今回登場するのは、男女フルーレ4年生の三好修平主将(社4=愛媛・三島)と永瀬夏帆(スポ4=宮城学院)。二人は試合でもチームメイトによく声を掛け、フルーレだけでなくワセダを盛り上げ、引っ張ってきた。二人が出会った頃の幼少期のお話から最後の全日本学生選手権(インカレ)に懸ける思いまでを伺った。
※この取材は11月1日に行われたものです。
「関カレで(インカレへの)士気が高まった」(三好)
二人の息ぴったりの掛け合いが見られました
――まずことしの関東学生選手権(関カレ)以前のシーズンを振り返っていただきたいのですが
永瀬 えー!いやだー!(笑)
三好 振り返ってか、難しいな…リーグ戦(関東学生リーグ戦)と王座(全日本学生王座決定戦)に関しては新チームでやったんですけど、それにしてはいい試合が多かったのと思うのと、あと何より他のチームに比べてチームの雰囲気や団体戦っていう面においては他のチームに負けないくらいの一体感があったと思います。団体戦はチームで45本取るんですけど、自分が取れるときに取って、取れないときには他の人にというか、うーん、難しいな…
永瀬 一言でこれ!みたいなのないの?
三好 じゃあチーム力が良かった。1年から4年まで全員出たんですけど、そんなチームは(他大学には)あまりなくて。1年生は初めての試合なので「食らい付いて楽しいようにやってこい」って言って。まあその分俺らにはプレッシャーがかかりましたけど。でもチームとしてはいい試合になりましたかね。
――全員で戦えたといった感じなのでしょうか
三好 そうですね。一人だと厳しい場面も多いので、それぞれが取れるときに取ってといった感じでしたね。まああんまり覚えてないんですけど。
永瀬 覚えてないの(笑)?
三好 覚えてないね(笑)。
――永瀬選手はどうでしょうか
永瀬 私は逆にリーグは一本一本覚えているかもっていうくらい印象に残ってます。(三好選手は)覚えてないしめっちゃ良かったけど(自分は)覚えてるし悔しいというか、もはや無です。真っ白。リーグは1部に6校あるんですけどそこで最下位になって、そのあと入れ替え戦でもダメで今2部になっちゃって。私が出た2種目でどっちも落としてしまったので、嫌な思い出です。
――悔しい気持ちばかりだと
永瀬 そうですね。どれだけ練習の過程とか試合の内容が良かったとしても結果が出ないと意味がないと思っているので、その面では前期はダメでした。悔しさしかないです。
――2週間ほど前に関カレが終わりましたが、そちらは振り返っていかがでしたか
三好 関カレは覚えてる(笑)。
一同 (笑)
永瀬 忘れないうちに言っといた方がいいんじゃない?(笑)
三好 うちのエースの松山恭助(スポ2=東京・東亜学園)が前期は休学していて後期から戻ってきてワセダとして出てくれて。正直あいつの方が自分より強いのは分かっているし、「あいつが点を取ってくれるから俺たちはめちゃくちゃ点数を取られないようにしなきゃいけないな」と思っていたんですけど、思ったより上手いこといって(笑)。
永瀬 かみ合った的な?
三好 そうやな。結局リーグも関カレもそうやねんな、かみ合ったんですよ。そう思わない?
永瀬 確かに。
三好 今回の関カレでリーグ戦と違ったのはまずそいつ(松山恭)がいたってことですね。リーグ戦の時は僕と竹田陸人(社2=神奈川・法政二)が一緒だったんですけど、自分が調子悪いときに陸人が良くて、陸人が悪いときに自分が調子良かったみたいに戦えていて、恭助がいない状態でも2位になれて、王座でも2位になれましたね。関カレにおいては結構どっちも良くて。法大戦に関しても、結局負けはしたんですけど悪いことはあまりなかったので、だから点数にも表れているのかなと思うんですよね。リーグ戦は32-45で負けて、王座は33-45で負けっちゃったんですよ。そこは覚えてるのかい!ってね(笑)。
一同 (笑)
永瀬 記憶力すごい(笑)!
三好 そういうところは覚えてるわ(笑)。でも関カレはそいつ(松山恭)もいたおかげで42点まで取れたっていうのが大きいですかね。正直リーグ戦も王座も点数が開いちゃって、相手もちょっと手を抜いても大丈夫というか、33点まで取らせてもらったみたいなところがあったんですよ。全部本気でやられたら20何点だったかもしれないみたいな。でもそれに比べて関カレは逆に焦ったのは向こうだったし、向こうが本気で勝負してきての42点だったっていうのがかなりの収穫だと思う反面、悔しい気持ちもありますね。関カレ前はインカレ(全日本学生選手権)でどうなるのかなみたいなのが多かったんですけど、関カレでいい試合ができたので、インカレは勝ちにいけるなという士気が高まったというところですかね。
――関カレを経て雰囲気は良いということでしょうか
三好 そうですね。逆に負けたからみたいなところもあるかもしれないですね。
――永瀬選手はいかがでしょうか
永瀬 関カレは前期と比べたら結果も内容も良くはなっています。個人ではベスト8だったんですけど、全然満足はしてないです。私の中での最低限のラインはベスト8だったのでそこを達成できたことはよかったんですけど、そこからもうひとつ上のレベルで勝てないということはそこで満足しちゃってた部分もあるのかもしれないし、技術的にも足りないところがあったなというのを実感しました。団体はリーグと同じメンバーで臨んだんですけど、結果的に7位でした。最後勝ち切れなかったのは私だし、他の種目(が専門)の二人と組んでいたので私の力不足だったなという気がします。リレー方式の試合で2点差くらいで最後回してくれたんですけど、逆転のチャンスはいくらでもあったので。ただベンチワークであったり、どうやって次の選手に回すかっていうのをそれぞれがしっかり考えてくれて、結果的に負けはしましたけど全然悪い試合ではなかったので、前期より成長しているかなと思います。
――三好選手は個人戦はどうでしたか
三好 個人戦の方が覚えてないな。シードだったので予選がなかったんですけど、自分、結構尻上がりタイプなんですよね。1回戦で全然知らない選手に負けちゃった経験とかもあったので本当に怖くて。だから初戦から頑張って(笑)。
一同 (笑)
三好 でもやっぱそれが大きかったですね。そのあと2回戦、3回戦は勢いがあったのでいい試合ができたかなと。いつも追いかける展開が多くて追いつけずに終わっちゃうのが負けパターンなんですけど、今回はそんなことはなく、自分のペースでできましたね。フェンシングは戦略がすごく大事なので、決め技をいきなり持ってきちゃうみたいな風に考えが単純になるとダメなんですよね。そういうところがあまりなく、相手の弱点を探しながら自分の調子も見極めつつ勝負できたかなと思いますね。準々決勝の相手は去年の全日本(全日本選手権)の個人で2位だった選手ですごい強くて、だからこそ食らいついていって。序盤は勝ってたんですけどある段階で相手に流れを渡しちゃったのがダメでしたね。自分から仕掛けることができずにリアクションばかりだったので負けてしまったかなというのが反省点です。
――ご自身としては追い込まれた方が燃えるというわけではないのですか
三好 全くそんなことはないですね(笑)。
永瀬 じゃあダメじゃん(笑)。
一同 (笑)
三好 本当は先に取っておきたいですけど、追い込まれないとできないタイプなんですよね、背水の陣っていうか(笑)。
――リーグ戦から半年間はどのような練習をされていましたか
永瀬 9月の合宿はフェンシングよりもフィジカルというか走りまくってました。シーズン中だとフェンシングしかやらないんですけど、9月はフェンシングよりも体力とか体幹とかの部分を鍛えてました。
三好 自分の意識としては、技を増やすというよりも自分の持っている技を最大限に生かすフェンシングを心がけています。新しい技は習得するのに時間がかかるし、これ以上技を増やすよりもいいかなと思って。前期は技をメインにやっていたんですけど、後期は自分の持っている技をどう生かすかという風にフェンシングを変えましたね。
――法大にはどのような印象を持っていますか
永瀬 確かにレベル的にはワセダよりも上だと思っています。修平がどう思っているかは分からないけど、相手が強いからどうしようと思って終わってしまっていたところが私はあって。今まで試合をしたことがある相手だったら研究するとかできることがあったと思うのに、強いからという理由で迷ってしまうところがあったかなと。
三好 男子はやっぱり一つに尽きます、相手が強い。割り切っているところもあるし普通にやっても勝てないので、それだったらいつもやらない技をやったりだとかしてみますね。技術面の差は受け入れるしかないので、試合においては食らい付くしかないですね。
「男子のスピードに慣れていれば女子のスピードは怖くない」(永瀬)
関カレでは個人ベスト8に入った永瀬。ベスト4のカベを次こそ打ち破りたい
――ここからは少し軽い質問に移りたいと思います
二人 よかった~(笑)。
一同 (笑)
永瀬 そっちの方がいい!対談してない!と思って(笑)。
三好 よしよし、お願いします(笑)。
――永瀬選手は普段男子の方と練習されているそうですが、男子とやっていてよかったことや違うことなどはありますか
永瀬 速い。
三好 でも速いっていうのはメリットでもデメリットでもあるよね。
永瀬 男子とファイテングするときは開き直るところは開き直るというか、きょうはこれをするとかを決めないとマイナスにしかいかないと思います。男子と試合形式の練習をしていて「ああ、速い」っていう感想だけで終わらせることもできるんですけど、「じゃあなんで相手がトップスピードになるアタックをやってこれたのか?」と考えればまだやり様があるし、練習の意味がありますかね。あとは男子のスピードに慣れていれば女子のスピードは怖くないですね。
三好 例えば(女子が)直球で攻めてきたら男子(のスピード)に慣れていれば止められるじゃないですか。ただその反面、女子(のスピード)が遅すぎて自分の方が先に出てしまって(相手が)遅れてくるのにやられるっていうのもあるんですよね。「やばい」と思って「ああ間に合った」っていうのもあるし、「待ってたのに遅い」みたいな。
永瀬 それ関カレであったー!
――逆に三好選手は女子と練習していて良かったことがもしあれば
永瀬 女子って私しかいないじゃん(笑)。
三好 他の子(男子部員)は1つやる技を決めて(永瀬と)対戦するみたいな感じなんですけど、僕は逆にこいつの弱点しかつかないみたいな、いやらしいやつをやりますね。こいつに(剣を)突かれないようにかいくぐって後ろから突くっていう技ばかりやるっていう(笑)
永瀬 でもそれしかしてこないって分かったから最近は私の方が勝つんですよ。
三好 だからまあそれのおかげですよね。関カレで良くなったっていうのは。
一同 (笑)
三好 だから俺のおかげかなって思ってます。
永瀬 でも逆に三好が関カレでやった技は私と練習してたからできたっていうのもありますよ。「これできるんじゃない?」って言ってたやつを試合でやってたので、応援しながら「あれ私が教えたやつだよ」って言ってました。
一同 (笑)
三好 たまたまあったんですよ。関カレで降りてきた技があって。それを偶然関カレ前に二人のレッスンでやったんですよね、俺覚えてないんですけど。それが関カレで降りてきてバンバン突いてたら…まあそこは認めます(笑)。
――ではお互い高め合ってやっているということですか
一同 (笑)
三好 まあそういうことになるでしょう(笑)。
永瀬 結果的にそういう感じで(笑)。
――続いてお互いの印象を伺いたいのですが、初めてお会いしたのはいつ頃ですか
永瀬 小5ですね。ジュニアの時に全国大会で上位の選手で行くドイツ遠征があって、その時が最初です。(三好は)私より身長低かったな(笑)。
――当時のことは覚えていらっしゃいますか
永瀬 試合以外の日で観光の日があって、バスに乗った瞬間に一人で寝始めて「なにこいつ!」って思ったのが覚えてますね。
三好 俺すぐ寝れるんですよね。練習の昼の休憩でもその辺でスッて寝れるんですよ。試合の合間とかも1時間から2時間くらい空くことが多いんですけど、寝ることが多いですね。でも寝たときの方が(結果が)良かったりしますね。
永瀬 それがいまでも続いてるかな、どこでもすぐ寝れるっていう。
三好 僕も同じタイミングで覚えてることあります。当時インスタントカメラが流行っていたんですけど、海外遠征用に一人ずつ持たされててそれで遊んでた記憶があります。あとはこいつ今でも結構うるさいんですけどその時もうるさくて。ある夜にホテルでうるさくしてて俺が注意したんですよね。そしたらコーチがやってきて俺がめっちゃめちゃ怒られるっていう(笑)。「俺注意したで!」って(笑)。でもこいつらは知らないふりみたいな。
永瀬 ホテルのロビーだよね。ごめんね(笑)。
――今も関係性はあまり変わりませんか
永瀬 そうですね。そのままちょっとだけ大きくなった感じです。
――お二人とも4年生ですが、仲の良い後輩はいらっしゃいますか
三好 やっぱり同じ種目だし、中学、高校から知っているので竹田陸人ですかね。中学、高校のときは知り合いっていうだけでしたけど、大学で一緒になるということになって結構連絡を取り合って遊んだりしてましたね。普段も結構映画に行ったりします。こいつ(永瀬)は逆に広くというか、誰と特に仲が良いっていうのはないかな。
永瀬 うん。みんなと仲良いですね。みんな大好き。これでみんながそう思ってなかったらどうしよう(笑)。
――試合前のゲン担ぎは何かありますか
永瀬 前の日に米を食べる。白米が好きなんですよね。試合の前の日の夜は米って決めてます。あ、あととんかつって「かつ」が入ってるからってよく言うじゃないですか。それで親が前日に食べさせてくれたことがあるんですけど、食べ過ぎて次の日気持ち悪くなったことがあるので、とんかつは食べないって決めてます。
三好 俺はないかな。試合の前日とかじゃなくて、試合直前とかならあるんですけど。
永瀬 なになに?教えて(笑)。
三好 一つは愛媛の実家に月桂樹が植えてあるんですけど、その葉っぱを試合のユニフォームのポケットに入れてます。小学生の頃からやってて1試合ごとに変えるんですよね。ちなみにこれ部員にはほぼ言ってないです(笑)。
一同 (笑)
三好 あとは直前のルーティンですね。剣を見てから構えるとか。
――全くフェンシングには関係ないのですが、きのうはハロウィンでしたけれど何かやられましたか
永瀬 あー!やろうと思ってたんですけど、課題に追われて行けなかったです。
三好 (永瀬は)毎年テレビで取り上げられそうな感じの仮装してますよ。
永瀬 去年はナース服を着て渋谷に行きました。ことしはチャイナ服の予定だったんですけどね。
三好 俺は何にもしてないです。家でゴロゴロしてました。これじゃすごいさみしいやつみたいじゃん(笑)。
一同 (笑)
「他の理由はなくて、ただ最後だから勝ちたい」(三好)
三好は4年間で苦しい時期もあった。最後のインカレを最高の笑顔で終えたいところだ
――インカレのことを伺いたいのですが、去年のインカレは思い返してみていかがですか
永瀬 絶対覚えてないでしょ(笑)。
三好 リーグ戦覚えてないもんな(笑)。
永瀬 去年の個人戦はベスト8でした。去年は目標がベスト8だったので、満足はしてはいけないですけど目標は達成できました。一昨年はベスト16でだんだん上がってきたので(ことしは)もうひとつ勝ちたいなと。目指すは優勝ですけど、ベスト4のカベをいままで越えられたことがないのでことしは越えたいですね。団体戦は2位だったかな。だから個人も団体もあとひとつなんですよね。
三好 去年は特にないかな。いいことがなかったです。個人戦は2回戦くらいで優勝した選手に当たってしまって、強かったですね。団体戦は出てないと思います。
――お二人ともラストイヤーになりますが、特別な思いはありますか
永瀬 これ言ったら緊張するやつだなあ。
三好 やっぱり最後なので、有終の美というか、何よりも勝ちたいですね。大学を卒業してもフェンシングは続けるかなと思いますけど、大学の最後っていうのはフェンシングだと集大成っていうところがあるので、勝ちたいっていう思いしかないですね。他の理由はなくて、ただ最後だから勝ちたいです。
永瀬 私も勝って終わりたいです。負けて終わるのは嫌だ。前に(三好に)言ったけど、勝ちたいっていうより負けるのが嫌なんですよね。負ける自分が嫌。
三好 かっこいい(笑)!
永瀬 今かっこいいこと言いましたね(笑)。だから勝って終わりたい。インカレまで練習を頑張って、インカレで結果を残して、それで後輩たちが目標にしてくれるは分かりませんけど、何かを残せたらいいかなと思います。結果もだし、私の試合を見た後輩たちに刺激を与えられたらと思います。
――最後に、インカレへの意気込みや目標をお願いします
永瀬 優勝かな。
三好 強いて言うなら優勝。勝ちたいです、最後なので。
――ありがとうございました!
(取材・編集 熊木玲佳、吉田優)
色紙にはインカレへの意気込みをお願いしました!
◆三好修平(みよし・しゅうへい)(※写真左)
1994年(平6)9月10日生まれ。愛媛・三島高出身。社会科学部4年。キャンパスの近くのお弁当屋さんでアルバイトをしているという三好選手。おいしいという噂を聞いたことを早スポ記者がお伝えすると、少し得意げな顔をされていました
◆永瀬夏帆(ながせ・かほ)(※写真右)
1994年(平6)7月13日生まれ。宮城学院高出身。スポーツ科学部4年。色紙に書いた言葉「あげまる」は「かほまる」というあだ名と、試合内容を良くという意味の「まる」、気持ちと結果を上げる「あげ」を全て掛け合わせたもの。「ふざけているけど真面目に考えました!」とのことです