決勝進出ならず、悔しさが残る大会に

体操

 それぞれが特別な思いを持って挑む舞台、全日本学生選手権(インカレ)。大会1日目の女子個人総合予選に早大から長沼園佳(スポ1=群馬・中央中教校)が出場。また翌日の午前中に行われた男子個人総合予選には4人が出場した。長沼はインカレ初出場という緊張感からかミスが重なり決勝進出とはならなかった。一方男子は松田祐太(スポ3=埼玉栄)が安定した演技を披露。しかし思うように得点が伸びず、結果として男子もまた決勝へ駒を進めることができなかった。

 女子で唯一の出場となった長沼は、インカレという大舞台でも果敢に挑む。しかし初出場ということもあり、いつも通りの演技をすることができなかった。「緊張していた」と話すように、1種目目の跳馬で着地がまとまらない。得意とする平均台でも入りの技でまさかの失敗と、リズムに乗ることができない。続く段違い平行棒でも落下。嫌な流れが続くかと思われた。しかし、最終種目のゆかで強さを見せる。1つ目の技を成功させると波に乗り、音楽と一体となり技を決めた。会心の演技を見せつけ、開始直後の緊張した表情は、頬がゆるみ笑顔に。序盤の種目でのミスが響き惜しくも決勝進出は逃したが、粘り強さを見せた長沼。今後もルーキーの成長は止まらない。

ゆかで会心の演技を見せた長沼

 大会2日目午前中には団体戦のメンバー以外が出場する個人総合予選が行われた。1種目目の鉄棒、この種目で全日本種目別選手権に出場した松田が見せる。リラックスした面持ちで演技を始めると離れ技を次々と成功させ高得点をたたき出す。また岸本邦秀(スポ2=兵庫・市尼崎)も持ち味を発揮し安定した演技を披露した。2種目目のゆかでは、岸本が質の高い技を見せると、美しさも評価され高得点を獲得。しかし続くあん馬では落下は耐えたものの、精細を欠き、多くの選手が悔しい表情をのぞかせた。

美しさが光った岸本

 後半の種目になるにつれ、1種目目で作った良い流れが止まってしまう。4種目目のつり輪では、「集中力が欠けてしまった」(山岸拓十、スポ3=福井・鯖江)と語るように、山岸の着地が大きく乱れる。また初出場の近藤宏紀(スポ1=福井・鯖江)も疲れもあり、得点が伸び悩んだ。一方で松田は5種目目の跳馬では芸術点、6種目目の平行棒では技術点で高評価を獲得。全体を通して大きなミスもなく活躍が光る。また今大会調子が上がらなかった岸本も最終種目で着地を完璧に決め意地を見せた。

安定した演技を披露した松田

 「この試合で取った点数をベースにして、今後につなげていきたい」(松田)。「来年のインカレに悔しさをぶつけたい」(岸本)。きょうの結果に満足している選手は1人もいない。試合後、口をそろえて今後に向けての意気込みや決意を語った。惜しくも決勝進出には届かなかったものの、おのおのが課題を見つけることができた今大会。同年代のライバル達がしのぎを削り合うこの大舞台での経験は、今後につながるものとなったことは確かである。インカレで味わった悔しい思いを晴らし、自身の満足のいく演技をするため、選手たちはもうすでに次の大会を見据えている。

(記事 大森葵、写真 寺脇知佳、八木美織、中村ちひろ)

結果

        

          

          

          

          

          

          

          

          

          

          

          

          

          

          

          

          

男子個人総合予選
選手名 ゆか あん馬 つり輪 跳馬 平行棒 鉄棒 合計点 順位
松田祐太(スポ3) 14.000 13.600 13.200 13.250 13.400 14.550 81.750 64位
山岸拓十(スポ3) 13.550 13.550 11.400 13.600 13.100 13.800 79.000 96位
岸本邦秀(スポ2) 14.500 12.350 12.650 13.600 14.100 14.200 81.400 69位
近藤宏紀(スポ1) 13.650 13.000 12.550 13.500 11.950 14.000 78.650 97位
女子個人総合
選手名 跳馬 段違い 平均台 ゆか 合計点 順位
長沼園佳(スポ1) 11.650 9.050 10.750 9.350 40.800 67位
コメント

松田祐太(スポ3=埼玉栄)

――今回のインカレはどのような気持ちで挑みましたか

個人での試合ですが1種目目の鉄棒で、ワセダ男子ではトップバッターということで、僕から試合が始まるようなものなのでそこで完璧にやって勢いをつけるために頑張ろうということで、特に1種目目をきっちりやろうと思っていました。

――7月の全日本種目別選手権では緊張していたとおっしゃっていましたが、今回のインカレは緊張されていましたか

前回の種目別の時の方が緊張していました。

――ではリラックスしてできましたか

はい、比較的リラックスしてできました。

< p>――思い入れのあった1種目目の鉄棒で14.550という得点でしたが

しっかりできたと思います。

――その良い流れをその後の演技につなげることができましたか

はい、つなげることができました。

――きょう全体の演技を振り返って

練習してきたことを出せたと思います。

――きょうのために強化してきたことは

とにかくミスが出てもすぐに諦めないで続けるという粘り強さを考えていました。

――今回のインカレで得たものは

なんとか6種目ノーミスでそろえることができた試合は久しぶりでした。なので、この試合で取ることができた得点をベースにして今後につなげて、より良い結果を残せるように練習していきたいです。

山岸拓十(スポ3=福井・鯖江)

――今回のインカレはどのような意気込みで臨まれましたか

個人的にはノーミスを目標にしていました。そうすれば目標としている得点に近づけると思ったので、そのような気持ちでやろうと思いました。

――コンディションはいかがでしたか

コンディションは結構良かったです、試合前も。

――きょうを振り返って、良かった点や悪かった点を教えてください

僕は結構、試合で緊張してしまうと初めの種目で崩れてしまうので、今回は初めを成功させれば波に乗れると思ったので大事に臨みました。すごく完璧な出来でスタートを切れたんですけど、4番目のつり輪で集中力が欠けたようなミスをしてしまって、その後の2種目はなんとか耐えたんですが、集中力が途中でかけてしまったというのが反省点です 。

――今回のインカレでの収穫は

ノーミスという目標は達成できなかったんですけど、種目によっては、かなり良い出来の種目もありました。跳馬も今回はギリギリの技を跳んだんですけど、成功したので、収穫になったと思います。

――今後の課題は

練習から集中力を欠いた練習をするのではなくて、一本一本試合のように集中力を維持したまま練習を積んでいって、らいねんが最後となるので、技の難しさであるDスコアを上げ、なおかつ失敗しないように安定させていくというのが今年の冬の目標です。

岸本邦秀(スポ2=兵庫・市尼崎)

――きょうのインカレはどのような意気込みで臨みましたか

1種目目の鉄棒をしっかり乗り切って、鉄棒と個人総合であしたの決勝に進もうと思っていました。

――得意の鉄棒で上々のスタートが切れました

鉄棒の演技内容自体は良くて、試合でもそれなりの点数が出るのではないかと思っていましたが、なぜかそれほど評価されなくて残念でした。

――ゆかでのEスコアが8.9と高得点でしたがその要因は

何よりも着地がきちんと止まっていたことと、一つ一つの宙返りの入りがしっかり入ったことで高い質の演技となり、Eスコアが上がりました。

――平行棒でも高得点が取れました

いつもEスコアは結構取れていると思いますが、きょうは着地までしっかり止めることができたので、それが高得点につながりました。

――あん馬・つり輪では得点が伸びませんでしたが、その原因は

つり輪はいつもあまり(点数が)取れなくて苦手種目としています。あん馬に関しては今回は昨年よりもDスコアを0.7上げたこともあり、自分に余裕があまりなくなってしまい落下したことが原因です。

――予選全体の演技には満足できましたか

満足はしていません。

――今後に向けての課題は

今回のインカレでは団体で出場することができずに、個人で決勝に進出しようと思っていたのですが今回のインカレは目標が何も叶わず悔しい思いをしました。らいねんのインカレにこの悔しさをぶつけたいと思います。

近藤宏紀(スポ1=福井・鯖江)

――初のインカレを振り返って

あまり良い出来ではなかったです。練習してきたことを発揮できなくて、序盤はミスを我慢して耐えていたのですが、終盤バテてしまってダメでした。。

――鉄棒で好スタートを切ったと思いましたが

鉄棒は自分の得意種目で、完璧とは言えないのですが良い感じだったと思います。個人戦ではあるのですが、ワセダとしてのまとまりを感じながら演技していました。

――平行棒の演技では疲れが出て本来の力が出せていなかったようでしたが

基礎能力がまだまだ低く、技を行うにしても普通の人より力を使う必要があるので、より楽に一つ一つの技をこなせるようになると良い点数が出ると思いますし、通しでも失敗しなくなると思います。

――最終種目の平行棒を残すまでは上出来だったように思えましたが

つり輪とゆかも普段ならもう少し得点を取れたのですが、慌ててしまった部分があって、他の種目もいつも通りの演技ができませんでした。最後(平行棒)は疲れてしまって残念でした。

――今大会で得た収穫と今後の課題は

序盤は大きなミスもなく、こらえられたことはすごく良いことだと思いますし、今後の試合に向けての自信にもなりました。新人戦ではインカレと違い1年生だけなので、もっと上位にいけるように、より難しい技を取り入れ、完成度を上げていこうと感じているので普段の練習からしっかりと取り組んでいきたいと思います。

長沼園佳(スポ1=群馬・中央中教校)

――インカレに向けて何を目標にしていましたか

跳馬以外の3種目で新しい技を取り入れたのですが、それを成功させるまで練習で持っていけませんでした。なので、とりあえずはけがせずにその技を入れることを目標にしていました。

――初めてのインカレの気持ちは

全国の舞台はインターハイ(総体)ぶりで高3は出ることができなくて、実質2年ぶりだったので緊張しました。

――最初の演技の跳馬にも影響しましたか

あまり普段から練習していなくて、前日の練習も着地までいけてなく、本番に懸けようと思っていました。緊張はしていたのですが、とりあえず着地を取りに行くことだけ考えていたら、このような結果に終わってしまいました。

――苦手の段違い平行棒はどうでしたか

きょうは一番最初に新しい技を入れて離れ技をやったのですが、それは決まりました。ただ、そのあとが立て続けに決まらなかったので点数を落としてしまいました。

――平均台の入りでミスがありましたが、ご自身で振り返っていかがですか

練習ではそんなに落ちないのですが、本番になると一番平均台が緊張するので、そこが原因かなと思います。

――最後の床は着地も完璧でしたが、気持ちを切り替えましたか

平行棒と平均台は落ちる種目で、床は落ちる種目ではないので、思い切ってやりました。