8月20~22日の3日間にわたって開催された全日本学生選手権(インカレ)。最終日となったこの日は、個人種目別決勝と個人総合決勝が行われた。早大からは個人種目別決勝に、予選で平行棒8位に入った近藤宏紀(スポ2=福井・鯖江)が、予選上位36名によって繰り広げられる個人総合決勝には、小倉佳祐(スポ4=千葉・習志野)、竹中貴一(スポ2=福井・鯖江)、高橋一矢(スポ1=岐阜・中京)の3名が出場。団体戦から一夜明け疲労も残る中、選手たちは力いっぱいの演技を披露する。予選から皆順位を落とし悔しい結果に終わったが、早大体操部の粘りを見せた試合となった。
近藤は団体戦から気持ちを切り替えて平行棒に挑んだ。他の種目に比べ準備に時間がかかるこの種目。最終演技者となりたくさんの人の視線が集まる中一人で演技することになるも、緊張はなかったという。中盤に乱れがありながら、大きなミスをすることなく終える。「しっかりと丁寧に通していかないとメダルは狙えない」(近藤)。納得のいく表情は見られなかったが、質の高さを追及する近藤の今後が楽しみだ。
周りの視線が集まる中行われた近藤の平行棒
大きく崩れることなく全ての種目をやり遂げた竹中。つり輪では左手がつるというアクシデントがありながらも演技を通しきり、跳馬では着地に乱れがあるも最後の力を振り絞る。「しっかり通せたと言えるレベルの演技ができなかった」(竹中)。それでも、きょねんは演技をすることだけで精いっぱいだったため、わずかながらも自身の成長を感じたという。らいねんはさらに成長した竹中が見られそうだ。腰の痛みをこらえながら臨んだ高橋。1種目目の鉄棒では、前日の落下を引きずることなく離れ技と着地を見事に決める。だが、続くゆかでは武器であるゴゴラーゼを披露するも得点は思うように伸びない。あん馬では惜しくも落下、跳馬は腰の痛みを危惧して棄権。「悔しいという思いと、まだまだ実力不足だなと実感した」と自身の演技を振り返る。課題の残る苦い試合となった。
ゆかでゴゴラーゼを披露する高橋
予選を14位で通過した小倉は6種目全てでまとまりのある実施をした。全日本王者のプライドを背負った跳馬では、予選同様に大技ロペスを成功させるが、助走や足の振り上げで満足のいかない要素が多く残る。また、自身の得意種目であるつり輪で技が認められないというまさかのミス。しかし、ゆかでラインオーバーから再び立て直し着地をピタリと決めたり、最終種目のあん馬をミスなく終える姿からは4年生の意地がうかがえた。
最終種目・あん馬を通し切った小倉
1年間の集大成として挑んだインカレは幕を閉じた。苦しい試合となり、連戦を乗り切る厳しさを全員が痛感したに違いない。しかし、選手たちが得た収穫はそれ以上に大きかったであろう。今回見えた課題を修正し、つかんだ手応えを糧に力強く躍進していってほしい。早大体操部のさらなる進化に期待ができそうだ。
(記事 田々楽智理、写真 寺脇知佳、大浦帆乃佳、菖蒲貴司)
結果
男子個人総合決勝・種目別決勝 | ||||||||
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選手名 | ゆか | あん馬 | つり輪 | 跳馬 | 平行棒 | 鉄棒 | 合計点 | 順位 |
小倉佳祐(スポ4) | 13.900 | 14.000 | 13.050 | 14.950 | 13.500 | 13.350 | 82.750 | 24位 |
竹中貴一(スポ2) | 13.950 | 13.800 | 13.650 | 13.300 | 13.900 | 12.800 | 81.400 | 28位 |
高橋一矢(スポ1) | 13.450 | 12.950 | 14.125 | 0.000 | 12.950 | 13.450 | 66.925 | 34位 |
近藤宏紀(スポ2) | ― | ― | ― | ― | 13.950 | ― | ― | ― |
小倉佳祐(スポ4=千葉・習志野)
――きょうの演技を振り返っていかがですか
だいぶしんどかったです。
――きのうの疲れが残っているということでしょうか
そうですね。きのう演技して、つり輪でいつも以上に力を使ってしまったので、結構つらかったです。
――きのうきょうで気持ちの切り替えはできましたか
気持ちの切り替えはできたと思います。
――つり輪では、きのうと難度が変わっていたかと思うのですが
きのう行った構成で演技しようと思っていましたが、力尽きてしまって。開脚上水平で失敗して、最後抱え込みルドルフを実施する予定だったのですが、力が入らなくてスイングも全然できなくて。コーチにも降りは伸身ダブルと言われていたので、安全に行いました。
――1種目目がつり輪というのは大変なのですか
気持ちが入ってなかったというのもちょっとあると思います。やる気がないとかではなく、なんかふんわりしていて。疲れと力の面でふんわりしてたなって感じます。ちょっとつらかったです。
――跳馬はいかがでしたか
脚に全然力が入ってなかったので、助走もあまりできてなくて、ロイター板を蹴ってからも脚の振り上げが弱かったりしてあまりいい出来ではありませんでした。でも、堪え切れたのはよかったです。
――種目別決勝はなぜ辞退されたのですか
単純に疲れていたっていうのもあって。インカレの種目別をメインにしているわけではなく、ことしは全日本種目別選手権に気持ちを入れていたので、ここで無理してやる必要もないし、まだこれから試合があるし、無理する必要はないという判断をして辞退したっていうのもあるし、コーチが種目別決勝のことを全然考えてなかった、というのもあります。(種目別決勝は)事前に申請しないと2本実施できないらしくて、そこは正確ではありませんが、自分的には出てもしょうがないかなと思っていたので。6種目に専念できるようにしました。
――平行棒の演技前に入念にイメージトレーニングをなさっていましたが、不安要素などはありましたか
だいぶありましたね。普段から通すことはできるのですが、上手くやる、ってことがあまりできなくて。その点に関して不安がありました。
――実際に演技してみていかがでしたか
普段通りのものが出た、という感じです。きのうの平行棒が良かったので、きょうも同じようにできれば良かったのですが、まあいつも通りのものが出たっていうことで。粘り切れて良かったです。
――鉄棒はいかがでしたか
いつも通りでしたね。
――ゆかでは最初にラインオーバーがあったものの、その後はしっかり立て直して演技されていました。振り返っていかがですか
ゆかはつらかったですね。脚に力が入らないし、腰も痛くて、どうしようかと思ったんですけど、その中でも通し切れたというのが、今後につながる、粘り切れるっていうものができたと思います。悪くはないです。
――あん馬の演技後に安堵の表情がうかがえました
安心しましたね。良かったです。
――最後の種目があん馬ということでしたが
力は全然入らなかったです。結構器具にぶつかる場面もあって、力も入らないし、危なかったんですけど、通し切れたということは自分の中で大きいと思います。
――最後のインカレを終えて、今のお気持ちは
自分が結果を出す、というよりも団体はもう厳しい面があったので、やっぱり悔しいですけど、そこはしょうがないという気持ちだったし、最後は藤原(昇平主将、スポ4=埼玉栄)と一緒にやりたかったな、っていうのは思いました。
――今後、強化していきたいことはありますか
もう少しきれいに体操できたらな、と思いますね。あまりそこに意識できてない場面が多くて。特に団体戦になると通すことしか考えられなくて、つま先だったりの意識が全然できないんです。もうちょっと余裕ができればいいかなって思うのと、鉄棒のDスコア(技術点)をもう少し上げたいと思います。
――鉄棒は苦手種目でしょうか
だいぶ苦手です(笑)。これ以上どうしたらいいか分からないんです。離れ技をやるか…離れ技怖いのでやりたくないんですよね(笑)。とりあえず今はできる技の質を上げてやっていくことしかできないので、余裕があれば離れ技だったり高い難度の技をやったりしていこうかな、と思います。
――全日本団体選手権(全日本)への意気込みを教えてください
全日本は1チーム6人の1種目3人ずつ演技して、その全員の点数が反映させるという仕組みで、実際、藤原含め、今は7人ですけど、誰がチームに入っても結構強いメンバーだと思うので、そのメンバーでことしは決勝進出できるようにしたいです。
――藤原選手は全日本までにケガは治る予定ですか
今のところ厳しいみたいなのですが、藤原がチームに入ることでみんなのモチベーションも上がるだろうし、緊張する場面でも安心して見ていられるという人が1人でもいれば全然違ってくると思います。やっぱり藤原にはいてもらいたいと思いますが、ケガが治らなければしょうがないので、治ってほしいと思います。
近藤宏紀(スポ2=福井・鯖江)
――きょうは平行棒だけで一人での演技となりましたが
自分の演技をするだけだと考えていました。緊張はありませんでしたね。
――得点についての印象は
もう少し取りたかったですけど、あの演技だとこのくらいの点数かなと思いますね。
――中盤あたりで技に乱れがあったように見えましたが
そうですね。そこのあたりと、最初の技も上手く決まりませんでした。あとはあまり大きなミスはないのですが、しっかりと丁寧にやっていかないとメダルは狙えないので、反省ですね。
――着地についてはいかがでしたか
まあ、あのくらいですね。もう少ししっかり止められたら良かったですけれど。
――きのうの団体戦では思うようにはいかなかったと思いますが、きょうを迎えるにあたって気持ちの切り替えはどのように行いましたか
きのうは団体、きょうは個人と割り切ることはできていましたね。あくまでどちらも自分の演技に集中することが大事なので。
――全日本団体選手権(全日本)に向けて意気込みをお願いします
次は得意種目をやればいいですし、今度は昇平さん(藤原昇平主将、スポ4=埼玉栄)も出られると思うので、昇平さんの良い思い出になるように自分もしっかりやって、全日本の決勝に行くという目標を果たしたいです。そのためには日々の練習からミスを出さないということと、ミスを出さないというレベル以上で質の高い演技をすることが大切になってくると思うので、頑張ってやっていこうと思います。
竹中貴一(スポ2=福井・鯖江)
――きょうはどのような気持ちで臨みましたか
とりあえず失敗しないこととケガしないこと、楽しむことを念頭に置きました。
――きのうからどのように気持ちを切り替えましたか
きのう終わって、これで終わりじゃないぞという感じで切り替えました。
――きょうの出来栄えに点数をつけるとしたら
50点くらいですかね。一応やったみたいになっちゃってしっかりやったと言えるようなレベルの演技ができなかったので。あと悪い方ではなかったんですけど、最後の最後に粘ってたのに跳馬で手がついてしまいました。
――各種目を振り返って
2日目なので最初の平行棒、鉄棒でバタバタしてしまって。そこからゆかとあん馬は良かったんですけどつり輪あたりからまた差が出てしまい、あんまり良くなかったですね。つり輪も一応やったみたいなかたちになってしまってきのうみたいにビシッと静止できず、最後の降りの3つ前くらいで左手がつっちゃって結構危なかったですが、最後まで失敗はしなかったので良かったです。
――特にあん馬は丁寧にしっかりやっている印象でした
あん馬は、高校3年の時に手首をケガしたのできょねんもなんですけどことしも痛い状態が続きました。きのうの時点から絶対に落ちないぞという感じだったんで根拠はないですけど基本的にいけると思っていました。
――跳馬は着地が乱れてしまいましたね
跳馬はアップの時点でいけないことはなかったのですが、本番は最後まで着地が決まりませんでした。きのうは最初の種目だしちょっと余裕はあったんですけど、きょうは最後の最後だしギリギリでやってた感じで、こけるほどではないと思ってたんですけど最後にひねりがねじこんでしまって、最後まで着地できませんでしたね。
――鉄棒のDスコアは5.8でした。きのうから0.1あがりましたが理由は
あれはたまたま、最初2つつなげると加点なので。きのうは最初のそれがつなげられなかったからですね。
――大きなミスは見られませんでしたが全体的にEスコア(出来栄え点)が伸び悩んだのは連戦の疲れもありますか
自分はもともとそんなにEスコアは出ないほうなので。
――インカレを振り返って収穫点は
きょうはミスを1つしてしまったんですけどきのうはミスが1つもなくて。きょねんは2日目に演技するのがやっとで失敗も何度もあったんですけど、それに比べたらちょっとは成長したかなと思います。まだまだ2日目の余裕が出るようにらいねんも頑張ります。
――11月の全日本団体選手権(全日本)へ向けて意気込みをお願いします
苦手なところもあるんですけど、ズバ抜けて点数が良い種目が1個でもあれば変わってくるんじゃないかと思うので、全日本では全種目やらないはずですが自分が取れるところをもっと強化してやっていきたいです。
高橋一矢(スポ1=岐阜・中京)
< p>――インカレを全て終えた今、率直なお気持ちを教えてください
ここまで崩れた試合というのがあまりなかったので、悔しいという思いとまだまだ実力不足だなと実感しました。
――団体戦から一夜明けての試合となりましたがどのような意気込みで臨みましたか
きのうチームでも良い結果を残すことができなくて、個人でも決勝に進めなかった人たちもいたのでその人たちの分まで演技ができたらいいなと思っていました。
――団体戦からうまく気持ちを切り替えることはできましたか
そうですね。完全に割り切れたわけではないですが、なるべく考えないようにしてきょう全力を尽くすことだけを考えてやりました。
――1種目目の鉄棒はきのうミスがありましたが、その点何か意識などはしていましたか
そんなにとてつもない失敗ではなくて、技自体に過失があったというよりは気の緩みからの失敗だったので、いつも通りやれば失敗はしないかなと思っていました。なのでそれについては意識をせずにやりました。
――その鉄棒の演技はいかがでしたか
鉄棒は結構良かったと思います。
――ゆかの演技ではラインオーバーもありましたが振り返って
少し力みすぎてしまってラインオーバーとか着地が動いてしまいました。いつも通りというのを心掛けなければいけないところで力みすぎて頑張りすぎてしまって、結果的にあまり良い出来ではなかったですね。
――ゴゴラーゼはうまくいきましたか
ちょっときょうのは良くないですね。足のすりとかもありましたし、最後も結構ぎりぎり際どいところで終わってしまいました。
――あん馬では耐える旋回もあった中で落下してしまいましたが原因などは
ゆかが終わったあたりから左腕と肩がおかしいなという感じがあって、そのままあん馬にいったら案の定つってしまって、力も入らなくなってしまったというのが失敗の原因ですね。
――演技前のマッサージもその影響でしょうか
はい、そうですね。
――得意のつり輪の演技については
痛みとかがあって、自分の思った通りの演技という風にはいかなかったですね。力技の姿勢も良くなかったですし、悔いの残るかたちになってしまいましたね。
――跳馬の棄権はどうされたのですか
痛みというのもあったのですが、きのうからの疲れが取れていなくてもともと腰も良くなくて、きのうから無理だと思った種目は全部棄権しようと思っていました。もしかしたらゆかも棄権していたかもしれないというかたちで試合に臨みました。やはりケガというのが一番恐いので、無理するくらいならそこは棄権してしまって切り替えようという感じでした。
――最後の平行棒では全体としても最終演技者でしたが何か意識はしていましたか
最後ということで良い演技をしたかったのですが、その分やはり力んでしまって普段通りというのができなくて。最初の技で落ちてしまうというのが悔しかったですし、落ちたときのどよめきを聞いてやってしまったなと思いました。ですが最後着地を止めて盛り上がってもらえたので、良いかなと思いますね。
――きょうは浅野選手(佑樹、スポ3=東京・明星)と一緒に回っていましたが心強さなどはありましたか
そうですね。佑樹さんはとにかく優しいので、僕が肩を痛めたりしたときも僕は最初あまり言わなかったのですが、佑樹さんのほうから率先してマッサージをしてくれたりタオルを取ったりしてくれました。すごく気を遣わせてしまったといえばそうなのですが、気を遣って下さったので試合はやりやすかったですね。
――初めてのインカレを全体的に振り返るとどのような大会でしたか
ちゃんとやればそれなりの成績はついてくるのに、自分が思った通りの演技ができませんでしたね。逆に言えばちゃんとやればそれなりの成績は残るということを実感できる試合ではありました。
――今大会で得たものと課題は
得たものとしては、経験ですかね。団体戦というのを大学で初めやって、独特な緊張感やチームの流れというものを全く経験したことがなかったので、それを実感できたということだけでもらいねんには大きくつながるのではないかなと思います。課題はやはり安定感ですかね。一つ一つの技の質であったり、とりあえず失敗しないということが大前提にあるので。失敗がいくつも出てしまっているのでその辺りはまだまだ未熟だったなと思います。上のレベルの選手たちを見ていると失敗しない上で、きれいで見せ方も全部うまいので、まだまだ差があるのかなと思いました。
――次の試合に向けての意気込みをお願いします
今回悔しい思いをした分、とにかく次はおそらく全日本団体選手権が試合になると思うので、そこではまたチーム一丸となって最高の成績が残せたら良いかなと思います。