選手にとって最大の目標であり特別な思いを持つ、全日本学生選手権(インカレ)。1部校であるワセダは31日男子団体総合に出場した。本大会は6人の選手が競技を行い、それぞれの種目の上位5人の得点がチームの得点に加算される採点方式で行われた。ワセダは団体3位を目指し本大会に臨んだが、相次ぐあん馬でのミスが響き5位で団体戦を終えた。
最初の種目であるゆかでは終始まとまった演技を見せる。最終演技者の佐藤紘翔(スポ3=岡山・関西)は迫力のある演技とゆかに吸い込まれるような着地で15.100と高得点を出した。しかし2種目目のあん馬で流れは一変する。2人目の小倉佳祐(スポ2=千葉・習志野)が落下すると、次の綿崎啓太主将(スポ4=京都・洛南)の終末技が決まらず、技が得点に反映されない。続く佐藤も落下し、この種目十分に実力を発揮することができなかった。だが、綿崎主将が「そこからの立て直しも練習から意識してやっていた」と語るように、ここで終わるワセダではない。次のつり輪で悪い流れを断ち切ると、跳馬はことしの全日本種目別選手権で優勝した小倉、跳馬を得意とする浅野佑樹(スポ1=東京・明星)の活躍で着実に得点を重ねた。
浅野の安定した演技からスタートしたあん馬
綿崎主将のガッツポーズが光った平行棒もワセダは大きなミスなく演技を終え、迎えた最終種目の鉄棒。「気持ちが皆同じ方向を向いていた」(浅野)という言葉通り、チーム力の高さを見せる。最初の演技者である小倉が確実に技を決めいい雰囲気を作ると、その後も個々人の能力を最大限に発揮した演技が続く。5人全員が着地を止め、ワセダの応援席の盛り上がりは最高潮に。最終演技者は藤原昇平(スポ2=埼玉栄)。藤原は難しい離れ技を危なげなく決めると、着地もしっかりと収め、有終の美を飾った。6人全員が微動だにしない着地を見せた鉄棒。試合を終えた選手たちの顔は皆晴れやかだった。
鉄棒を終えた藤原。仲間と健闘をたたえあう
結果としては5位入賞と目標には届かなかったものの、試合後の選手たちからは達成感もうかがえた今回のインカレ。本大会において鉄棒の着地が象徴するように随所にワセダの結束力の強さが見られた。これは今後のワセダの武器になると言える。他方では、あん馬でミスが続くなど課題も残った。今大会で得た収穫と課題を胸に、来年のインカレに向け、すでにワセダの戦いは始まっている。
(記事 三上雄大 写真 栗田麻里奈、久保田有紀)
男子1部団体総合 | ||||||||
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選手名 | ゆか | あん馬 | つり輪 | 跳馬 | 平行棒 | 鉄棒 | 合計点 | |
綿崎 啓太(スポ4) | 14.450 | 11.900 | 13.800 | 13.800 | 14.700 | 14.550 | 83.200 | |
佐藤 紘翔(スポ3) | 15.100 | 12.700 | 13.050 | 13.900 | 14.050 | 14.300 | 83.100 | |
嶋津 尚弥(スポ3) | 13.800 | 14.500 | 14.550 | 13.050 | 13.600 | 13.950 | 83.450 | |
藤原 昇平(スポ2) | 13.250 | 14.250 | 14.550 | 14.450 | 14.450 | 14.600 | 85.550 | |
小倉 佳祐(スポ2) | 13.600 | 12.000 | 13.450 | 14.750 | 13.650 | 13.550 | 81.000 | |
浅野 佑樹(スポ1) | 14.700 | 12.150 | 13.850 | 14.800 | 13.250 | 13.800 | 82.550 | |
ベスト5 | 71.650 | 65.600 | 70.200 | 71.700 | 70.450 | 71.200 | 420.800 |
コメント
綿崎啓太(スポ4=京都・洛南)
――試合を振り返って
練習の段階からみんなあん馬を課題にしていて、そこでちょっとつまずいてしまったんですけど、そこからの立て直しはよくできたので、順位とか関係なしによくみんな頑張れたと思います。
――得意種目の平行棒の出来は
きょねんよりはDスコアを落として低くした演技で、練習段階からあのぐらいの出来でずっとできてたんで練習通りかなという感じです。
――鉄棒についてはいかがでしたか
僕個人としては最近は安定してて、あれくらいの演技が安定してできていました。着地はまあ、たまたまというか、運が良かったんですけど(笑)。6人全員着地が止まったというのはすごく良かったと思います。
――早大のチーム力の高さを感じました
練習のときからチーム力を意識してて。練習の段階からあん馬でつまずいてしまうっていうことが多々あったんですけど、そこからの立て直しっていうのも練習から意識してやっていたので、それもきょう出せたかなと思います。
――主将としてどのような声掛けをなさったのですか
縮こまらずに思い切ってやれっていうのは日頃から言っていましたね。
――あすに向けて意気込みをお願いします
最後の個人戦というか、(最後の)大学の試合なので楽しんでやりたいと思います。
小友翔太郎副将(スポ4=茨城・常磐)
――試合を振り返って
自分にとって最後の試合だったので気合入れて臨んで、結果大きな失敗なく終われたのでよかったです。
――コンディションはいかがでしたか
ちょっと足をけがしていて完全に治ってない状態での演技だったんですけど、自分のできる限りの演技をやって、ノーミスでできたのでよかったです。
――緊張されましたか
緊張感より楽しくやろうっていう、そっちの方が強かったです。
――あん馬ではガッツポーズも見せていましたが
自分の中では90点くらいの出来だったんですけど、点数的にはあまり評価されなくて。それでも嬉しいです。
――きょうの演技全体を点数で表すとどのくらいですか
80点くらいはいくと思います。
佐藤紘翔(スポ3=岡山・関西)
――きょうの試合を振り返って
U-21の日本代表に入ることを目標としてきて、それに結果的に入れなかったのでとても悔しいです。
――インカレにはどのような気持ちで臨みましたか
インカレに向けてはいつも通りという気持ちで、いつもの練習で試合でもいつも通りやればいいんだという気持ちで自信をつけてインカレに臨みました。
――ゆかではかなりの高得点をマークされましたが、練習で工夫した点などは
ワセダの練習では点数が厳しくて、もっと着地の姿勢や宙返りの高さなどそういうことを意識して練習していていざ試合でそういうことをやってみたら15点台が出たのでそういう練習をして良かったなと思いました。
――あん馬での失敗はいかがでしたか
僕の失敗するポイントを乗り越えたんですけど、あとは最後まで気を抜かずにやろうと思っていたところで落下してしまいました。自分が心配だった部分がうまくいったのでちょっと気が抜けたのかなと思います。
――鉄棒はチームとして良い流れで演技をしていました。何か話したりしましたか
やる前は特に何もなかったんですけど、1人目の小倉(小倉佳祐、スポ2=千葉・習志野)が着地をぴたりと決めてくれてその流れがみんなにも良い雰囲気で伝わって良い演技ができたんじゃないかと思いました。
――個人の課題は
やっぱり6種目ノーミスでやらないと僕は勝負ができないので6種目で絶対に失敗しないというのを課題にして練習していきたいと思いました。
――明日の個人総合の目標は
きょう2種目失敗してしまったので、あしたはノーミスの演技をしたいです。きょう35位だったので、あしたは1ケタを狙って明日は演技したいと思います。
嶋津尚弥(スポ3=和歌山・田辺工)
――きょうの試合を振り返ってみていかがですか
きょねん同じ試合に個人で出たのですが、試合前の練習でケガをして出られなくて、その分きょねんのリベンジをしようと思って、リベンジして復活できたのではないかと思います。
――全体的に大きなミスなく演技されていましたがいかがですか
本当に練習通りですね。平行棒だけ失敗してしまったのですが、あれも練習でたまにやっていたことなので。
――きょう特に良かった種目はどれですか
点数的にはつり輪が出たのですが、僕の中では、ゆかが団体の中で1番初めの演技で勢いに乗れる演技ができたので、1番良かったと思います。
――あん馬で他の選手が失敗していた中、どのような意気込みで臨まれましたか
練習してきたことを出すだけだと思っていたので、みんな失敗してましたけど、あまり考えずに日頃考えていることをイメージしてやりました。
――チーム全体としてこの団体戦はどういった試合でしたか
このメンバーでやれる最初で最後の試合だったので、1つ1つの演技を大切にしてでき、最後に笑顔で終わることができた大会だったと思います。
――あしたの個人戦に向けて意気込みをお願いします
個人総合は全種目やるのですが、特にあん馬に懸けていきたいと思います。優勝したいなと思います。
藤原昇平(スポ2=埼玉栄)
――きょうの試合を振り返って
ゆかからのスタートで、ローテーション的には良い流れだったんですけど、ちょっと緊張していたのか途中で少し危ない場面があって、でも最後まで気を抜かずにゆかはやれて、それからそのことは忘れて最後まで6種目やり切ろうという気持ちできょうはやっていました。
――チームとしてインカレにはどのような気持ちで臨みましたか
昨年はインカレ3位を狙っていて、でも結局4位で、ことしはそれを達成したいとみんな1人1人思っていました。でもあん馬が課題と言われていてきょうもやっぱりあん馬で数人が失敗してしまったのでこのような結果になってしまったのかなと思います。
――不調だった期間から抜け出されました。練習など工夫した点は
いや練習に関しては特に変えてはいないんですけれど、U-21にどうしても入りたかったのでインカレにむけてはそれだけを考えて練習していました。
――課題といわれていたというあん馬の対策などは
自分は周りを気にせず自分の演技をただやるっていう風に考えていいました。みんな1人1人そういう意識でやっていたのかなと思います。
――逆に鉄棒はチームとして良い流れで演技をしていました。何か話したりしましたか
特に話しなどはしていないんですけど自分が最終演技者で最後まで気を抜かずにと先生が話されたので、最後まで着地まで気を抜かずに成功させました。
――個人の課題は
1種目目でああいう危ない場面が出てしまったのでまだ気持ち的にも弱いと思うので、もっと試合を重ねてもっと上を目指して頑張りたいと思います。
――今後の目標は
とりあえずたぶんU-21には入れたと思うのでそれを自信にして次の試合でもっと上を狙えるように頑張りたいと思います。
小倉佳祐(スポ2=千葉・習志野)
――――きょうの試合を振り返って
最初からバタバタしてしまい、あまり納得のいかない内容でした。
――種目別(全日本種目別選手権)で優勝した跳馬ではミスがありましたね
着地をきちんと決めることができるという心を持つ余裕がありませんでした。
――悔しさはあるようですが、その跳馬では決勝進出ということで、あすの決勝に向けて
やはり着地をしっかり決めたいです。
――目標であったインカレ団体戦メンバーとして出場してどうだったか
申し訳ないという気持ちが大きいです。床でバタバタしてしまい、あん馬では自分から流れを悪くしてしまったので。
――チームとしてはどうだったか
床ではまとまっていて、良いスタートを切れたのですが、あん馬で崩れてしまいました。でもそれ以降はいい流れで、最後の鉄棒では全員がピタッと着地を決めることができて、団体としては良い出来でした。
――今後の課題は
まだまだ足りない部分がたくさんありすぎるので、もっともっと努力を重ねて、チームの一員として貢献できるようになりたいです。そのために、演技の内容を高めていきたいです。
浅野佑樹(スポ1=東京・明星)
――きょうの試合を振り替えって
とにかく最初から緊張していて、結構自分の中ではベストを作ってきたんですけど、サブ会場で痛いところが何ヵ所かでて。自分が出来る精一杯のことをしました。結果的にノーミスで終えることが出来て自分の中では良かったなと思っています。
――得意種目の跳馬などではガッツポーズも見られましたが、今日の出来をどうとらえてますか
イメージを作って飛ぶ前に3パターンくらい作っていたのの1つが出来たので、着地まで狙えたのですが少しためらって1歩出てしまって。惜しい結果だったのですが自分の中では良かったです。
――1年生で団体の出場は唯一でしたが、どのような意気込みを持って臨みましたか
1年生だからというのはあるのですが、先輩についていこうというよりは自分が出来る限り全力でやれたらという感じで一生懸命でした。
――最終種目の鉄棒は着地も決まり、チームとしても良い形で試合を終えました
たぶん気持ちが皆同じ方向を向いていたのでうまいこと重なったのではないかと思います。
――最後に、次への意気込みを教えてください
今は得意種目のゆか、鉄棒、跳馬が自信を持って出来るのですが、その鉄棒で中身が悪かったのでもっともっと中身を詰めて精一杯出しきれるように準備したいと思います。