個人戦では、自らペースを作って15-5で1回戦を突破するが、2回戦は相手の長いリーチとパワーに押され思うように得点を奪えず敗北。試合終了後もタオルを頭にかぶって座り悔しそうな表情をしていた。
団体戦は主にリザーブとしての出場になる。準々決勝の第8セットで出場するが、焦りが見え相手に連続得点を許してしまう。点数としてのリードは許さなかったものの、満足のいくプレーとはならなかった。
個人戦、団体戦共に悔しさは残る。だからこそ、ここで受けた刺激や経験を生かし佐々木は前に進もうとしている。今度こそは自分のプレーをして頂に立つために。
45点目が決まり笑顔で駆け寄った佐々木(写真一番手前)
うれしさの背後の悔しさ
優勝、と聞いてうれしくない人はいない。佐々木ももちろんそうであろう。しかし、団体戦での自分のプレーにも納得はしておらず、手放しに全てを喜べるわけではなかった。「もう少し見せ場があったら」。そんな思いが優勝のよろこびと裏腹に残っていた。この約2週間前に行われた関東学生選手権(関カレ)でも悔しい敗戦を喫し「余裕がなかった」と話していた佐々木。関カレの課題を克服できずに終わってしまった今大会の後、自身の課題は「自分をコントロールする」ことだと振り返った。
――今のお気持ちはいかがですか
関カレとこの試合とだいぶ日程が詰まっていたので、それが全部終わって一安心しています。やはり団体戦は1試合だけ出て終わってしまったので、優勝したという結果はうれしいのですが、自分自身としては全然満足できていないので、悔しさが残る大会になりました。
――26日に行われた個人戦も試合終了後にとても悔しそうでしたが、個人戦を振り返っていかがですか
やはり関カレで勝手に焦って失点したという反省を生かし切れていない個人戦でした。もっとやるべきことをやって負けたというのではなく、勝手に自滅して終わってしまったことが悔しすぎました。
――個人戦と団体戦を通して、収穫や課題は見つかりましたか
まずは自分の感情をコントロールして、自分の動きまでちゃんとコントロールできるくらいの余裕を持って試合できるようになればいいかなと。それができるように日頃の練習からちゃんと自分をコントロールしていけたらいいかなと思いました。
フットワークとスピードを武器に斬りを決める
悔しさは向上心へ
佐々木はフェンサーの中でも小柄なほうだ。体格の大きくリーチの大きい選手を相手に点数を取っていくために、『フットワークとスピード』を磨き、これを自分にとっての大きな武器にしようとしている。また、今大会では女子サーブルは日本人選手が個人でも1、2位を独占し結果を残した。いつも一緒に練習している仲間に刺激を受け「自分も食らい付いていかないと」と決意を表した。
――今大会では他の日本代表の選手の活躍が目立ち、また外国の強い選手も多く出場されていましたが、やはり刺激は受けますか
そうですね。女子サーブルに関してはいつも練習しているメンバーなので、一緒に練習している人たちがちゃんと結果出しているので、そこには自分も食らい付いていかないとなと思いました。
――ご家族もいらっしゃっていましたが、何か声を掛けられましたか
団体戦の1試合終わった時に、「ちょっと焦りすぎ」ということは言われました。後は全然話せていないので、これからゆっくり話します。
――国際大会が日本で開かれるのは少ないため、こういった大会をご家族が見に来られるのはあまりないのでしょうか
サーブルの国際大会は初めて親の前でやりました。もう少し見せ場があったら良かったんですけど、そこは残念です。
――日本開催ということで、日本の選手に向けての歓声がとても多かったです
試合している時は全く聞こえないんですよね(笑)。試合やっている分にはあまり感じなかったのですが、客観的に見ると自国開催しているんだなというのを実感しました。
――今後はご自身のどういったところを強みにして戦っていきたいですか
自分としてはフットワークとスピードが持ち味かなと思うので、それをしっかり点数につなげられるように自分をコントロールして、点数につなげていけるような安定感のあるプレーをできるように、そこを目指してやっていきたいと思います。
――今後の目標はありますか
去年までジュニアで試合して、海外遠征も行かせてもらっていて、ことしからはシニアになります。まだシニアの国際大会の予定はないのですが、しっかり世界で戦っていけるようなレベルまで上がりたいと思っています。
――ありがとうございました!
(記事、写真 加藤佑紀乃)
表彰式にて、観客席にいる家族や応援してくれた方へ手を振った
※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。
※サーブル:両腕も含む上半身への突きと切り(剣先ではなく剣の胴部分で相手の体に触れること)が得点となる。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の攻撃を防御してから攻撃しなければならない。この攻撃権の奪い合いにより、両選手はピスト上を常に前後に往復し合うため、サーブルは3種目の中で最も全身運動が激しい種目だと言える。
結果
▽女子サーブル個人
1回戦 〇15-5 PRIKHODKO Tatyana(カザフスタン)
2回戦 ●10-15 AMANZOHOLOVA Dana(カザフスタン)
▽女子サーブル団体
日本〔佐々木、江村美咲(東京・大原学園高)、向江彩伽(東京・大原学園高)、福島史帆実(法大)〕
準々決勝 〇45-23 インド
準決勝 〇45-30 韓国
決勝 〇45-40 中国
◆佐々木陽菜(ささき・はるな)
1996(平7)年12月24日生まれ。東京・大原学園高出身。社会科学部2年。この日は男子エペ団体でも日本が優勝。表彰式後には金メダルを首にかけた両種目の選手が並んで写真を撮り、W優勝を喜びました。また佐々木選手は実家の福島からいらっしゃっていたご家族に金メダルをかけており、こちらの心が和みました。