【連載・第2回】『虎視眈々』甘粕貴大×佐々木勇歩×安部凌×奥村祥大

フェンシング

 甘粕貴大(社5=神奈川・サレジオ学院)、佐々木勇歩(スポ5=静岡・沼津東)、安部凌(スポ4=島根・安来)、奥村祥大(教4=京都教育大付属)の4人は早大男子サーブル陣を引っ張る上級生の方々だ。2部から昇格を果たし、安定した強さは見せてきたものの、あまり良い結果を残せていない。この悔しさをバネに全日本学生選手権(インカレ)での雪辱を誓う。また甘粕、佐々木、奥村にとっては最後の大会となる。大一番を控えたいまの心境を今回は伺った。

※この取材は11月2日に行われたものです。

「創部以来一番強い」(奥村)

普段は主務として仲間を支える奥村

――先週行われた関カレ(関東学生選手権)お疲れ様でした。関カレを振り返って

甘粕 関カレはもっと良い結果を出せれば良かったのですが、今季新しく強い1年生が入ったりして、上も下も底上げできて練習もしっかりとできたのですが、結果には結び付きませんでした。インカレでは結果は出るか分かりませんが悔いの残らないような試合がしたいです。あれ、こんなんで40分持つかな(笑)。

一同 (笑)。

佐々木 自分も結果は出なかったのですが、次のインカレに向けて頑張りたいと思います(笑)。

甘粕 取材になってないじゃん(笑)。

佐々木 考えているんですけど、全然思いつかないんです(笑)。

――それでは続いて安部さんお願いします

安部 先輩方もおっしゃっていたのですが、後輩に強い子たちが入ってきて、いい刺激を受けています。関カレは変に落ち着いちゃったと言いますか、結果にも個人の相手との攻防でも悔いが残る試合で、力を出し切ることができませんでした。インカレでは全部を出し切りたいです。

奥村 僕が入ったころはサーブルは先輩が留学していて、安部と僕と山本隼大(スポ3=香川・三本松)の三人しかいなかったのですが、今は8人もいます。なので部内で競争もできますし、上下ともに切磋琢磨(せっさたくま)できる頑張れる環境になったのが一番良かったと思っています。確かに結果は良くはありませんでしたが、きちんとインカレにつなげていけたらいいなと思っています。

安部 こういうのが言いたかったです(笑)。

――今季一番印象に残っている試合は

甘粕 僕は決まっています。僕はリーグ戦(関東学生リーグ戦)の日大戦です。自分のせいで負けてしまったので。時間が戻せるなら戻したいですね。勝てるかは分かりませんが。

安部 絶対に勝てますよ(笑)。

――どういった意味で印象に残っていますか

甘粕 大事なところで点数を取りたいとずっと思っていたのですが、個人戦ではありますが取れていなくて。今回団体戦ということでよりプレッシャーがある中でプレーをして、大事なところで点数が取れず、悔しい記憶があります。

奥村 僕もその試合が印象に残っていて、7回り目まで茂木雄大(スポ1=神奈川・法大二)がしっかり頑張って取っていたのですが、8、9回りと先輩方が点数を落としてしまって。点数を取って欲しかったなという思いと1年生が頑張っているのに何やっているんだという思いでした。

安部 そのあときちんと話し合いもありました。

――ことしはどのようなかたちで回り順を決めていますか

安部 リーグの反省を生かして決めています。

奥村 普段は本来の自分の実力を一番発揮できる順番で決めています。特に勇歩先輩は最後になってしまうと急に弱くなってしまうので(笑)。

安部 普段のプレーと一番落差が大きいのが勇歩先輩なので。

甘粕 勇歩が一番のびのびとプレーできるのが早回りだと思うので、そういったところを考えながら回り順は決めています。勇歩が力を発揮できれば、チームが一番強くなるので。最後をどっちがやるかを決めて、最後に真ん中を決めます。

――真ん中と最後周りではどういった違いがありますか

甘粕 やはり最後が一番プレッシャーになります。

奥村 じゃあ普段最後周りをやっている安部くんから(笑)。

甘粕 でも安部が最後周りやっている試合はだいたい大差で勝っているか、負けているかだからね。

安部 イギリスに行く前に最後回りを1、2回やったのですが、先輩方が抜けて、一個上の先輩がずっとやられていたのを急に引き継いだので、ふわふわしたまま最後回りをやっていて。その調子のままイギリスに留学に行き、帰ってきたあと再び最後回りをやるようになって、結局まだふわふわしてる感じなので(笑)。まだ実感は湧いていないのですが、実力が拮抗(きっこう)した相手とやりたいです。

甘粕 接戦じゃないとあまり最後は関係ないんですよね。

佐々木 拮抗してないとね、やっぱり。

安部 負けてるときには自分が勝たないとチームが勝てないという気持ちはありました。いまの自分は勝ちたい勝ちたいという気持ちよりも、点を取られてはいけない取られてはいけないという気持ちが強くなっていて、勝利への貪欲さに欠けてしまっていると思います。

 

佐々木 消極的かもね。

甘粕 今の質問で4スクロール目いったかな(笑)。

一同 (笑)。

甘粕 まだまだいけそうですね(笑)。

――プレッシャーの話もありましたが、団体戦と個人戦ではどうような違いがありますか

甘粕 僕個人としては最後周りの9番目以外はそんなには変わらずにできていると思います。いや、日大戦の9番目のとき以外はちゃんとできていました(笑)。

佐々木 あります。別に緊張はしていませんが、焦っている部分があって。

甘粕 それ緊張してるじゃん(笑)。

一同 (笑)。

佐々木 緊張とは違うんです。試合になると、副交感神経が働いていて。

甘粕 結構繊細なんですよ。音楽はできるし、料理もするし(笑)。

安部 関係ないですよ(笑)。

佐々木 力が入り過ぎちゃって、パワーは出るのですが空回りしてしまって。フェンシングはパワーが重要なスポーツではないので、そういった意味で自分はうまくコントロールできていないと思います。きょねんまでそれが多かったのですが、ことしに入って落ち着いてきました。

一同 落ち着きましたって(笑)。

佐々木 いままで副交感神経が働きすぎているなと反省して、深呼吸するようにしたりジャンプしたりして落ち着かせるようにしました。

甘粕 すごい科学的だった(笑)。

安部 副交感神経がどうしたら正常になるか(笑)。

佐々木 その結果として全日本選手権の個人では良い結果に結び付いたので、継続しています。やはり闘争心がないと恐怖で勝てないので、ある程度高ぶらせることも必要です。

安部 そんなに怖いんだ(笑)。

一同 (笑)。

奥村 僕は個人はぶっちゃけどうでも良いと思っていて(笑)。

甘粕 俺たちは大学始めだしね。

奥村 団体は本当に勝ちたいという思いが強く、ワセダのサーブル代表として出ていますし、これまで暗黒時代と言いますか2部をさまよってきたワセダがようやく1部に上がって創部以来一番強いというところまで来ているので。

甘粕 リーグ戦4位っていうのが一番強いっていうのは悲しいけどね。

奥村 なので団体には特別な思いもありますし、絶対に優勝したいですね。

甘粕 個人はやはり限界があるんですよね。自力が違うというのもありますし。

――そういった面がある中でも、団体はカバーできるということですか

甘粕 団体の方が、トップとの差はもちろんありますが、まだひっくり返すことができる差だと思っています。

安部 みんなと戦うというところはやはり違います。僕の中ではイギリスの留学がターニングポイントになっていて、前者は前半は何も考えず、がむしゃらと言いますか思い切ってプレーしていました。イギリスから帰ってきてからは、変に落ち着いちゃったと言いますか、勢いに乗れず団体の雰囲気に乗れていないと感じています。ちょっとビッグウェーブに乗りたいですね(笑)。

佐々木 そうだよね。なんか最近落ち着きすぎちゃっているよね。私生活も(笑)。

一同 私生活(笑)。

安部 私生活からもっと学ぶと言いますか、荒ぶっていきます(笑)。

――関カレ、インカレは大会日程が1週間と長丁場ですがどのように体調管理されていますか

甘粕 僕はイベントや大会中は大丈夫なので、終わったあとに風邪を引くタイプです(笑)。なので大会前の体調を崩さないようにしておけば大丈夫です。

奥村 僕は結構前の日寝れないタイプですね。ドクドクしてきちゃって、気付いたら2時とかだったりします。

安部 それは副交感神経が働いているからですね。

一同 (笑)。

安部 僕も寝れない派です。なので寝ようと心に決めたら、何もしないようにします。一回動いちゃうとスマホを見たりしちゃって、気付いたら3時とかで。「あー、もうなにもしない!」と心に決めて寝るように心掛けています。

甘粕 僕はぐっすり寝れます(笑)。

佐々木 僕もぐっすりです。一瞬で寝れます。

甘粕 体調は?

安部 僕は体調は考えないようにします。体調のことを考えると、自分の体調がもし悪いと気付いちゃうので気にしないようにしています。

――勝利の方程式、ジンクスはありますか

甘粕 自分は朝松屋でキムカル丼を食べます、絶対に。

――やはり食べると違いますか

甘粕 そうですね、すごくやる気が出ます。むしろその時しか松屋に入らないですね(笑)。

佐々木 僕は勝ってないので…(笑)。

甘粕 そしたら自分も勝ってないわ(笑)。

奥村 試合前のルーティーンってことにしましょう!

佐々木 朝、カレー食べます。

安部 えっ!?

甘粕 マジ(笑)!?じゃあ作ってよ。

佐々木 関カレやインカレは試合が長いので、いちいちご飯を食べに行ったり、作ったりするのが面倒なのでパーと作って、毎朝食べています。

奥村 えっ、5日間毎朝食べるんですか(笑)?

佐々木 毎朝食べるよ。

一同 えー(驚き)

安部 やっぱりスパイシーだし、副交感神経が…(笑)。

一同 (笑)。

安部 僕は朝テレビでニュースを見ながらの一杯のコーヒーです。

一同 (笑)。

安部 いやっ、ちなみに本当ですよ!テレビを適当に見ながら、コーヒー飲んで…。「時間がやばい!」ってなって、いつも先輩と待ち合わせているのですが3分くらい遅れてしまいます。

甘粕 大丈夫、電車に乗る時間には間に合っているから。セーフセーフ(笑)。

佐々木 やっぱり落ち着いたよな(笑)。

安部 全部朝に闘争心も吐き出しちゃってるのかな…(笑)。

――イギリスから帰ってきてからそのルーティーンが始まったんですか

甘粕 そうなんですよ、(イギリス帰り)ぶっちゃってるんです。

安部 いやー、それなら紅茶じゃないですか(笑)。

――奥村さんは何かありますか

奥村 僕は缶コーヒーを飲むことです。

安部 それ毎朝じゃないですか(笑)。

奥村 そうなんです、毎朝なんですよ。食事もあまり取らないです。

――ということはルーティーンはないんですね

奥村 特に決まっているのはないですね。

安部 やっぱり、一杯のコーヒーでしょ(笑)。

一同 (笑)。

安部 あっ、ありました他にも。自分、ピストに入るときは絶対に(線を)自分で付けます。

甘粕 背中に付けるやつあるじゃないですか。団体戦とかだと前の選手に付けてもらうんですけど、安部は絶対に自分で付けていますね。

――何か理由があるんですか

甘粕 付けようとすると、「いいです、自分で付けるんで」と言われます。塩対応なんです。

安部 そんな言い方してないですよ(笑)。

――人に付けてもらうのと自分で付けるのに違いがあるんですか

安部 違いはないんですが、練習と同じようにしたいというのはあります。いつも自分で付けているので。なんか変な子と考えちゃいそうなんですよね、付けてもらっているのをただ待っている間に(笑)。

――昨シーズンを終えてから、関カレ、インカレまでどのような練習をされていましたか

奥村 化け物みたいな練習です(笑)。

一同 (笑)。

安部 なんかスクワットをひたすらするんです。

奥村 韓国帰りの茂木が新入部員で入ってきたんですけど。韓国はめちゃくちゃフェンシングが強いんですよ。それで厳しいフィジカルトレーニングを輸入してきたので、そのメニューをひたすら行っていました。

安部 スクワットをひたすら1セット150回やるんですよ。それを永遠にやるんです(笑)。途中から小指と薬指がしびれてくるんです。

佐々木 確かにすごくしびれが来ます。

安部 本当にかいてはいけないタイプの汗が流れてきます(笑)。本当にこのままやっていていいのかなと不安になります。

甘粕 練習が終わって水を飲みに行こうとするんですけど、ひざが曲がらないっていう(笑)。ペンギンみたいになります。

安部 カクカクって感じでしか歩けないです(笑)。

――それは毎日されていたんですか

安部 2日に一回とか3日に一回とかですね。

佐々木 時期にもよるよね。

甘粕 リーグ戦が始まる前の前くらいにやっていました。

安部 今年度が始まってリーグ戦が終わってしばらくしてから、自然消滅しました。やりたくないって(笑)。

佐々木 やりたくないってわけじゃないでしょ(笑)。

甘粕 僕はもっとフェンシングをする時間を増やしたいという思いがあったので。

奥村 結局もっと有意義な時間の使い方があるのではということです。

佐々木 確かにきょねんのリーグ戦ではフットワークが足りていないというのが目立っていて、OBの方々にも言われていました。それがことしは言われなくなりましたね。

甘粕 すごくフットワークは軽くなったと思います。

――それでは実感はあったんですね

甘粕 もちろんありました。やって良かったなと思います。

安部 やったあとは後悔しかありませんが、やっぱりやらないといけないことだとは思うので、やって良かったと思います。

佐々木 そんな安部はやれてないでしょ(笑)。来年もまたやらないとね。

安部 うーん、そうですよね、頑張ります(笑)。

――フェンシングの時間を増やすという話しがありましたが、それはゲーム形式ということですか

甘粕 そうですね。試合形式でやるか、それかサーブルはエペなどと違って始まった瞬間からぶつかり合うのでそこが重要になります。なので、そこだけ抜き出して練習しています。

安部 どちらが攻めるか守るかなど、様々なパターンを決めてやっています。そうしないとゲームと何も変わらなくなってしまうので。

――そういった練習の効果はありましたか

奥村 上位に食らい付くのはもちろんですが、何よりの格下に絶対に負けなくなりました。

安部 間違いない!

奥村 これは監督のお墨付きもあったのですが、その点は大きいと思います。

――合宿も行っているそうですが、普段の練習と違う面は

安部 実に違いますね(笑)。

甘粕 何が違うかっていうのは、まず午前、午後、夜に練習があることが違いますね。午前はみんなでフィジカルトレーニングをして、午後はエペとかだったらフェンシングをするのですが、僕たちは再びスクワットといったフィジカルトレーニングをしていました。

安部 午前は部全体で共通のメニューをやって、午後からは各競技に分かれて練習をしています。僕たちは午後もフィジカルのメニューを作っていたので、自らを追い込んでいました(笑)。

甘粕 午前中でも割と厳しいんですけどね(笑)。

――夜はどういったことをそしたら行なっていたのですか

甘粕 夜はようやくフェンシングですね。フェンシングの形であったり、動きを細かくやっていました。あとは下がりというフットワーク系の練習をしていました。

安部 やってましたね(笑)。とにかくつらい練習で、これもフィジカル系でまた足を鍛えていました。

――練習メニューはどのように決められているんですか

奥村 みんなで考えるんですけど、原案を持ってくるのは経験者の勇歩先輩か韓国から輸入してくる一年の茂木です。

甘粕 やはり自分たちで決めると優しくなってしまうのですが、ありがたいことに…。

奥村 ドSなんですよ、勇歩先輩が(笑)。とてもきつい練習ができます。

甘粕 たぶん勇歩もやりたくはないんですよ。

佐々木 やっぱり韓国人が普通にやっているってことを考えるとね、やらないとだめだなと思っています。

安部 韓国人ができるなら、おれたちができないわけはないですもんね(笑)。

奥村 それはそうなんですけど、いきなり練習がぶち込まれるので(笑)。

甘粕 勇歩が一番涼し気な顔してやってます。

安部 僕たちはもう死にそうな顔してます(笑)。

佐々木 みんなに提案する側だからやれるんだと思う。やらされる側だと絶対きついって言ってるかな。

奥村 いや、絶対にこんなんじゃ足りないって言ってますよ(笑)。

一同 (笑)。

――学生主体で行われているんですね

安部 そうですね。監督はいるのですが、全部の練習を見ることはできませんし、各種目を教えるような人はいないので。なので自分たちですべて行っています。

甘粕 それがワセダの良さと言われています。

佐々木 結構OBの先輩方が来てくださったりしていて。

奥村 土曜日の仕事がお休みの日などは来てくださって練習を見に来てくださいます。

甘粕 ただそれも教えるというよりは、教えを乞いに行くという感じで。自ら行くスタンスです。なので、自主的な練習というところに変わりはないです。

――互いに聞き合ったり、アドバイスしたりということはありますか

奥村 僕は聞いてばっかりですね。

佐々木 誰も教えてくれないので、やはり聞かないと自分のフェンシングが分からないので大切な場です。

サーブルは「見ていて一番面白い」(甘粕)

明るく対談を盛り上げる甘粕

――どうしてフェンシングを始めようと思ったのですが

甘粕 就職活動で聞かれるよ、マジでこれ(笑)。

安部 はい(笑)。

甘粕 僕と奥村は特殊タイプなので、まずはスタンダードタイプからで(笑)。

甘粕 始めたタイミングはみんないつ?

安部 僕は高校からです。

甘粕 勇歩と安部が高校で、自分と奥村が大学か。

佐々木 自分の高校はインターハイ(総体)に毎年出るような強いチームで。せっかく部活をやるなら全国大会とかに出て結果を残したいと思っていたので始めました。

安部 僕は中学校の頃はバレー部だったんですが

甘粕 ちなみにバレーっていうのは踊る方ですか?

安部 打つ方ですよ(笑)。

奥村 誤解を生むのでやめてください(笑)。

安部 はい、バレーボール部だったんですがそのときの先輩がたまたまその高校でフェンシング部に入っていて、その先輩に誘われて始めました。

佐々木 そのまま水泳続けてればね…。水泳もインターハイ行けたのにね。

安部 そうですね…水泳は中学校で辞めちゃいました。

佐々木 スポ科の授業でインターハイ出ていた選手に勝っちゃったんですよ。

甘粕 マジ!?

佐々木 水泳部から聞いたよ。

安部 50メートル息継ぎなしで潜水できます!なんにも役にも立たないですけど(笑)。

奥村 生命力という点では(笑)。

甘粕 それってイギリス行く前…?

安部 そうですね、いまはガッついてないから、できないですね、もう(笑)。

一同 (笑)。

――甘粕選手と奥村選手は始めた理由が特殊タイプというのは

甘粕 僕はフェンシングを大学から始めたのですが、大学から始めた人はそんなにいないみたいです。なんで始めたのかというと、高校まで野球やっていて投手や外野手をやっていたんですが、野球に限らず団体競技って、言わなくても心の中で、負けたときに人に責任を押し付け合いをしてしまうので、そんなチーム競技でやるなら、個人競技をやったほうが自分の成長にもなるかなと思いました。

――そんな中でなぜフェンシングを選んだのですか

甘粕 マイナーで個人競技が良かったんです。フェンシングは北京オリンピックで見ていてすごいかっこよくて、やってみたいなと思ったので、個人競技だしフェンシングにしようと思いました。

――他にどこかに見学するなどはしなかったんですか

甘粕 他の部活に見学は行っていないです。部室に電話して、見学行きますと伝えて、最初隅に座って見学していました。業界人じゃないので、すごい疎外感がありました。結構最初はみんな怖いなって思っていて、ちゃんと話してくれたのは勇歩くらいでした。

佐々木 フェンシングの授業、取っていたよね?

甘粕 (フェンシング部に)入るって決まってから授業取りました。

――それは1年生のときですか

甘粕 そうです。僕が1年の時に大地震があって、5月のゴールデンウィーク明けまで授業がなかったんです。僕はサッカーがやりたかったので、サッカーのサークルに入っていたんですが、サークル生に失礼になるかもしれないんですが、このままサークル入って、バイトして、そのお金を飲み会代に使ってなんかどうしようと思ってしまって。それで部活を始めようと思いました。サークル向きじゃなかったんです。でも(部内で)結構サークル入りたかった人多いですよ。小野ちゃん(弘貴、社4=東京・早稲田)とか。今でもウェイウェイしたいって(笑)。

安部 あいつは結構フェンシング好きだよ。嫌いと言ってる僕かっこいいって(笑)。

――入部する前にフェンシングの試合を見たことはありましたか

甘粕 北京オリンピックの時に太田雄貴選手がよく特集されていて、振り込みとか見てかっこいいと思っていました。いまフルーレやっていないんですけど(笑)。でもサーブルで良かったです。

――奥村さんはいかがですか

奥村 僕は最初教育学部だったので、教職をどうせなら取ろうかなと思っていたので、体育の単位が必要だったんです。どうせやるなら目新しいことやろうかなと思い、パラパラめくっていたらフェンシングを見つけて、時間割も都合が良くて取ろうと決めました。土曜の2限に教職を受けていたら、同じ班にいまの同期の仙葉(
恭輔、スポ4=秋田南)がいました。結構息があったので、この後3限あるから、ご飯食べに行こうぜってなりました。3限何あるのって聞かれて、フェンシング取ってるよって言ったら、俺部員なんだよねって言われました。ほんと奇跡だと思っているんですけど。それから毎週会うので仲良くなって、(フェンシング部に)入れよってずっと言われていて。でもやっぱり初心者で体育会に入ることって、絶対相当な壁があると思って、自分ではできないと思っていました。でも夏休みに実家帰っているときに、なんかこの大学このまま行っていたら何も残らないよなと、虚無感が激しくてなってしまって(笑)。自分何のために生きていて何やっているんだろうと。しかも僕実家が京都で上京もしていて、わざわざ東京に来て何しているんだろうと思っちゃって、どうせなら何か一つ真剣なことやろうと思いました。それで縁もあるなと思ったのでフェンシングを始めました。

――授業でフェンシングの魅力にはまりましたか

奥村 そうです、競技自体はおもしろいなと思っていました。

――それまではサークルをやっていたのですか

奥村 僕はテレビ系に興味があったので、放送研究会に入っていました。

――そもそも早大に入ったきっかけは何ですか

安部 フェンシングが理由です。

佐々木 僕も競技ですね。でも、他にサーブル強い大学に入らなかったのは、自分の中で変なプライドがあって、専大や日大にあんまり行きたくなかったのです。本当だったらフェンシングやりたかったら、サーブルで強いところに行けばいいと考えると思うんですけど…。だけど早大に行ったのは、そういうところはちょっといやだなと。中途半端だなと思うのですが(笑)。でも今思うと早大で良かったなと。

――甘粕さんと奥村さんはフェンシングを始める前ですよね

奥村 僕はテレビ系に興味があったので、それなら東京の早大か、慶應に行こうと思って、それで受験して受かったのが早大だったんです。ありがたい話ですね(笑)。

甘粕 僕は慶應嫌いだったので、早稲田にしました(笑)。お高くとまっているイメージで慶應嫌いだったので(笑)。すごい細かい話になるのですが、早稲田は国語の試験があるんですが、慶應はないんですよ。なので早稲田にしました(笑)。僕らは日本人だから(笑)。慶應は英語の比重がすごく高くて、僕が英語苦手だったというのもありますが、絶対日本人だし国語やった方がいいんじゃないかという持論です(笑)。普通に早大に入りたかったんですけど(笑)。

――甘粕選手、佐々木選手、安部選手は留学をされていますが、どちらにいかれましたか

甘粕 僕と勇歩は一緒に留学してイタリアに行きました。

安部 僕はイギリスです。

――フェンシング留学ですか

甘粕 フェンシングを勉強しに行きました。

安部 僕はどちらかというと語学留学がメインです。

――留学先でも試合に出場しましたか

佐々木 現地のクラブチームに属していました。

安部 週3でロンドンのクラブチームで練習していました。

――どのように留学先を決めたのですか

甘粕 イタリアにしようと決めたのは、自分たちの一つ上の先輩が留学に行っていて、いいなと思いました。

佐々木 あと単純に、先輩が抜けて自分たちが一番上になって、フェンシングを習うことができないから留学しようと思いました。

甘粕 イタリアって意外とフェンシング人口少ないんです。なので、コーチがずっと教えてくれるのでそれがいいなって思いました。

――安部選手はなぜイギリスに

安部 留学の会社の人に、英語圏がいいですって言ったら、イギリスかアメリカどっちがいいって言われたので、どちらかと言えばアメリカがいいですと言ったら、うちイギリス実績あるのでイギリスにしましょうかと(笑)。あれよあれよという間にイギリスに行くことになっていました。

――語学の面でも苦労しませんでしたか

甘粕 最初はしました。

佐々木 ホームステイ先でも少し大変でした。自分の目的がフェンシングにあったので、フェンシングしたいのに、早く帰って来てと言われてしまうこともありました。

安部 英語は一応予備知識あったので、なんとなくコミュニケーションを取れていたので、うまく会話していました。

奥村 帰ってきたらスラングばっかりでしたよ(笑)。

安部 向こうの友達が、ベネズエラとか南米の人が多くて、結構みんな汚い言葉を言うんですよ。ワールドスピードとかあるじゃないですか。英語の音声で英語の字幕を見るとすごい頭に入るんですよ。それで見たい映画を見ていたらスラングいっぱい出てきて、耳に残ってしまい、スパッと言うようになっちゃいました(笑)。英語は半年ぐらいで話せるようになりました。

――甘粕選手と佐々木選手はイタリア語は

甘粕 ぼちぼち忘れましたね(笑)。

佐々木 僕もぼちぼち忘れました(笑)。

奥村 僕、先輩方が留学に行かれて、8月にイタリアに先輩に会いに行ったんですよ。ペラペラでした。現地でお店に行った時も、店員さんとイタリア語で話盛り上がっていて、僕全然分かんなくて、イカ墨パスタただ食べるという(笑)。

――店員さんと何を話していたんですか

甘粕 店員さんと、なんでイタリア来たの?と聞かれてフェンシングでとか、あとイタリア語うまいねって。ベネチアに行った時なのですが、ベネチアの大学生よりあなた喋れるし、おもしろいわって言われました。

安部 僕も2月に行ったんですけど、タクシーに乗ったんですよ。そしたらタクシーの運転手さんと駅から家までずっと話していました。

――留学を経ていま活かされていることはありますか

甘粕 自分はフェンシングよりもコミュニケーション能力です。初対面の人とも物怖じせずに話して、盛り上がれるようになりました。コミュ力上がりましたね。勇歩帰ってきたとき、明るかったよね。

奥村 (佐々木選手が日本に)夏に帰ってきたとき、別人のようでした(笑)。しかも真っ黒でイタリア人みたいで(笑)。

佐々木 でも日本にいるときすぐ戻っちゃいますね。こんな平和な国はないって思いました(笑)。

安部 すぐご飯食べに行けるし、コンビニも近くにあるしコーラの種類も豊富で、便利すぎて(笑)。

――フェンシングの面でも成長はありましたか

甘粕 それはもちろん。

安部 フェンシングについては、僕はないですね。劣化して帰ってきました(笑)。体重が10キロぐらい増えました。あの国ではケンタッキーフライドチキンとマクドナルドが一番おいしいです。フィッシュアンドチップスはおいしくなかったです(笑)。

――サーブルを始めたきっかけは何ですか

甘粕 サーブルが一番人が少なかったからです。あと他の2つの種目って先端で突かなきゃいけないじゃないですか。それって大学からはじめても難しいと思いました。

奥村 僕もそういう理由でした。先輩にポイント感覚というのは養うのに時間がかかるから、大学で頑張っていこうと思うならサーブルがいいんじゃないかって言われて、当時は何も分からなかったのでそうしますと言いました。

――大学から始める人はサーブルが多いですか

甘粕 普通はやはりエペらしいです。フレーズがないじゃないですか。

安部 そう考えたらフレーズが一番難しいですよね。

甘粕 なんでサーブルやっているんだろうね(笑)。

佐々木 自分もサーブルが一番可能性があるなと思いました。高校のときはほぼフルーレやっていて、ただインターハイで結果が出たのがサーブルだったので。(早大に)入るとサーブルがいないと聞いて、サーブルにしました。

安部 僕はインターハイ優勝したっていうのもあって、フルーレも少しやりたかったんですけど、先輩にフルーレは人が足りているからいらないと言われて分かりましたって言いました。当時先輩がすごい怖くて逆らえなくて(笑)。でも結果として良かったです。性格的に向いていると思います。

甘粕 フルーレ陣とエペ陣はねちねちしているんですよ。エペは特にフレーズがないので、嫌なことしようと性格もなってしまうんです。サーブル陣は、前に行くしかないから、さっぱりしています。

奥村 ラテン系が多いですね。点取ったらどんどん盛り上がって、嫌なことは終わったら忘れて。気性は一番荒いかもしれないですね。

――みなさんが考えるサーブルの一番の魅力とは何ですか

安部 かっこいい。

甘粕 見ていて一番面白い。

奥村 攻めていてバーンっていったら勝ちなので、そのダイナミックさです。

目標は『優勝』

終始笑いが絶えない四人

――インカレにはどのような印象を持っていますか

甘粕 インカレだからっていうのはないです、ふつうの試合の一つだと思います。

――インカレではご自身のどんなところを強みにしていきたいですか

安部 身長と距離感です。

佐々木 もっと頭使っていきたいですね。

甘粕 最後の試合なので何も考えずに、思い切りやろうかなと思います。

奥村 勢いですね。地力の差をこの一週間でどうにかするのはたぶん無理なので、自分の出せる全力を出して、流れを引き寄せたいです。あとは応援ですけど団体にすべてをかけたいです。それが重要だと思います。

――最後の大会になる方もいますが、気持ちは変わりますか

甘粕 いまのところは変わっていないですけど、楽しもうと思います。終わった後に悲しくなるんじゃないですか。

佐々木 最後いつもそれなりの結果を残せてきたので、結果を残せる自信はあります。

奥村 やっぱり団体優勝じゃないですか。法政をつぶすという。

――安部選手は先輩を支えるひとりの後輩として挑みますが、いかがですか

安部 支えるとか助けるとかじゃなくて一緒に戦うというかんじです。後ろからついていくというより、横に並んでやるしかないと思います。

――最後にインカレの目標をお願いします

佐々木 優勝です。

甘粕 優勝です。

安部 優勝です。

奥村 優勝です。

甘粕 目標は高くないと。

安部 結果は後からついてくると信じています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 三上雄大、加藤佑紀乃)

あのビートルズのポーズで一枚!

◆甘粕貴大(あまかすたかひろ)(※写真左二番目)

1992年(平4)7月14日生まれ。身長170センチ、体重65キロ。神奈川・サレジオ学院高出身。社会科学部5年。甘粕さんの一言で、今回の対談は急遽二人から四人になりました。本対談では様々なエピソードを披露し対談を盛り上げてくださった甘粕選手。最近はまっているものは100パーセントのリンゴジュースというかわいらしい一面も見せてくれました。

◆佐々木勇歩(ささき・ゆうほ)(※写真左)

1991年(平3)5月28日生まれ。身長171センチ、体重64キロ。静岡・沼津東高出身。スポーツ科学部5年。佐々木選手は料理が好きとのこと。長い日程の試合前にはカレーをたくさん作り置きして、それを毎朝食べるそうです。インカレでも、カレーの力で存分に力を発揮してください!

◆安部凌(あべ・りょう)(※写真右二番目)

1994年(平6)3月22日生まれ。身長181センチ、体重72キロ。島根・安来高出身。スポーツ科学部4年。イギリスから帰ってきて、変に落ち着いてしまったという安部選手。理由を聞いてみると、イギリス留学中にドイツ人の彼女との出会いと別れを経て、元気を持っていかれたからと答えていました。

◆奥村祥大(おくむら・よしひろ)(※写真右)

1994年(平6)2月9日生まれ。身長172センチ、体重57キロ。京都教育大学付属高出身。教育学部4年。常に笑顔を絶やさない奥村選手。好きな女優はと聞くと、榮倉奈々さんだそうです。笑顔がかわいいからと少し照れていました。でも実は、綾瀬はるかも気になっているのだそうです。