛り上げようと思って、自分はいつも声を出して盛り上げるほうではないんですけど、声出して盛り上げていました。それは慣れていないということもあって、雰囲気を気にしながら声を出して、さらに6種目するっていうのはこんなにしんどいんだなって思いました。いつも以上にしんどかったです。
――7位という順位について
最悪の結果ですね。最終班に残るっていうのが最低条件で、そのうえで団体3位という目標があったので。3位にかすりもしない、最終班じゃないチームにも負けてしまうっていう。何が悪かったかは分からないんですけど、最悪の結果ですね。
――試合全体を振り返って
最初のつり輪と跳馬はすごく良いスタートが切れました。着地も決まって雰囲気も良くて、(団体3位)いけるんじゃないかと思っていました。平行棒から失敗する人が増え始めたんですけど、それでも(3位になるための)ギリギリの点数は取れていたので。鉄棒でも。なんとか耐えられないかなって思ってたんですけど、早大には最後にあん馬っていう苦手種目が残っていて。負傷者もいて人数が揃わなくて、さらに失敗もして。結局全部あん馬で崩れてしまいました。
――チームの雰囲気について詳しくお聞きしたいのですが、まず前半2種目はいかがでしたか
かなり良かったと思います。目に見えて良い演技ができて、点数もそれなりに評価してもらえていたので。自分たちも楽しく明るくできたし、声もよく出て、すごく良い雰囲気でした。
――高橋選手自身の演技も好調でしたね
かなり良かったです。つり輪はもうちょっと(点数)取れたかなと思うんですけど、つり輪・跳馬に関してはあれくらいできればいいかな、と思っていました。
――平行棒・鉄棒に関しては
自身の演技について言うと、大きなミスではなかったんですけどぽろぽろと点数を取りこぼしていて。思うように得点を伸ばせなかったかな、って感じでした。鉄棒は1つ技を抜いてDスコア(技術点)が下がった状態で実施しました。平行棒・鉄棒は自分の中でもチームの中でも苦手としているのですが、そこで大きなミスなくできたのはうまく乗り切れたかな、と思います。
――難度を下げた理由は
コスミックから半分ひねる技だったんですけど、鉄棒を離してからそこは決められるので、この軌道だったらだめだな、と判断できるので。無理に攻めることもなかったですし。
――ゆかはチームとしても演技を立て直されていたように感じました。最後の2種目を振り返っていかがですか
ゆかは良かったんじゃないかと思います。雰囲気も持ち直して、最後のあん馬につなげられたんじゃないかと。あん馬は良くなかったですね。あん馬でも技を抜きました。絶対に落ちてはいけない状況だったので、そこで攻めるべきではないということで抜きました。その技を抜いて、普段よりも楽に通せるはずだったのに何個か小さなミスが出てるし、あんまり(点数を)伸ばせなかったのはすごく悔しい点です。
――個人総合で86.15をマークし、個人で8位入賞されました。個人総合でこの試合のことを考えるといかがでしょうか
8位という結果を残せたのはよかったと思うし、うれしいです。U-21代表にも入れたので安心しました。でも、点数を取りそびれている種目もあって目標にしていてどうしても乗せたかった87点に届きませんでした。乗せられる可能性は十分にあったので、今回の出来は70点くらいですかね。
――特によかった種目と、その理由は
つり輪はよかったと思います。力技もちゃんと力が入っていたし、自分の強いところを見せられたかな、と思います。跳馬は、よかったと言えばよかったのかもしれないですけど、まぐれですね。東インカレと全く同じような跳躍でしたね。自分では(着地が)止まる気はしなかったし、むしろ技のほどきで言ったらよくないほどきだったので。ただ、試合ということでいつもより力が出たからたまたま(着地が)立てた、という感じです。
――チームのみなさんで話し合ったことはありますか
特にないですね。3~4人とかで集まりながら「7位か。やってしまったな」という風には話していました。特に4年生は「申し訳ない」って言っていました。後輩に対して、最終班に残してあげられなかったのが申し訳ないって。
――去年のインカレと比べて成長したと感じるところは
一番は、自分に自信をもって、落ち着いて6種目回れたというのが成長できたところだと思います。去年はいろいろな不安があって、自信なんかなくて、緊張で震えながらの試合だったんですけど。ことしは東インカレは練習で良いものが出せてたので、それが自信になって、「やることやれば大丈夫だろう」と思えました。
――高橋選手にとって、この団体戦はどのような大会になりましたか
団体戦ってすごく難しいんだなって思いました。正直なことを言ってしまえば、自分は良い試合ができたんです。インカレに完全にピークを合わせて、ここだけに懸けてきたので。自分だけだったらこの試合はすごく喜べたし笑って帰れたと思うんですけど、団体戦っていうのでやっぱりチームがうまくかみ合わなくて。もっと自分で何かできたんじゃないかと思いました。自分が一番点数を取れるっていうのは練習の時点で分かっていたし、自分が引っ張っていかなきゃいけないというのは感じていたんですけど、それがうまくできなかったんじゃないかな、と。演技で引っ張れなかったのかなって。どうしたら3位に入れたのかなって。団体戦って、なんなんだろうって考えさせられる試合でした。
――この経験を次にどうやって生かしていきますか
自分ができる演技をやるっていうのが必要なことで、自分が持てる力を100パーセント試合で出すのは絶対なことで。そのうえで、勝てるチームづくりをしなきゃいけないんだなと。自分でこんなこと言うのも何なんですけど、たぶん僕がチームを引っ張っていかなきゃいけないのかなってこの試合で自覚しました。チームを演技で引っ張って、来年は最終班に戻ることは絶対条件で、それと同時にもう一回3位を狙ってみてもいいんじゃないかと思います。
南亜蘭(スポ1=大阪・太成学院大高)
――団体戦をふりかえって率直な気持ちをお聞かせください
団体戦は初めてだったんですけど、つり輪からスタートで跳馬、平行棒まではいいリズムで来てたんですけど、鉄棒から少し失敗が出て、チームに迷惑をかけてしまって。最後のあん馬でも耐えることができなくて、最終結果が7位という少し残念な結果だったので来年は絶対にリベンジしたいと思います。
――早大としての初めての団体戦でしたがいかがでしたか
すごくみんな盛り上げてくれて、楽しく試合ができたのですごくよかったです。
――見ていて悪いところだけではないように思われたのですが、ご自身ではいかがですか
いや今回の試合はあまりよくないと思います。
――団体戦後にメンバーのみなさんと何かお話しされましたか
来年は絶対に団体で3位を取ろうっていう話をしました。
――前半2種目は良い雰囲気だったと思うのですが、いかがでしたか
前半2種目はかなり良くて、そのリズムでいけたらよかったんですけど、そこから崩れていったのでこれからの課題かなと思います。
――中盤大きなミスがチームに出ましたが振り返っていかがですか
やっぱり平行棒・鉄棒は練習でも(ミスが)出ていたところなので、練習通りって言ったらそうなんですけど。練習が全てだなと思いました
――チームにミスが出た中で、南選手自身は鉄棒に対して何か特別な思いはありましたか
僕の2つ前の選手がけがしてしまってチームの攻め方も変わってきて。けがを受けて、馬場先生から離れ技のカッシーナを抜けと言われたんですけど、僕は「やります」って言ってやって。成功したのでとてもよかったです。
――その後の後半2種目のチームの雰囲気はいかがでしたか
キャプテンの佑樹さんとかが盛り上げてくれたんですけど、少し疲れている選手とかもいて、はじめの前半種目に比べたら少し雰囲気とかはあまり良くなかったかもしれないですね。
――あん馬ではトップバッターでした
意地でも演技を続けようと思ったんですけど、やっぱり最後力尽きてしまいました。
――このインカレは南選手にとってどのような大会になりましたか
絶対に忘れられないとても悔しい試合でした。
――最後に、この経験をどう次につなげていきたいですか
この経験を生かして、まず失敗しないっていうのが絶対条件だと思うので、安定した演技を求めていきたいと思います。