【連載・第2回】『Challenger』谷口裕明主将×仙葉恭輔

フェンシング

 今季、新たなる布陣でのスタートを切ったワセダ男子フルーレ。選りすぐりの強者たちが集うフルーレ団体戦において、関東学生リーグ戦(リーグ戦)、関東学生選手権(関カレ)でともに4位という成績を残した。ほとんどゼロから始まったチーム作りは着々と進んでいる。最後の戦いに向け、チームの主軸である谷口裕明主将(スポ4=香川・三本松)と仙葉恭輔(スポ3=秋田南)にいまの思いを伺った。

※この取材は11月4日に行われたものです。

「新チームワセダの形が見えてきた」(仙葉)

ことしから最後回りとなった仙葉

――今シーズンを振り返って

谷口 リーグ戦は新チームでの初めての試合ということで分からないことだらけで臨んだのですが、結果的に言えばあの試合があって僕たちは成長できたかなと思います。上の人たちから新チームになって絶対に勝てないよって言われていました。僕たちも反骨心でがんばってはいたのですが、実際4位という結果で、勝てなかったです。僕が1年生のときに、先輩たちも新しいチームになって勝てないのを見ていて、改めてこういうことだったのだなと思ったのですが、そのときと違うなと思ったのは試合の中で成長を実感できたということでした。それを関カレにはつなげることができたのではないかなと思います。結果的には同じ4位ということだったのですが、その成長を実感できて、つなげられたというのは大きかったと思います。

仙葉 とりあえず、リーグ戦は僕が2月くらいに捻挫をしてしまってケガ明けだったのと、谷口先輩が左手首を3月の中ごろに骨折していて、同じくケガ明けだったので、大丈夫なのかなと個人的には思っていました。日大や中大、法大などのメンバーが変わらない大学と比べて、チーム力的にも新チームとなって劣っていて、主力の二人がケガをしているという万全じゃない中で戦ってどうなのかなと思っていたのですが、良くも悪くも予想どおり4位という結果でリーグ戦が終わって、「良かったな」という安心感と「やっぱ4位か」という残念感がありました。さっき谷口先輩も言っていましたが、2日間を通して団体戦での新チームワセダの形が見えてきたかなというのが確かにあって、それを関カレでも発揮はできていたのではないかなと思います。個人的には団体の準決勝とかはもうちょっと上手く作戦などを立ててできたらもう一つ勝っていたのではないかなと思う気がしますが、それがそのときの実力だったのかなとは素直に反省しています。

――リーグ戦で成長を感じたとおっしゃっていましたが、具体的にはどのような部分で成長を感じましたか

仙葉 いままでは上の先輩たち(北川隆之介(平26年スポ卒)、鬼澤大真(平26年スポ卒)にすごく強い人たちがいて、足を引っ張らないように試合をするという感じでやっていたのが、ことし急に2人ともいなくなってしまったので、下を引っ張っていかなければならないという立場になりました。立場が180度変わって、そこで二人で「どうしたらいいんだろう」というような話をしていて、でも結局分からなくて。それでも「やるしかないでしょ」ということで、やっていく中である程度こういう風にしていけばいいのかなということとかが分かり始めてきました。もちろん先輩たちの後ろ姿もたくさん見ていますし、改めて分かることもあったので、そういうことを理解できた、身を持って体験できたというのが良かったかなと思います。それが経験という意味での成長かなと思います。

――リーグ戦で見えた課題はありましたか

仙葉 僕は、個人個人の実力が足りていなかったのかなと思いました。技術的なこともそうですが、肉体的なことだったり、精神的なところだったりで他の大学の人に負けていたかなと感じました。

谷口 課題は恭輔も言ったように個人のレベルですね。あとは、チームとしての経験値とかもあると思います。団体というのは強さが並んでいるので、やることがおのずと見えてくるのですが、そこがしっかりしていないといけないなと思いました。きょねんとかはそれがはっきりしていたので、個人個人はやりやすかったかなと思います。今回はそうじゃない部分もあって。僕は二番手という位置にいるのですが、点を取ってこないといけないのですが、取りきれないというか。チームとしてそこでぎくしゃくしてしまった部分があると思います。

仙葉 そうですね。もし三番手でこけちゃっても、僕ら二人がもっとがんばって点を取らなきゃいけないのですが、そこで踏ん張り切れなかったところがよくはなかったですよね。三番手が取れられるのは当然なんですよ。他の大学はフルーレをやっている人が10人くらいいる中の代表3人ということで、精鋭たちじゃないですか。だから三番手が取られてしまうのは当たり前なんですよ。僕たちもそうだったので。そこで、試合の流れが傾きかけたところも引き戻してこれる実力を発揮できなかったことがいけなかったことかなと思います。

――関カレまでにどのような練習をしていましたか

仙葉 僕はフィジカルをひたすらやっていました。フェンシングは急に下がったところから前に出たり、止まったり、また下がったりしなきゃいけないじゃないですか。そんなときに体がぶれてしまっていたのが以前までは良くないなと思っていました。体幹はやっていたのですが、下肢のトレーニングは全然していなかったのでやってみようかなと思って。下のウェイトリフティング部のやつと一緒にやっていました。

谷口 僕は就活などがあったので、部室に来られない分、走っていました。僕のプレースタイルは動いて試合する感じですし、フルに出場することになるので。僕は動けないと何もできなくなってしまうので、家にいるときは長距離ではないのですが、短距離をひたすらやっていました。

――迎えた関カレではその成果は出ましたか

仙葉 個人戦は完全にぱっとしなかった感じなので。団体戦は中大とかは僕はリーグ戦でボロボロだったので、そういう意味では全員やった相手とは取った点数と取られた点数が同じくらいだったので気持ち成果はあったのかなと思います。やっぱ他の人はやってないと思うので。ウエイトトレーニングとか。人と違うことをやるという意味でやっていてところもあったので、自分のステータスを伸ばせたかなという部分もありました。成果は出てました。

谷口 出ていたとは思います。試合に集中しているので、できたかどうか考えるところまでいっていないのですけど(笑)。 

仙葉 動き負けとかはしていなかったと思いますね。

谷口 フル出場しない試合でギリギリだったのですが、今回はフルで試合に出て動き負けしなかったのでよかったと思います。 

――そこで見つかった課題はありますか

仙葉 僕はフェンシングに関することなのですが、突きにいくときに置きにいっていることが多くて。攻められる相手選手にとってそれは大きな違いになるので、置きにいくのはよくないかなと思います。あと、距離を調節するのがうまくできていなかったなというのは、個人戦終わったときにすごく感じましたね。団体戦はそれに気をつける気持ちでやっていきました。

谷口 僕は結構必死になっちゃうと同じような動きをしてしまうのが多かったです。僕が下がって出るときにすぐ攻撃してしまったり、相手に攻撃権を渡してしまってそのまま取られてしまったりとか。そういう癖のようなものは出てしまうのでそういうのを変えられるようにしたいですね。 

仙葉 性格の傾向とかで癖は出ちゃうんで。それを生かせるように考えたほうがいいかなと思います。 

「風通しがいい」関係の二人

笑いを交えながらも真剣に話をする谷口、仙葉(右)

――北川さんと鬼澤さんが卒業して、男子フルーレのチームにはどのような変化が見られましたか

仙葉 まず、勝てない(笑)。

谷口 そうだね(笑)。

仙葉 団体戦ってリザーブもいますが、試合に出るのって3人じゃないですか。昨年は大真先輩と隆之介先輩が常に出ていて、あとは谷口先輩か僕が交代交代で出るみたいな。僕は試合に出たときも出ていないときも二人強い先輩がいますし、安心感があるなと思って見れていたのですが、やっぱりことしはそういう意味ではおぼつかない感じがありました。

谷口 二人の力が圧倒的過ぎたっていうのもあるんですけど(笑)。点を取ってきてくれるという安心感がありましたね。フルで僕たちが出るようになって、それを僕たちがしないといけないというのは大きな違いでした。

――チームの中でのお二人の役割は何ですか

仙葉 谷口先輩はがつがつ攻めて点を取るタイプではないと思っているので、守りの中で引き出させておいて取る選手だと思っています。「いっぱい取ってきてください」という感じではなくて、いくら試合で負けていても点差を離されてしまうとしょうがないので、そうならないようにちょっとでも詰めて、整えてくれれば僕としてはやりやすいかなと感じます。僕はそれを求めています(笑)。

谷口 恭輔は僕と違ってポイント力もありますし、ガンガン攻めて点を取れるので僕ががつがついけない分、点数を取られるのは構わないので取ってきてくれたら良いかなと思います。

――仙葉選手はことしから最後回りということでプレッシャーは大きいですか

仙葉 いや、あんまりないです(笑)。勝ち負け左右されるポジションですが、逆に勝てば「俺のおかげじゃん」という感じになるので(笑)。僕はそっちの気持ちの方が強いですね。

――あまり緊張なさらないのですか

仙葉 あんまり緊張しないかな。でも、緊張はしないのですがあがってしまいます。例えば、人の前で話すときとか。緊張はするのですが、上手く自分をコントロールできるテクニックを持っていると思います。

――谷口選手は緊張されますか

谷口 緊張はそんなにはしないと思います。自分はアップしてようが、していまいが1試合目は調子が上がらないので。それさえ乗り切れればという感じです(笑)。

仙葉 谷口先輩は慎重な性格をしているので(笑)。入りが慎重すぎて逆に上手くいかないというときが多いと僕は思っています。

谷口 相手の力の差は関係なく、出だしは悪いですね。慎重にやっている気はないのですが、多分そうなんでしょうね(笑)。

仙葉 もちろん僕もそうですが、一つ一つが大切な試合だと感じているのだと思います。

――4年生の谷口選手にとっては全ての大会が最後になりますもんね

谷口 そうですね。僕は最後最後と考えるとそれこそ上がってしまいそうなので、勝ちたいとは思うのですが、最後にみんなで楽しんで終われればそれで良いんじゃないかなと思います。もちろん勝てればもっと良いのですが。

――谷口選手はことしから主将という立場で部を引っ張っていますが、それは大変ですか

谷口 大変だと言えば大変だったのですが。

仙葉 大変ですよね(笑)。特に僕らの代が…(笑)。

一同 (笑)。

仙葉 

津江(碧、スポ3=山口・岩国工)とか小野(弘貴、社3=東京・早稲田)とか見ていると分かるように僕らの代は個性が強いんですよ(笑)。個が強すぎてまとめるのは大変だったと思います。あと、良くも悪くも意見は言うので、それはあればあったでプレッシャーにもなると思いますし。多分同期からも上からも色々言われると思いますし、苦労すると思います(笑)。

――色々言われたときはどのように対応したのですか

谷口 最初はひたすら耐え続けました(笑)。でも、すごく支えてくれた部分もあって、そっちの方が大きかったですね。

――団体戦と個人戦での気持ちの違いはありますか

仙葉 僕は団体戦になるとみんなが応援してくれるので頑張ろうって思います。個人戦はどちらかというと淡々としてますね。団体戦のほうが気持ちが入ります。ワセダ背負ってやってるぜっていう感じです(笑)。代表で出てるんだから頑張んなきゃみたいな。応援はすごい僕の背中を押してくれますね(笑)。

谷口 個人的には僕は個人戦のほうが好きなんですけど…

仙葉 え、そうなんですか!? 

谷口 個人的にはね。

仙葉 知らなかった。初めて聞きました(笑)。 

谷口 特に大学では団体戦はチームでやっているという感じが強いので、大学の試合するようになってからはやっていて楽しいです。 

――リーグ戦は総当たりだったのと違って関カレはトーナメントだったと思いますが違いはありますか

仙葉 試合の形式は一緒なので、そんなに違いという違いはないです。でも、勝てるところには勝たなきゃならないし、勝てなさそうなところにも勝たなきゃならないし、勝てないところにも勝たなきゃいけない。それは絶対に変わらないので、特に違いという違いはないですね。 

谷口 どっちにしろ勝たなきゃならないので(笑)。 

仙葉 3番と4番の決め方が違いましたね。3決があるので。総当たりだと勝ち負けってだけで順位を決めるんですけど、トーナメントだと準決で負けても3位決定戦があるじゃないですか。そこで気持ち的な違いが若干あります。3位と4位って全然違うし、最後勝って終わりたいので。 

――トーナメントの当たりは重要ですね

仙葉 そうですね。当たりは個人戦も団体戦も重要ですね。

――個人戦はワセダ同士で当たることもありますよね

仙葉 結構多いですよね。ワセダはそういう傾向にありますよね。普段練習している人と試合をやるのはすごいやりづらいですね。やることがばれてるので。やることばれててもフェンシングって少しは勝負にはなるのですが、タイミングとかもばれているのでやりづらいですね。同じ大学の選手と当たってやりやすいっていう人いないと思いますね。よっぽど部内で相性よければ「よし!」っていう感じになりますけど。でもなんで試合に出て、当たるんだろうって個人的には思います。僕も1年生の時のインカレで大真先輩に負けているので。部内戦はやりづらいですよね。 

谷口 やりづらいね。

仙葉 まだ部内の人と戦ったことないですか?

谷口 1年生の時に隆之介先輩に当たったかな。でも最初の試合だった。

仙葉 ワセダ同士は結構当たる傾向にあると思います。だって今回の関カレでは三好(修平、社2=愛媛・三島)と松山(大助、スポ2=東京・東亜学園)も当たってましたし、僕は北原(達也、スポ1=長野・伊那北)とやりました。これは向こうも嫌だし、こっちも嫌ですよね。後輩には負けられないじゃないですか。

谷口 特に上はね(笑)。 

仙葉 見えないプレッシャーとの戦いみたいな(笑)。 

――それではオフの日は何をしていらっしゃいますか

仙葉 オフの日はゆっくり起きて何しようかなって考えるんですが、大体やることないので筋トレしに行きます。東伏見のスポーツホールの地下にあるトレーニングルームに行って筋トレしてます。それで、最後に東伏見で友達に会ってご飯を食べて帰るという感じです。誰かと会うことが多いかもしれないですね。一人でいることもありますけど、あんまりないかな。というか、谷口先輩のオフの実態知りたい! 

谷口 知りたいって(笑)。何してるんだろう、俺。とりあえず暇なときはルームシェアしている友達と大体遊びに行っていますね。それがなかったらいまはひたすら卒論を書いています。 

――どんなことを書いているのですか

谷口 運動しない子供が運動するようになる要因についてをアンケートしてまとめています。でも、だいたい同居人と遊びに行っています。

――ワセダフェンシング部の魅力はどこだと思いますか

谷口 僕は、風通しがいいことだと思いますね。特に上になって実感したんですが、下からも意見をどんどん言ってきますし。でも言える環境ができてるっていうのはすごく大事なことだと思います。他の部でこういう環境はないんじゃないでしょうかね。僕はそれでいいと思います。 

仙葉 もちろん風通しがいいこともあるのですが、メリハリを持ってやるときはやるし、やらないときはやらないというのがいいと思います。いまとかはみんなで集合してインカレに向かって一緒に頑張れるっていうのが大切なことですよね。みんなが目標に向かって一生懸命頑張るのって難しいじゃないですか。その日の体調もあるし、気分もあるし。でもそれに関係なくみんなで頑張れることがいいことだなと思います。そういう人たちが集まってるのっていいなと思います。

勝利のカギは成長

――それでは、インカレに向けてどのような練習をされていますか

仙葉 個人戦の話ですが、15本勝負のトーナメント戦があるので、その練習をきょうとかも全体の練習が終わった後にやっていました。予選の5本勝負とは違うので、試合の流れとか作り方とかを練習しています。

谷口 やっていることは同じなので練習内容は変わらないですね。あとは個人でここをもっと伸ばしたいとか、ここをもっと修正したいとかっていうのは個人個人練習していると思います。

――特に強化している部分はありますか

仙葉 15本勝負は長いので、疲れてくると一本の質が落ちてきてしまう場面があります。そういうのが多くなってくると負けてしまうんで、疲れが出ないように意識してやっています。

谷口 僕も同じようになってしまうんですが、必死になっちゃうといつもと同じようなパターンになるので、そこを冷静に変えられるかどうか、同じようにならないように意識してやっています。

――意識している大学はあるのですか

仙葉 関カレで僕らよりも上位にいた大学は意識しますね。全員倒したいなとは思いますね。「一泡吹かせてやるぜ!」みたいな。

――その大学に勝つためにカギとなる部分はどこだとお考えですか

仙葉 三番手の選手がいかに踏ん張れるかだと思います。僕らは一生懸命にやります。良くも悪くも、団体戦は経験が大事なので。経験の浅い選手がどれだけ成長してどれだけ頑張れるかで変わってくると思います。僕が1年生で入ってきたときよりも、同じメンバーでしたがきょねんの方が団体戦のチームとしての質は高かったです。それは谷口先輩と僕が試合に出してもらって経験をすることで二人とも成長してという過程があってそのようにチーム力が総合的に上がったからだと思うんですよ。経験のない選手が経験を積むことによってどれだけ成長できるか、試合の中でどれだけ踏ん張れるかにかかってくると思います。

――最後に、インカレでの目標は

谷口 優勝です。

仙葉 個人はベスト4、団体は期待も込めて、優勝です。 

――ありがとうございました!

サーベル片手にフェンサーらしいポーズをしていただきました

(取材・編集 松本理沙、黒田菜々子)

◆谷口裕明(たにぐち・ひろあき)(※写真右)

1992(平4)年7月18日生まれ。170センチ。65キロ。香川・三本松高出身。スポーツ科学部4年。今季、同期の安冨選手と全て同じ授業を受けている谷口選手(笑)。卒業に向けての卒論制作も頑張ってください!

◆仙葉恭輔(せんば・きょうすけ)(※写真左)

1993年(平5)5月8日生まれ。167センチ。65キロ。秋田南高出身。スポーツ科学部3年。取材中にカメラを向けるといつもポーズしてくれるおちゃめな仙葉選手。最近はSEKAI NO OWARIとONE OK ROCKにはまっているそうです。