共にU-21代表経験のある浅野佑樹主将(スポ4=東京・明星)と竹中貴一(スポ3=福井・鯖江)。豊富な試合経験を生かし、インカレ(全日本学生選手権)の団体戦ではチームの中心となって試合をリードしていくであろう。そんなお二人に、ことしのチームの強みと課題を伺った。
※この取材は7月31日に行われたものです。
「(東インカレは)みんな目的をもってできていた」(浅野主将)
ことし初めての団体戦の手応えを振り返る浅野
――今シーズンの試合を振り返っていかがでしたか
浅野 近い試合だと早慶戦(早慶定期戦)があって、その試合で思うような試合ができているので、ここまではいい流れできていると思います。取り組んできたことは、力強さとか倒立の決めなど細かいことになるんですけど、あまりいっぱい技は入れ過ぎずEスコア(出来栄え点)を高めていこうということで頑張っています。そこがちょっと形になったかな、と自分としては思っています。
竹中 悪かったのは全日本(全日本個人総合選手権)だけですね。4ミスくらいしました。他は良かったはずですけど、流れ的には、全日本で一度失敗したので東インカレ(東日本学生選手権)で立て直す方法を考えて、それは出来たのかなと思います。
――上半期に出場された試合の結果や内容から練習内容に変化はありましたか
浅野 技をあまり増やしていなかったので、失敗があるたびにそこを直していこうという練習をしているので、毎日違いますね。昨日はここがダメだったから、きょうはここを直そう、とか。そして通しをしてみてまたダメだったところを直そう、といった風に細切れに毎日(練習内容は)変わっていっています。
竹中 僕は楽しくワイワイやりながら、(試合で)使う技だけ練習していって、リスク高い技はいらないかな、みたいな。好き嫌いしてやりました(笑)。
浅野 (跳馬で)ドリックス(技術点5.6)はできるようになったよね。いつから?東インカレ?
竹中 東インカレ終わってしばらくしたらできるようになっちゃった。
浅野 だそうです(笑)。東インカレ以降で。それまでずっとアカピアン(技術点5.2)という技だったんですけど。
竹中 一つレベルを下げたんですね。
浅野 そうですね。あ、そうですねって言っちゃった(笑)。跳馬は、結構一発勝負のところがあるんで、できたら結構点数が上がるんですよ。ドリックス(技術点5.6)がなんとかインカレに間に合いそうということで、すごく頼もしいです。
竹中 間に合っちゃった(笑)。
――浅野主将はどんなキャプテンですか
竹中 真面目ですね。
浅野 真面目です(笑)。
竹中 その下にアホがどどどどーんと。
一同 (笑)。
――昨年とチームの雰囲気は違いますか
浅野 それはどうなの?後輩は気を使ってる?
竹中 そんなことはないです(笑)。
浅野 よし、サンキュー(笑)。
――ことしの一年生二人の印象は
竹中 もうやんちゃです。二人ともやんちゃですよ。一人隠してますけどね(笑)。こっちサイドです。
浅野 こっちサイドって何(笑)?
竹中 こっちサイドです。
一同 (笑)。
浅野 入れてくれよ(笑)。でも結構素直な感じはありますね。言ったら、「そうなんですね」みたいな感じなので、これからやっぱりすごく伸びていくだろうし、僕が何か言っても、嫌な顔せず頑張ってくれているので助かっています。
――ことしのチームとして初めての団体戦だった東インカレの手応えはいかがでしたか
浅野 思ったよりも雰囲気は良かったです。試合運び自体はあまり良くなかったですが、それまでの練習では気負った感じとか、変な責任、使命感みたいなものはなく、みんな目的をもってできていたかなという印象です。ですが油断もすごくて。1年生と3年生のゼッケンが入れ替わっちゃう事件とか(笑)。その辺はまだまだやんちゃですね(笑)。
――お二人ともU-21日本代表を経験されていますが、代表合宿はどういう雰囲気なのですか
浅野 ちょっと拍子抜けでしたね。行ってみたら、体育館は施設の整ったところなんですけど、練習は「自分で考えてやってください」みたいな、思ったより放し飼いで。大学生だし、自分で考えてやれって言われて、できる選手とできない選手がいましたね。すぐ治療行っちゃう選手とか…。こんなもんなのかっていうのは、少し感じました。
「試合中のルーティンは炭酸飲料を飲むこと」(竹中)
珍しいルーティンを打ち明けた竹中
――お互いを他己紹介してください
浅野 貴一は、摑みどころがないけど、体操に対しては熱心で、こう言われるのは嫌かもしれないけど実は真面目です。空気を読まないけど、だからこそ人に流される事がなくて自分を常に持っていますね。体操を楽しみつつ、目的に向かって突き進んでいるという体操部に欠かせない存在です。
竹中 佑樹さんは、真面目で真面目(笑)。声が大きくて目立つ!とにかく真面目の塊で僕には持ってないものを持っていますね。練習以外の面だと、歌が好きですね。練習中にもっと歌ってほしいくらいです。
一同 (笑)。
――十八番はありますか
浅野 十八番はないですかね。
竹中 とりあえず叫ぶの好きですよね(笑)。
浅野 ワイワイするのが好きなので、カラオケに行って発散しますね。
竹中 じゃあ、歌っときます?
浅野 いらんいらん(笑)。
一同 (笑)。
――お二人を見ていて、学年が違っていてもすごく仲が良い印象ですが、早大体操部を一言で表すと
竹中 お友達?
浅野 お友達、でいいんだけど、(この対談が掲載された時に)お友達だとまずい気がするっていう世間体を気にしちゃう自分がいますね(笑)。表向きではちょっとは真面目にしろよ!って(笑)。
――フレンドリーな雰囲気なんですね。監督はどんな方ですか
浅野 馬場監督(馬場亮輔、平18人卒=埼玉栄)は物事を全部体操で考えていて、どうやったら上手くなるか、強くなるかということをすごく分析する人で、一生懸命ですね。
――選手と監督はコミュニケーションを結構とりますか
竹中 はい、とります。
浅野 めちゃくちゃとりますね。大学の先生の中では一番とってるくらいじゃないですかね。他の大学のことは分からないけど、聞いた話だと先生のメニューで練習するところは少ないらしいです。でも、ワセダは馬場監督がトレーニングメニューを決めて、これをしたら強くなるという信念があるので、僕たちはそれに引っ張られていますね。ぶつかることもあるけど…。
――他大学との交流はありますか
浅野 言うほどないですね、大会とか合宿で高校時代に一緒に練習してた人とは話したりするんですけど。
竹中 あんまりないですよね。
――早慶対抗定期戦(早慶戦)がありますが、慶大とは特別な関係とかはありますか
浅野 慶大とはお互いに頑張っていこうっていう存在ですね。ことし早慶戦を早めたのも、お互い顔も分からないままでインカレで応援し合うのではなくて、7月に1回みんなで顔合わせして、お互いインカレを盛り上げられたら楽しいかな、という理由があったからで。
竹中 知らなかった…。
浅野 あんまり選手は知らせてないんですけどね。
――お二人ともずっと体操をしてきたと思うのですが、その中でも一番思い出深い大会や忘れられない大会はありますか
浅野 僕は小学校5年生の時に、東日本ジュニア選手権(東日本ジュニア)に初めて出場して、その大会は24位までが予選通過のラインだったのですが、僕は26位で予選落ちしました。24位が2人いたので、本当に真上で切られた感じですごく悔しかったですね。そこから骨が折れようとマメが剥けようが必死で次の年やってやるって。そしたら本当に骨が折れちゃったみたいで(笑)ヒビだと思うんですけど、両足を疲労骨折したまま東日本ジュニアに行って優勝して。その流れで全日本ジュニアも優勝できたので、その年が一番頑張って成果が出た年なのですごく思い出深いです。
竹中 高校2年生の春、高校選抜(全国高等学校選抜大会)に出て、その時に右の手首が何もできないくらい本当に痛くて。でもやり切った結果、この大学に来れました。それがなかったらここにはいないので、それが一番思い出深い大会ですね。
――大会前や演技前に行うルーティンはありますか
竹中 試合中にジュースを飲む!
――何のジュースですか
竹中 一番強いのはファンタオレンジ!
――炭酸を飲んでもいいんですね
竹中 はい。
浅野 僕は結構信じられないですけどね。いちごオレ買ってたりとかフルーツオレとかカルピスソーダとか買ってたりして(笑)。
竹中 最近は炭酸ですよ。
――浅野選手はいかがですか
浅野 僕は特にないですね。何をしてから行こう、とかは。普段の生活がルーティーンみたいな(規則正しい)生活をしてるので。好きな曲を聴いて、好きな時間に起きて、好きな物食べて、食べ過ぎないようにして。で、頑張ろう!って感じですね。普通に毎日同じことをやって、今日は試合だからこんな感じだろうなって練習着に着替えたりしてるんで。逆に、遠征先のホテルとかで休んでる時なんかは、いつもと違うことから始まるので、そのこと自体が僕にとってプレッシャーだったりしますね。
――体操をやっていて日常生活で得したことはありますか?
浅野 なんだろう。あ、でもつり革持ってる手が離れないですね。肩の可動域が広いので(笑)。
竹中 えー、日常生活ではないかな。
――プールでは沈んじゃいますか
竹中 あ、プールは沈みますよ。
浅野 蹴伸びして5メートルしたら下に行っちゃいますね。
――体脂肪はどれくらいでしょうか
浅野 この間計って9%とかですね。
――オフの日の過ごし方や息抜きはどうされていますか
浅野 (カラオケは)よく行くって言ってもどのくらいだろ。人集まらないと行かないしな…。
――ひとりカラオケはしたことありますか
浅野 したことはあるけど、でも、滅多にしないですね。
竹中 息抜き、僕はしないっすよ。予定詰め込みますもん。
浅野 ん?それ、息抜きしてんじゃない?
竹中 あ、してるか(笑)。
――夏休みのオフはどれくらいありますか
浅野 2週間くらい?10日くらいかな。
――楽しみにしてることはありますか
浅野 BBQは体操部のみんなで9月にするっていう話をしてるけど、先のことはまだそんなに考えられないです。
竹中 遊びたいな、って思うくらいです(笑)。
――それぞれ体操部の中での推しメンを教えてください
浅野 俺はやっぱ宮田(雅博、創理4=神奈川・山手学院)かな。宮田は唯一まともに話せる存在というか。僕が、真面目すぎる部分があるので、それを冷静に見て、「それはやりすぎじゃない?」とか「それは正しいと思うならやればいいんじゃない?」とか相談して4年間助けてもらってきたので。こうやって対談とかでスポットライトとか当たらないのがかわいそうだなって思うんですけど、すごく練習も一生懸命やってるし、伸び率で言ったら一番!それこそ、飛び込み前転くらいしかできなかったのが、今では前宙とかバク転とかやってるので、努力がすごいなって尊敬している同期ですね。
竹中 僕は近藤宏紀(スポ3=福井・鯖江)で。小学生の頃から一緒に練習して、高校もたまたま同じで。さすがに大学は違うでしょって思ったら大学も同じで(笑)。そんな、長い付き合いをしてる人なんですけど、何も言わなくても伝わる部分があるので、一番何でも相談できるやつだと思います。
――好きな女性のタイプと、芸能人でいうと誰か教えてください
浅野 僕、たれ目の女性が好きです。最近だと、木村文乃が美人だなと思います。あんまり詳しくはないんですけど。
竹中 僕は、ほわんほわん系?宙に飛んじゃいそうな人(笑)。
「絶対的な安定感でチームに貢献したい」(浅野主将)
最後のインカレを直前に控え、決意を語る浅野(左)と、竹中
――昨年のインカレから1年経ちましたが、昨年のインカレを今振り返ってみて思うことはありますか
浅野 僕自身、すごくけがで苦しんでいたので、ことしはそれがないのが自分の中でスムーズに練習ができている理由かなと。昨年はコンディションを合わせるのが難しくて、平行棒でいきなり僕が失敗してしまったので、そこから流れを崩してチームの足をすごく引っ張ったので、ことしはそれがないように、まず失敗しないようにという心がけで練習しています。
竹中 昨年はこんなふざけるほど余裕がなくて。(余裕)なかったですよね?
浅野 うん、人のことを見てられなかった。
竹中 みんな多分余裕なくて、さらに昨年の主将(藤原昇平前主将、平28スポ卒=現相好体操クラブ)も試合直前にけがして、なかなか良いチームではなかったかな、と思いました。ことしもめちゃくちゃいけるって感じでもないんですよ、まだ(笑)。でもことしはみんな頑張っているから(雰囲気は)いいんじゃないかなって思います。
――チーム内で緊張感は高まっていますか
浅野 執念深く失敗をなくそうとしている人は、インカレに向けて仕上げに入っているのかなと。それが竹中貴一だったり、高橋一矢(スポ2=岐阜・中京)だったり、岸本(岸本邦秀 スポ4=兵庫・市尼崎)もそうだし。少しまだ失敗が目立つ1年生とちょっと調子崩してるのかな、宏紀がかみ合っていないかなあという感じはするんですけど、すごい必死でやってる感じが伝わってくるので。緊張感というほどではないですけど、まっすぐインカレに向かって行っている感じはあります。
竹中 そんなにつらいような感じはないです。楽しいかな、という雰囲気です。
――浅野選手は最後のインカレですが、昨年とは違う心境ですか
浅野 しんどいなあっていう(笑)。別に頑張らなくてもいいことも多いんですけど、自分自身煮え切らないところがあって。体育館の中汚いなあとか、そういうのを気にしたほうがいいのか、変なこだわりになってくるんですけど、これを今俺が見逃したらもう誰もきれいにしていかないだろうなって、日々過ごしてきて疲れてきましたね(笑)。3年生の頃までは、先輩がフォローしてくれていたんですけど、4年生になると、同期くらいしかいないんで、引っ張っていく体力がもう限界ですね(笑)。
――こういう演技でチームに貢献したい!というような目標はありますか
浅野 僕は絶対的な安定感です。失敗してはいけないと思っているので。Dスコア(技術点)もあまり高くないですし。 昨年の試合でもそうだったんですけど、失敗を作ってしまうとチームに迷惑をかけてしまうので、それだけは絶対しないようにと心に決めて練習しています。
竹中 僕は空気が読めないので(笑)、失敗しても、次ちゃんと通せる、失敗しないよっていうくらいの雰囲気で頑張ります。
――特に練習されている技はありますか
浅野 跳馬のドリックスが大崩れしていたので、それがどうしたら直るかな、といろいろと試行錯誤してやっと今日直ったので、不安解消という感じです。
竹中 不安はないです。しゃべりながら練習しているくらいです、本当に。
浅野 貴一は空気読めないって悪く言うんですけど、チームが失敗続くようなときに、一人だけ通したりするんで、そういう粘り強さというか、いい意味での空気の読めなさというか、空気に惑わされないっていうのはすごく感じますね。
竹中 周り見てないですからね(笑)。
――やはり、インカレのキーマンは竹中選手でしょうか
浅野 彼になるでしょうね、間違いなく。
竹中 なっちゃう(笑)?
一同 (笑)。
――自分の演技で「ここに注目してほしい」という点はありますか
浅野 (鉄棒の)コールマンかな。ずっとゆかの動きだったりとか、着地の決めにこだわってきたのですが、それはずっとやってきたことなので、今回は鉄棒で唯一失敗のリスクがあるコールマンという技を、見ていてほしいし、応援してほしいですかね。
竹中 ないですね…あ、わかった!演技してない部分ですね。演技している時はさすがにこのキャラじゃできないから、演技していないときにこういうキャラ出せるかなあって。
――インカレで意識されている大学、他大の選手はいますか
浅野 今回いっぱいいすぎるからね。(実力が)かなり横並びで、その下の方に早稲田は位置しているので。早稲田はまず自分の足元をちゃんと見て、揃えたらやっと横を見られる感じなので、あまり意識しすぎないようにしていますね。僕が結構目標にしているのは鈴木大介(順大)とか。やつは強いですね。すごく練習に真面目だし、その真面目な練習と粘り強さが試合に出ているというか。ちゃんと練習してきたから、ちゃんと着地止められるんだろうなと。僕にはそう見えるんで、尊敬していますね。
竹中 転ばなければ、大丈夫(笑)。高橋一矢は、腰痛があるので練習をなかなかがっつりできないんですけど、本番しっかりやってくるやつなんで、その辺に期待しています。そして自分はそれに負けないようにやろうかなっていうのがあります。
――最後に、インカレに向けて意気込みをお願いします
竹中 頑張らないように頑張ります。
浅野 すごく強化して準備してきたので、いまさら頑張って、頑張り過ぎたって一緒な気がするんで、変に気負わず楽しくできたらいいなと思っています。
竹中 ばっちりですね(笑)。
――ありがとうございました!
(取材・編集 木村京、末満まろか)
今回の色紙のテーマは「自分の体操を一言で表すと?」
◆浅野佑樹(あさの・ゆうき)(※写真右)
1994年(平6)11月24日生まれ。身長164センチ、体重62キロ。東京・明星高出身。スポーツ科学部4年。主将として、体操部を引っ張る浅野選手。大会や練習について語る真剣な表情と竹中選手と語り合う楽しそうな表情が印象的でした。自分の体操を「元気」という一言で表してくださった浅野選手。最後のインカレでの『元気』な演技に注目です!!
◆竹中貴一(たけなか・きいち)(※写真左)
1995年(平7)5月16日生まれ。身長162センチ、体重61キロ。福井・鯖江高出身。スポーツ科学部3年。終始笑顔で対談を盛り上げてくださった竹中選手。浅野主将との学年を超えた絆が垣間見られました。冗談で場を和ませつつも、体操の話となると表情は真剣に。自分の体操を『お楽しみ』と表現してくださった竹中選手の、インカレでの活躍に乞うご期待!!