【連載】インカレ直前特集『Beyond the Bottom』【第2回】 松山大助×北原達也×奥武大輔

フェンシング

 関東学生選手権(関カレ)では昨年に引き続き、悔しくも2位に終わった早大男子フルーレ陣。今回は松山大助(スポ5=東京・東亜学園)、北原達也(スポ4=長野・伊那北)、奥武大輔(スポ1=大分豊府)の三人にお話を伺い、真面目な話から意外な試合での盛り上げ方法まで全日本学生選手権(インカレ)に向けて語り尽くしてもらった。

※この取材は11月3日に行われたものです。

三者三様

印象を述べる北原

――まずお互いの印象を述べていただきたいと思います。大助さんの印象からお願いします

奥武 恭助先輩(松山恭助、スポ3=東京・東亜学園)にお兄さんがいるということは知っていましたが、会ったことは1度もありませんでした。

北原 4歳離れているもんね。

奥武 年が離れているということもあって、怖かったら嫌だなと思っていました。でも全然怖くなくて(笑)。ラブライブ!の話とかアニメの話を結構されて(笑)。でもそのおかげではないですけど話しやすくて、年は離れているけど近い感じで接することができる先輩だと思います。

北原 自分が大助先輩と最初に出会ったのは中学3年生の時でした。

――古くからの付き合いなのですね

北原 自分が中学3年生の時に大助先輩、自分、山根(周佑、スポ4=埼玉栄)、陸人(竹田陸人、社3=神奈川・法政二)、修平先輩(三好修平、平29年社卒)、恭ちゃん(松山恭)という後のワセダフルーレのメンバーで行ったフランス遠征があって。その後のインターハイの時大助先輩と話したんですよ。

松山大 いろいろ話したね。

北原 自分のオタクの友達を連れてきたら、そこでオタクトークが花開いちゃって(笑)。自分は蚊帳の外でした(笑)。話しやすくて、中学の頃から変わらないです。

松山大 よく言われるわ、それは。

――続いて北原さんの印象をお願いします

松山大 中学の時は礼儀正しい子という印象がありました。大学に入ってからは、僕とタイプが逆と言いますか、良い意味ではっちゃけているタイプの性格なんですけど、やるときはちゃんとやって、ものすごく要領が良い奴だなあと思っています。

北原 褒められてる(笑)。

奥武 僕は大学からの関係ですが、結構いかついイメージがありました。最初(部に)入りたての頃は怖かったんですよ。大助先輩もそうなんですけど年が離れていて、あまり僕の方から話し掛けることはできていませんでした。でも先輩たちの方から話し掛けたりちょっかいかけてくれたりしてくださったおかげで、今は話しやすいです。はっちゃけているというか、チャラいというか(笑)。そういう雰囲気は出ているんですけど、大助先輩がおっしゃっていた通りやることはちゃんとやっていて、悪いことには悪いと怒るし、そういうところがかっこいいなあと思っています。

北原 うれしいけど恥ずかしい(笑)。

――ありがとうございます。では最後に奥武さんの印象を先輩お二人からお願いします

北原 一般(入試)で入ってくると聞いていただけで、全然どんな子かも分からなくて。実際は最初からすごく元気で、相性も合うなと感じています。最近は二人でずっと部室でゲームをしています。あとスキンシップも大事にしています(笑)。

奥武 そこを欠かしてはいけない(笑)。

北原 あと本当にフェンシング大好き人間だと思う。ご飯に行っても、急にフェンシングの動きをし始めて(笑)。オフの自主練期間もほとんど毎日(フェンシング場に)来ていたと聞いて、フェンシング大好きというイメージがすごく強いです。今も本当に強くなっていますし。

松山大 今の男子フルーレのメンバーが僕やたっちゃん(北原)始め、上級生が多くて。その中で気を遣うところもあって大変だと思うんですけど、一人下級生ですごく頑張っているなあという印象がありますね。あと確かにフェンシングすごく好きだよね。練習もすごく一生懸命やっていて、少しでも先輩たちに追い付こうという姿勢が見えて、真面目な子だなあと思いますね。来年楽しみです。

北原 楽しみですね、来年から。

変化し、受け継がれるチームの雰囲気

――続いてチームの印象について伺っていこうと思います。大助さんは1年間の留学からことし戻ったというかたちになると思うのですが、留学前と留学後で変化を感じる部分はありましたか

松山大 若い力をすごく感じます。僕が留学する前は上級生が試合に出ていて、下級生が試合に出る機会がなかなか少なかったんですよ。でも僕が帰ってきてからは、下級生を使えるところで使って、上級生がしっかり締めるというように良い意味で融合ができていると思います。部に在籍して4年目で初めて総力戦ができているなあと思いました。

――北原さんは男子フルーレのチームキャプテンとしてチームをまとめている立場だと思うのですが、その立場から見てチームにどのような印象を持っていますか

北原 今一人エースとして恭ちゃんがいて、その下で自分たちが頑張っているという状態で。特にリーグ戦(関東学生リーグ戦)の時に見えたんですけど、自分たちが下げてしまったところを恭ちゃん一人で取ってくるという試合が多くて、恭ちゃんにすごく負担をかけているなという印象がありました。でも関カレになって、そこまで恭ちゃんの足を引っ張ることなく、恭ちゃんをフォローしながら試合展開を作れていたと思います。そこが5月から10月の成長だと思いました。あと去年までは女子フルーレが全然いなくて、加えて左利きもいなくて。

松山大 いなかったね。

北原 だからその練習ができていなかったんですけど、自分が4年生になって男女共にフルーレ陣と左利きが一気に増えて、お互いに良い刺激になっています。男女分かれての練習もすれば、ごちゃ混ぜになってお互いから学ぶ練習もして…。しかも女の子いるとね、華が出て良い練習ができる(笑)。あと今までレッスンをあまりしていなかったんですが、

松山大 していなかったね。

北原 最近すごくレッスンするようになって。教えられることも少ないながら教えていく中で、自分が忘れていたことに気付いたりとか思い出したりとかフェンシングについて考える時間ができたので、自分のフェンシングを作る上で大切なことを学べたのが刺激になりました。

――奥武さんは1年生から見たチームの印象として何かありますか

奥武 誰かの試合をみんなで応援するのが楽しいですし、僕が試合に出ているのを応援されるのも楽しいです。自分がみんなのフェンシングを見ていても、みんなのやるフェンシングが面白いなあと思います。部活が終わってフェンシングから離れている時も楽しいです。

北原 去年から修平先輩がそういう雰囲気を作っていて、自分たちもみんな仲良くという感じでやってきて。今もその雰囲気があると奥武に思われているんだったら、嬉しいですね。

――三好さんがキャプテンの頃から今のような雰囲気が作られていたのですね

北原 そうですね。自分も修平先輩と仲が良くて一緒にご飯にも行っていたし、遊びにも行っていて、みんな仲良くやっていたから、今があるのかな。

――部活後などにみんなで出かけることはあるのですか

奥武 大体部活が終わったら、誰かとご飯に行っています。

北原 奥武自炊しないもんね。俺もだけど(笑)。

奥武 外食する者同士でご飯に行きます。練習を頑張った後のオフの日曜日に、部員たちと遊びに行くこともあります。部員とは、友達としても良い関係を築けていると思います。

――このチームは学年の幅が広いと思いますが、ジェネレーションギャップを感じることはありますか

松山大 そこまではないですね。

奥武 カラオケの歌とか。

北原 それ同じこと言おうと思った(笑)。「えっ、この曲知らないの!?」っていうのはある。全然フェンシング関係ないですけど(笑)。

――ありがとうございます。では次に、団体戦をする上で気を付けていることがあれば教えてください。

松山大 僕は役割をしっかり意識するようにしていますね。例えば自分がアンカーをやるんだったら、なるべく点数を取られないように積極的に自分から攻撃に行く、主体的に防御する。そうでなく2番手3番手の場合は、足を引っ張らずにフォローする。受け身になってしまうと相手にやられてしまうので。

北原 雰囲気は絶対大事ですね。普段から仲良くすることも大事で、練習中もアドバイスして。レッスンを多くやるようになって、今までよりもお互いにアドバイスする回数が増えました。いざ試合になったら、普段から練習を見ているので「これはできないだろうから、このチョイスでやってみよう」というアドバイスもできますし、下級生からアドバイスをもらった時もうれしいです。奥武は声も出すよね。

奥武 そうですね。春はほとんど試合に出なかったので、その中で自分の役割は何かと考えた時に声を出すことかなあと思って、とにかく声を出しました。もちろん関カレで試合に出る立場になっても、それは続けました。あと2番手、3番手での出場だったので、積極的に動いて次の人につなげるためのフェンシングを意識していました。でも1番は声とか、雰囲気とか、(点を)取った時に全身を使って喜ぶとか(笑)。(ラブライブ!サンシャイン!!に登場する「がんばルビィ!」のポーズをする。)

松山大の熱心な布教により、奥武まで「がんばルビィ!」のポーズを覚えてしまった

――このポーズ、他の選手にも強要しているんですか(笑)

松山大 強要はしていないです!勝手に広がりました(笑)。

奥武 点を取った後にやります(笑)。

松山大 奥武本当にやってた?(笑)

奥武 ベンチでやっていました(笑)。

北原 男子サーブル団体のベンチにも、奥武は呼ばれて声を出していて。雰囲気は大事ですね。自分自身も熱が入っているので、点を取ったら体が勝手にそう動いちゃう。個人戦では出さないような声や動きも、団体戦になると出ますね。

――大助さんはラブライブ!サンシャイン!!のヨハネの決めポーズも試合中にやっていましたよね(笑)

関カレ団体戦での松山大。ギラン

松山大 バレた(笑)。

奥武 そのポーズ何かなって思っていたんですよね(笑)。

松山大 まあまあまあ(笑)。チームが負けている時に逆転すると、チームを救ったという自己満足のようなものがあって、それで体を使って表現したくなるんです。

北原 それでベンチも盛り上がりますしね。

松山大 その一環で。あとは自分がやりたくて…(笑)。

北原 結局そこですよね(笑)。

松山大 でもみんなそれで良いと言ってくれているので、これからもこの調子で頑張ります(笑)。恭助とかもサッカー選手がよくやるポーズをやっていますし。

北原 確かに。

――皆さん好きなものを取り入れているのですね

北原 試合が始まる前の円陣でも、「先輩きょうは…なんでしたっけ?(笑)がんばルビィ!やりましょう(笑)」とやっていて(笑)。先輩はめっちゃ調子良かったですね。

松山大 本当は「ヨーソロー!」をやりたかった。(渡辺)曜ちゃんが好きなので。曜推しなんですよ。

奥武 分かんない(笑)。

春からの成長

――気を取り直して、続いてはことしの大会について振り返ってもらいたいと思います。リーグ戦が現体制初の試合だったと思いますが、実際に試合をしてみていかがでしたか

北原 さっきも言った通り、恭ちゃんに頑張らせすぎたリーグ戦だったと思います。基本的に最後回りまでほぼマイナスで、恭ちゃんがまくってくれるという試合展開が多すぎたと思います。

――そこから関カレでは修正していけたと思うのですが、どのようにして改善していけたと考えていますか

北原 練習でアドバイスし合ったことは大きいと思います。一人一人の弱点や、お互いに「こうした方が良い」と言い合ったのが良かったと思います。

奥武 個人的にリーグ戦の時より、今の方が過ごしやすいです。僕は入ったばかりだったので、なんとなく緊張していて。

北原 入って1カ月でだもんね。

奥武 それから関カレまでの半年間で、過ごしやすいチームになったと思うんですよね。試合に出た時はすごくやりやすかったですし、なんとなく雰囲気も良くなったんじゃないかなあと思います。

松山大 たっちゃんが言ったように、情報を共有するというのが増えたなあと思いましたね。良い意味で下も上も関係なく、指摘ができました。僕は9月の強化練習の時に教育実習がかぶってしまいまして、練習が満足にできない状態で結構ボロボロだったんですよね。そこから修正していかないといけなかったのですが、これが大変で…。イライラしてしまったことも何回もあって。

北原 大助先輩動けてない、というのは感じていました。

松山大 そういう時に後輩からのアドバイスがすごく助けになって。

北原 先輩もどんどん聞いてきますもんね。

松山大 下級生に聞くのが恥ずかしいという気持ちは全くなくて、悪いと思ったら徹底的に直したいので、言ってくれるんだったらどんどん言ってくれというスタンスで。そのおかげで関カレには間に合って、なんとか戦えたかな。あとは二人も言っていたと思いますが、最初は恭助に頼りきりだったというのがあって。精神的な話になりますが、下級生に全て任せるのはちょっと納得いかない気持ちというか、最上級生としての意地みたいなの、なかった?

北原 (リーグ戦の時に)疲労でヘトヘトになっているのを見ていたので、申し訳ないという気持ちはありましたね。2日間全部きつい試合をさせちゃったので。

松山大 僕は弟に最後(回り)を任せているので、もうすこし頑張らないと、という兄としての意地があって。それで今までよりも意識高くいろいろなことに取り組んできたから、改善できたのかなと思います。

――関カレでは法大に決勝で負けてしまいましたが、時間が経った今振り返って新たに分かった敗因はありますか

北原 圧倒的実力なのは間違いなくて。でも去年の関カレの法大戦をベンチから見ていて、「もしかしたらいけるんじゃないか」という雰囲気が出ていたというか、「やってやろう!」という気持ちが今よりあったと思います。今回は最初から「あー駄目だー駄目だー」となって、「駄目だー」のまま終わってしまったので。

松山大 ちょっと確かにそういう雰囲気はあったね。

北原 途中で1度でも「おおっ!?」という瞬間があれば、向こうも焦ってくれるかもしれないし、そこからちょっとのきっかけでチャンスが生まれるのかなあというのは思いました。それがなかったかなと思います。

松山大 向こうの方が、相手を支配するという試合のやり方がうまかったのかなと思っています。積極的に試合を進めていくということを相手は意識していて、僕たちの方はそれに圧倒されてしまって。のみ込まれて受け身になってやられてしまったかなあと。そこが試合の取り組み方に関して、負けているところかなと思います。あとはフィジカル的なことで言えば、やっぱり相手の方がバランスが良いなあと。自分たちだと体勢が崩れてしまいそうな状況でも、相手は体勢が崩れない、むしろそこから点数を取りに行ける。自分たちがものにできないチャンスをしっかりとものにしているというのが、向こうが自分たちを圧倒できた要因かなと思っていて。自分たちはそういう少ないチャンスをものにする、もしくはチャンスを作っていくというのが足りなかったかなと思っています。

インカレでのリベンジを

――インカレでは関カレでのどのような点を修正して、試合に臨みたいと思っていますか

松山大 まずは目の前の試合をしっかりと勝つというのが重要だと思います。今の男子フルーレは(法大以外の)他の学校も戦力的に強いところが多いので、法大ばかり意識していると足をすくわれやすいという状況です。まずそれを第一にして、法大と戦う時は、絶対にお通夜みたいな雰囲気にしないとか、絶対に倒すんだという意気込みを持って臨みたいです。優勝するために自分たちは練習しているので、まずは雰囲気を作って、そこから1年間で培った情報共有をするということを生かしてしっかりと直せるところを直していきたいと思っています。

北原 気持ち。法大を倒すには、気持ち。

奥武 関カレでは勝ち上がるたびに行け行け!という感じで、リーグ戦で惜敗した日大に勝ってそこで切れたというか。そこで「日大に勝った!次法大も行こう!」となれば良かったのですが、法大戦がいざ始まってみると入りからあまりうまくいかなくて、終始暗い雰囲気で試合が終わってしまいました。そこが課題といえば課題だと思うので、リーグ戦で恭助先輩に頼りがちだったところを克服したように、インカレではそこを克服していきたいです。

――最後に、インカレへの目標や意気込みをそれぞれお願いします

奥武 チームで優勝したいです。僕にできることは限られているので、そこを意識して。団体戦に出られても出られなくても、自分がやれることを精一杯やって、1年生としてチームに貢献できるように頑張ります。個人戦はいけるところまでいって、今後の自分のプラスになるようにしたいです。

北原 関カレは前々からなっていた肉離れが激しくて、ファンデブを踏むと痛いという状態でした。個人戦はできるだけファンデブを踏む回数を減らして、吐きそうな気持ちを抑えながらインカレ出場権を取り、そこからはできるだけ足の負担を減らしてやっていました。団体戦では自分が全然駄目だったので、奥武を出したらむっちゃ調子が良くて。自分も負けないようにしたいです。今様子を見ながら練習を始めたのですが、足の調子は結構良いので、このままインカレに挑んで、個人戦でも大物を頑張って倒せるように、団体戦も1つ1つ積み上げていって最後法大に挑戦する気持ちで、気持ちで負けないように、優勝目指して頑張っていきたいと思います。

松山大 個人戦ではベスト8に入るという目標があって。最近下の世代が強いので、その中でも上級生もまだまだ強いんだぞというのを見せつけたいです。チームが勝っていく上でも個の力は重要だと思うので。ベスト8より上にいけるんだったらさらに上を目指してという感じで、個人戦には臨みたいと思います。団体戦はもちろん優勝を目指して、目の前の試合をしっかり落とさずに、1つ1つ大事に戦って勝って、チーム一丸となって盛り上がって、最後は笑って終わりたいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 藤岡小雪)

意気込みを書いた色紙を持って並ぶ三人

◆奥武大輔(おくたけ・だいすけ)(※写真左)

1998(平10)年4月13日生まれ。171センチ。大分豊府高出身。スポーツ科学部1年。オフの日は、同期と映画に行ったりパンケーキを食べに行ったりしているそうです。

◆松山大助(まつやま・だいすけ)(※写真中央)

1994(平6)年11月14日生まれ。176センチ。東京・東亜学園高出身。スポーツ科学部5年。ラブライブ!以外で好きなアニメ作品は、ガンダムシリーズだそうです。サンライズ推しですね。

◆北原達也(きたはら・たつや)(※写真右)

1995(平7)年9月11日生まれ。175センチ。長野・伊那北高出身。スポーツ科学部4年。オフの日は部の後輩とよく飲みに行くそうで、釣りとゴルフにも興味を持ち始めているとのことです。