【特集】夏を経た新入生 小山桂史×奥武大輔

フェンシング

 去る8月、中国無錫市で第3回アブソリュート国際交流大学キャンプが開催された。ハーバード大、プリンストン大、スタンフォード大、清華大などの各国のフェンシング強豪校が集う中、日本からは早大フェンシング部の小山桂史(スポ1=東京・クラーク)と奥武大輔(スポ1=大分豊府)の2人が参加。日本からは初参加となったこの海外合宿を経て、2人は何を得たのか。深く掘り下げていくと共に、早大入学前後の話やフェンシング部の合宿についても伺った。

※この取材は9月14日に行われたものです。

早大に入学して

快く取材に応じる小山

――まず、お2人が早大に入学した理由をそれぞれ教えてください

小山 僕はフェンシングを大学に入っても続けようと思っていて、学業と両立できるようにしたいというのが第一にありました。あと早大でしか受けられない魅力的な授業などもあると思ったので、早大に入ろうと思いました。

奥武 僕は元々早大を受けようとは思っていなくて、進学校の出身なので国立大学を受けようと思っていたんですね。高校時代は勉強と部活を両立させていて、国立大学に行ってもフェンシングを続けていこうとは思っていました。ですが学年が上がるにつれて自分の進路のフェンシング部を詳しく調べたり、部活の引退が近づいたりするうちに、大学に入ってからも本気でフェンシングをしたいという思いがだんだん強くなっていきました。国立大学に行くと僕のしたいフェンシングができなくなってしまうので…。違うんですよ全然、本気度が軽くなっちゃって…。僕がやりたいなと思っていたことはそれじゃなかったし、そもそも国立大学に行ってもあまり勉強しないだろうなあと思ったので(笑)、ギリギリのタイミングで親に私大に行ってみたいという話をしました。

――実際に入部して、部の雰囲気はどのように感じましたか

小山 様々な個性の人がいて、雰囲気も自由でとにかく明るい印象を受けました。

奥武 僕も桂史と同じなのですが、同期がたくさんいて雰囲気も良いと感じます。合宿も毎日楽しかったですし、先輩、監督、OBやOGの皆さんにも優しくしていただいて、出会いに恵まれているなと思っています。

――続いて5月の関東学生リーグ戦(リーグ戦)について振り返りたいと思います。小山さんは1年生ながらチームを引っ張る立場でしたが、いかがでしたか

小山 初めての大学の団体戦ということで、どのような試合になるのか全然想像がつきませんでした。大学だと応援もあるので、こっちが盛り上がっている時は良いのですが、逆に向こうがリードしていると…というのを事前に想像して、自分は1年生ということもあるので、1つ1つの試合で足を引っ張らないように、大学のチームとして1点ずつ取っていくということを意識しました。

奥武 自分の種目は先輩方も強くて、試合にそもそも出られるのかということが分かりませんでした。僕は何かしら自分にできることをしようと思って、試合も頑張りましたが応援の方で頑張ったつもりでいます。さっき桂史も言っていましたが、盛り上がりでできるだけリードできるように、ベンチから声を出しました。そうしているうちに先輩方も僕に経験を積ませようとしてくれて、試合に出ることができたので、応援しているだけでは分からない、自分がピストに立って感じられる雰囲気も確かめることができました。最初(試合に)出られると思っていなかったので、思っていた以上にすごい経験ができたリーグ戦だったかなと思います。

真の国際交流

――続いて、8月に中国で行われたアブソリュート国際交流大学キャンプについてお聞きしたいと思います。まず、お2人で中国に行くことになった経緯を教えてください。

小山 日本フェンシング協会と関東学生(フェンシング連盟)のHPに大会の要項が載っていて、面白そうだなあと思って色々調べて、直接現地の人と連絡をしたらぜひということだったので、参加することになりました。

――2人で中国に行く上で、不安などはありませんでしたか

奥武 桂史は結構ポンポン海外に行っているので、余裕そうな感じでした(笑)。僕はフェンシングで海外に行くことがほとんどなかったので、桂史に頼り切りな部分が結構ありました。そこそこトラブルにも巻き込まれて、海外の辛さをかなり知りました。

――小山さんはよく海外に行かれているのですね

小山 はい、中1の時に3回海外派遣されて以降、毎年遠征に行っています。月に2回行くこともあり、時差調整が大変ですね。

奥武 英語もペラペラで、かなり助けられました。

――海外選手とコミュニケーションをとる時は英語で

小山 そうですね。ただ現地のボランティアの方々の中に、日本語をしゃべることができる方もいました。また奥武は溶け込みやすい性格なので、言葉の壁もそんなに気にせずに楽しむことができていたと思います。

――中国では具体的にどのようなことをしたのですか

小山 初日に(中国に)着いて、次の日に練習会がありました。その時は韓国の大学の人たちはまだいなくて、中国とアメリカと日本で合同練習をしました。その次の日は個人戦、翌日は団体戦、残りの2日間が文化交流でした。文化交流では三国城公園に行ったり太鼓遊覧船に乗ったりもしました。

奥武 その2日間はフェンシングを一切していないです。

――そうなんですね!

小山 普段の海外遠征だと試合をしに行っているので、知り合い会っても本当の意味で仲良くなるということはなかなかありませんでした。しかし今回はスポーツを通して、本当の意味で国際交流ができたなと思います。僕が中3の時以来会っていなかったロシア人の選手がいたのですが、今はアメリカのノートルダム大学に通っているそうで、中国で久々に会うことができました。アメリカや中国のトップ校がたくさん参加しており、その人たちと空き時間に部屋に集まって選考の話や、国の違いや将来に関してなどについて語り合えて、フェンシングを通じた交流ができたと実感しています。

――海外選手と対戦して、何か感じたことはありましたか

奥武 僕自身外国人の選手とあまり戦ったことがなかったので、それで変に力が入ってしまいました。また中国の選手が多くて日本人は2人だけだったので、試合中のアウェイ感を感じました。

小山 僕は海外遠征にも行っている方なので、国ごとにどのような特徴があるのかは分かっていたつもりなのですが、やはり今韓国は世界の中でもすごく強いということを実感しました。その大会でも、サーブルの上位3位は全員韓国の選手でした。

とにかくきつかった合宿

合宿について振り返る奥武

――続いて、部の合宿について伺っていきたいと思います。合宿はどこでどのくらいの期間行っていましたか

奥武 新潟県の温泉の近くの合宿所にみんなで泊まり、1週間くらいいました。桂史は別で練習していたので合宿には行っていないですね。僕を含めフルーレの1年生たちは試合と合宿が被っていたので4日目くらいから合流する予定だったのですが、その試合が台風でなくなってしまったので、2日目から合流しました。

――高校と大学で合宿の違いはありましたか

奥武 結構きつかったですね。僕はみんなと比べて練習の短い高校だったので、合宿に行ったからといって大して練習はしていませんでした。ですが大学の合宿は、朝練習して、午前中、午後、夜も練習していたので、とにかくきつかったです。僕は他の1年生に結構頼ってしまっていたのですが、1年生はご飯の準備や部活が始まる前の準備があったので、そういうところも大変でした。

――早稲田には実力のある選手がたくさんいると思うのですが、先輩方から何かアドバイスを受けたりしましたか

奥武 そんなにフェンシングの練習はやっていなくて、走ったり筋トレしたりが中心だったので、(フェンシングに関して)これをこうしろというアドバイスはあまりもらっていないですね。アドバイスというよりは、先輩方が走っている姿に刺激を受けました。

――小山さんは普段の練習で先輩方から得たものなどありますか

小山 第三者の視点で、フェンシングや試合において自分が今どういった状況で状態なのかを色々とアドバイスしていただいています。

それぞれの夏を経て

――この夏特に意識して練習していたことはありましたか

奥武 中国に関しては試合がメインで、今まであまり海外には行くことがなかったこともあり、なんとか経験を得られるだけ得てこようと思って試合に臨みました。

小山 フェンシングの話で言えば、要点を絞って練習することを意識していました。

奥武 今回の部の合宿は、体を作ることがメインの合宿だったんですよ。僕は大学のフェンシング部に入るまで、受験勉強でフェンシングをやらない期間がかなり長くて、結構だらしない体になっていて(笑)。それで大学に入ってからのフェンシングのスタイルが、変わっちゃって…。今のスタイルは自分の理想ではないので、高校の頃より強くなろう、とにかく動こう、体力をつけてやろう、筋肉をつけてやろうと思って臨みました。

――合宿中で特に辛かったメニューはありましたか

奥武 全てが辛かったですね(笑)。長距離・マラソンみたいな感じのランと、短距離のダッシュと、体幹トレーニングが基本になっていて、本当に全てがきついんです(笑)。練習中に休む暇とか無いんですよ。きつかったです。

――この夏で特に成長したと思う部分はありますか

小山 去年やそれ以前は不安定で波が激しかったので、まず安定したフェンシングができてきているのが一つの大きな成長だと感じています。まだ出来上がっているわけではないので、それを常に意識して練習していこうと思います。また今回の国際キャンプには、交渉に交渉を重ねて初めて日本から参加できたので、その点に関してはフェンシングを通した競技以外での自分自身の成長だなと感じました。

奥武 6〜8月は全員での練習が無いのですが、一応ほぼ毎日練習場に通ってフェンシングを練習していました。それで何が強くなったかというと、フェンシングへの愛が強くなりました(笑)。毎日やっているうちに、やっぱり僕はフェンシングが好きだと思うようになって、本当にフェンシングをしたくてたまらなくなりました。

小山 僕もJISSでの練習がない時に、剣を整備するためにこっちに来るのですが、たいてい(奥武が)いて、きょうもいるなと思っています。なかなかたくさん来る人って限られていて、その中で練習していてすごいなと思います。

奥武 ありがとう(笑)。

――最後に関東学生選手権(関カレ)への意気込みをお願いします

小山 個人戦では安定することが大事だと思うので、そこをまず重要視したいです。団体戦では、1点でも多く取るような気持ちでいきたいと思います。

奥武 個人戦に関しては、1年目なので全力を尽くします。そして行けるところまで行きたいです。その結果次第で、今後の自分の目指すところが明らかになってくると思うので。リーグ戦の団体戦は経験を積ませてもらうために出させていただいたのですが、今回は貢献できる自分として試合に出ます。夏の期間、男子フルーレの中では結構フェンシングの練習をしてきたという自信があるので。関カレまでの練習も一生懸命やりたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 藤岡小雪、本野日向子、佐々木まどか)

笑顔で剣を交差させる2人

◆奥武大輔(おくたけ・だいすけ)(※写真左)

1998(平10)年4月13日生まれ。171センチ。大分豊府高出身。スポーツ科学部1年。中国からは1人で日本に帰ったという奥武選手。トラブルにより飛行機に乗り遅れてしまい、空港で寝泊まりしたそうです。お疲れ様でした。

◆小山桂史(おやま・けいし)(※写真右)

1998(平10)年7月23日生まれ。170センチ。クラーク高出身。スポーツ科学部1年。これまで部活動としてフェンシングに関わることがなかった小山選手。様々な人が所属する早大フェンシング部に入ることができて嬉しいとおっしゃっていました!