個性光り、伝統の一戦制す

体操

 早慶対抗定期戦(早慶戦)が早大第二体育館で行われた。団体総合は、東日本学生選手権(東インカレ)とはメンバーを変えながらも約12点の差をつけ快勝。個人総合では、浅野佑樹主将(スポ4=東京・明星)が84.8で優勝するほか、あん馬を除く5種目で3位以内に入る活躍を見せる。また、両校応援部による声援やチアリーディングが華を添え、ことしの早慶戦も大盛況のうちに幕を閉じた。

 終始良い流れで試合を展開していた早大。その火付け役となったのは、ほとんどの種目で前半演技者を担った八木暁己(政経3=京都・洛南)と佐藤崇太(スポ2=福井・鯖江)だ。1種目目の跳馬で着地をまとめて後続の選手を勢いづけると、続く平行棒では八木がこの種目1位となる会心の演技でチームを盛り上げる。得意の鉄棒でも離れ技コールマンを決めて好調をアピールした。一方の佐藤は平行棒で倒立が乱れる場面があったが、それ以降は大きな過失もなく粘りの演技で通し切る。両者ともに、『演技をつなぐ』という前半演技者の役目を全うした。また、鉄棒では南亜蘭(スポ1=大阪・太成学院大高)が大技カッシーナに挑戦し、見事成功。その後の技で惜しくも落下してしまうが、今後の活躍を予感させる堂々とした実施を見せつける。「成功するか不安だった」と振り返る浅野も、最終演技者というプレッシャーの中で難度の高い離れ技を次々と決め、インカレへと弾みをつけた。

コールマンを決めた八木の鉄棒

 4種目目のゆかでは柏木寅冶(スポ1=千葉・市船橋)が躍動する。減点対象になりやすい着地をピタリと止め、見る人に好印象を与えた。続く種目は、東インカレで3名が落下し点数が伸び悩んだあん馬。今回はミスを1つにとどめ、チーム得点に反映される5名の演技をしっかり揃えた。最終種目のつり輪でひときわ注目を集めたのは、試合全体のラストを飾った近藤宏紀(スポ3=福井・鯖江)だ。ことしから構成に入れたという中水平を含め、一貫して力技の安定感が光った。最後は吸い付くような着地を披露し、白熱した早慶戦を締めくくる。試合後には、両校の女子選手によるエキシビションが行われた。ゆかに出場した長沼園佳(スポ3=群馬・中央中教校)は、はつらつとした演技で観客を魅了する。試合とは打って変わり、和やかな雰囲気を楽しんだ。

安定感が光った近藤のつり輪

 それぞれが持ち味を発揮できた反面、「本番になるとやっぱりできていないところがある」(近藤)と、調整が必要な部分も見つかった今大会。また、1年生2名の活躍によって士気はますます高まっただろう。部内で切磋琢磨(せっさたくま)しながら『インカレ団体3位』へ――。夏本番はすぐそこまで迫っている。

(記事 大浦帆乃佳、写真 木村京、中村ちひろ)

集合写真

結果
男子団体総合
選手名 ゆか あん馬 つり輪 跳馬 平行棒 鉄棒 合計点 順位
浅野佑樹(スポ4) 14.700 12.850 13.950 14.650 14.000 14.650 84.800 1位
近藤宏紀(スポ3) 14.350 14.300 14.350 14.250 12.850 12.900 83.000 2位
八木暁己(スポ3) 13.600 12.800 13.400 13.150 14.450 14.300 81.700 5位
佐藤崇太(スポ2) 14.400 13.350 13.650 13.250 13.900 13.350 81.900 4位
柏木寅冶(スポ1) 14.550 14.100 13.200 13.850 13.150 13.250 82.100 3位
南亜蘭(スポ1) 14.550 10.600 13.750 14.650 14.400 12.800 80.750 6位
チーム得点 72.550 67.400 69.100 70.650 69.900 68.450 418.050 優勝
コメント

浅野佑樹主将(スポ4=東京・明星)

――どのような意気込みで試合に臨みましたか

『打倒・慶大』ですね。歴史が変わらないように、っていうのと、連覇しようっていう気持ちで臨みました。

――早慶戦という試合に対する思い入れはありますか

僕、こういう『伝統の一戦』みたいな試合が好きなんですよね。応援部の方が来てくださって早大の応援がすごく盛り上がったりしたので、そういう人たちにいい演技を見せたいなって思いました。

――応援部の応援は力になりましたか

そうですね、応援されると力が出るタイプなので。

――きょうの演技を振り返って

とりあえず大過失はなしで、得点を見るとよかったかなって思うんですけど、平行棒での手ずらしだったり、鉄棒の足割れだったりで取りこぼしが多かったんです。自分の中では詰めて練習してきたところなのにうまくいかなかったので、惜しかったなって思います。

――演技後に笑顔が見られる場面が多くありました

満足のいく演技だったから、というよりはほっとしたって感じですね。気合いを入れすぎると失敗することが多いので、そうならないようにいつも通りを心がけて、演技が終わった後にほっとして笑顔になっちゃいましたね。

――特に出来が良かった種目は

鉄棒で粘れたのがよかったです。最近の練習でコールマンがようやく安定してきたので、通したときに成功するか不安だったんですけど、今回の実施で自信がつきました。

――チームの雰囲気はいかがでしたか

珍しいメンバーもいたのでうまくまとまるのかなって思ってたんですけど、そんな心配はいりませんでした。頼りがいのあるチームメートだったのですごく楽しかったです。1年生の2人も堂々としてて、安心できますね。

――6種目で84.8という点数について、どのようにお考えですか

今月84.5をとろうっていう目標を立てていたんですけど、3日で更新しちゃいました(笑)。ラッキーって思う反面、これからこの点数を下回らないための練習を考えていかないといけないなと思います。

――インカレに向けて、調整は順調でしょうか

4・5月は自分の中で苦しい試合や練習が続いてたんですけど、最近は自分のペースをつかみ始めているので、少しずつですけど、0.1でも稼げる練習をしていきたいです。

――この試合で得た課題を教えてください

平行棒のヒーリーからディアミっていう一連の技の流れを結構丁寧に練習してきたつもりだったんですけど、減点されてしまいました。なので、そこを直していきたいなと思います。あとつり輪の力技が弱いので、もっとはっきりと強さを見せられるようなさばきができればいいなと思います。

近藤宏紀(スポ3=福井・鯖江)

――きょうの目標は

85点を取ることです。

――全体で2位になったことについてはいかがですか

最初の平行棒と鉄棒で失敗しているので、個人的にはあんまり良くなかったですね。練習で失敗しないでできていたのですが、本番になるとやっぱりできていないところがあるので、まだ練習が足りないと感じました。もっとやらないといけないと思いました。

――試合全体を振り返っていかがですか

失敗するのはしょうがないことなのですが、失敗して立て直せたことが今回は良かったなと思いました。

――特に良かった種目は

あん馬とつり輪がそれぞれ良かったです。ゆかはそんなに良くなかったけれど、失敗は出なかったので耐えられたかなと思いました。

――つり輪で点が伸びた理由は

自分は練習終わりに毎日つり輪のトレーニングをしていて。きょう最初にやった中水平っていう技は1年生からずっとトレーニングをしていました。つり輪の力技ってすぐやってできるものではなくて、ずっと積み上げて何ヵ月もトレーニングをしてやっとかたちになってくるのですが、中水平を去年までずっと入れられなくて、3年生の今になって入るようになりました。毎日やり続けて、自分がやりたくないところでも監督の馬場先生(馬場亮輔監督、平18年人卒=埼玉栄)にやるように言われ、無理矢理かもしれないけどやったこということが大きかったかもしれません。

――インカレに向けた現在のチーム状況は

自分が入るということはまだ決まったわけじゃないので、まず自分のことを考えていきたいです。ことしは頑張りたいと思います。

――インカレにまでに強化したいことを教えてください

失敗をしないのは当たり前で、今そんなにDスコア(技術点)を上げていなくて難しい技は一つもやっていないので、Eスコア(出来栄え点)で勝負していきたいと思っています。Eスコア51点、全部種目平均8.5点を取れるくらいまで完成度を上げられたらと思っています。