ことしも代々木第一体育館に全国の精鋭たちが集結し、日本の頂点を決める戦いが行われた。ワセダからも多数の選手が出場。1日目の女子フルーレでは2回戦までにすべての選手が姿を消す。2日目は、男子エペに3人、女子サーブルには5人が出場し、男子エペの津江碧(スポ2=山口・岩国工)がベスト4進出を果たした。
勝利に雄叫びを上げる津江
津江は男子エペ陣で唯一、1回戦を突破。2回戦でも勝利を収める。あと一勝で自身最高となるベスト8。1セット目はほぼ互角の戦いを見せるも、次のセットで大きくリードを許してしまう。先にマッチポイントを握られ、後がなくなった津江だが、「あと一本取ればそのあと一本で追いつける」と追いつくことよりも一本を取ることに集中する。一本一本確実にポイントを重ね追いつくと、最後は相手の隙を突くことに成功。準々決勝の相手はワセダのOBで「練習では一度も勝ったことがなかった」(津江)という前田雄亮(平21政経卒=現・香川クラブ)。先輩相手に臆する事なく冷静に試合を進める津江。ほとんど相手に主導権を渡すことなく、15-12でベスト4進出を決めた。準決勝は2度全日本選手権(全日本)優勝を果たしている奥雄(警視庁)に圧倒され、津江の快進撃は幕を閉じた。しかし、自身初のベスト4と大きな成長を見せた津江はまだ2年生。これからのワセダを引っ張っていく大きな存在になりそうだ。
真所美莉(スポ4=宮城・仙台南)は女子フルーレと女子サーブルの2種目に出場した。2日目のフルーレでは2回戦敗退。相手を意識しすぎて、途中まで自分のペースに持ち込めなかった。2日目のサーブルでは「楽しんでいこう」(真所)と気持ちを切り替える。1回戦を勝利し、挑んだ2回戦。最後は一本勝負となった。相打ちが続く中、いままで、先に前へ出て攻めていたところを引いてみることに。相手の意表を突いたこの判断が吉と出て、ベスト16に進む。今大会は「メダルが欲しかった」とベスト4を目指していた真所。試合後に秋への目標を聞くと「団体で勝ちたい」と想いを団体戦への想いを語った。本人にとって最後となる秋の大会。試合を楽しみ、活躍することを期待したい。
フルーレ、サーブルと戦い抜いた真所
出場したほとんどの選手が決勝トーナメントに進んだものの、全日本のレベルの違いを痛感することになった今大会。この経験を生かし、秋の関東学生選手権(関カレ)、そして全日本学生選手権では一回り成長した姿を見せてくれるだろう。
(記事 川嶋悠里、松本理紗、写真 目黒広菜)
※フルーレ:頭・両足・両腕を除いた胴体部への突きのみが得点となる。 両者がほぼ同時に突いた場合は、どちらの攻撃が有効だったかを主審が判定する。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は攻撃を防御してから攻撃しなければならない。
※エペ:全身が有効面となる上に、両選手が同時突きをすると両者にポイントが与えられる。より慎重な攻め方が求められるため、時として両者が睨み合ったまま時間が過ぎることは稀な話ではない。
※サーブル:両腕も含む上半身への突きと切り(剣先ではなく剣の胴部分で相手の体に触れること)が得点となる。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の攻撃を防御してから攻撃しなければならない。この攻撃権の奪い合いにより、両選手はピスト上を常に前後に往復し合うため、サーブルは3種目の中で最も全身運動が激しい種目だと言える。
結果
1日目
▽女子フルーレ
真所美莉(スポ4=宮城・仙台南)
2回戦敗退
1回戦 ○15-8
2回戦 ●9-15
渡辺咲(文3=大分・岩田)
2回戦敗退
1回戦 ○9-8(1本勝負)
2回戦 ●11-15
尾上千尋(創理2=東京・田園調布雙葉)
1回戦敗退
1回戦 ●9-15
2日目
▽男子エペ
西森健太(教3=香川・三本松)
1回戦敗退
1回戦 ●13-15
小野弘貴(社2=東京・早稲田)
1回戦敗退
1回戦 ●
津江碧(スポ2=山口・岩国工)
ベスト4
1回戦 ○15-9
2回戦 ○8-5
3回戦 ○15-14(1本勝負)
準々決勝 ○15-12
準決勝 ●8-15
▽女子サーブル
弘瀬智子(スポ5=高知・追手前)
2回戦敗退
1回戦 ○15-12
2回戦 ●13-15
真所美莉(スポ4=宮城・仙台南)
ベスト16
1回戦 ○15-11
2回戦 ○15-14(一本勝負)
3回戦 ●11-15
神田真希子(スポ3=千葉・東葛飾)
1回戦敗退
1回戦 ●6-15
舟山佳穂(教3=山形・米沢興譲館)
1回戦敗退
1回戦 ●8-15
安冨結(スポ3=香川・三本松)
2回戦敗退
1回戦 ○15-8
2回戦 ●5-15
※決勝トーナメント出場者のみ掲載
コメント
真所美莉(スポ4=宮城・仙台南)
――今大会を振り返って、フルーレも含めてお願いします
フルーレは同じ宮城の高校生に負けてしまったのですが、うまい選手なので最初は入りを大事に行こうと思っていました。でもそれで逆に、自分は自称パーフォーマーなのに、途中まで試合を楽しんでできなかった。途中から切り替えて自分のペースに持ってくることができましたが、最初ずっと離されていたので、結果持ち返せなくてという感じだったのがフルーレでした。きょうは個人的には一本勝負を取ったのがセーフといった感じで、やれることはできたかなと思います。最後の試合が相手に誘われているのに対して、自分が簡単にただできることをやってしまった。誘われて、相手に悪い意味でかみ合うフェンシングをしてしまったというところがあまり良くないところでした。
――2回戦のときの一本勝負のお話が出ましたが、そのときの心境は
フルーレと似ているのですが、若い世代で、スーパー中学生とか言われている感じのシニアの大会でも上位に食い込んでくるような選手が相手だったんですね。むしろ自分の方がたぶん格下のような選手だったので、楽しんでいこうと思いました。やはり年下だからという気持ちがあると良くないので、どれだけ自分の実力を出していけるかなという心境でやっていました。やはり自分はフルーレ専門でやっているので、ビデオの確認を何回もしましたが、サーブルの権利、フレーズとかが自分の中で納得いったりいかなかったり、サーブル専門ではないので「そうなんだ」と言われたら「そうなんだ!」と逆に新鮮で、修正はできました。だから、最後一本勝負でしたが、いままで出てて出ててやられていたので、だったら引いてみるかと。大勝負が当たったので、よかったです。
――3回戦は負傷での中断がありましたが
ケガというか、王座(全日本学生王座決定戦)のときに初戦で手をひねっていて、注射とか打って良くなっていたのですが、癖がついてしまっていて。たぶんこの先何回もやると思うんですよ。だから、ケガというよりも、ケガをすると10分取れるんですね。そこで、流れが相手に行っていたので、(手も)痛いし、10分で流れを変えようと思って、5分くらいで立ち直れたところをあえて10分使いました。でも、一本しか取れなかったので、もうちょっとやり様があったのではないかと思います。
――今大会の目標はどのように設定されていたのでしょうか
自分はいつもベスト16で終わってしまうんですよ。ベスト8は賞状しかもらえないのですが、メダルが欲しかったので、どっちかの種目でベスト4に入ってメダルが取れたらいいなという気持ちでやっていました。
――最後に個人として秋への課題や目標があれば聞かせてください
きょうは個人でしたが、自分は団体で勝ちたいと思っているので、自分だけ前にズカズカ行くような感じではなくて、皆と一緒に勝ちにこだわって、そのために何ができるかというチーム作りがしたいです。その方が後世に残せるので。自分はこの一年で終わってしまうので…。もちろん成績もそれに乗っかってくれればいいですけど。やはり後のことを考えると、自分は2種目やっているので、来年2人分抜けることになるんですよね。だから、今後皆で頑張っていけるようなチーム作りですね。もちろん、個人の力もそれに付いていければいいという感じです。
津江碧(スポ2=山口・岩国工)
――ベスト4に進出しました。感想を聞かせてください
自分でもびっくりしました。
――準決勝までの試合を振り返っていかがですか
いままではきょねんのベスト16が最高だったので、ベスト8に入れたらなと思っていたので、まさか準々決勝を勝てるとは思っていませんでした。しかも、準々決勝の相手もワセダのOBの先輩でよく一緒に練習していて、お互い手の内とかも知っているような相手で、自分は結構苦手なタイプの選手だったので、そこで勝ってベスト4入れて良かったです。
――では、ご自身としても準々決勝で勝てたことは驚きだった
そうですね。前田先輩(雄亮、平21政経卒=現・香川クラブ)とは練習でほとんど勝ったことがなかったので。自分が攻めたらやられるなということは試合前から思っていたので、徹底して試合をすることができましたね。
――準決勝の相手は2度も優勝している相手でしたが、いかがでしたか
警視庁の奥先輩(雄)も一緒に練習してもらったりしている方で、自分がやる技が全部わかっていたかなというのがあって、全然手も足も出なかったですね。
――それでは、3回戦のときは逆転からの勝利でした
相手にマッチポイントを取られて14-12で、ここで取られたら負けだということはわかっていたのですが、逆に言うなら自分があと一本取ればそのあと一本で追いつけるんだなと思って無我夢中でした、あのときは。とりあえず、追いつこうというよりも一本取って、そしたらもう一本が見えるなと思っていました。
――最後一本勝負のときは
自分が(先に攻めて)いこうかなとも思ったのですが、正直気持ち的なところで気後れしてしまって、いけない部分もありました。でも、相手が来てくれたところをうまく自分のポイントにできて勝てたことが嬉しかったです。
――では、秋の個人戦に向けてお願いします
これから全日本が終わると、個人戦の試合が空くのですが、10月には関カレがあったり、11月にはインカレがあったりするので、この大会(全日本)が一番すごいですが、その2つはそれ以上に大切だと思うので、優勝目指して頑張りたいと思います。