関東、関西それぞれのし烈なリーグを勝ち抜いた2校ずつ、計4チームがトーナメント方式で対戦する全日本学生王座決定戦(王座)。決戦の地は豊臣軍と明智軍が激突した山崎の戦いで有名な京都府・大山崎町。関東学生リーグ戦(リーグ戦)を全勝で迎えたワセダ女子エペが日本一を目指しまさに「天王山の戦い」に挑んだ。その結果、1996年以来となる学生日本一の座を射止めた。
『優勝』の2文字を目指し練習してきた強豪校同士の気迫で体育館は熱気を帯びていた。その空気の中関東チャンピオンとして満を持し迎えた初戦の相手は同大会で敗れた朝日大。リベンジを果たすには願ってもいないチャンスに舞台は整った。1回り目でリードしペースをつかんだワセダは着実に得点を重ね28対24で最後回りに。才藤歩夢(スポ1=埼玉栄)と伊藤由佳(スポ3=栃木・宇都宮中央女)がリードを広げ、絶対的エース山根司(スポ4=香川・三本松)が登場。しかし、3連続ポイントを奪われわずか3点差に縮められてしまう。昨年の苦い思い出がよみがえった山根司だがベンチを振り向くとチームメイトの笑顔が。落ち着きを取り戻したエースは45-41で見事勝利し、雪辱を果たした。
日大戦で得点し喜ぶ山根司
優勝のかかった大一番。学生日本一の座を懸けて戦う相手は個の力が強い日大。1人目の山根司がピストに立ち決戦の火ぶたが切って落とされた。序盤からいい動きを見せたワセダは着実に加点。得意の展開に持ち込み、試合は21-16で最終回りに。差を広げおきたいワセダだったが最後回りに来た時点で27-25と2点差まで迫られる。しかし、ここは昨年の悔しさを1番感じている山根司。6連続で得点を奪い点差を広げる。そして歓喜の瞬間は訪れた。接戦を戦い抜いた山根司、伊藤、才藤の顔には充実感に満ちた表情が浮かんでいた。
優勝を決め歓喜する女子エペ陣
これで女子エペ陣はリーグ戦、王座と無敗で2冠を達成。序盤に点を取り逃げ切るという勝ちパターンで絶対的な強さを見せつけた。関東学生選手権、全日本学生選手権、全日本選手権も制し5冠を達成するのも夢ではない。この「絶高の世代」から目が離せない。
(記事 山田周史、写真 松本理沙)
結果
女子エペ 早大 優勝
1試合目:○45-41朝日大
決勝戦:○37-30日大
コメント
山根司(スポ4=香川・三本松)
――日本一になりました。いまのお気持ちは
まだ信じられないのですが、少しずつ実感が湧いてきてすごくうれしいなと思います。
――優勝が決まった直後、涙を浮かべていましたが
優勝決まったときもすごくうれしかったのですが、それよりも伊藤(由佳、スポ3=栃木・宇都宮中央女)が試合終わった後、「ワセダに入って本当に良かったです」と言ってくれたのに自分は泣きそうになりました。それが本当にうれしかったなと思いました。
――昨年2位と悔しい思いをした全日本学生王座決定戦(王座)でしたが、この大会に懸ける思いは強かったのですか
そうですね。日本一ということに懸ける思いが強かったです。昨年は私が試合を壊してしまったのですが、今回は活躍することはできなかったにせよ、壊すことはなかったのかなと思うのできょねんの反省を少しは生かして良い結果につなげることができたと感じています。勝ちたいという思いはあったのですが、そこであえて優勝というのを見ないようにはしていました。
――昨年とは正反対の気持ちで大会を終えることができたと思いますが
そうですね。昨年は結構勝ちを見てしまったところがあって、勝ちたい気持ちが空回りしてしまいました。今回は伊藤に勝ちを見ないということを何回も試合の前に釘を刺されていたので、気を付けることができました。
――1試合目は昨年敗れた朝日大との戦いでしたが、どのようなことを意識して挑みましたか
個人としての対策を立てるのはもちろんなのですが、最初でしっかりとリードをつくってそれを守っていくというのを徹底できるように声掛けなどもしました。
――試合自体はリードして進めることができていたと感じますが
そうですね。後輩の二人が点を取ってくれました。私は足を引っ張ってしまっていたのですが、点を取ってくれて優勝させてもらって良かったです。
――朝日大の最後回りの場面では最初に3失点してしまい、昨年の苦い思い出がよみがえったように感じましたが
そうですね。あの場面はとても怖かったですし、どうしようと思っていました。私はすごく焦っていたのですが、後ろを振り返ったときにみんなが笑っていて「大丈夫ですよ」という感じだったので落ち着くことができました。伊藤に「5本勝負」と言われたのが、すごく胸に刺さって普通にいつも通り5本勝負すればいいんだなと思ってそこからは吹っ切れた気がします。
――決勝は関東学生リーグ戦(リーグ戦)でも戦った日大との勝負でしたが、対戦してみて印象は
日大は個人の力がすごく強いなと感じました。
――ワセダ優位に試合が進むも、最後の回りで少し危ない流れになったように感じましたが
確かに失点が重なったので良くはなかったですね。でも最後の試合は自分の中でその前の試合とは全然違う試合だと思ってやっているので、自然に試合に入れたかなと思います。
――女子エペの王座での優勝は19年ぶりだそうです
それはすごくうれしいです。でも、それとともに私がすごくうれしかったのが、リーグ戦でワセダの女子エペとして2連覇したのが史上初だったということです。歴史を塗り替える結果に私もチームの一員として戦えたのはすごくうれしいなとは思います。
――今回で2冠を達成しましたが、これからの意気込みは
もちろん関カレ(関東学生選手権)、インカレ(全日本学生選手権)、全日本(全日本選手権)も合わせて5冠を狙っていこうとは思っているのですが、やっぱり勝ちを見過ぎると負けてしまうと思うので、まずは自分のできることをしっかりしようと思います。今回、後輩におんぶに抱っこだったので、しっかりと練習をして秋は「見てろよ」という感じです(笑)。
伊藤由佳(スポ3=栃木・宇都宮中央女)
――優勝おめでとうございます。今の率直な気持ちを教えてください。
ありがとうございます。うれしいですけど実感はないです。早稲田に入って良かったなと。
――1996年以来2度目の女子エペ優勝ですが
1996年と言ったら私はまだ2歳です(笑)すごいことだと思います。あまり実感はないですが最後かって追われて良かったです。
――初戦の相手は去年のこの大会で敗れた朝日大とのしあいでしたが。
王座まで来たらどこと当たってもギリギリの勝負になると思っていたので1本1本を大事に取りに行くことをチーム内で共有して、トーナメントと考えるよりは総当たりぐらいの気持ちで1戦1戦を大事にして臨みました。
――緊迫した場面での最後回りを振り返って
初戦の朝日大戦では自分のプレーをすればそこまで点が動くことはないかなといった気持ちで臨みました。日大戦では緊迫した状況で個人的に苦手にしていた相手なので嫌だなという感じはありましたが絶対司先輩にはリードした状態で回そうと臨みました。
――今大会の勝因は
最初の回りで歩夢がパパパッと点を取ってくれてその後プラス1やマイナス1で行けたのが良かったです。出だしのリードを上手く守れたのが最後の気持ちの余裕に繋がっていったと思います。
――今後の目標
先輩に助けられてばかりなので次の試合では安定感のある無駄のない試合展開、一本を与えない試合展開をしていきたいです。
才藤歩夢(スポ1=埼玉栄)
――優勝おめでとうございます。
ありがとうございます。
――女子エペの王座制覇は1996年以来2度目の快挙です。
素直に嬉しいです。1つ1つ無駄がないように戦うことを心がけました。
――関東学生リーグ戦が終ってから王座に向けてどのような練習が出来ましたか
いつも通りの練習に加えて自信を持って一本を取れるように意識して練習しました。
――相手との点差を広げる活躍が多くみられました。練習の成果は出ましたか
1試合目は結構いいプレーが出来たと思います。ただ、2試合目は簡単には戦えなかったと思います。
――この大会での収穫はありますか
自分でどんどんいってしまおうという部分があったので、それを団体戦の時は後の人のことを考えて無駄な点数を取られないようにするのが肝心だと思いました。個人戦だと点数を取られても立て直しがきくのですが団体戦だとチームの足を引っ張ってしまうので。
――今後の具体的な目標は
大学の試合もありますがジュニアの試合も頑張りたいです。関カレ、インカレも上位進出を目指したいです。