日本フェンシング界の頂点を懸け、学生だけでなく社会人も熱い戦いを繰り広げる全日本選手権(全日本)。団体戦のみの今大会、初日は男子エペと女子フルーレの選手たちがピスト上で火ばなを散らした。男子エペは3連覇中のNEXUSに敗れ、準々決勝敗退。女子フルーレも同じくNEXUSと当たったが、強敵を倒すことはできず初戦で姿を消した。
そういう展開になるとは予想していなかった」(津江碧主将、スポ4=山口・岩国工)。男子エペ初戦の朝日大戦は、序盤で5点差をつけられるという波乱の幕開け。この予期せぬ事態に終止符を打ったのが津江主将だった。第5セットで登場すると果敢に相手を攻め立て23-23の同点まで押し上げる。そこでリズムを取り戻した早大は逆転を果たし、準々決勝のNEXUS戦へと駒を進めた。直近のW杯で優勝した選手を含めナショナルチームの選手を2人擁するNEXUS。勝利のカギは、その選手たち以外のところでポイントを貯めることだった。滑り出しはリードを奪い順調かと思われたのもつかのま、徐々に相手が本領を発揮。5セット目の小野真英(スポ1=埼玉栄)のところでついに逆転を許してしまう。そこから切り替えたい早大だったが、思い及ばず35-45で敗北。「そう簡単には勝たせてもらえなかった」(津江主将)と悔しげな表情を見せた。
活躍した津江主将
女子フルーレも初戦からNEXUSと剣を交えることに。早大は尾上千尋(創理4=田園調布雙葉)、永瀬夏帆(スポ3=宮城学院)、狩野愛巳(スポ1=宮城・仙台三)のフルメンバーで挑んだ。実力派のチームに対し、狩野の怒涛(どとう)の攻めが決まり、第2セット終了時点で3点リードとなる。その後逆転されるも、最終回りで永瀬が健闘。早大も粘りを見せ、結果的に33-38のスコアで全日本の戦いを終えた。強敵相手に善戦したことは大きな自信となったはずだ。
ガッツポーズをする狩野
今シーズン初めて早大の名を背負って社会人と対戦した今大会。1年間積み上げてきたものを学生相手ではなく、世界で戦っている選手を相手に試すこととなった。結果として高い成績を残すことはできなかったが、この経験は次へつながるものに違いない。ここで得たものを来シーズンへ、また強くなれる。
(記事 松本理沙、写真 三上雄大、山田周史)
結果
▽男子エペ
早大〔津江碧主将(スポ4=山口・岩国工)、小野弘貴(社4=東京・早稲田)、小野真英(スポ1=
埼玉栄)〕 ベスト8
2回戦:○45-41 朝日大
準々決勝:●35-45 NEXUS
▽女子フルーレ
早大〔尾上千尋(創理4=東京・田園調布雙葉)、永瀬夏帆(スポ3=宮城学院)、狩野愛巳(スポ
1=宮城・仙台三)〕 2回戦敗退
2回戦:●33-38 NEXUS
コメント
津江碧主将(スポ4=山口・岩国工)
――今大会にはどのような意気込みで挑みましたか
僕ら4年生はこの全日本(全日本選手権)と早慶戦の二つの大会しか残っていないので、一つ一つ楽しみながらやっていこうという気持ちで挑みました。
――初戦の朝日大戦は前半追う展開となりましたね
正直そういう展開になるとも予想していなかったし、つくりたいとも思わなかったです。最初、僕の出だしが5-4でプラスではあったのですが良くなかったので、次の真英(小野)に楽に回せてあげられたら良かったなと思います。
――思っていたより入りが悪かったということですか
そうですね。2セット目で1本も突けないというのが結構きつかったですね。
――2回り目の津江選手のところでリズムを取り戻したように感じましたが
自分か弘貴(小野)が立て直さなければなと思っていました。これ状況でずるずるいかれたら確実にやられるなと思ったのでしっかりとスイッチを入れて取りに行きました。
――やはりそこで切り替えられたことが勝利につながったと思いますか
そうですね。そこで相手のペースにそのまま持っていかれたらあの試合は落としていたかもしれないですね。/p>
――準々決勝はNEXUSとの対戦でした
NEXUSはきょねんまで3人ナショナルチームの方がいたのですが、1人の先輩が辞められて、ナショナルチームの選手が2人しかいない状態で、あともう1人はベテランの方でした。そこで僕たちは点を取って貯金をつくってなんとかナショナルチームの先輩たちと戦おうと思っていました。最後に僕がやった人はW杯でこのあいだ優勝した選手だったので、対等に勝負はできると思っていなかったのですが、そこだけしっかり押さえて耐えればどうにかできるかなという感じでした。
――その手強い相手に対して序盤は良い接戦を繰り広げていたと思いますが
欲を言えばその時点でもっとプラスにしておきたかったです。同じNEXUSというチームであっても選手が1人違えば団体戦もだいぶ内容が変わってくるので、僕らが相手のベテランの方のところでもっと点を取らなければいけなかったかなと思います。
――もっと点を取れたということでしょうか
自分と弘貴はプラスだったのですが、それでももったいない点があったかなと思います。
――終盤にかけてはどんどん点を離されてしまいましたが
7セット目から気持ちを入れ直したのですが、7セット目が真英とベテランの方の対戦で。そこは僕らも大丈夫だろうと過信し過ぎていた部分があったのですが、結果うまくいかなくてずるずるとやられてしまったという感じですね。続く8セット目も5-1とかでやられてしまって、完全に実力不足ですね。
――W杯で優勝されたという見延和靖選手はやはり強かったですか
去年実は全日本の個人で当たっていて、ベスト8懸けで一本勝負の末負けてしまったのですが、それは結構僕の中で印象深い試合でした。W杯で戦うような先輩と一本勝負で良い勝負できたということで今回も何か起こるかなと思ったのですが、そう簡単に勝たせてもらえませんでした。
――最後回りで戦ってみていかがでしたか
世界と戦っている先輩と戦えて、本当に良い経験をさせてもらえたなと思います。
――残る団体戦は早慶戦のみとなりましたがそこへの意気込みをお願いします
今回は自分自身や弘貴もそうですが、かなり修正点が多かったのではないかなと思いますし、真英にももっと技術的なことを教えてあげられたらなと思います。早慶戦は勝つのみなので1週間調整していきたいと思います。
小野弘貴(社4=東京・早稲田)
――初戦の朝日大戦を振り返って
スコア的には競った試合になったのですが本来はもっと点差を付けて勝たなければいけない相手でした。しかし相手のペースに乗せてしまうところがあって競った試合になってしまいました。もっとチームで対策とかを話し合って楽に勝てる展開に持ち込めば良かったと思います。
――朝日大戦は後半に逆転しましたが何かチームで話し合いはありましたか
3番手の小野正英(スポ1=埼玉栄)が調子が悪そうで自分と津江(スポ4=山口・岩国工)が4年だったので正英には同時突きでもいいのでなるべく点差を開かせないで自分たちに回してくれと伝えました。そしたら結果的にプラスで回してくれることもあったのでこっちも楽にいけました。最後危なかったところもあったのですが何とかなりました。
――次の試合はこの大会3連覇中のネクサスが相手でしたが
ネクサスはプロのチームで、最後回りの見延さんはこの前のワールドカップでも優勝して世界ランキングでも8位ぐらいに入っている多分日本史上最強の相手で、伊藤心さんもとても強い選手です。でも、その2人は強いのですが3番手が不在というか1人辞めてしまって、実力的には劣る人が3番手に入っていたので、3番手を相手にしたときにリードを稼いで残りの2人についてはしっかり守っていこうという感じでした。
――やはり見延選手と伊藤さんは強かったですか
そうですね、強かったです。ですが、最初の見延さんと自分とその後の津江と3番手との戦いのときにそれぞれ1、2点もったいない点を与えてしまっていて、それがなければ3番手の正英に楽な展開で回せたと思っています。もう少し楽な展開だったら正英ももっと気持ちを楽にいつもの展開に持っていけたと思うんですけど、少しプレッシャーを感じさせてしまったのかなと感じています。7回り目の3番手と正英の試合でもリードを作れず苦しい展開になってしまったので僕と津江がもっと楽な展開を作ってあげられなかったことが敗因だと思います。
――次に小野選手自身のプレーを振り返ります。安定した戦いを見せていたと思うのですが、ネクサス戦の終盤では点差を広げられてしまいました
相手としては伊藤さんに回って来たときに最後回りの見延さんに4、5点差で回してもまず負けないという感じで逆にこっちとしては2、3点リードを作っても危ないぐらいの相手なので、同時突きで合わせては勝てないと思ったのでリスクを背負って攻めにいきました。でもやっぱりシングルポイントにこだわるのはハイリスク・ハイリターンでその結果力負けしてしまった感じです。
――きょうの1日を振り返って
まず、目標としていたのはネクサス戦でそこまでたどり着けたのは悪くは無かったという感じですが、自分と津江がもう少しでも頑張れればまた違った展開になったかなと思います。正直全く悔いの残らない試合は出来なかったので来週の早慶戦と全日本個人戦はどっちも最後の団体戦と個人戦になると思うので悔いが残らないような試合にしたいです。
尾上千尋(創理4=東京・田園調布雙葉)
――きょうの試合を率直に振り返って
相手は強いのは分かっていたので、その中では試合の展開的にも悪くなかったとは思います。
――NEXUSという相手を聞いて
ナショナルチームのメンバーが揃っていたので、強いことは分かった上で何ができるのかということを事前に考えていました。
――今回の大会の山場がNEXUSということですね
そうですね、団体戦の当たりを見て一発目で来るのが高いということが分かっていたので。
――戦術面でどのように戦うという話をしていましたか
いつも自分たちが戦っている部分で勝負していっても勝てないということは分かっていたので、1年の狩野愛巳(スポ1=宮城・仙台三)がよくナショナルで練習することが多いので話をよく聞きながら作戦を練って徹底するようにしていました。
――前半は点数を取られるシーンが多かったですが
前半は当たり的に相手と相性が合わないところを最初に当てられたらということを考えていたので、最初から点数を取られることは想定内でした。その中でも、そんなに離されずに次につなげたことは良かったのかなと思っています。あとは後半になるにつれて点数が取れたのは相手の試合をよく見て攻める場所などが分かってきたからだと思います。
――ご自身の成績を振り返って
自分としてはどの試合も結局はマイナスで回してしまったのですが、思ったよりも点数が取れました。本来アタックとかで点数を取れることは考えていなくて、後ろでどう戦うかというところだと思っていたのですが、アタックで取れたりしたのはすごく良かったと思います。
――早慶戦に向けて意気込みをお願いします
慶大とはインカレのときも当たっているのですが、相手もさらにパワーアップしていると思うのでまずは絶対に勝つということです。そして自分にとっては最後の団体戦ですし、3年の永瀬夏帆(スポ3=宮城学院)とは3年間ずっと団体を組んできた仲なのでしっかりと自分らしいフェンシングをして勝ちにいきたいと思います。