【連載】2015年度インカレ開幕特集『舞い上がれ』 第5回 相原優稀×市川はるひ

体操

 選手たちの活躍の陰にはマネージャーの存在が欠かせない。現在、早大体操部には日々の練習を支えている二人のマネージャーがいる。相原優稀(スポ4=群馬・中央中教校)と市川はるひ(スポ2=東京・鴎友学園女)。ラストイヤーを迎えた相原と、相原が引退することで一人でマネージャー業を担っていくこととなる市川。全日本学生選手権(インカレ)を前に体操部にとって必要不可欠な二人に迫った。

※この取材は7月28日に行われたものです。

「自分たちで仕事を見つける」(相原)

相原

――体操部のマネージャーを選んだ理由を教えてください

相原 私は小学校1年生から高校3年生まで体操を選手としてずっとやっていたのですが、ケガをしてしまって。高3の夏に一度体操から離れて受験勉強をずっとしていました。大学に入ったら何をしようかなと悩んだ状態でワセダに入ったのですが、群馬の頃から関わりがあった沙織さん(大野、平27文構卒=埼玉・早大本庄)が「見学してみない?」って言ってくださったんです。入学式の日、記念会堂からそのまま練習を見学に来たときに半年ぶりくらいに体操を見て、やっぱりここだな、ここにいたいなという風に感じたのが一つです。あとは、同期の中村麻衣子(スポ4=東京・小山台)が同じ時に見学に来ていて、麻衣子は絶対に体操部に入るというのを決めていたので、女子の同期がいるのも心強いなという理由で他のところは一切見学しないでその場で入ることを決めました。

市川 私は大学をワセダのスポーツ科学部にすると決めて、そう考えた時に何か部活のマネージャーをやりたいなと思っていろんな部活を見ていました。たまたま1年生の時の教養演習のクラスに同期の長沼園佳(スポ2=群馬・中央中教校)がいて、誘ってもらって見学に行ったときに優稀さんと沙織さんとお会いしました。体操部の仕事がやりたいことと合っていたというのもあるのですが、(二人が)かっこいいな、一緒に仕事したいなと思って、それですぐ決めて入部しました。

――どのようなところがかっこよかったのですか

市川 体操部の良いところとか仕事内容とかを、1時間くらい練習を見ながら教えていただいたのですが、すごくテキパキしていて。でも優しくて。なんかできる女って感じでした。

一同 (笑)。

市川 最初は優稀さんしかいなくて優稀さんと話していて、それから沙織さんが来たんですけど、2人ともすごいなと思いました。一緒に仕事をしたら近づけるかなと思って入部しました。

――中高時代のスポーツ経験などは

市川 中高時代はずっとソフトテニスを選手としてやっていました。その時から周りの人にしっかり感謝しろというのをコーチから言われていて。OGの人だったり、私たちが練習する前にいつもコートの周りを掃除してくれる学校の用務員さんだったり、そういう人がいて自分たちの練習が成り立っているんだよ、というのをずっと言われていました。そういう支える側の人の大切さというのが身に染みた6年間だったので、大学では逆にそっち側になりたいなと思いました。それがマネージャーをやりたいと思ったきっかけでもあるんですけど、そういう感じの6年間でした。

相原 すごい(笑)!

――マネージャーの仕事内容はどのようなものがありますか

相原 特にこれっていう仕事はあまり決まっていなくて、最低限のことはあるんですけど。それ以外に自分たちで見つけてやっていくことが多いですね。あとは日頃の仕事でやることは常にある感じです。

市川 そうですね。

相原 試合前は交通の手配、宿泊施設の予約や申し込みとか、最低限やらないといけないことはあるのですが、それ以外にゼッケンを作ったり外部の人との連絡を取ったり、ホームページを更新したり、常に自分たちで見つけてやっていく感じですね。

市川 (マネージャー業が)練習中にドリンクを用意したりストップウォッチで計ったりすることがメインの部活も多いと思うんですけど、そういったことはやらないわけではないのですが、あまりやらないですね。

相原 コーチが結構そっちはメインでやってくださっているので、私たちは選手にビデオをたまに頼まれるので、それを撮ってあげるくらいだよね。

市川 あとは事務系が多いですよね。

相原 パソコンを使って仕事をすることがほとんどなので、部室に引きこもっていることもありますね。リフレッシュにみんなの練習を見て、また仕事して、っていうのが結構多いですかね。

――その中で大変なことや苦労話はありますか

相原 大変なことばっかりだけど…(笑)。

一同 (笑)。

相原 特に大変なのは…。やっぱり試合前かな。

市川 そうですね。

相原  いろいろとちゃんとできているかっていう確認だったり、詰めが甘かったりする部分があるので、やり残したことがないかなということだったり。試合に行く前に事前準備がたくさんあって大変ですね。(試合に)行ってからはあまりできることもなくて、その場でタクシーを手配することくらいなので、試合直前の今の時期が一番大変かな。

市川 1年間を通して学んだことは、マネージャーの仕事ってできて当たり前で、できないと色々な人に迷惑がかかってしまうので、ちゃんとできた状態にするために最低限のことをやるのはもちろんなのですが、いろんなことに気を配らないといけないなというのがあると思います。それがちゃんとできているかを2人で確認し合うのが一番大変かなと思いますね。

――相原さんは大野さんから引き継いだときに大変だと感じたことは

相原 沙織さんがすごくできる人だったので、できるだけ近づきたいと思ったのですが、あそこまではなれないというか、全く同じような主務にはなれないなというのがありました。昨年のインカレ後、沙織さんが引退する前にはるひと二人で今後どうするかという話をしたときに、沙織さんは一人で何でもできる方で、最終確認というかたちで私たちに確認をとってくださったのですが、私たちは全部相談し合いながら進めていくかたちでやろうね、という話をしました。大変だったことは、(沙織さんが)いなくなるということ自体がプレッシャーというか、OBの方々も体操部の主務といったら大野、というのができていたし、いなくなっても「大野は」という風に聞かれて、「もう引退しました」という感じで。まずは体操部の顔になるところからが大変で。それだけ沙織さんの存在は大きかったんだなと思うんですけど、だからといってやることが変わるわけでもないから、(市川には)仕事をしっかり覚えてもらって一緒にできるところまで頑張って行こうっていう感じですね。

――大野さんは4年間主務をされていましたが、それを引き継ぐに当たって重圧は大きかったですか

相原 そうですね。結構プレッシャーはあって、大丈夫かなという不安はあったんですけど、その時、体操部以外の同期の友達も主務になる時期で、選手をやりながら主務をやっている人もいたので、そういう人たちと話をしながら頑張ろうという気持ちになれたことも大きかったですね。

――市川さんは見ていていかがでしたか

市川 ずっと三人で仕事をしていて、沙織さんのすごいところもよく分かっていたし、優稀さんの良いところもよく分かっていました。二人にずっと教わっていたので、沙織さんが抜けたことは大きかったんですけど、ずっと一緒に教わっていた人と次の年もできるということもすごく大きなことでした。たぶん優稀さんは相当なプレッシャーがあったと思うんですけど、私的にはまだ一人いてくれるから心強い感じでした。(優稀さんは)私の意見を聞いてくれる先輩なので、特に不安とかはなかったです。

相原 思い出した!結構あの時は夜中語り合ったよね。

市川 ありましたね。

相原 あとはサポーターで頑張っていこうっていうのがあって、ソニー(孫シンリー、スポ3=台湾・竹東)も一緒に女子三人だったんですけど、ただ支えるだけじゃなくて引っ張っていこうっていう話もしましたね。サポーターでまとまって頑張ろうっていうのをすごく言っていた気がします。

――大変なことが多い中でやりがいを感じる部分は

相原 常に仕事をやっていて自分にプラスになることというか、自分が成長できるなって思うことが多くて。社会に出てからも生かせることや、今就職活動をやっている中でもすごく話せる内容は多いので、日々やりがいを感じてはいますね。その中で一番やっていて良かったなと思うのは、いつも一緒にいる選手が試合で良い演技ができて、ありがとうって言ってくれる瞬間がやっぱりマネージャーを続けていて良かったなと一番感じます。昨年のインカレはすごく感動して、本当にここでやっていて良かったなって感じました。

市川 私はまだマネージャーを初めて1年経ったくらいなので、これからいろいろと学んでいったら得られることも多いと思うんですけど、普通に大学生活を送っていたら知り合わなかったり一緒に仕事できなかったりするような選手やOBさんや大学の関係者の方とかいろんな人に出会えたので、今の時点でそれはすごく大きなことというのが一つあります。もう一つは、私体操を全然知らなくて、テレビで見たこともあまりなくて鉄棒と跳馬くらいしか知らなかったんですけど(笑)。ただマネージャーの先輩たちがかっこいいっていうだけで入っちゃったんですけど、だんだんみんなの練習を見ていくうちに技も分かるようになっていったし、かっこいいなと思うようになっていきました。女子の選手と話す機会が多いんですけど、「この技できるようになったよ」とか全然分からない私にも言ってくれるので、そういうのを見ていて体操が好きになっていって、今体操がすごくかっこいいし好きだなって思っています。今まで団体競技をやっていたんですけど、こういう新しい、個人競技ですけどみんなで力を合わせる団体っていうのもあって、新しい競技に巡り合えたのも大きいかなと思っています。

――他の部活のマネージャーとの交流はありますか

相原 たくさんありますね。実行委員会(体育各部実行委員会)が大きな存在なんですけど、いろんな部のマネージャーさんと主務会をやってみんなでお話をして、それぞれが大変なことを抱えていると思うのでアドバイスをもらったり、他の部がやっていることをまねしてやってみたりしていますね。出納簿とかは体操部は代々先輩方がやっていたやり方でやっていたんですけど、他の部の方から教えてもらってことしからは変えてやってみたりしています。常に他の部の人との関わりはありますね。

「体操部には『芯』がある」(市川)

市川

――お二人から見た早大体操部の印象は

相原 ただ暗いだけだと思っていたんですけど(笑)。

一同 (笑)。

相原 すごく暗くて一人でいるのが好きな人が多くて、あんまりみんなでっていうのが好きじゃない人が多いのかなって思ってたんですけど、今の1、2年生の存在も大きいのかもしれませんが最近ちょっと明るくなってきましたね。騒ぐことだけが良いことじゃないんだなっていうのを体操部にいるとすごく感じて。他のにぎやかな部の人と一緒にいることもあるんですけど、そことはちょっと違う良さというか。なんだろう…。落ち着くよね。

市川 そうですね。

相原 あんまりわーって騒がなくてもいいし。あとは真面目な人が多いですね、やっぱり。競技特性もあるのかもしれないけど、一個一個ちゃんとやっていかないとうまくならない競技だから、勉強も含めて根は真面目な人ばっかりですね。何か他にある?

市川 私も入部したときに、優稀さんと沙織さんに「体操部を一言で表すとどういう感じですか」と聞いたんですけど、2人とも「根暗かな」という答えで(笑)。

一同 (笑)。

市川 えーって思ったんですけど(笑)。でも入部して1年経って思ったのは、すごく明るいわけじゃないんですけど、自分の中にちゃんと芯があるというか、ここにいくためにはどうすればいいかとか、飄々(ひょうひょう)としているようで「この人こういうこと考えていたんだな」って思うことはあります。試合前に見せる真剣な表情とか、絶対に勝つっていう感じとかを見るとすごいなって思いますね。

相原 あとはあんまり出さないよね。色々それぞれが考えている事とかあると思うけど、あまり口に出して言わないし、自分の中で結構考えているかな。だから早スポの対談とかで「こんなこと考えてるんだ」って知ることが結構多いよね。

市川 私たちが知らない面もあるんだろうなって思います。

――今年度は藤原選手(昇平、スポ4=埼玉栄)が主将のチームですが、今までのチームと違う部分などはありますか

相原 チーム感が増したよね。

市川 そうですね。

相原 昇平がキャプテンっぽくなってきましたね。初めの頃は悩んでたっていう話もちょっと聞いていて、これからどういう風にキャプテンをやっていこうかっていうのを考えていたみたいなんですけど、今はもうザ・キャプテンみたいな感じになっていて。試合前に本番と同じような感じで、通しで採点もしてもらう試技会をこないだやったんですけど、その時もちゃんとキャプテンとして後輩たちに声を頻繁に掛けたり、全体に対して「ここ大変だけど頑張っていこう」っていうのを言ったりとかしていて、ああキャプテンだなって感じることは結構あるよね。

市川 ありますね。

相原 あまり女子に対しては多くを語ったりしないし、仲良い人とは仲良かったりするけど、常に交流しているわけではないんです。でも、はたから見ても頼れるキャプテンって感じだよね。競技力も一番高いから、ワセダの中でも「昇平さんみたいになりたい」って言っている後輩もいて、そういうのも大事なんだなって思いながら見ていますね。

――体操部全体の仲は良いですか

相原 悪くはないよね(笑)。

一同 (笑)。

相原 悪くはないと思う(笑)。みんなでたまに集まったり、個人的に私ははるひとかソニーとか女子選手が多いけどご飯に行って体操以外の話も色々したりしていますね。

市川 あとは練習が終わった後に選手はダウンというストレッチとかすることが多いので、その時にフロアの上で遊んだり話したりするのが日課ですね。

相原 いいよね、あの時間。すぐ帰っちゃう部活とかも結構あるみたいだけど、1時間くらいはごろごろしているので、仲いいなと思います。

市川 誰かしらいますよね。

相原 あと男子は寮が一緒だから、そこでも結構交流があるみたいです。

市川 女子も女子部室で結構話しますよね。

――マネージャー以外の仕事はありますか

相原 体育各部実行員会が大きな仕事としてあります。私はいま、その委員会で副実行委員長という立場で全部の実行委員会の行事の統括を行っています。1年生の時から行っていて、4年目になります。はるひも1年生のときから参加していて、活動頻度も週1程度あり大きな仕事の一つです。ただこの活動もマネージャーの仕事の一つというかたちになっているよね。

市川 そうですね。体操部の代表として活動に参加しているので、部活の一環でもあります。いつもお世話になっている競技スポーツセンターの方と一緒に仕事をする機会も多く、つながりも深いですね。

――普段の部活とは別の大変さもあると思いますが

相原 体操部は20人という小規模な組織ですが、実行委員会は100人以上の人が参加していて、そこのすべてに目を向けなければいけないという大変さはあると思います。副実行委員長だからこそ感じる大変さもあります。

市川 私は実行委員として仕事はあまりできていませんが、優稀さんが副委員長として人前で話している姿を見ると頼りがいのある先輩だと感じます。やはり大所帯ですし、規模も体操部だけではない様々な部活が一緒に活動することになるので違いは大きいです。例えば、9月に東伏見でスポーツフェスタというイベントがあり、私たちは主に引っ張る立場として実行委員会に参加するのですが、地域の人々であったり、来賓者の方々に対して、体操部の代表ではなく体育会各部の代表として活動できるという点が大きな違いだと思います。

――やりがいは大きいですか

相原 大きいですね。新人パレードなどでは、交通規制をかけているので、もし不具合があったら全て私たちの責任になってしまいます。そういった中で、成功したときにやりがいを特に感じます。また覇者の会や謝恩会など4年生に対するイベントなどで、感謝の言葉をもらったり、激励をもらうとやっていて良かったなと心から思います。

――ワセダの体育会のイメージは

相原 元気がありますね。

市川 つながりもありますよね。

相原 そうだよね。つながりも強いと思います。個のつながり、部のつながりが強いですね。お互い誰かが頑張っているから、自分たちも頑張ろうという気持ちになれることも多いです。他の部活が優勝したら、自分たちも一緒になって頑張ろうと思う傾向があると思います。他の部活の応援も時間が合えば行ったりしていて、一緒に勝利の紺碧の空を歌うのが楽しかったりします(笑)。

――副委員長の相原さんはどう見えますか

市川 体操部の優稀さんと大きくは変わらないですが、効率が良くてきぱきとしていてよく周りを見ているので、すぐ人に指示を出したり、多くの面でとても尊敬できます。また、相原さんのそばにいさせてもらっているおかげで、上の立場の仕事を間近で見ることができるので、このポジションはラッキーだなと思います(笑)。

一同 (笑)。

市川 優稀さんのおがげで、4年生とお話する機会が多く、いろいろなことを教えていただけるので本当に良い立場だなと感じます。

相原 私がよく4年生の輪に連れ込んでしまうので(笑)。

市川 実行委員は基本的に2年生や3年生からなので、私より遅くに入ってくる人が多くて。その中で私は1年生から所属しているので、そういう意味でも、本当に1年生から所属していて良かったと思います。

マネージャーとしての集大成と、引き継がれるマネージャーのたすき

お互いを信頼し合っている相原(右)と市川

――相原さんは4年生ということでラストイヤーとなりましたが、4年間を振り返っていかがですか

相原 本当にあっという間でした。まだ引退していないですけど(笑)。一個ずつ挙げたらキリがないくらい充実していて。4年間で一番時間をかけた場所でした。体操部に入っていなかったら、学べなかったこともたくさんありますし、出会えなかった人もたくさんいるので、心から入って良かったなと思っています。また、今までとは違った価値観を知ることができた4年間だったと思います。選手だったときはクラブチームで体操に取り組んでいて、学校の部活として所属したのは大学が初めてでした。部活ならではの先輩後輩の関係であったり、男子が同じ組織にいることも初めての経験だったので新鮮な経験でした。いっぱいあるな(笑)。

市川 ぜひ教えてください(笑)。

相原 選手としてやっていたときには気付けなかったことが、マネージャーとして体操に関わることで気付くことができました。選手時代は体操をすることに必死で、試合に出場するまでのプロセスなどの陰の部分に気付けなったのですが、そういった点も知ることができたことで、これまで私のことを支えてくれていたすべての人に感謝の気持ちを持つことができました。重ねて、支える側もやりがいがあることを知ることができた4年間でした。確かに大変なことも多いのですが、その分選手が良い結果を出してくれたら本当にうれしいんです。選手からサポーターに回ったことで、いろいろ見えたことが多かった4年間だと感じます。

――小学校1年生の時からこれまでほとんどの期間を体操とともに歩んできたのですね

相原 体操をやっているときは本当につらかったのですが、ここまでなんだかんだ続けてきたということは体操が大好きなんだと思います。私は親に相談しないで体操部に入ったんですけど、親もあんなに嫌がっていた体操をまさか続けるとは思っていなかったと思います。ただ、入学式でみんなが体育館で練習している姿を見て、私の居場所はここだな、と思ったんです。そして今、この決断は間違っていなかったと心から思います。

――大学4年間で成長したことは

相原 OBの方々や先輩など周りの方からは「成長したね」と言われます。特に4年生になって主務に就任してから言われることが多くなったのですが、自分自身ではあまり感じてないかもしれないです(笑)。ただ前より周りが見えるようになったり、同じ時間の中でできることが増えたように思います。また、組織の下から付いていく立場から上に立つことが多くなって組織を引っ張っていくにはどうしたら良いのかなどを考えるようになったり、そういった点では成長しているのかもしれません。

――市川さんはこれまで相原さんの背中を見てきたと思いますが、どんな存在でしょうか

市川 入部したときから、今は二人ですが沙織さんと三人でマネージャー業を行ってきました。勝手に私が思っていることなんですが、私は下に妹しかいなくて、入部したときは二人のお姉さんができたような気持ちでした。一緒にやってきた期間も一番長いですし、様々な仕事を教えてくださったのは優稀さんで、いつも私を見守ってくれているので、先輩でもあり、それ以上に近い存在です。

――相原さんにとって市川さんはどのような存在ですか

相原 私にとってはるひは初めてできたマネージャーの後輩でした。私は先輩後輩みたいな関係があまり好きではなくて、言いたいことはきちんとお互いに言えるけど、仲良しな存在の方が仕事もしやすいですし、良い雰囲気で仕事ができると考えていました。常に一緒にいるので、ピリピリもしたくないですしね。なのでプライベートでもよくご飯に行ったりします。そういう点では良い意味で後輩ではないですね(笑)。また沙織さんがいなくなってもはるひがいるから頑張れると思える、それくらい大きな存在でした。しっかりしているんですよ。仕事を覚えるのも早いですし、どこまでも付いてきてくれます。かわいい存在です。

――相原さんは4年生ということで、これからの体操部は市川さんが支えていくことになると思いますが、その点はいかがですか

市川 現時点では想像できないですし、不安で不安でたまらないというのが正直な気持ちです。なので、うまく自分でできるか分からないですし、行かないでほしいという気持ちが強いです。ただ1年間一緒に仕事をしてきて、優稀さんや沙織さんが4年間いろいろなことを乗り越えつつ、支えてきたことで今の体操部があることを身に染みて理解していて、ここで途切れさせることは絶対にしたくないので、お二人に教えていただいたことを反芻(はんすう)し、3月まで乗り切って、そのあとはかわいい後輩を獲得してどんどん次につなげていきたいと思います。

――それに対して、相原さんは市川さんにメッセージなどありますか

相原 はるひは私がいなくなることがとても心配みたいで、よくそういう話をしています。でも、はるひはなんだかんだ周りに助けてもらえる存在だと思っていて。自分一人で抱え込まなくても同期や先生、OBさんなどたくさんの人に見守っていてもらえると感じています。実際、仕事面でも抜けなくできるので問題ないと思います。初めはあまりにも不安そうで大丈夫かなと思っていて、夢にまでできましたが(笑)。

一同 (笑)。

相原 はるひが一人で「どうしよう」となっているところを私が上から部室を見下ろしている夢を見てしまったんですよね(笑)。

市川 その夢を見たあと、私に報告してきたんですよ(笑)。

相原 東インカレ(東日本学生選手権)など一緒に仕事していると、すでに自分からいろいろなことを気付けるようになってきていて。私がいなくなることはもちろん分かっていることなので、はるひを中心に仕事をやっていこうと話していて、実践しています。これまでは私が教えて言うことで仕事を進めていましたが、はるひに自分で気付いてもらって足りないところを私が教えるというかたちになっていると思います。一人になる準備は着々と進んでいます。

――最後にインカレが直前まで迫っていますが、抱負を教えてください

市川 ことしは2回目のインカレになるのですが、昨年は入部して3カ月も経っていない中で大きな試合に臨むというかたちでした。遠征試合は初めてで、付いていくのでやっとという状態でした。何をしたかもあまり分かっていないような状況だったのですが、ことしは準備の段階から参加することができています。前もって今は全ての準備をして、万全の状態でインカレに臨みたいです。また会場ではらいねんは一人でやるということを考えながら行動し、たくさん支えてもらう場面もあると思いますが、自分から動けるようにしたいと思います。そうすることで選手たちも集中できると思いますし、それが団体3位という目標に結び付けられたらと思います。

相原 私にとって最後のインカレになりますが、最後だからと言って昨年と違うことをするわけでもないので、一つ一つ仕事をこなしていくということに変わりはないと考えています。でも、体操部としてインカレでの演技を見ることができるのは最後ですし、みんなは1年間インカレのために頑張ってきたと言っても過言ではないくらいこの大会は大事な大会なんです。なのでこの目で部員すべての演技を見たいです。そして最後は笑顔で帰ることができたらいいな、と思っています。マネージャーとしてというよりは、4年生として無事に終わってほしいと思っています。あとははるひが全部言ってくれました(笑)。とにかく頑張ってほしいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 大森葵、三上雄大)

ワセダの底力に注目です!

◆相原優稀(あいはら・ゆうき)(※写真左)

1993年(平5)8月24日生まれ。群馬・中央中教校出身。スポーツ科学部4年。たまにある休日はとにかくアクティブに行動するということで、毎日予定が埋まっていくという相原さん。早稲田大学体育会で運営される体育各部実行委員会では副委員長としても活躍、日々忙しい毎日を送っている相原さんは休日も活発に行動することでリフレッシュしているそうです!

◆市川はるひ(いちかわ・はるひ)(※写真右)

1995年(平7)5月24日生まれ。東京・鴎友学園女出身。スポーツ科学部2年。「マイブームはありますか」という質問に、「サンリオのキャラクターの『ぐでたま』が好きなんです(笑)」と答えてくれた市川さん。自宅にはぬいぐるみやTシャツなどのグッズがあるそうです。意外な一面を知ることができました!