【連載】2016年度インカレ直前特集『Everglow』 第1回 岸本邦秀副将×八木暁己

体操

 互いに関西の高校出身である岸本邦秀副将(スポ4=兵庫・市尼崎)と、八木暁己(政経3=京都・洛南)。鉄棒を得意としていることも共通している二人の、鉄棒に懸ける思いとこだわりに迫る。また、4年生の岸本にとっては最後のインカレであり、競技人生最後の試合。『団体3位』という長年の目標達成に向けて、強い意気込みを語っていただいた。

※この取材は7月29日に行われたものです。

「後輩に負けてられない」(八木)

ほとんどの種目で去年よりも難度を上げた八木

――今シーズンのこれまでの大会を振り返ってみていかがですか

岸本 シーズン初めの4月のトライアル(全日本種目別選手権トライアル)にけがで出れなくて、けが明けの試合ということで東インカレ(東日本学生選手権)に個人で出場しました。そこでは振るわない試合だったというか、あまり良い成績を残せませんでした。モチベーションもそんなに上がらないまま試合に臨んでしまったのであまり良くなかったですね。次のインカレに照準を合わせて、自分のベストをぶつけたい、っていう思いでいます。

八木 トライアルと東インカレでは失敗が多くて。去年よりも技もたくさん増やしたので、春先はうまくいかない部分が多かったんですけど、この間行われた早慶戦(早慶対抗定期戦)では、ようやく自分のやりたい演技ができてきたので、少しずつ良くなってきていると思います。

――去年から多くの種目で難度を上げられていますが、『上級生の意地』でしょうか

八木 そうですね、新入生も来るし、後輩が多くなってくるので、「負けてられないな」という思いはあります。

――上級生になって、何か意識されることはありますか

八木 何かありますか(笑)?

岸本 こいつ、元からしっかり練習するタイプで、今も変わらずそういう良い練習してるので、そこは尊敬してますね。

八木 上級生になったからといって、特別に意識することはないですね。

――八木選手から見て、岸本選手の練習はどのような印象でしょうか

八木 調子悪いときもあるんですけど、気合い入ったときの練習はすごいなと思います。調子悪いときは…(笑)。

岸本 バレちゃうからやめて(笑)。

一同 (笑)。

八木 割り切り方がすごいです。僕の場合は調子悪いときでも結構動いちゃうので、そういう割り切り方ができないんです。そこはすごいなと思いますね。

――新入生が入ってきましたが、印象は

岸本 にぎやかで、やんちゃというか、少し生意気な元気あるやつが来たなと(笑)。練習中もわいわいやってて、雰囲気的には毎年良くなってきていると思いますし、ことしのやつらは特ににぎやかなので、楽しく練習できるいいやつらだなと思います。

八木 僕も同じで、2人とも明るいので、練習の雰囲気も明るくなって、それが良い方向に出ていると思います。

――浅野佑樹主将(スポ4=東京・明星)率いる体操部はどんな雰囲気ですか

岸本 主将は真面目で、目標をどんって置いたらそこに突っ走るタイプの人間で。背中で引っ張っていってる感じが強くて、そういうところは尊敬できます。自分が副将として、そこにうまく乗っていかない部員がいたら輪を強くしてフォローしていって。そういうふうにやっていけたら強いチームになるんじゃないかと思います。僕は浅野のサポートをしっかりとして、一緒に部を引っ張っていけるようにやっていきます。

八木 (浅野主将は)体操に熱心で、体操が好きで、真面目に練習もしていて。それだけ主将が練習していたらみんなもついていきますし、背中だけじゃなくて、みんなのことも気にかけてくれて、周りもよく見ているんだなと感じます。(主将は)大変なこともあると思うんですけど、そこを見せずにやっているところがすごいなと思います。

――ことしの体操部の長所はどんなところにありますか

岸本 明るいよな?

八木 明るいです。流れに乗れば強いと思います。

――その流れに乗るためにはどうすればいいでしょうか

岸本 通し練習ではつり輪から始めているんですけど、つり輪は失敗しにくい種目なので(流れを)つくることができて、次の跳馬でだいたい流れに乗れるんですけど、平行棒でちらほら失敗が出て。疲れが出てくるときに鉄棒というリスクの高い種目があるので失敗が続く傾向にあります。平行棒・鉄棒でしっかり流れに乗り切ってひとりひとりがやることやっていけば、インカレでも(演技が)つながるんじゃないかなと思います。

「鉄棒は正確性を大事にしている」(岸本副将)

きれいな体操は岸本の強みだ

――お二人は関西の高校出身ですが、ずっと関西に住んでらしたのですか

岸本 僕は生まれも育ちも兵庫です。

八木 僕も、生まれも育ちも京都です。

――大学に入る前にも、大会などでお互いのことを認知されてましたか

岸本 知らなかったです。

八木 僕は知ってました。高校1年生の近畿大会が京都であったんですけど、そのときに(岸本選手が)鉄棒でトカチェフをやってて、うまいなと思ったのが最初の印象です。

――岸本選手から見た八木選手の第一印象は

岸本 大学入試のときに初めて会って、真面目そうだなと(笑)。真面目そうな良い子が来たなと思いました。洛南のスポーツクラスじゃないクラスって聞いてたので、どんな賢いやつが来るんやろなと(笑)。

――今の印象はいかがですか

岸本 ちょっとなめてる部分もあるんですけど。

八木 そんなことないと思いますけど(笑)。

岸本 いい意味でなめてるというか。いいなめ具合?

一同 (笑)。

岸本 良い意味で親しみやすいです(笑)。

――体操部の推しメンを教えてください

八木 推しメン(笑)?

岸本 まじか(笑)。うーん、八木ですね。

八木 絶対うそだ(笑)。

岸本 一緒にご飯食べに行くことがよくあるんですけど、八木は勉強もしてるし、そういうところは尊敬できますし、練習姿勢を見ていても、こいつが一番練習に対してちゃんと考えて取り組んでるんじゃないかなって思います。(八木は)後輩なんですけど、学ぶことも多いですね。周りはスポ―ツでずっと入学してきたやつが多い中で違う世界も経験してきている人間なので、そういうところからいろいろ学べます。なので、推しメンです(笑)!

八木 僕は、高橋(一矢、スポ2=岐阜・中京)ですね。東インカレでは、もう早稲田のエースと言ってもいいくらいの活躍をしていましたし。でも練習を見ていると、痛めている腰の状態が良くなくて。満足に練習ができていない中でもちゃんと試合で結果を残しているので、後輩なんですけどすごく頼りになるというか、尊敬していますね。

――最近のマイブームは何でしょうか

岸本 ちょっと前まではダーツにすごくハマっていて、マイブームになりつつあったんですけど、ここ最近は行ってないですね。

八木 オフの日には録画したドラマを見てますね。きのうから見始めたんですけど(笑)。

岸本 月9を第3話から見始めたんですよ(笑)。

八木 今までずっとテストだったので(笑)。録りためていたものと合わせて連続で見ました。

――憧れの選手をうかがいたいのですが、岸本選手は星陽輔選手(元セントラル)で変わりないでしょうか

岸本 はい、動きが一番好きな選手です。

――八木選手はいかがでしょうか

八木 うーん…。

岸本 俺(笑)?

八木 惜しいですけど…(笑)。

岸本 仕方ないなあ。

一同 (笑)。

八木 田中佑典選手(コナミ)ですね。きれいで、正確な体操をしているので勉強になります。田中選手は平行棒と鉄棒が得意で、僕もその2種目を自分の中では得意としているので、目指していきたいところですね。

――お二人とも鉄棒が得意ということですが、いつから自覚するようになりましたか

岸本 小学6年の頃からですかね。鉄棒…好きでしたね。それよりも小さい頃は「手の皮めくれて痛いな」とか、鉄棒は高いし怖いしで嫌いだったんですけど、試合やっていていつも点数が出るのは鉄棒でした。そういうところで、やっぱり得意でした。

八木 僕は小学4年生くらいですかね。クラブチームの大会で入賞できたのが鉄棒だったので、そのときに鉄棒が好きになったというか。中学でも鉄棒ばっかり練習していましたね。

――練習中はお互いにアドバイスはされますか

岸本 やっている技が結構違うんですけど、自分なりに、今まで見てきた選手でうまい選手との違いを見つけて、暁己にアドバイスできることがあれば言ってますね。

八木 僕からは(アドバイスは)しないですね。

――小さい頃から得意なだけあって、鉄棒に対する特別な思いはありますか

岸本 リスクの高い離れ技はないので、失敗しないことを第一にしています。あとは、やってる技の正確性というか、難度の割にEスコアが伸びる方だと思うので、そこだけは大事にしていきたいと思っています。

八木 試合でも気合いを入れてバッチリやりたいなっていう思いがあるんですけど、そう思って臨んだときはだいたい失敗しちゃうので。得意だけど、逆に意識しないで他の種目と同じように平常心でやろうと気をつけています。(鉄棒は)ちゃんとやればそれなりの点数が出ると思うので、まずはしっかりいつも通り、というのを心がけています。

――お二人が考える体操の魅力って、どんなところにありますか

岸本 個人個人の持ち味が出るところじゃないですかね。(体操が)きれいな人であったり、力強い人であったり、スムーズな動きをする人であったり。それぞれのいいところがしっかりどの選手にも表れているのが体操の良いところだと思います。

八木 たしかに、そんな感じですね(笑)。同じ技をしていても選手によってさばき方が違うので、個性が出るというか。あと、難しそうなことを簡単にやることとかですかね。

――インカレが終わったらやりたいことはありますか

岸本 地元の友達に会えてないので、向こうにいる中学・高校の友達と遊んだり、ごはん食べたり、飲んだりしたいですね。

八木 高校の同期だったり、先輩や後輩と集まって練習する機会があるので、そこでまた新しい刺激をもらったりして充電したいです。

「団体3位を自分たちの代で達成することができたら」(岸本副将)

インカレへの思いを語る

――去年のインカレはお二人にとってどんな大会でしたか

岸本 最初の4種目は良い流れでできていて、最後の2種目で崩れちゃったんです。結果的には悔しい試合でした。大学3年生のインカレっていうのはU-21代表に入れる最後のチャンスで、とっても大事な試合でした。それに懸けていただけに、去年のインカレでの失敗は悔しいです。体操人生の中で一番悔しい思いをした大会でした。

――以前(2年前)の対談で、高校3年時のインターハイが一番悔しい思いをした、とおっしゃっていましたが、それを超える悔しさだったのでしょうか

岸本 そうですね、やっぱり…うーん…。はい、去年のインカレの方が悔しい思いをしました。

――それでは、ことしは最後のインカレということもあって、懸ける思いは強いのではないでしょうか

岸本 そうですね。11月の全日本団体選手権は直前まで教育実習が入っているので出れなくて、僕はインカレが引退試合になります。あと1ヶ月もないですが、やり切るということだけを考えてやってます。

八木 インカレは去年が初めてだったので、あっという間に終わったな、っていう感じですね。気づいたら終わってた、みたいな。すごく楽しかったんですけど、今まで自分がやってきた試合と違ったというか、応援の盛り上がり方とかも違って。大学生がこの試合に1年間を懸ける理由が分かりました。

――そんなインカレまで1か月を切りましたが、今のお気持ちは

岸本 僕にとっての最後の試合、というのが大きいですね。跳馬とか、もうそれっきり跳ぶことはないじゃないですか。鉄棒でちょっと車輪するくらいはあったとしても。そう考えると、かつてないくらい緊張するんだろうなって思います。日頃の練習でやってきたことをそのまま出せるように、練習からそういうところを意識してやっていきたいです。

八木 練習自体も残り少なくなってきていて。自分はどちらかというと試合に強くないタイプで、練習でできていないと試合でも力が出せないので、残りの練習でどれだけ成功を重ねられるか、演技の質を高めていけるかを考えてやっていきたいですね。春先で良い試合ができなかったので、その悔しさを忘れずに。その失敗があったからこそインカレでは良い演技ができたと言えるようにしたいです。

――特に力を入れて練習していることはありますか

岸本 ここ!っていうのはなくて、チームのために6種目の演技を揃えて、自分の引退試合となるので、やっぱり良い思いをして終わりたいですし、満足した試合をするために(演技を)6つ揃えるということを一番に心がけているので、全部です(笑)!

八木 平行棒と鉄棒は意識してやっていますね。得意ですし、自分の中では点が取れる種目なので。トライアルと東インカレではこの2種目で良い演技ができなかったので、インカレでは失敗しないように、他の種目よりは力を入れて練習しています。

――「自分のここに注目してほしい」というアピールポイントはありますか

岸本 最終種目のあん馬ですね。おそらく団体戦の最終演技者になるので。大学入ってから強化してきた種目でもあるので、うまくいけば翌日の種目別決勝にも行けると思いますけど、団体メンバーとして出る最終種目のあん馬で自分の成長した部分を、自分の持ち味であるきれいな演技を見てほしいと思います。

――最終種目のあん馬で最終演技者を務めるというのは、プレッシャーも大きいと思いますが

岸本 そうですね、失敗するリスクが大きくなるので緊張もすると思います。ここ2年くらいインカレであん馬が通ったことがなくて、その借りもありますし、そういうのをしっかり克服したいです。

八木 僕は最初の種目の鉄棒を見てほしいですね。演技順も1番なので、ワセダの選手のトップバッターという意識を持って、自分がそこで良い演技ができれば個人の試合も良い流れでできると思いますし、団体戦も良い影響を与えられると思うので、注目してほしいですね。

――インカレでの具体的な目標はありますか

岸本 僕はそんなにないですね。種目別決勝にできるだけ多く残りたいというのはもちろんあるんですけど、それよりも団体で目指している団体3位が目標ですね。僕が1年生のときからずっとそういう目標でやってきていて、まだ達成できていないので。自分たちの代で達成することができたら、これ以上ない引退試合になると思います。

八木 できれば得意な鉄棒で種目別決勝に行きたいんですけど、そういうことを考えたら失敗しちゃうので(笑)。6種目全て失敗なく、いつも通り演技して、そうしたら点数はついてくると思うので、まずは失敗しないようにしたいです。

――最後に、インカレへの意気込みをお聞かせください

岸本 僕の中では引退試合でもありますし、副将として、最上級生として、全員で団体3位を取りに行きたいと思います。そのためには、日頃の練習からどれだけ試合を意識できるかがポイントだと思うので、失敗しても自分の世界に入り込みすぎないように、「試合だったらこうしないとだめ」とか、周りへの声かけだったりとか、そういう姿勢で引っ張っていくことを意識していきたいです。

八木 春先の試合が良くなくて、そこからすごく悔しい思いを持ち続けたまま練習してきました。インカレで良い演技ができればその悔しさが晴れるんじゃないかなと思うので、自分らしく、失敗しないように頑張っていきたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 大浦帆乃佳)

今回の色紙のテーマは「自分の体操を一言で表すと?」

◆岸本邦秀(きしもと・くにひで)(※写真右)

1994年(平6)7月18日生まれ。身長166センチ、体重60キロ。兵庫・市尼崎高出身。スポーツ科学部4年。先日甲子園出場を決めた母校の監督インタビューを聞いて涙ぐんだという岸本選手。なんとその監督は担任なのだそうです!そんな岸本選手からは、最後のインカレに懸ける熱い思いがひしひしと感じられました。最終演技者を務めるあん馬で、有終の『美』を飾ってください!

◆八木暁己(やぎ・としき)(※写真左)

1996年(平8)2月17日生まれ。身長169センチ、体重56キロ。京都・洛南高出身。スポーツ科学部3年。スポーツ推薦が多い体操部ですが、八木選手は指定校推薦で入学しました。勉強にも体操にも一生懸命に取り組む姿に刺激を受けている部員も少なくないはず。インカレでは、持ち前の『丁寧さ』でノーミスの演技を目指します。鉄棒の離れ技、注目です!

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