今年の伝統の一戦は、悔しい結果に終わった。慶大で行われた第74回早慶対抗定期戦(早慶戦)は有観客で行われ、盛り上がりを見せた。試合は、初戦の男子エペが僅差で負けると、そのまま慶大に流れが渡ってしまう。結果的に早大は男女フルーレの2勝にとどまり、敗戦となった。
最初に登場した男子エペは手に汗握る展開に。前半は僅差で競り合い、リザーブも活用しながら第4セットまでを17-17で終える。しかし、ここから少し慶大にペースを握られ、最終第9セットを31-34の3点差で迎える難しい展開に。ここで最後に試合に臨んだのは、今年の全日本大学選手権(インカレ)で優勝を飾った増田陽人(商4=岡山・大安寺中教校)。「(団体戦では)試合の流れを作ることが大事」(増田)という言葉通り、少しずつ試合の流れをつかもうとした。増田は3点差を巻き返し、39-39の同点に追いつく。ここからは取って取られてを繰り返す拮抗(きっこう)した試合に。最終的に3分間の試合で決着はつかず、41-41の同点となり、1分間の延長戦を行った。増田は延長戦でも果敢に攻め込むも、あと一歩及ばずポイントは慶大に。惜しくも初戦を落とすこととなった。
2試合目の女子エペは、1セット3分の時間をいっぱいに使いながら、緊張感のある試合となった。第5セットを15-14で終え、僅差ながらリードで前半を折り返す。しかしここから慶大に逆転をされると、同点に追いつく場面はあったものの、逆転には至らなかった。最終的には32-35で試合を終え、男女共にエペでは勝利を飾ることはできなかった。3、4試合目のサーブルも男女共に苦しい展開に。男子サーブルは29-45、女子サーブルは最終セットで一時同点に追いついたものの、41-45で苦杯を喫する。
女子エペで最後回りを務めた中島美月(スポ4=群馬・沼田女)
5試合目の男子フルーレは、序盤から流れをつかむと、中盤から終盤にかけて次第にリードを広げていく。特に活躍を見せたのは川村京太(スポ3=東京・東亜学園)。「今日はできすぎていたぐらい」(川村)と、出場した3セットを通して6点しか奪われなかったにもかかわらず、18点を相手から奪い、一人で12点のリードをもたらした。第8セットまでを40-28で終え、早大の初勝利が見えてきたと思われた。しかし、第9セットに出場したビューワーニック・ダグラス(スポ2=埼玉・星槎国際)が、「余計なプレッシャーもかかっていた」(ダグラス)と試合後に述べたように、4試合目までを終えていまだ未勝利という流れの悪さが出てしまう。44-41と点差を縮められ、勝利まであと1点であったが、その1点が遠い。43-44の1点差まで追いつかれ、会場の盛り上がりはピークに達する。流れは相手にあり非常に苦しい展開であるものの、「思いっきりやろう」(ダグラス)という言葉通り、最後は気合いで1点をもぎ取った。45-43の接戦を制した男子フルーレは、早大にとって今年の早慶戦初勝利をもたらした。
接戦を制した男子フルーレのダグラス
最後に行われたのは、女子フルーレ。男子フルーレの流れそのままに、終始慶大を圧倒する。全体的にポイント精度が非常に高く、4セットまでに20-2と、慶大に2点しか与えなかった。試合はその後も1日の不満を晴らすように、メンバー全員が活躍を見せ、相手に流れを渡さなかった。結果的に45-13で危なげなく勝利を決めると、本大会の2勝目、フルーレでは男女共に勝利を飾ることとなった。
勝利をつかみ、喜びを分かち合う女子フルーレ陣
今年の早慶戦は、最後の2試合は勝利を収めたものの、部としては不本意な結果に終わったと言える。この日女子サーブルとフルーレに出場し、フルーレでは大活躍を見せた高原真央(人4=福井・武生)も、「全体として負けは負けなので悔しい気持ちの方が強い」と、この結果に悔しさをにじませた。この悔しい結果を、全日本選手権や、来年につなげていきたい。
(記事 前田悠輔、写真 吉岡直哉)
※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。
※フルーレ:頭・両足・両腕を除いた胴体部への突きのみが得点となる。 両者がほぼ同時に突いた場合は、どちらの攻撃が有効だったかを主審が判定する。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は攻撃を防御してから攻撃しなければならない。
※エペ:全身が有効面となる上に、両選手が同時突きをすると両者にポイントが与えられる。より慎重な攻め方が求められるため、時として両者が睨み合ったまま時間が過ぎることは稀な話ではない。
※サーブル:両腕も含む上半身への突きと切り(剣先ではなく剣の胴部分で相手の体に触れること)が得点となる。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の攻撃を防御してから攻撃しなければならない。この攻撃権の奪い合いにより、両選手はピスト上を常に前後に往復し合うため、サーブルは3種目の中で最も全身運動が激しい種目だと言える。
結果
▽男子エペ団体
早大[寺井健人(教3=東京・早大学院)、増田陽人(商4=岡山・大安寺中教校)、金髙大乘(社3=香川・高松北)、仙葉遼輔(国2=秋田南)]
●41-42 慶大
▽女子エペ団体
早大[蓮井陽菜(スポ2=香川・高松北)、中島美月(スポ4=群馬・沼田女)、影山野希花(政経3=東京・早実)、柴田華(スポ2=神奈川・横須賀大津)]
●32-35 慶大
▽男子サーブル団体
早大[ビューワーニック・ダグラス(スポ2=埼玉・星瑳国際)、森多諒(社3=山口・柳井)、川村京太(スポ3=東京・東亜学園)、増田陽人(商4=岡山・大安寺中教校)]
●29-45 慶大
▽女子サーブル団体
早大[高原真央(人4=福井・武生)、黒田ほのか(スポ3=香川・三本松)、村上万里亜(スポ4=愛媛・三島)、影山野希花(政経3=東京・早実)]
●41-45 慶大
▽男子フルーレ団体
早大[藤澤将匡(スポ2=宮城・仙台城南)、川村京太(スポ3=東京・東亜学園)、ビューワーニック・ダグラス(スポ2=埼玉・星瑳国際)、ジェット・ン(国教3=シンガポール・メリディアンジュニアカレッジ)]
〇45-43 慶大
▽女子フルーレ団体
早大[蓮井陽菜(スポ2=香川・高松北)、高原真央(人4=福井・武生)、村上万里亜(スポ4=愛媛・三島)、黒田ほのか(スポ3=香川・三本松)]
〇45-13 慶大
コメント
増田陽人(商4=岡山・大安寺中教校)
――まずは今日の試合を振り返っていかがですか
自分が流れをとれなかったというのがすべてなので、他のメンバーもいいところも悪いところもあったのですが、最後取れなかった自分の責任かなと思います。
――点を取らなければいけない場面が多かったと思いますが、その中で意識していたことは何ですか
やはり団体戦は1点の重さが個人戦とは違うので、複雑なことをするよりもシンプルに仕掛けてシンプルに攻撃することに自信を持ってやるということを意識しました。
――特に最後の場面は両ランプも許されない状況でしたが、意識することは変わりましたか
最後の場面は30点から始まって、45点までに15点取れるじゃないですか。その時に1番は試合の流れを作ることが大事であって、両ランプでも問題ないと思っていました。両ランプ、自分の一本、両ランプ、自分の一本と、早い時間で攻撃することで流れを取ろうとすることを意識していました。結果追いつくことは出来たのですが、最後一本勝負では時の運なので今回は運がなかったと思うしかないです。
――先日のインカレでは優勝おめでとうございます。優勝の感想を聞かせてください
インカレは絶対自分が優勝できる実力があるし、体力面でも技術面でも自信があったので、絶対負けないようにする意識で臨んだ結果勝てました。どうやったら負けないかという選択を積み重ねた結果が優勝につながったのかなと思います。
――自分としては100点満点だったのですか
できれば攻撃的に圧倒的な力を見せたかったのですが、タイトルを取ることを重視したので、100点ではないですが70点、80点はあげられるかなと思います。
――これからの意気込みをお願いします
これからも自分はフェンシングを続けるので、東京オリンピックで自分の種目が金メダルを取ったように、それに続けるようにパリ五輪やロサンゼルス五輪に向けて頑張っていこうと思います。
黒田ほのか(スポ3=香川・三本松)
――今日の試合を全体的に振り返ってください
序盤は相手の様子見をしようと思っていたのですが、相手もそれなりに実力があってこちらの対応力の無さが見られた試合だったのかなと思いました。
――個人としての結果についていかがですか
途中負けている展開で、巻き返して勝ち越して回せたところまでは良かったのですが、最後も取り切りたかったというのはすごくあります。個人の実力としてはまだまだで、実力不足を感じました。
――具体的にはどういう点が足りなかったのですか
手の対処で点を取ろうとしてしまっていたので、フットワークをもっと重点的に練習しておくべきだったと思います。
――チームの作戦はありましたか
作戦的には自分たちが攻めて、試合の流れもとるという攻め方をしようとしていたのですが、できませんでした。
――次戦以降の意気込みをお願いします
全日本選手権団体戦があるので、そこに向けて実力がすぐに伸びるわけではないですが、足の使い方とかをもっと工夫して考えて修正して、満足のいく試合ができたらいいかなと思います。
ビューワーニック・ダグラス(スポ2=埼玉・星瑳国際)
――勝利の感想を教えてください
最後めちゃくちゃ点を取られて正直焦っていました。これで負けたら早稲田のメンツが保てないと思って余計なプレッシャーもかかっていたのですがしっかり勝てて本当に良かったです。
――やはり今日勝てていないというプレッシャーは大きかったのですか
そうですね。ここで負けたら5連敗になってしまうので。ここでとりあえず最初の一勝をと、すごく意気込んでいました。
――チームとしての作戦は
関東学生選手権や全日本学生選手権(インカレ)でも対戦して、勝てていたので、いつも通りやろうという作戦でした。流れ的にもいつも以上に気合いは入っていました。
――最後巻き返されてしまったのはそういった緊張もあったのですか
焦りですね。あと少しなのにその一本が届かなくて、相手にはまってしまいました。
――結果、最後の一点を取れた要因は
気合いですね。思いっきりやろうと思って、外したのですがそのあと剣をしっかりと突けたという感じです。
――今後の目標は
全日本選手権団体戦があるので、そこでしっかり勝ちたいです。来年はリーグ戦もあって試合もたくさんあると思うので、今年は3位が最高だったのでそこよりは高いところに行けるように頑張りたいです。
川村京太(スポ3=東京・東亜学園)
――勝利の感想を教えてください
やっぱりすごくうれしかったですし、全体を通して慶大に流れが行ってしまっていたので、自分たちの男子フルーレで流れを取り戻したいと思っていました。率直に勝てたことはすごくうれしいです。
――個人の出来としてはいかがですか
今日はできすぎていたくらいだと感じています。いつもはダグラスや(藤澤)将匡(スポ2=宮城・仙台城南)に助けてもらっているところがあるのですが、今日はなんとか二人を引っ張ることができたかなと思っています。この上出来な感触を忘れないように次も良い仕上がりを見せられるように練習していきたいです。
――今日点を多く取れた要因は何ですか
インカレでも慶大と当たったのですが、その時は自分が二人に助けられて勝ったような展開でした。その時の自分の敗因は、ピストを広く使えずに小さいプレーになってしまっていたことだと思いました。たくさんフィールドを使って脚をたくさん動かそうというテーマで頑張りました。
――今後の目標を教えてください
直近では全日本選手権団体戦があるので一丸となって優勝し、来年はリーグ戦が予定通り開催されるならば全種目優勝目指して一丸となって頑張っていきたいと思います。
高原真央(人4=福井・武生)
――今日、男子フルーレに続いて2勝目となりましたが、勝利の感想はいかがですか
うれしい気持ちもありますが、全体として負けは負けなので悔しい気持ちの方が強いです。
――フルーレに関して今日の良かった点について教えてください
すごくみんなが盛り上がってくれたところが、早大らしい団体戦ができて良かったと思います。
――女子フルーレでは終始流れをもっていたと思うのですが、流れを渡さなかった要因は何ですか
フルーレができるのが自分だけなのですが、みんな言ったことを守って自分の役割を果たしてくれたので、あとは普通にやっても勝てるなという感じでした。
――今日全体として負けてしまった要因は
慶大が強かったです。
――これから全体としてどうしていきたいですか
早大にはチームでつなぐ良さがあると思うので、それをきちんとやれば来年は勝てると思います。
――今後の目標をお願いします
自分は4年で卒業してしまうのですが、早大が早慶戦でも他の大会でも勝ってくれることを祈っています。