【連載・第4回】『Challenger』西森健太×小野弘貴×津江碧

フェンシング

 昨年は学生大会において準優勝が3つ、3位が1つと優勝にあと一歩届かなかった男子エペ。シーズン序盤は新たなメンバー編成に戸惑い苦戦するも、秋には安定した戦いを見せられるようになった。全日本学生選手権(インカレ)こそは頂点へ。団体メンバーである西森健太(教4=香川・三本松)、小野弘貴(社3=東京・早稲田)、津江碧(スポ3=山口・岩国工)、三人に今シーズンについてのお話を聞いた。

※この取材は11月3、4日に行われたものです。

模索した春

今季から主軸として大きな役割を果たしている小野

――先日、関東学生選手権(関カレ)が終わったので、それまでのシーズンを振り返っていただきます。まず、ことし新体制になってどのようなチームにしようと考えていたのか、お話を聞かせてください

小野 とりあえず、僕が一番プレッシャーを感じました。

――それはどのようなプレッシャーですか

小野 鬼澤先輩(大真、平26社卒=茨城・常磐大高)の後に自分が入ったわけじゃないですか。やはり嫌だなと(笑)。鬼澤先輩はきょねんの関カレの日大戦では山田優(日大)以外、(自分のセットの得失点差が)0点以上で帰ってきているので、その人の代わりに自分が入ると思うと嫌だなと思いました、実は。

――他の方はいかがですか

西森 たぶん津江と僕は特に変わってないですかね。

津江 変わってないですもんね。メンバーとしては…。まあ、変わってはいるんですけど。

西森 こうなるのは分かっていた上で、しかも大真先輩もずっとエペをやっていたわけではなく、練習もずっとこの三人だったので。そういう意味では、楽しみ半分、いざやってみたらどうかなというのがあったと思います。

――ただ、この三人になった場合、昨年とは戦い方が変わることは確実でしたよね

西森 実際変わりましたしね。(関東学生)リーグ戦と関カレは回り方が全然違いますし。僕が中回りだったりして。

――では、シーズン初戦であるリーグ戦の回り順を決めた理由は

西森 小野ちゃんが最初の方がやりやすいかなと思ったんですよ。伸び伸び点を取ったりできるし、本人がそういう感じを醸し出していたのもあります。いきなり中回りに持ってくると、大真先輩のポジションを意識していたって言っていましたけど、やはりそこばっかり意識しても小野ちゃんは小野ちゃんなので。

小野 そうですね。自分はそれにたどり着くまで半年くらいかかりました。

西森 結構すぐたどり着いたね(笑)。

一同 (笑)。

――では、リーグ戦はどのような意気込みで臨んだのでしょうか

西森 たぶん僕が一番プレッシャーだったんですよ(笑)。正直言って…。僕は初めてリーグ戦の前に嘔吐(おうと)しました。

小野 マジですか。聞いてないです(笑)。

西森 緊張し過ぎて…。最初の専大戦の前にトイレに行って…。本当に緊張して。これは4年生は仕方ないのかなと思います。

――きょねんの関カレや全日本学生王座決定戦の決勝前より緊張しましたか

西森 いままでの試合で一番緊張しました。あのリーグ戦の最初の専大戦。この入りを取るか落とすかでは、リーグ戦の士気が変わると思いました。それは自分の調子もチームの雰囲気も含めて全部です。最初の一試合をどうにか取ればあとはついてくるんじゃないかと思ったんですけど。

津江 負けちゃいましたね。

西森 やはりうまくいきませんでした。まだそれぞれがついたポジションに慣れていなかったのもあると思います。碧もたぶん最後回りだいぶ取らなきゃいけないという気持ちが強かった。僕と小野ちゃんはたぶん新しいポジションで。

小野 あれは自分が最初(中回り)ですよね。

西森 練習の時から惜しいところまで行くけど、何かしっくりこない感じがあって…。その時は模索中だったんだと思います。

小野 でも、専大もびっくりしてましたよ。自分が中回りで入ってきて。「中回りかよ」って言ってました。

西森 他のチームも僕と小野ちゃんどっちをどうするかっていうところもあったと思います。

小野 個人的に苦手です、専大。

西森 確かに苦手なところと当たったっていうのもあるね。

津江 苦手意識がちょっとありますね。

小野 剣が合わないです。

西森 リーグ戦は、僕の中では最初の一戦を取れば2位までは上り詰められる力がこのチームは絶対あると思っていたんですけど、そこは出ばなをくじかれてしまったというか。僕も全然調子が上がらず。

津江 みんな、全然エンジンがかかってなかったよね。

小野 明大もやばかったよね。俺が本当に使えなさすぎてどうしようかなと思った。

西森 小野ちゃん1日目きつかったね。2日目は良かったのにね。

小野 1日目きつかったですね。2日目はまあまあ、良くもないですけど、普通でした。

――2日目は日体大、法大、日大でした

津江 法大で僕が最後吉沢(有紀)に持っていかれたんですよ。

西森 1点プラスで回ってきて。

津江 はい。最後逆転されたんですよ。

西森 あの勝負も要するに勝たなきゃいけないという気持ちがあったと思うんですよ。

小野 7セット目で自分と西森先輩がマイナス1点、マイナス1点で帰ってきて、たぶん3点差があったのに、最終的に1点差まで詰められてしまって。

西森 そうそうそう。だって、1本目迷ったよね?出るか、下がるか。

津江 ちゅうちょしましたね。

小野 3点差があったらね、また違いましたよね。

西森 確実にこの関カレがリーグ戦と違ったのは、入りの安定感です。それは三人ともうまくできたところが多いと思います。負けた日大戦にしても最初は良かったですし、法大なんかもこんな入りでいいのかなというくらい良くて。

津江 だから僕がやっぱりやらかしちゃうんですよね(笑)。

西森 (笑)。でもそれがあっても、ちゃんとそこからまだ離せる力が付いたのは、みんながレベルアップしたところだと思います。

津江 成長しました!

――では、リーグ戦で見つかった課題などはありましたか

小野 僕は大真先輩にはなれないんだなということに気づきました。「頑張ってもなれないな、あれは」って気づきました。大真先輩にはなれないから、自分は自分で小野弘貴の路線で行くしかないんだなと思いました。

――リーグ戦の時はどのように考えていたんですか

小野 リーグ戦の時はきょねんまでのイメージで自分が全然点を取りに行かなくても、西森先輩と津江が頑張ってくれるかなというか、頑張ってくれるかなではないんですけど(笑)。自分は点を取りに行く必要はないのかなと考えていたんですけど、やはり他大からしたら自分のところで取りにきたいだろうと思って。だから、自分は自分なりに頑張るしかないなと気付かされました。痛感しました。

津江 自分はずっと最後回りをやっていたんですけど、回り順は変わらなくても学年は変わるわけじゃないですか。きょねんまでと違って他の大学も下の代の子たちが入ってきて相手も変わってくるから、リーグ戦では戸惑いがありました。

西森 リーグ戦は、4年生だからっていうのは変ですけど、一番上だったのでそれを意識してしまいました。自分が引っ張るキャラでもないので、力まなくてもいいんですけど、たぶん練習の時から二人に負けないように、というか。二人が強いのはわかっているので、フェンシングでも引っ張っていけるようにというのを意識してしまった部分があります。それが試合でも結構出てしまったんだと思うんですよ。リーグ戦では嘔吐した話もしましたけど、それくらい自分の重荷になっていたというか、自分で自分の首を締めていたんだなと思いました。それが僕が個人的に一番リーグ戦で反省すべきところです。要は、一年前は強い後輩(津江)が居て、強い先輩(鬼澤氏)が居て、自分のところで取りにきてくれる相手を叩けると優勝の勝負ができるというチームだったので、その戦い方で自分はいいんだなと思っていたんです。自分はたぶん下がる方がうまく戦えるイメージがあるんですよ。たぶんリーグ戦の最初の専大戦も下がらずにピストの真ん中の方で中途半端な動きをしてやられているポイントが多くて、これはたぶん良くないなと思いました。関カレに関しては下がる時はしっかり下がって、それで取られたらしかたがないなと思って、下がって下がってしっかり時間を使って、取られ過ぎず、ちゃんとリードできる時はリードして、次の試合につないでというイメージでやろうとは思っていました。

「守りになったら必ず勝てる」(西森)

チームのことを誰よりも考えている西森

――リーグ戦を終えてから関カレまで時間が空きました。その長い時間を使ってどんなことに取り組みましたか

小野 筋トレをしました、実は。

――それは何のために

小野 毎年夏はみんな地元に帰ってしまって、こっちに残っている人があまりいなくて、毎年長期の休みは同期の山口理伎くん(創理3=東京・早大学院)とトレセン(トレーニングセンター)行ったりして時間をつぶしています(笑)。時間を潰しているというか、フェンシングの技術よりももっと根本的に…。きょねんの関カレとかも個人戦の3決(3位決定戦)とかで熱中症みたいになってしまって、全然動けなくて悔しかったので、やはり根本的に体力とかが足りていないのかなと思って、筋トレをしようと思いました。根本的なところをね。

津江 僕は小野くんと違って本当に筋トレが大っ嫌いで。

小野 俺も嫌いだよ(笑)。俺が筋トレ好きみたいに言わないでよ(笑)。

津江 でもまだ実行するじゃないですか。僕は本当に筋トレしないんですよ。だから、何をしたかって言われると、これをしたっていうことがあまり思い浮かばない(笑)。

小野 何かあるでしょ(笑)。

津江 何してたっけ(笑)。本当に思い浮かばない(笑)。

西森 僕は、彼は関カレまでは自分のキャプテンという役割を全うするだけでいっぱいいっぱいだったと思います。

津江 うちの部は9月に代交替するんですよ。9月から3年生が主体となってチームを引っ張っていくという。僕はキャプテンという役割をやらせてもらっているんですけど、チームを引っ張っていくというのとかは苦手な方で…。

西森 大変だと思うんですよ、この学年はいろんな意味で。4年生もあまり口出ししなくていいなというか、口出ししたところで、なんですよね。学年は学年なので。彼だけが思いつめる瞬間とかあったと思うんですよ。でもそれは男女のキャプテンで相談し合ったりもしていたと思うんですけど。それが結構きつかったと思います。

津江 ありがとうございます。その通りです(笑)。

西森 本当にきつかったと思います。いまもきついと思います(笑)。

――では、西森選手は

西森 僕はもう最後のシーズンなので、緊張するだろうなと(笑)。この一年は緊張してしかたないと思い込んで、練習とかも楽しくやろうと思っていて。香川に帰ったあとも、ワセダのOBで前田さん(雄亮、平21政経卒=香川・高松)って方がいて、その人とかとよく一緒に練習して飲みに行って練習行ってごはん食べに行くみたいなことを毎回繰り返して、いろんなことを話して、聞いてもらったりして…。どちらかと言うと、フェンシングで何かしたというよりかは、フェンシングしながらフェンシングのおもしろさにもう一回たどり着けるように、自分の中で毎回練習とかもかみ砕いて消化するというのは意識しています。それはいまの練習の時もその気持ちは大事にしていますね。

小野 ご飯いいですよ、ご飯。

――大会期間やその前後以外でチームのことについて話し合ったりはしないんですか

小野 やはり自分たちは剣で語り合うので。

一同 (笑)。

小野 口より剣かなっていう。

西森 でも、きょう二人の話を聞いた感じだと、そういうこと思ってただろうなというのはある程度お互いに予測はついていると思います。

小野 はい。自分は剣に乗せて言ってましたもん。

津江 (笑)。

西森 例えば?

小野 「自分は大真先輩みたいにはなれないんだ!」って足突きに行って。西森先輩も「わかってるよ!」って返ってきました。

一同 (笑)。

西森 碧はどうなの?逆に。たぶん小野ちゃんとはね、そういうの結構あると思うんですけど。

小野 ほら。やっぱり剣で語り合ってるんだよ。

西森 いや、わかるんだよ、たぶん(笑)。わかるよね?だいたい。見てたらわかるんですよ。

津江 僕が下手くそなんですよ、そういうのが。

西森 碧は結構抜けてるところがあるんですよね。たまにわかんない時があるんです。あれ?いまどう考えてるのかなって。

津江 何も考えてないですよ、それ。ボーっとしちゃうんです。

西森 小野ちゃんはいつも「先輩あれは何も考えてないですよ」って言うんですけど(笑)。僕はたぶん「いや、いろいろ考えてるんだよ」って(笑)。

一同 (笑)。

西森 小野ちゃんと二人で碧のこと考えたことは何回もある(笑)。いままでも、おそらくこれからも(笑)。

小野 でも、フェンシングについてだけは、津江くんは本能的にわかってるんです。

西森 いや、本当にそうです。

小野 本能的というか、もう染み付いてるんだよね。高校のときに練習し過ぎたんでしょ。

津江 でも、本当に高校のときに練習しかしてなかったです。それは自信持って言えるんですけど。

小野 考える必要がなくなるくらい練習したんだよ、たぶん。

津江 それで抜けちゃいましたね。

――関カレにおいてリーグ戦とは変えていこうと考えていたことは何かありますか

小野 リーグ戦のときは自分と西森先輩のどっちが早回りでどっちが中回りかっていうのをチームとして迷っていたんですけど、関カレの団体戦からは自分が中回りをやっていました。そうなるとだいたい自分か津江が1試合目に出ることになるんですけど、エペだと1試合目が大事で、1試合目でリードできたらその後が楽だし、リードできなかったら少しきついし…。少しですけど(笑)。だから、自分が1試合目のときはあまり点差を広げられないようにということを意識しました。明大の坂野(守洸)とか4−5のマイナス1点で回したと思うんですけど、あそこで自分が勝負に出るよりも明大だと坂野がおそらく一番強いので、坂野では安全に4−5でもいいから回してあとの2人で勝負すれば安全に勝てるかなと思ってやりました。向こうも前日の個人戦の延長のようなかたちで1点を守りにきていたので、戦い方的にはあのような感じでいいのかなと思いました。最初の試合じゃない時は、ベンチで点を詰めてほしいときは点を取りに行くし、別に行かなくていいとかだったら行かないし、いろいろな戦い方ができるようにいろいろなことを練習しました。

津江 関カレは勝ち上がれば当たる大学がリーグ戦とだいたい一緒じゃないですか。最初東大に勝った後、すぐ明大だったんですけど、明大戦は坂野で取りに行くというよりも、リーグ戦や練習で試合をやったときの印象で、誰が相性がいいとか俺ここ行けるよとか試合前に話したりして、自分がここでリスクを負って戦ってみるとかの話をしましたよね?そういう感じで作戦はちゃんと練りながら勝負はできたんじゃないかと思います。その後の日大戦は誰がどういっても正直全試合どこで取れるか僕らもわからないし、逆に向こうも誰でも取れる選手がそろっているので、そこは作戦よりもまずリードが大事だという話をしました。団体戦って回り方に上と下があって、僕らは下を取りたかったんですよ。下だと最初に僕らは小野が出るんですけど。

小野 自分と北村先輩(直之、日大)が当たるんですよ。

津江 小野は北村先輩とその前日に個人戦の3決でちゃんと勝っているし、その最初の展開もいい感じで持って行けていたので、もしかしたら一発目合わせるときに良い展開で回せるんじゃないかということを僕らは西森先輩と話していて。それだったら下でもいいんじゃないかなって話をしていたんですけど、じゃんけん負けちゃったんです(笑)。相手も下が良かったんだよね?

西森 たぶん。向こうも勝って下を選んだから。相手も同じように考えてたんじゃないかな。

津江 それを避けたかったんでしょうね。

小野 じゃあ敗因はじゃんけんだね。

一同 (笑)。

西森 試合の前!

津江 なんだそこかー。もっと簡単なことだったね(笑)。まぁ、それで結局上になってしまって、かといって、そこでマイナスポイントを勝手に意識してしまっている時点で僕らが良くなかったのかなとは思います。

西森 でも、思いの外最初良かったよね。

津江 僕は前日に個人戦で優勝した山田(優、日大)に準々決勝でボッコボコにされたので、1試合目に当たるときにその意識が大きかったのもあります。けど、思った以上に剣が合って。

小野 別に内容は悪くなかったよね。この話はまたあとでもするか(笑)。

――そうですね。日大戦はまたあとで振り返りましょう

西森 リーグ戦も関カレもそうですけど、結局この三人しかいないので、これしかないんですよね。正直言って回りを早いうちに決めたかったのはあるんですけど、どうしてもリーグ戦までは難しくて、僕と小野もお互いどっちがいいのか模索中で中途半端になっちゃったんですね。でも、僕も夏始まる少し前くらいから、自分は早回りの方が良いんじゃないかなと思って、どんどん小野が力付けてきていたので、最初トップで小野か津江が出るパターンの方がこのチームはしっくりくるし、守りになったらこのチームは必ず勝てるというか。最終回りで小野が身長も高くてアグレッシブで、相手からすれば攻めづらいじゃないですか。最後は大将(津江)がいるので(笑)。守れば絶対強いと思ったんですよ。それで、それをしっかりつなぐのは早回りの人だなと。それがうまくできている試合はきょねんも勝っている。僕個人としては、関カレ前や夏の練習では下がりを練習しました。下がりながらしっかり動いて、剣を出して出して出して何秒も何秒も使うけど、結局最後に絶対シングルでポイントを取るとか。耐えて耐えてしっかり一本を取るという練習をやりました。関カレに入る前にみんなの意識にあったのは、順番の固定と前半戦の入り方。僕は、前半戦の入り方に関しては、関カレはかなり良かったと思います。皆集中できていたし、油断せずにシングルで攻撃に入っていたし、そこは良かったことかなと思います。リーグ戦は一回り目はボロボロでした、たぶん。

津江 最初で崩されてますね、僕ら。

――今回、関カレですでにリーグ戦で戦った相手が、明大、法大、日大なんですが、法大にはリーグ戦では負けていて、関カレでは勝つことができました。その勝因は何だったのでしょう

津江 相手のメンバーが変わったっていうのもあるんですけど。リーグ戦のときは、中村(豪、法大)という1年生が出ていなかったんですよ。4年生の加藤先輩(祥、法大)が出ていたんです。

西森 あとから聞いた話なんですけど、その加藤っていうのが、僕にきょねんリーグ戦で負けたからリベンジしたいって言ってリーグ戦に出たらしいんですよ(笑)。

――それでリベンジされてしまったわけですか

西森 そうなんですよ(笑)。1点リベンジされてしまって、それでもう出ないとか言っているのですごく悔しいんですけど(笑)。リーグ戦はそれで出たらしくて、秋はエペの正規メンバーだけで組んでいるらしいです。加藤はフルーレもやるので。

小野 器用ですよね、あの人。どっちもできるし。でも、相手のせいじゃないよ、勝ったのは。こっちが成長したからだよ。

津江 まあね(笑)。

西森 日大と先にやっていたので、正直やっていてあまり強いと感じなかった(笑)。

津江 強いですけどね。

西森 藤倉(陸、法大)とか吉沢とかもちろんすごくうまい選手なんですけど、団体戦でやっているときに、山田とか北村とかと違って、少し油断したら手を突かれる、少し油断したらアタックがバッコーンってくるわけではないので。

津江 防げますもんね。まだ法大の攻撃は防げる範囲内なので。

西森 剣が合うタイプだなとはリーグ戦のときから思っていました。

――おそらくリーグ戦も関カレもリードして入って、リーグ戦はひっくり返されて、関カレでは中盤に点差を詰められて危うい場面があったんですよね。今回関カレではそういう場面で持ちこたえられた要因というのはなんだったのでしょうか

西森 点差がだいぶあったと思うんですよね、10点くらい(笑)。明大のときも法大のときも。僕は点差を詰められそうになった時は、マックスまで攻めていかないことを意識しました。次に任せようと思って。もうこの試合は無理だと思って、下がってじっとしてたりしました(笑)。

――これ以上差を詰められないようにということですか

津江 ここをどう取り返すかというよりはここをどうやって防ぐかと考えた方が確かに次に回しやすいかなと思う。やられたからってやり返してやる!みたいに思ってしまうと、相手も流れに乗ってしまって、また取られてしまうんですけど。そこでどれだけ我慢できるかじゃないですかね。

――関カレはトーナメント方式なので、相手がだんだん強くなっていくのに対して、リーグ戦は初戦から強い相手に当たることがありますよね。このリーグ戦の難しさというのはありましたか

西森 僕はありましたよ。やはりリーグ戦前は嘔吐してしまった話もありますし(笑)。

――やはりそういうのも原因ですか

津江 いやでも確かに嫌ですよ(笑)。

西森 インカレまで行くと違うかなと思いますけど。関カレはやはりあとにインカレがあるものなので、インカレで勝ちたいじゃないですか。関カレ取ってインカレ優勝できないチームもありますし。きょねんの日大もそうですよね。すごく悔しいと思うんですよ。

小野 僕はそんなに意識はしてなかったです。言われてみればそうですけど、当たり前って言えば当たり前(笑)。

津江 もう割り切っちゃってる。リーグ戦はそういうもんだと思っていて、関カレはトーナメント。まずリーグ方式とトーナメント方式だからそうなってしまうのは自然なことかなと。

――相手としては戦いづらいけど、当たり方としてはやりづらいとかはないということですね

西森 らいねんはお前らもわかんないぞ(笑)。4年生のリーグ戦はやはり違いましたね。もし入替戦に回ったらとか、もし2部に落ちてしまったらとか一瞬でもよぎっただけで寝れなかったです(笑)。寝れなくて、嘔吐(おうと)して、試合出て、もう意味わかんなかったです(笑)。

津江 OBの先輩からも(笑)。「まさか2部に」なんて…(笑)。

西森 メールが来るんですよ!「最後のリーグ戦、死ぬ気で頑張れよ」って(笑)。寝れないですよね(笑)。あの萩原先輩(宏樹、平24スポ卒=國学院大栃木)でも一睡もできなかったという噂なので(笑)。

――では、関カレの日大戦での収穫は何でしょうか

小野 自分は関カレの方が全然内容的に良かったです。内容的にもスコア的にも良かった。リーグ戦のときは、自分が最初の試合(3セット目)に0−5で帰ってきてそこでほとんど全部決まってしまったので。

津江 リーグ戦、3試合目ですでに6−15とかでしたよね。

小野 俺が最初に成田(遼介、日大)に0点で抑えられて。

津江 思い出した、あの時も上でしたもん。俺と優で始まって。あの時もマイナス1とか2とか…。

――1試合目が4−4で、次が6−10、3試合目が6−15でした

津江 そこで折られた感じだよね、正直(笑)。

西森 その日北村がめちゃくちゃ調子良くて。たぶんその試合山田とは皆五分だったんですよ。北村と成田にボコボコにされてて。

――成田選手がとても調子良かったのは覚えています

西森 それは今回もそうなんですよ。

津江 そうなんですよね。成田で僕らやられてますよね。

小野 強いよね、やっぱり全員。

西森 俺は思ったんですけど、今回の試合で前半から1点勝負をやっているわけじゃないですか。1点勝負してたらどっかで差が開いたときにきついんですよ、お互いに。お互いきついので、1点までは覚悟して、本当に勝負するならもう取りに行かなくていいから。

津江 取られても我慢する。自分もそう思いました。

西森 そう。もう1分に1点くらいでやる。本当に割り切ってそうする。ただ、もう1つ思ったのは、もし僕らの調子が良くて、点数が重ねられたら、割りと打ち合いして、慶大みたいに40−40くらいまでやる。たぶん慶大もそうやって割り切っていると思います。慶大も武田(仁)以外は全部ドゥーブル(同時突き)でいいと思ってる。日大はナメてかかってきている感じだったので、そこに合わせてドゥーブル、ドゥーブルで武田がなんとか踏ん張って、結局40−40まで行っているので…。それをするか、ロースコアで勝負するか。でもうちとしては三人が三人、シングルが取れるタイミングで勝負したいタイプなので。例えば碧だったらリポスト(剣を斜め前に出して相手の剣を止める)で止めて取る、これはシングルしっかり取れるじゃないですか。簡単にドゥーブルで合わせようとすると、たぶんやられちゃうんですよ。この三人ともやられちゃう剣筋というか。たぶん小野ちゃんもシングルで狙った時のポイントの方が良いと思うんですよ。ドゥーブルを簡単に狙いに行ったやつほどポーンとやられちゃう。

小野 僕はリーグ戦は結構日大にビビっていたところがありました。レベル的に自分より結構上かなと思っていたんですけど、関カレは個人戦も結構良くて、日大と同じくらいのレベルで勝負できるのかなと思ってシングルで勝負できたのが内容的に良くなったと感じる理由だと思います。

西森 本当にシングルでこだわるなら、一本に1分使うくらいの気持ちで。それは相手がきても一緒だと思います。そしたらあの点差にはならないと思います。僕も成田のところで取りに行かなくちゃいけないと思ってしまって…。でも結局あそこで取りに行かなくても良かったんですよ。2つ前の試合から4点差、5点差あったと思うんですけど、あそこもまだ取りに行かなくてよくて、自分が取れるタイミングのところギリギリのところまで待って(そのセットでの点差を)プラス1。それで最後の碧が上まで勝負できるところでどれだけ詰められるか。

津江 やはり相手も余裕がないことには全然攻められませんもんね。最初のロースコアのところでは出たいけど絶対我慢しますよね。最終的に僕らが出ちゃったところを取られている感じがするんです。相手の攻撃が速いのもありますけど。やはり日大戦は入りが重要なんじゃないですかね。

西森 本当にそう思う。

津江 それができたら勝つこともできると思います。

小野 一回り目が大事です。三試合目まで。

「意味のある優勝をしたい。打倒日大」(津江)

団体への思いを語る西森と津江(左)

――ではそれぞれの回り順での役割を教えていただけますか

小野 強い人は、みんなあの人と言ったらこれという技があるんですけど、自分はたぶんあまりそういうのがないので、いろいろな技を試して、柔軟に対応できるフェンシングをしたいと思います。行かなきゃいけない時は取りに行く、行かなくてもいい時は、同時突きもないような試合にできるように、万能な人になりたい…、なろうかな!と思います(笑)。

――西森選手の早回りは

西森 勢いをつけられる守りをしたいです。以上です(笑)。

小野 勢いをつけられる守り?

津江 守りの中の攻撃もありますもんね。

西森 そういうことです(笑)。例えば、リードしていてもされていても、早回りのところというのは結構試合の中盤が多いので、得点に大きく絡むシーンで自分が取れるところでしっかり相手の隙をカウンターできると一気に二人がやりやすくなったりすると思うんです。そういう意味でチームに勢いを与えられるような守りができたらいいのではないかと思います。

――最後回りはいかがですか

津江 やはり僕のところで勝敗が決まってしまうので、リードしているときはそこをしっかり抑えてそのまま勝利を、負けてる時はいかに縮めて…。

小野 それ当たり前…(笑)。

津江 その当たり前のことが、本当に難しいんです(笑)。言うことは簡単なんだよ。それができないのがね、やっぱり勝負なんじゃない?そういう最後回りになれるようにですね。

――では、インカレに向けての改善したいことなどはありますか

小野 もったいない失点をしないことです。特に団体戦は。もったいない失点、ミスを減らすフェンシング。もうインカレまでにレベル的に上がることはないと思うので、そしたらやはりどれだけ自分のマックスを出せるかが勝負だと思います。ミスを少なく性格に丁寧にという感じです。

西森 ミスをしないというのは確かに大事なことだと思うんですけど、どんなにうまい選手でもミスをするし、でもそこをカバーできるのが団体戦だと思います。例えば、さっきの日大戦の話でなったみたいに、1点の重みにこだわって、例えば開始直後に1点取られたとしても、そこでチームメイトにかける一言とか、自分がプレーしていたらそこでどういう風に切り替えるかとか、特に意識的なところにこだわって、チームとして悔いのない試合をして勝ちたいと思います。

津江 自分は皆と一緒なんですけど、あと一週間の中で何ができるかと言ったら、そこでどれだけの自分が持っている技術を、試合で最高のパフォーマンスを出せるかということが重要になるんじゃないかと思います。いかに簡単に点数をあげない、ミスを少なくなる、自分が突いたと思っても、もう一回突くとか。もしかしたら突けてないかもしれないじゃないですか。そういうこともあると思うので(笑)。そういうところももっと…。なんですかね、ハングリー精神?

一同 (笑)。

西森 ファイティングスピリッツ。ネバーギブアップだよ(笑)。

津江 そうですね(笑)。諦めないように。一個ずつ気持ちを入れて試合していけたらなと思います。

――インカレでは個人戦もありますね。個人戦に向けてもそれぞれお話を聞かせてください

小野 正直いま関東の方が結果残している選手も多くて、レベルが高いと思うんですよ。上のメンツも大きくは変わらないと思うんです。でも、自分はまだ安定してベスト4に残れるレベルではないので、一試合一試合重ねていきたいです。別に自分が勝てないとは思わないんですけど、毎回あのレベルに残れるとも思っていないので、ベスト4を目指します。

――津江選手や西森選手から見た小野選手の成長というのはいかがですか

津江 僕らが1、2年のときは練習で負けなかったですもん、正直。でも、いまは逆ですからね(笑)。

西森 きょうは1勝1敗だからね!

一同 (笑)。

西森 って言えるくらい。ことしの頭くらいはほぼ勝てないときありましたからね。一日に一回勝てたらいいくらいの日もありました。碧もたぶんそうだと思います(笑)。

津江 僕ももう毎日一緒に練習やってるから、技がバレてるんですよね。僕バカなんで、同じことやっちゃうんですよ(笑)。

西森 おもしろいんですよ、この二人。小野ちゃんに聞いたら、「あいつは同じことしかしない」って。碧に聞くと、「毎日やってるからバレてます」って(笑)。

津江 (笑)。僕も変えられればいいんですけど、変えられない…。というか、技が少ないんじゃないかって。

小野 いまさら(笑)?津江、いつも一緒だから大丈夫かなって…。1年生のときは通用してたけど、このままだと大丈夫かなって。

津江 他大にはまだバレてないよ。身内だからじゃない?

西森 でも正直当たりたくはないです(笑)。皆当たりたくない。

――でも、インカレでは上の方で当たるかもしれないですね

西森 それは結構あるんじゃないかと思います。三人いたら。

津江 上で当たりたいですね。

小野 三人みんな上まで来れるメンバーだと思うので…。当たったら勝ちます。

津江 (小野には)負けたくないですね、一番。

西森 この二人は同級生ですしね。

――では、他のお二人の個人戦の意気込みは

西森 僕は最後なんでというか、最後だからこそ初心に戻って、やりたいなと思っています。あまり個人戦で上まで行った記憶はなくて。ジュニアの選考会くらいで、きょねんの関カレは水口(紘希、中大)って高校の後輩に負けてますし、しかも一本勝負で。インカレもエイト賭けで、藤倉に負けました。でも、インカレなんかは正直エイト賭けまで行けると思っていなかったんですよ。それくらいの気持ちで、予選も頑張ったので全勝だったんです。今回もチャレンジャー精神で、予選からエンジン全開で行こうかなと思います。もう体力が切れるまで動こうかなと思います。それでもし二人に当たったら苦しめます。もう全身全霊で動きます。

津江 いま西森先輩が最後とおっしゃっていたんですけど、3年のインカレは一回しかないわけじゃないですか。それこそ1年生は一回、2年生も一回。だから、来年あるからと思うんじゃなくて、3年のインカレはことしが最後だと思ってやりたいです。1年2年と個人戦で結果が残せていないんですよね。きょねんはエイト賭けで、優勝した宇山先輩(賢、元同大)に負けて、2年前は朝日大の先輩に一本勝負で負けていて、結果という結果が残せていないので、正直そろそろタイトルを…。

西森 全日本3位の選手がここまで言ってるんですから。それくらい難しいところなんですよ、インカレって。

津江 学生の大会で結果が残せていないので、親から連絡が来ても「また成績が悪かったね」みたいな感じなので(笑)。自分なりには頑張っているんですけど…。親にギャフンと言わせたいですね。そういう成績を出せるように。なので、今回は最低でもベスト8には入りたいですね。そこからまたさらにその上を目指せたらなと思います。

――最後に団体戦の目標をお願いします

西森 目標は、それはもう優勝ですけど。

津江 その中でも意味のある優勝をしたいですね。打倒日大。

小野 来年、北村先輩が抜けて向こうの戦力もダウンすると思うので、やはりいまの最強メンバーに勝ちたいですね。このメンバーで。

津江 絶対に勝てないメンバーではないと思う。うまくすべてかみ合えば絶対勝てますよ。

西森 それはもうきょねんくらいからずっと言ってる(笑)。

津江 ずっと言ってるんですけど、なかなか難しいんですよね。

小野 あのメンバーに勝ちたいです。

津江 正直誰もが思う黄金のメンバーだと思うんですよ。

小野 日大の中で語り継がれるメンバーだと思いますよ、あのメンバーは。

津江 そこに最後は勝ちたいですね。この学生の大会であるインカレで。

小野 それこそギャフンと言わせたいよね。

津江 そうですね。言わせたいと思います(笑)。

――ありがとうございました!

(取材・編集 川嶋悠里)

※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。最後の3試合で最初に出場する回り順を早回り、次に出場する回りを中回り、最後の試合を戦う回り順を最後回りという。

 様々なポーズをしてくださった男子エペ陣。これはラーメン屋店主のポーズ(笑)。

◆小野弘貴(おの・ひろき)(※写真右)

1994年(平6)3月25日生まれ。183センチ。70キロ。東京・早稲田高出身。社会科学部3年。今回の取材でプライベートな話をまったく聞かれなかったことに不満を示していた小野選手。「好きな女優の話とかしないの?」と言うので聞いてみると、しばらく悩んで松嶋菜々子さんと答えていました(笑)。

◆西森健太(にしもり・けんた)(※写真中央)

1993年(平5)2月10日生まれ。169センチ。57キロ。香川・三本松高出身。教育学部4年。小野選手に便乗して好きな女優さんをお伺いすると「柴咲コウ」と答えた西森選手。ハーゲンダッツのCMがたまらないそうです(笑)。

◆津江碧(つえ・あおい)(※写真左)

1994(平6)年2月16日生まれ。170センチ。65キロ。山口・岩国工高出身。スポーツ科学部3年。津江選手は長澤まさみが好きとのこと。その回答には迷いがなく並々ならない思いを感じました(笑)。