ついに最終日を迎えた全日本学生選手権(インカレ)。この日は個人戦の決勝が行われ、予選の結果、早大からは佐藤紘翔主将(スポ4=岡山・関西)、小倉佳祐(スポ3=千葉・習志野)、藤原昇平(スポ3=埼玉栄)、浅野佑樹(スポ3=東京・明星)、竹中貴一(スポ1=福井・鯖江)の5名が種目別決勝を兼ねた個人総合決勝に出場した。前日に行われた団体戦で持てる力を出し切った選手たち。今度は個人でのタイトル獲得を目指したが、「きのうで全てを使い果たしてしまった」という佐藤の言葉通り演技に精彩を欠き、個人総合では決勝に進んだ5人全員が予選より順位を下げる結果に終わった。また同時に行われた種目別選手権では、跳馬で大会2連覇中の小倉が安定した美しい跳躍を2本そろえたものの、最高難度のリ・セグァンを成功させた鈴田佳祐(福岡大)にわずか0.75及ばず、3連覇はかなわなかった。
全てを懸けて挑んだ団体戦から一夜明け、迎えた個人総合決勝。早大勢は予選より1つでも順位を上げることを目標に試合に臨んだ。佐藤、小倉、浅野は跳馬からのスタート。第一演技者は、種目別の跳馬で大会3連覇への期待が懸かる小倉。1本目、2本目ともに助走から着地まで余裕のある跳躍を披露し、2本の平均を15.100とするハイスコアをマーク。応援席からの大歓声に、力強いガッツポーズで応えた。続く浅野、佐藤もベストに近い跳躍を見せ、得意種目で確実に得点を重ねていく。しかし次の平行棒から徐々に疲れが見え始め、浅野が鉄棒で、佐藤があん馬でそれぞれ痛恨の落下。そんな中、最後まで粘り強く戦ったのは小倉だ。これまでは種目別の跳馬での活躍が目立ってきたが、今大会では念願のU-21日本代表入りを果たすなど、6種目でその実力を発揮している。「跳馬以外の種目で安定した成績を残すことができ、自信になった」と話すように、オールラウンドでも戦えることをしっかりと証明。平行棒の点数が伸び悩み予選からわずかに順位を下げたが、小倉は個人総合で26位と健闘した。
跳馬3連覇とはならなかったが、全種目で安定の演技を見せた小倉
前日の予選で6種目合計86.700という早大トップの高得点をたたき出した藤原は、あん馬からのローテーションとなった。1種目目から波に乗りたいところだったが、演技中盤に惜しくも落下。続くつり輪の前に一度呼吸を整えると、つり輪と跳馬では演技をまとめてなんとか流れを引き寄せる。しかし連戦による疲れと故障している指の痛みの影響か、残る鉄棒とゆかではうまく技をコントロールし切れず、得点を伸ばすことができない。この結果個人総合は31位と、予選の12位から大幅に順位を落とした。1年生ながら決勝進出を果たした竹中は、会心の出来だった跳馬の演技後に大きくガッツポーズ。だがその他の種目では細かなミスで減点があり、35位で初めてのインカレを終えた。
1年生にして決勝の舞台に立った竹中
最終日の個人戦は、全体として苦しい試合運びとなった早大。予選、決勝の2日間を通してミスなく終える難しさを痛感した選手は多いだろう。1年間の集大成としてそれぞれが強い気持ちで臨んだインカレも、これで幕を閉じた。大会2日目の団体戦でつかんだ自信と、今回の個人戦で見えた課題。その両方を忘れずに、今大会をさらなる進化へのステップとしてほしい。
(記事 末永響子、写真 三上雄大、菖蒲貴司)
★ワセダからU-21日本代表が3人誕生
早大からU-21日本代表(U-21)が3人誕生した。1人目は昨季もU-21として活躍し、今季で2度目の選出となる藤原。早大のエースが順当に選ばれた。2人目は跳馬での活躍がいままで目立っていた小倉だ。「跳馬だけでなく全種目で」と語っていた小倉はついに総合得点でも上位に食い込み、U-21入りを決めた。3人目は早大からは唯一の2年生での選出となる浅野だ。ケガの影響で点数を取れないあん馬での点数を他種目で補った。日本代表として海外での試合を経験していくことになる3人。さらに強くなったワセダを来季は見ることができそうだ。
2年連続の代表入りを決めた藤原
結果
男子個人総合決勝 | ||||||||
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選手名 | ゆか | あん馬 | つり輪 | 跳馬 | 平行棒 | 鉄棒 | 合計点 | 順位 |
佐藤 紘翔(スポ4) | 15.050 | 12.750 | 13.750 | 14.600 | 13.250 | 13.900 | 83.300 | 28位 |
小倉 佳祐(スポ3) | 14.050 | 13.900 | 14.050 | 15.100 | 12.900 | 13.650 | 83.650 | 26位 |
藤原 昇平(スポ3) | 13.100 | 13.300 | 14.250 | 14.300 | 13.800 | 13.850 | 82.600 | 31位 |
浅野 佑樹(スポ2) | 14.900 | 12.000 | 13.900 | 14.550 | 13.900 | 12.800 | 82.050 | 33位 |
竹中 貴一(スポ1) | 14.000 | 12.600 | 13.700 | 14.750 | 13.550 | 13.250 | 82.850 | 35位 |
コメント
佐藤紘翔主将(スポ4=岡山・関西)
――きょうの個人戦にはどのような目標を持って臨みましたか
きのうより1つでも順位を上げることを目標にしていました。
――試合を振り返っていかがでしたか
きのうの粘り強さはどこへ行ってしまったんだろうか、という感じです。
――連戦の疲れもあったのでしょうか
そうですね。疲れもありましたし、きのうは団体戦で絶対に失敗できないという状況だったので、きょうはちょっとしんどかったですね。きのうに全てを懸けてきて、きのうで全てを使い果たしてしまった感じで、きょうはちょっとフラフラだったので、それが点数に響いたのかなと思います。
――それでもゆかは15点を超える高得点でした
あれも全然納得のいく内容ではなかったんですけど、ゆかは全日本種目別選手権で(決勝に)残っていますし、良い演技がしたいなとは思っていました。
――つり輪が最終種目ということで、疲れている中での力技の連続だったと思いますが、振り返っていかがですか
きのうは技を正確に行うことができずに、Dスコアを下げてしまったので、Dスコアをちゃんと取ることと、僕以外のワセダの選手は演技が終わっていて僕が最後だったので、ちゃんとした演技でインカレ(全日本学生選手権)を締めくくれればいいなと思ってやっていました。
――佐藤選手にとって最後のインカレが終わりました。今大会はどのような大会になりましたか
きのうに全てを懸けていて、きのうに関しては言うことがないくらい最高でした。本当に不安だったんですけど、本当に安心しています。
――これまでのインカレでは悔しい思いをすることも多かったと思いますが、ことしのインカレは違いましたね
この最後のインカレで、3年分が報われました。安心しています、本当に。
――主将として、体操部のみなさんにどのような言葉を掛けたいですか
心から、ありがとうと言いたいです。
小倉佳祐(スポ3=千葉・習志野)
――きょうの演技を振り返ってみて
きのうよりは少し点数は低いんですが、ノーミスで終えられたので満足しています。
――インカレを終えてみての今の気持ちは
インカレ前は個人で決勝に残れればいいくらいの気持ちでいて、U-21(日本代表)入りは全然狙っていなかったです。U-21に入ることができたので、今回はすごくいい試合だったと思います。
――残念ながら跳馬での3連覇は果たせませんでしたね
今回は全然跳馬(の優勝)は狙っていなかったですし、逆に個人で狙おうっていう気持ちでしかいなかったので、(相手選手に)おめでとう、と言いたいです。
――今大会の収穫と課題は
収穫としては、跳馬以外の種目で安定した成績を残すことができて、それが自分の自信にもつながったことです。課題としては、平行棒で点数が伸び悩んだことと、鉄棒もまだまだDスコアが低く今回は全種目おさえめでいったので、なるべくDスコアを上げられるようにすることです。
――昨年と比べて、跳馬以外でも安定した成績を残せましたね
< p>今回は昨年と比べてDスコアは落としているので6種目安定してできるという自信をつけることと、団体のときに失敗しないことを目標にしていたので、その点すごく良い試合になりました。
――U-21入りを決めた気持ちは
うれしいの一言です。
――今後の抱負をお願いします
全日本の団体戦があるので、そこで決勝に残れるように頑張りたいと思います。
藤原昇平(スポ3=埼玉・埼玉栄)
――きょうの演技にはどのような気持ちで臨みましたか
きょうは何もタイトルのかからない試合だったのですが、インカレの順位を決めるということで、2日間を通してノーミスでやり切ろうという気持ちで臨みました。
――ご自身の演技について総評をお願いします
とりあえず最後までやり遂げるという目標でしたが、あん馬の演技でうまく波に乗ることができず反省しています。
――珍しいミスが見受けられましたが、きのうの疲れなどがありますか
そうですね。多少疲れもあり、痛い部位があるなかでの試合だったので、ミスが重なってしまったと思います。
――U-21に入れた感想をおねがいします
今年はナショナルに入ることが目標だったのですが、6月に行われたNHK杯で思うように結果を残すことができませんでした。U-21に入ることを最低限の目標にして練習をやってきたので良かったと思っています。
――今後の目標をお願いします
2日間演技をやり遂げるのは非常につらいので、2日ともノーミス、高得点で試合を終えられる選手を目指していきたいと思っています。
浅野佑樹(スポ2=東京・明星)
――今回の決勝戦を全体的に振り返ってみていかがですか
初日はすごく上手くいったので、2日目もその勢いでいきたいなと思ったのですが、力が入りすぎたり、抜けてしまったりしてうまくいかなかったのが悔しいです。
――今回特に力を入れた種目はありますか
跳馬と鉄棒と床です。跳馬は種目別も狙っていたので成功してうれしかったです。
――2回ともガッツポーズがみられましたね
そうですね、うれしくて自然と出た感じですね。
< p>――今回課題が残った種目などありますか
鉄棒でいつも失敗しているコールマンで成功した後に違う技で失敗してしまったので次からは絶対に失敗しないようにします。
――最後に今後の目標について教えてください
今Dスコアがとても低いので、Dスコア36点を目指していきたいと思います。明確な目標はこれから立てていこうと思うのですが、86点を超える選手になりたいなと思います。
竹中貴一(スポ1=福井・鯖江)
――きょうに向けての目標は
初めてなのでどれだけできるか、ということです。
――きょうのコンディションはどうでしたか
ゆかとあん馬のときに疲れ切ってしまい、思うような演技をつり輪のあたりからできなくなってしまいました。
――跳馬の着地後にガッツポーズをされた、その時の心境は
あの技は初めて使って、きょうもこっちに来て、アップと本番と2回しか跳ばなかったので、その分嬉しかったですね。
――反省点はありましたか
ゆかで着地がフラフラしたことと、あん馬で最初にいきなり落ちてしまったことです。
――今後の試合に向けての抱負は
次は新人戦なので、3位以内に入れるように努力したいです。