男子エペ団体が優勝を飾るなど、好成績を残す

フェンシング

 2年ぶりの開催となった全日本選手権(全日本)団体戦。全国から高校、大学、社会人クラブなど、予選を勝ち抜いた強豪チームが集うなか、早大は男女5種目に出場。男子エペでは見事優勝を果たし、男子フルーレと女子サーブルは銅メダル、女子フルーレベスト8、男子サーブルはベスト16という好成績を残した。

 増田陽人(商4=岡山・大安寺中教校)が「驚きと喜びが入り交じった感情」と語るように、男子エペ陣が大舞台で快挙を成し遂げた。初戦は早稲田大学OBチームとの試合。普段からともに練習をしている相手でもある。「得意な部分や不得意な部分が知り尽くされて」(増田)いたという相手に、序盤は苦戦を強いられる。しかし、現役として絶対に負けられないというプレッシャーの中序盤の悪い流れを断ち切ってOBチームを下し、初戦を突破した。その後は危なげない試合運びで2年前に続き決勝に進出する。

  決勝の相手は日大。「自分たちよりもレベルが高くて一人一人がとても強い相手」(増田)に、序盤は追う展開となる。そんななか、金高大乘(社3=香川・高松北)が1点差まで追いつく猛攻を見せると、仙葉遼輔(国2=秋田南)が逆転し2点差をつけ、早大に流れを引き寄せた。そのまま中盤で突き放すと、そのリードを保ったまま逃げ切り悲願の優勝を果たした。「リードされることは当たり前で、点差を離されないようにくらいついていくという意識」(増田)を徹底した結果だった。

集合写真で笑顔を見せる男子エペ陣と内田敏朗監督(昭57法卒)

 他の団体陣も健闘を見せた。男子フルーレと女子サーブルは存分に実力を発揮し、3位決定戦をものにして銅メダルを獲得。女子フルーレは準々決勝で朝日大に1点差で敗れるもベスト8。男子サーブルは専門の選手が少ないなか、1年生の田中智也(商1=千葉・東葛飾)が大きな活躍を見せるなど接戦を演じた。出場が叶わなかった女子エペも含め、新主将の川村京太(スポ3=東京・東亜学園)は「まだまだ練習の余地がある」としながらも、一定の努力が実った結果となった。

 男子エペ陣を筆頭に今季も存在感を見せた早大。来季は卒業や留学などで主力選手が減ってしまうが、川村は「関東学生リーグ戦で全種目優勝」と来季の抱負を口にした。早大の特徴であり強みでもあるチーム全体でつなぐ団体戦を継承し、来年はさらなる好成績を残すことを期待したい。

(記事 吉岡直哉、写真 早稲田大学フェンシング部提供)

※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。
※フルーレ:頭・両足・両腕を除いた胴体部への突きのみが得点となる。 両者がほぼ同時に突いた場合は、どちらの攻撃が有効だったかを主審が判定する。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は攻撃を防御してから攻撃しなければならない。
※エペ:全身が有効面となる上に、両選手が同時突きをすると両者にポイントが与えられる。より慎重な攻め方が求められるため、時として両者が睨み合ったまま時間が過ぎることは稀な話ではない。
※サーブル:両腕も含む上半身への突きと切り(剣先ではなく剣の胴部分で相手の体に触れること)が得点となる。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の攻撃を防御してから攻撃しなければならない。この攻撃権の奪い合いにより、両選手はピスト上を常に前後に往復し合うため、サーブルは3種目の中で最も全身運動が激しい種目だと言える。

結果

▽女子フルーレ団体 早大〔高原真央(人4=福井・武生)、村上万里亜(スポ4=愛媛・三島)、狩野央梨沙(スポ3=宮城・常盤木学園)、森多舞(スポ1=山口・岩国工)〕 ベスト8
2回戦:○45-17 大分豊府高
準々決勝:●38-39 朝日大
▽男子エペ団体 早大〔増田陽人(商4=岡山・大安寺中教校)、金髙大乘(社3=香川・高松北)、仙葉遼輔(国2=秋田南)、寺井健人(教3=東京・早大学院)〕 優勝
2回戦:○45-31 SHIAWASEDA
準々決勝:○45-33 上三川FC
準決勝:○45-27 香川クラブ
決勝:○45-35 日大
▽男子フルーレ団体 早大〔森多諒(社3=山口・柳井)、ビューワーニック・ダグラス(スポ2=埼玉・星瑳国際)、川村京太(スポ3=東京・東亜学園)、藤澤将匡(スポ2=宮城・仙台城南)〕 3位
1回戦:○45-39 龍谷大平安高
2回戦:○45-28 秋田緑が丘病院
準々決勝:○45-31 立教新座高
準決勝:●32-45 法大
3位決定戦:○45-42 中大
▽女子サーブル団体 早大〔高原真央(人4=福井・武生)、村上万里亜(スポ4=愛媛・三島)、黒田ほのか(スポ3=香川・三本松)、森多舞(スポ1=山口・岩国工)〕 3位
1回戦:○45-5 青山学院高
2回戦:○45-44 同志社大
準々決勝:○45-41 東京女子体育大
準決勝:●40-45 法大
3位決定戦:○45-42 中大
▽男子サーブル団体 早大〔田中智也(商1=千葉・東葛飾)、森多諒(社3=山口・柳井)、ビューワーニック・ダグラス(スポ2=埼玉・星瑳国際)、川村京太(スポ3=東京・東亜学園)〕 ベスト16
2回戦:●39-45 福岡魁誠高

コメント

増田陽人(商4=岡山・大安寺中教校)

――まずは優勝おめでとうございます。今のお気持ちを聞かせてください

優勝できるとは自分たちも思っていなかったので、驚きと喜びが入り交じった感情です。

――優勝へのプレッシャーなどは感じていましたか

自分たち自身がそこまで優勝候補ではなかったので、プレッシャーというものはなかったのです。どの相手も強かったので1試合ずつ勝っていこうという気持ちで、それを積み重ねた結果に優勝があったというかたちになります。

――勝ち上がるうえで苦戦した相手はいましたか

1回戦の早稲田のOBとの試合が最も苦戦したというか、ヒヤッとしました。普段から一緒に練習してくださっている先輩たちなので、自分たちの得意な部分や不得意な部分が知り尽くされていました。OBの方たちの方が経験値があるので、その経験値で試合を展開されてきました。そこに関しては絶対に現役が負けてはいけないというプレッシャーもありました。悪い流れがずっと続いたので、苦戦しましたね。

――決勝戦の試合展開について教えてください

決勝戦は日本大学戦でしたが、自分たちよりもレベルが高くて一人一人がとても強い相手でした。序盤は下馬評どおり自分たちが追う展開となりました。4点差くらいで追っていたのですが、相手の3番手と金高(大乘、社3=香川・高松北)が勝負をしたときに1点差まで迫る猛攻を見せて、そのあと仙葉(遼輔、国2=秋田南)が大活躍をして逆転して2点差をつけることができました。そこから相手の3番手を攻撃するということを中心に試合展開を進めることで、中盤で10点ほど差を開くことができて、逃げ切ったという感じです。

――決勝戦はチームとしてどのような意識で臨まれましたか

とにかくリードされることは当たり前で、点差を離されないようにくらいついていくという意識でやっていました。

――そんななか、中盤で突き放すことができた要因は

仙葉と相手の関原の勝負が厳しい戦いになると予想していたのですが、仙葉が大活躍をして2点リードする展開まで持っていってくれたのが、流れをつかみとるきっかけとなりました。それが一番の要因だと思います。

――来シーズンを担う後輩へのメッセージをお願いします

来年からは自分が抜けたり、留学に行く人もいたりして主力メンバーが減ってしまうのですが、個人戦は勝てなくても団体戦では勝つことができるので一つ一つの試合に意味を持って、しっかり作戦を立てて頑張ってほしいです。

――今後のご自身の目標を聞かせてください

来年からは海外での試合が始まって、大学卒業後も選手として続けるので、海外での試合で優勝できるように一つ一つ準備をしてこれからも練習していきたいと思っています。

川村京太(スポ3=東京・東亜学園)

――新主将として各団体の結果についてどのように感じていますか

全体的にとてもいい成績が残せたのではないかなと思っています。男子エペに関しては優勝することができ、とてもうれしく思います。それに続いて男子フルーレと女子サーブルも銅メダルを獲得することができたので、努力が実った結果だなと思っています。その一方で、男子サーブルであったり、そもそも出場すら叶わなかった女子エペであったり、課題がある種目があるのでそれらに関してはまだまだ練習の余地があると感じました。

――ご自身の調子はいかがでしたか

フルーレの日は70~80%ぐらいの実力は出せたかなと思っています。チームメイトである藤澤(将匡、スポ2=宮城・仙台城南)とビューワーニック(・ダグラス、スポ2=埼玉・星瑳国際)の調子も良かったので3人が平均点以上の実力を出せた結果、3位という結果を獲得できたのかなと感じています。

――フルーレについて目標は達成できたということですか

目標は優勝だったのですが、3位という結果が現実的な我々の実力かなと受け止めています。

――では、サーブルについてお聞かせください

森多(諒、社3=山口・柳井)と田中(智也、商1=千葉・東葛飾)と私で組んだのですが森多と田中は普段からサーブルを練習しているので試合でもそれなりに良い調子で得点を重ねてくれます。ですが、やはりサーブルを普段から練習していない私がいつも足を引っ張ってしまうような展開で、どうにか二人が自分の尻拭いをしてもらって勝っているような感覚でした。やはり全日本選手権という大きな舞台になると私のような足を引っ張ってしまう選手が一人でもいると勝つのは難しいんだという風に感じました。

――2回戦の展開を振り返っていかがですか

相手は福岡魁誠高校だったのですが、3人ともバランスが良く強かったので3人とも私が歯が立たなかったような状況でした。1年生の田中がすごく調子が良くて、森多もそこそこ調子が良かったのでやはり敗因は私にあるかと思います。

――男子フルーレについて、一番苦戦したなという相手はどこですか

初戦の龍谷大平安高校ですね。やはり初戦と言うだけあってみんな緊張が取れていなくて、私自身も少し緊張して臨みました。相手の1人が高校生チャンピオンで、その1人だけがすごく強いようなチームでそこは少しナーバスになっていました。結果的に、楽に勝つことはできなくて最後まで気が抜けない展開になりました。

――2年ぶりの全日本団体戦で、他の大会との雰囲気の違いはありましたか

自分は学生の試合の方が緊張感があってプレッシャーもあったという風に感じています。というのも、全日本団体戦は学生の試合が全て終えてから臨んだので、ある程度チームの状態もできあがっているコンディションで臨めました。自分の力をどうやったら発揮できるかを把握して臨めたのかなと思います。

――新主将として、来期の抱負をお願いします

来年度の目標として、全体としては5月にある関東学生リーグ戦で全種目優勝を掲げています。私個人としては、全日本学生選手権もしくは全日本学生フェンシングカップといった大学生日本一を決める試合で日本一になるという目標を掲げています。