ことしも騎士たちの戦いが始まった。新体制となり初めての大会である関東学生リーグ戦(リーグ戦)。リーグ6チームが2日間かけて総当たりで戦う。今週は男女フルーレの試合が行われ、1部に所属するワセダは昨年とは異なる新しい顔ぶれで出場した。慣れない布陣で苦戦しながらも健闘し、男女ともに2勝3敗で4位。男子は昨年度優勝から大きく順位を下げたが、次につながる大会となった。
主軸だった北川隆之介(平26スポ卒)と鬼澤大真(平26社卒)が卒業し、新チームで挑んだ男子フルーレ。初戦の日体大戦では序盤、相手にリードを許しながらも、三好修平(社2=愛媛・三島)の怒涛(どとう)の攻めで15-13と逆転する。さらに谷口裕明主将(スポ4=香川・三本松)が5連続ポイントで突き放し、最後は仙葉恭輔(スポ3=秋田南)が締め、45-33で勝利した。快調な出だしと思ったのもつかの間、他大学のチームたちとの経験の差がワセダの前に立ちはだかる。今大会優勝した中大には5連続失点を2回許し、23-45という大差で黒星を喫した。チームで流れを引き寄せられず、点を取られ始めると失点が止まらない。大きな課題を見つけ、ワセダの初陣は4位で幕を閉じた。
最後回りを務めた仙葉
女子フルーレは初日、思うような試合ができず2戦2敗。切り換えて挑んだ2日目は「自分の力を出し切る」(渡辺咲、文4=大分・岩田)というワセダのスタイルが躍動した。渡辺、尾上千尋(創理3=東京・田園調布雙葉)、永瀬夏帆(スポ2=宮城学院)は頻繁に声を掛け合いながら、気持ちを一つにして攻め込む。すると、日女大戦では粘り強い戦いを見せ、33-31で接戦を制した。入れ替え戦へ回ることも危ぶまれた女子フルーレだったが、結果的には2勝3敗の4位で目標としていた4位以上を達成。今回が最後のリーグ戦となる渡辺は「素直にうれしい」とほっとした表情を見せた。
しぶとく攻め続ける渡辺
技術力だけでなく経験や団結力などが勝利に影響してくる団体戦。チーム力の真価が問われる戦いに臨んだフルーレ陣は、今回その厳しさを痛感した。新生フルーレチームは様々な学年で編成されているため、チーム力という言葉からは一見遠いかもしれない。しかし、「ワセダの長所は4年生から1年生までの風通しが良いところ」(谷口)というように、他大学にはない学年を越えたつながりがワセダにはある。その風通しの良さと今回の経験から他を圧倒するチーム力を築いていってほしい。来週から男女エペ、サーブルの試合が行われるリーグ戦で新生騎士団はどのような勝負を見せるのか。ワセダの活躍から目が離せない。
(記事 松本理沙、写真 谷田部友香)
※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。
※フルーレ:頭・両足・両腕を除いた胴体部への突きのみが得点となる。 両者がほぼ同時に突いた場合は、どちらの攻撃が有効だったかを主審が判定する。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は攻撃を防御してから攻撃しなければならない。
結果
▽男子フルーレ
早大〔谷口裕明主将(スポ4=香川・三本松)、仙葉恭輔(スポ3=秋田南)、三好修平(社2=愛媛・三島)、松山大助(スポ2=東京・東亜学園)〕 4位
1試合目:○45-33日体大
2試合目:●25-45日大
3試合目:●23-45中大
4試合目:○45-22明大
5試合目:●37-45法大
▽女子フルーレ
早大〔渡辺咲(文4=大分・岩田)、尾上千尋(創理3=東京・田園調布雙葉)、永瀬夏帆(スポ2=宮城学院)、千葉絢音(スポ1=大阪・北野)〕 4位
1試合目:●20-27専大
2試合目:●23-45法大
3試合目:○33-31日女大
4試合目:●22-31日大
5試合目:○29-26日体大
コメント
谷口裕明主将(スポ4=香川・三本松)
――今大会の結果を振り返っていかがですか
恭輔(仙葉、スポ3=秋田南)も言っていたと思うのですが、なんだろうなという感じですね。
――フルーレの主軸であった北川隆之介氏(平26スポ卒)や鬼澤大真氏(平26社卒)が卒業し、新チームとしての初めての団体戦はいかがでしたか
いままで上に強い人が2人いてずっとやってきて、結果も残してきていました。でもあの2人が2年生で僕が1年生だったときも、新チームという形でリーグ戦に臨んで勝てなくて。あんなにすごい2人がいても新しいチームで試合となると勝てないのだという思いがよみがえってきました。強い人がいてもチームでは勝てないのだと、今大会で痛感しました。
――点が取れない試合も多かったと感じたのですが
流れというのもあるのですが、そこは僕や恭輔などの上級生がしっかり流れを引き寄せて下級生が好きなように試合をできる環境をつくるというのが大事だと思いました。
――新しいメンバーでの試合でしたが、緊張はしましたか
どうですかね。多少はあったのかな。僕はそんなに緊張しない方なのですが、自分自身最後のリーグ戦ということもあって最初は緊張しましたね。
――今回見えた課題などはありましたか
個人的に言うと色々あるのですが、団体で言えば、点を取られ始めたときに僕たちで流れを持ってくるというのと、下級生は試合のつくり方をしっかり分からないのでそこは言ってあげて、やることを明確にしてあげるということが大事だなと思いました。
――今季主将としてチームを引っ張っていく立場となりましたが、チームとしての目標はありますか
インカレで一つでも多く勝って優勝できればいいなと思っています。
――個人的な目標はありますか
個人的な目標というよりもチームが勝ってくれれば嬉しいです。
――これからどのようなチームづくりをしていきたいですか
いままでと本当に変わらないと言えばあれなのですが、ワセダの長所は4年生から1年生までの風通しが良いところだと思うので、そこをしっかり引き継いで試合でも練習でも楽しくフェンシングができるような環境をつくっていければなと思っています。
仙葉恭輔(スポ3=秋田南)
――今大会を振り返っていかがですか
うーん。個人的には予想通りの結果でした。
――どのような予想だったのですか
きょねんまでは鬼澤先輩(大真、平26社卒)と北川先輩(隆之介、平26スポ卒)がいて二本柱でやっていたのですが2人が抜けて谷口先輩(裕明主将、スポ4=香川・三本松)と僕がきょねんのチームの残りとなるような感じでした。そうすると3人目がいなくて。僕らは結果的に4位だと思うのですが、1、2、3位になった大学はきょねんから出場していた選手が全員残っていて、それでことしも2年目のチーム、3年目のチームとやっていて、その中で団体戦慣れしているというか。団体戦はそういうのが出ると思うのでそういうところで差が出てくるのかなと思いました。
――今大会の目標などはあったのですか
僕らは本当に手探りの中でやっていたので、この2日間、一戦一戦を乗り切ろうということだけを考えていました。
――新チームになって、昨年まで北川隆之介氏や鬼澤大真氏がやっていた最後回りの役目を担うことになりましたが、やってみていかがでしたか
大変です。あの2人はすごいなと思いました。
――どのようにその役回りを決めたのですか
普通に考えたら、最後周りは最上級生がやるものなんですよ。そうすると谷口先輩なのかなという感じだったのですが、僕としては、谷口先輩は早回りで入学してからやってきて、ダメなときも優勝したときもあのポジションで経験していて、この会場の中で一番あのポジションを熟知していると思っていました。だから多分あそこのポジションだったら、信頼して任せられるのは谷口先輩だろうなと思って。それを話したら本人もそれでもいいよとは言ってくれたので、じゃあそれでお願いしますというような感じです。
――団体戦は経験が大事ということですか
それはもう、僕は本当にそう思います。
――今回で課題などは見つかりましたか
そうですね。点を取られ始めると取られてしまうというところが各試合見られたので、そういうところで何で取られているのか、じゃあ逆に何で取れないのか、どうしたら取れるのかとか、そういうことを自分たちでしっかり考えて自分を自分でコントロールできるように技術面でもメンタル面でも肉体的にもトレーニングしていきたいと思います。
――今後はそのために具体的に何をしようと思っているのですか
僕らは6月の中ごろから長期間の自主練期間に入るのでそういったときにフェンシングから少し離れて、集中的にフィジカル的なトレーニングをしてみようと個人的には考えています。
渡辺咲(文4=大分・岩田)
――今大会での結果を振り返っていかがですか
今大会は、女子フルーレは4位という結果でした。女子フルーレは入れ替え戦に1番近いのではないかと言われていたので、私としては4位以上という目標を掲げていて、その目標を達成できたことは素直にうれしいですね。順位以上に、私たちのチームは技術で他のチームに勝つことはできないので、その分理屈ではなく、1人1人がやるべきことをやって、1人1人が納得のいくプレーをして、1人1人がチームを盛り上げる、という試合が特に2日目はできたと思います。チームとしても大きく成長できたいい大会でした。
――ご自身の試合内容としてはいかがでしたか
初戦に専大と戦った際に、全くスコア的に貢献できなかったところは非常に心残りでした。私の頑張り次第では勝てた試合だったな、試合でもう1勝重ねられていたなと思うので、そこはとても悔しいです。私はきょねんの団体戦は全く良くなくて、本当にチームに迷惑をかけてしまったことが多くて、監督や、チームメート、先輩、後輩、同期のいろんな人から、私は技術面ではなくて、やるしかないんだという覚悟が必要だと言われていました。だからその覚悟を持って、1点でも2点でも取られずに突くという粘り強い試合ができたと思うので、悔しい部分もありますが、自分的にもきょねんよりは大きく成長できたと思っています。
――今シーズン初の団体戦でしたが、新しいメンバーと共に戦ってみていかがでしたか
きょねん圧倒的な力でチームをけん引していた真所先輩(美莉、平26スポ卒)が卒業されて、最初は本当に不安でしかありませんでした。色んな嫌なイメージが最初はあったりしたのですが、わたしたちは個人個人が特徴的なフェンシングをするので、個人個人のらしさというのを団体で思い切って出し切ろうというのを目標にしました。3月に集合してから合宿、立命館大との定期戦、練習試合を何回か重ねる中で、チームワークも含めて自分の力を出し切るというスタイルがだんだん確立されてきたと思います。なので秋に向けて、技術的な部分も、気持ち的な部分ももっともっと高めていけたらと思っています。
――女子フルーレ団体では唯一の4年生ですが、なにか心掛けていることはありますか
4年生だから責任を感じてしまうのですが、私の場合はそれを感じすぎてしまうと全く力が出せずに、勇気を持ってプレーをすることができないことが多いです。このリーグ戦までもそうだったのですが、同期、先輩だけではなくて、後輩からも率直なアドバイスをもらったり、私は比較的後輩と距離が近いほうだと思うので、試合でも「やるしかないですよ」と喝をいれてもらったりしました。人に頼る部分は頼りながら、4年生で最後だからしっかり悔いのないようにやって終わろうという気持ちで臨んでいました。
――今大会で見えた課題があれば教えてください
ワセダが勝った2チームとの試合では、とても粘っていい試合ができました。ですが、負けた法大、専大、日大には技術的にも私たちより上の選手がたくさんいます。そういった選手に少しでも追いつけるように、この大会で見た色んな技を自分たちのものにしていきたいです。さらに、私たちは1点差などの拮抗した勝負の中で誰かが点をいっぱい取ったりするなど、粘り強さが基盤にあってこそのチームだと思っています。なので、どういう強いチームに対してもその粘り強さを出していけるように、学年はバラバラですが、ここから秋まで団結して練習ができたらいいなと思っています。
――今後の目標はなんですか
これからは関カレ(関東学生選手権)、インカレ(全日本学生選手権)、インカレに勝てば全日本(全日本選手権)と、トーナメント制になります。今回のリーグ戦で粘って戦えば上に行けるなということが私だけでなくチームメートはみんな見えたと思うので、自信を持ってまずは関カレベスト4を獲れるように頑張りたいと思います。