6種目すべての総合力が求められる全日本個人総合選手権(全日本)。トップ選手しか立つことが許されないこの大舞台に、早大からは主将の藤原昇平(スポ4=埼玉栄)をはじめ他3名がエントリーした。予選通過を許されるのは上位36名のみ。決勝進出、さらにその先に待っているNHK杯への出場権を懸ける男たちの戦いの幕が開けた。
24日に行われた予選のⅠ班には3名が登場。体調不良により万全な状態で臨めなかった竹中貴一(スポ2=福井・鯖江)は、つり輪で静止技や着地をしっかり決め、また跳馬ではEスコア(出来栄え点)8.95点にも及ぶ美しい跳躍を見せるが、後半で挑んだ種目では点数に伸び悩んだ。「絶対に決勝に残ってやる」という強い気持ちで臨んだ浅野佑樹(スポ3=東京・明星)。しかし最初の平行棒でまさかの失敗。「狙いすぎていて、いつも確認していなかったところでミスをしてしまった」(浅野)。その後はしっかりと気持ちを切り替え、得意のゆかではダイナミックな演技を披露した。今大会で最も躍進を見せたのは跳馬の現全日本王者・小倉佳祐(スポ4=千葉・習志野)だ。きょねんから難度を上げたつり輪では上水平、中水平ともにピタリと決める。跳馬では、片足がラインオーバーとなるも、ひねりの速さや跳躍の高さで他の選手たちと圧倒的な差を見せつけた。「良くはなかったが自分が通過できるかもしれない最低ラインで、ノーミスで演技ができて満足した」という最終種目の鉄棒では、着地を決めた後ガッツポーズを見せる。35位という順位につけ、堂々の決勝進出を果たした。
ダイナミックな演技が目を引いた浅野のゆか
名だたるトップ選手がひしめく予選のⅡ班にはエースの藤原昇が出場。1種目目の鉄棒では公式戦で久しぶりに見せた大技・カッシーナを成功させる。着地もしっかり止め、上々な滑り出しとなった。しかし、あん馬では後半で思うような旋回が出来ず落下してしまう。さらに集中力を高めて挑んだ最終種目の平行棒でも落下の悲劇が襲い得点を伸ばせず、あと一歩というところで決勝に駒を進めることはできなかった。
落下の悲劇が襲った藤原の平行棒
26日に行われた決勝の舞台。「個人戦で緊張することはあまりないが、今回は珍しく緊張した」(小倉)。最初の鉄棒、ゆかでは着地もしっかり決め得点を伸ばすが、予選ではまとまりのある演技を見せたあん馬では失敗してしまい悔しさをにじませた。5種目目は得意の跳馬。助走の時点で異次元の迫力、さらに大きく踏み切ってダイナミックな跳躍も披露する。着地もピタリと止め、ガッツポーズを見せた。予選と決勝の合計得点は168.700。日本のオールラウンダーたちの厚いカベを崩せず、全種目でNHK杯に出場することは叶わなかったものの、ことしから導入された選考基準により跳馬でこの舞台に立つことが決まった。
全日本王者・小倉が見せる圧巻の跳馬の演技
今回の結果を受け、6月に控える全日本種目別選手権(種目別)に跳馬で小倉が出場することが決定した。3連覇がかかる大一番。決勝で見せた演技でさえ誰もが息を飲む圧巻のパフォーマンスであったが、全日本王者はそれではまだ満足していない。「ロペスの完成度をもっとあげ、いつでも着地止められるようにしたい」と更なる高みを目指している。さらに、「NHK杯と種目別ではもう半分ひねるつもり」と驚きの一言。小倉が、跳馬のまた新たな歴史をつくる日はすぐそこなのかもしれない。
(記事 中村ちひろ、写真 三上雄大、大森葵、笹澤桜)
男子個人総合予選 | ||||||||
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選手名 | ゆか | あん馬 | つり輪 | 跳馬 | 平行棒 | 鉄棒 | 合計点 | 順位 |
小倉佳祐(スポ4) | 14.050 | 13.250 | 14.700 | 14.950 | 14.100 | 13.550 | 84.600 | 35位 |
藤原昇平(スポ4) | 14.250 | 13.300 | 14.050 | 14.500 | 12.950 | 14.250 | 83.300 | 54位 |
竹中貴一(スポ2) | 14.150 | 13.250 | 14.250 | 14.150 | 14.000 | 12.300 | 82.100 | 65位 |
浅野佑樹(スポ3) | 14.700 | 12.450 | 14.100 | 14.050 | 12.050 | 14.250 | 81.600 | 69位 |
男子個人総合決勝 | ||||||||
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選手名 | ゆか | あん馬 | つり輪 | 跳馬 | 平行棒 | 鉄棒 | 合計点 (2日目) |
総合順位 |
小倉佳祐(スポ4) | 14.150 | 12.200 | 14.300 | 15.400 | 14.350 | 13.700 | 168.700 (84.100) |
35位 |
コメント
※4月26日終了時
藤原昇平(スポ4=埼玉栄)
――いまの心境を教えてください
今回は最低ラインがNHK杯出場ということだったのですが、4年生最後というプレッシャーなのか自分に圧力をかけすぎていた部分があったのだと思います。自信を持って試合に臨んだのですが、それが結果としてあまり良くない方向に進んでしまったのがいまは悔しいです。
――コンディションは悪くはなかったということですか
コンディションは良い方でした。
――冬の間に強化してきたところはありますか
試合になると結局メンタルの勝負だと感じているので、さまざまな試合を経験し色々試行錯誤して、どういうメンタルで試合に臨むのが一番望ましいのかということと、あとは1つ1つの技の繋ぎめや裁きを丁寧に練習してきました。
――最初の鉄棒は調子が良かったと感じました。カッシーナも決められていましたね。公式戦初めてですか
2年の春に一度使った技なのですがそこから色々ケガもあったりなかなか自分の演技に取り入れることができなくて今回また再び取り入れました。
――最初の方の演技ではそれほどメンタル面での影響はなかったのですね
リラックスしてできました。
――あん馬は昨シーズンから難度を上げましたか
跳馬以外は全体的に上げました。
――あん馬の落下した理由は
ちょっと縮こまってしまった部分があって、後半で思うような旋回ができず結果として落ちてしまいました。
――最後の平行棒の失敗はメンタル面での影響があったのですか
コーチにも、あとこれくらいの点数を取れば決勝に進めるということを言われていて、そのことを気にしていないつもりでも自分のどこかで気になっていた部分があったのだといまになって思います。
――次の試合への改善点などは見つかりましたか
いまはちょっと考えられないですね。もう少し時間をかけて自分を見つめ直したいと思います。
――今季のチームの調子はいかがですか
個々でコンディションを上げてきている選手もいますが、自分はキャプテンで最高学年として引っ張っていかなければいけない立場ではあるのに、試合でもそうですしあと試技会でもあまり良い演技ができていないので僕自身はもう少し考えてやっていかないといけないのかなと思います。
――主将について心境の変化などはありましたか
僕は皆のことを信じているのでそこまで変わったということはないのですが、チームの方向付けを決めていかなければいかないのでそのあたりはもう部員には伝えています。
――ことしの1年生の印象は
いま3人いるのですが、3人とも個々で色んな個性をもっている選手が集まってきて、今回の試合で結果を残してきている選手もいますし、今後が期待されますね。
――今季のチームとしての目標を教えてください
とりあえず全日本学生選手権(インカレ)団体3位という目標は念頭に置いてそれに向けて来月の東日本学生選手権(東インカレ)をしっかり戦っていきたいなと思います。
――藤原選手個人としての目標は
僕自身ことしナショナル入りというものを目指していたのですが、こういう不甲斐ない結果で終わってしまったのであとは残している試合をしっかり一つ一つ大切にして4年の試合が悔いのないようにしていきたいと思います。
――次戦への抱負をお願いします
東インカレという試合はその時期に大学でのどの順位につけているのかというものを把握するための良き材料でもあるのでインカレに繋げられるような良い試合ができたらいいなと思っています。
小倉佳祐(スポ4=千葉・習志野)
――全体的に大きなミスのない演技となりましたが試合を振り返っていかがですか
大きいミスはなかったのですが、細かいところのミスは結構目立っていました。点数もそんなに評価されないところもあったので、決勝にもし残ることができたらそこまでに合わせられるようにしたいです。とりあえず東インカレまでには改善できるようにしたいですね。
――つり輪は14.700という点数でしたが難易度を上げられたのでしょうか
この間アメリカで試合があって、その時の点数とは一緒なのですが、きょねんの団体(全日本団体選手権)の時よりはあげています。
――つり輪の得点に関してはいかがですか
満足ですね。
――得意の跳馬は片足のラインオーバーとなりました
立つことを結構メインでやっていました。団体の時は失敗してしまったので、失敗だけは避けたいと思っていました。なのでラインオーバーの0.1のミスくらいならまだ良いかなと思っています。
――鉄棒ではガッツポーズも見られましたが、演技に関してはいかがでしたか
あまりよろしくはなかったですね(笑)。自分の通過できるかもしれないというラインの点数で、さらにノーミスで終えられて満足したので、とりあえずガッツポーズをしておきました。
――きょうは普段よりもイメージトレーニングをしている印象がありましたが何か意識していましたか
少し意識してイメージトレーニングをしながら試合に臨んでいましたね。
――演技の合間に腕をマッサージされている様子も見られました
あん馬やつり輪で結構力を使ったりしていて、また跳馬が終わってからは平行棒の前だったので腕に負担が掛からないようにマッサージをして休ませるというのが目的でした。なのでケガとかではありません。
――U-21では海外遠征も経験されましたが何か得たものはありましたか
あまり大きな試合ではなかったので評価されるのかというのはありましたが、初の海外での試合ということで、自分はいつも日本でしか試合をしていなかったので収穫はありましたね。ちゃんと演技ができれば評価をしてもらえるということで、収穫はあったと思います。
――次の演技への抱負をお願いします
決勝に残ることができたら、NHK杯に行けるか少し微妙なのですがそこを目標に頑張っていきたいです。また東インカレはいつも出ることができていなかったので、ことしはしっかり演技をしてチームに貢献できるようにしたいです。
浅野佑樹(スポ3=東京・明星)
――今大会への意気込みは
決勝に絶対に残ってやるという気持ちで試合に臨みました。
――初の個人総合での全日本出場となりましたが
あまり緊張はしていなくて、他の試合と特に変わりはなかったです。ただ、自分の中でプレッシャーを作って、緊張感を持って試合することで、1つ1つの演技に集中しようと思っていました。
――1種目目、平行棒でまさかの落下がありました
練習でしっかりと詰めていたところだったので、自信を持って演技をしましたが、落下してしまいました。この点は大きな反省点です。
――要因はありますか
いつもよりうまく演技しようと思ってしまっていた部分があったと思います。またいつも確認し切れていなかったところでのミスでした。ちょっとした修正ができていなかったのだと思います。
――落下により、他種目に影響はありましたか
特別気に留めることはなく、種目別の予選にもなるので、他の種目は他の種目として、最高の演技をしようと考えてしました。
――今回の試合では、ローテーションによって休みがありました。第3ローテーションでの休みの間はどのようなことを意識していましたか
次が一番自信のあるゆかの演技だったので、ゆかだけのことを考えていました。
――そのゆかの演技は14.700という得点でした
十分ではあるのですが、着地であったり、力技の際のふらつきであったりとまだ改善できるところはあるので、修正していきたいです。
――跳馬では思うような点数が出ていなかったと思いますが
冬場で跳馬の技術が狂ってしまい、着地で立てなくなってしまいました。そこをなんとか改善して、なんとか立つことはできました。しかし、きょねんは着地まで狙えていた技なので、きょねんの自分をできるだけ取り戻して、再び点数を狙える種目にしていきたいです。
――きょうの演技をご自身で評価していただけますか
点数で言うなら0点ですね。始めが肝心だと言うのに、最初で落下をしてしまったので。それによって、決勝に進むという目標も達成できなかったからです。
――冬の間に跳馬の改善以外に取り組まれたことは
Eスコアを出せる演技を目指していきたいと思ったので、多少Dスコアを落としてでも美しい演技、着地を狙える演技ができるように取り組みました。
――3年目を迎える今季はどのような年にしたいですか
団体での戦い方を見つけていき、チームに貢献できる存在になっていきたいと思います。
――その団体戦が東日本学生選手権であります。抱負を教えてください
東インカレ3位。みんなも思っていることだと思いますが、その目標を達成できるように頑張ります。
竹中貴一(スポ2=福井・鯖江)
――今大会に出られた経緯を教えてください
ユニバーシアード選考会で推薦枠を勝ち取って出場できることになりました。
――どのような目標を持って臨みましたか
予選通過できるくらいを狙って臨みました。
――きょうを振り返って
技をやっていても納得はいきませんでした。前半は良かったのですが、後半は点数
の伸びが良くなかったです。
――コンディション面はいかがでしたか
コンディションもあまり良くはなかったです。きのうまで風邪気味だったので。
――ゆかでは高得点を出されましたが
まだきょねんのほうが納得はいきましたね。
――鉄棒で点数が伸び悩んだ原因というのは
技の認定がされなかったり、ちょくちょく失敗してしまったのが原因ですかね。
――反省点や改善点は
練習通りできればいいかな、と。いつも鉄棒の点数が伸びないので、鉄棒を改善して
いきたいです。
――次戦への目標や今後の意気込みは
どういうふうに失敗するかが今回でわかったので、東インカレでバッチリと演技できるように調整していきたいです。
※4月26日終了時
小倉佳祐(スポ4=千葉・習志野)
――初めての個人総合の決勝、どのような気持ちで臨みましたか
ずっと緊張していました。個人で緊張することはあまりないのですが、珍しく緊張していました。
――緊張した部分は演技に影響しましたか
最初の鉄棒の一技目で力んだと思います。いつもより少し力が出すぎてしまい、ちょっと慌てたのですが、ミスなくいけたので良かったと思います。ゆかもなんとかこらえられました。あん馬は予選でも緊張しながらやっていたので、(決勝で)余計緊張している状態になり、ちょっと悔しかったですね。
――複数の種目で予選より得点を伸ばしていましたが
あん馬と吊り輪以外は、予選より点数出たので良かったのですが、もう少しつり輪は点数を伸ばしたかったです。
――つり輪と跳馬ではガッツポーズも見られましたね
跳馬は予選より良かったので、そこはガッツポーズしました。
――多くの種目で着地がしっかり決まりました。やはり調子はよかったのですか
まだまだですね。全然まぐれなので。鉄棒に関しては狙っていけたので、結構いつも通りです。床とつり輪と跳馬に関してはまぐれですね。
――あん馬での終盤の落下は悔やまれるミスでしょうか
通過できないとしても、ノーミスで終えたかったので、やはり悔しいですね。
――跳馬の得点は、最近の中で一番いい得点でしたね
そうですね。最近の試合の中ではいい得点でした。着地も一応狙いに行ってきちんと止まったので良かったと思います。
――今大会で得た収穫は
つり輪は、ちゃんとやれば評価してもらえるということです。あん馬は、最近Dスコアをあげてやってきたのですが、Dスコアをあげたところで点数出してもらえるとは限らないというところが分かったのも一応収穫でもあります。跳馬はNHK杯に出れるかもしれなくて、そこで半分ひねれる良い土台はできたと思うので、収穫はいろいろありました。
――今後の練習で完成度を高めていくということでしょうか
そうですね。ロペスに関してはもっと完成度を高めたいです。いつでも着地止められるようにして、NHK杯と種目別ではもう半分ひねるつもりなので、もっと余裕をもってできるようにしたいです。