女子エペ伊藤、うれし涙の3位

フェンシング

 世界ジュニア選手権(世界ジュニア)の日本代表選考にも関わるJOCジュニア・オリンピック・カップ。20歳未満が出場できる今大会の1日目は男子フルーレと女子エペ、サーブルが行われた。男子フルーレでは三好修平(社1=愛媛・三島)と松山大助(スポ1=東京・東亜学園)がベスト16。優勝を目指していた女子エペの山根司(スポ2=香川・三本松)はベスト8で惜しくも敗退。同じエペの伊藤由佳(スポ1=栃木・宇都宮中央女)は落ち着いて試合を勝ち上がり、自身初の3位に輝いた。

 伊藤は「無理せずに試合を展開していこう」と挑んだ。言葉通り落ち着いた試合を繰り広げ着々と勝ち進む。準々決勝は出だし慎重な試合運びで相手を抑え込み、終盤一気に得点を重ね、11-5で戦いを終える。早大勢として唯一ベスト4に残った。迎えた準決勝。今回、前半からリードを作り、最後までその勢いに乗り勝利を収めていた伊藤。ここでは3-8と追いかける形で第1セットを終了。2セット目も、思うように点が取れない。最後には相手に連続失点を許し、6-15。「何もできないで終わってしまった」(伊藤)と悔しい敗北を喫した。続いて3位獲得を懸け最後の試合に挑む。1セット目は3-4で、準決勝と同じ流れに――。しかしこの試合の伊藤は冷静だった。負けている状況でも焦らず、粘り強いプレーで2セット目を5-6で折り返す。3セット目、伊藤の執念の攻めでとうとう7-7の同点に追いついた。最後は一本勝負。「悔いのないように思い切り飛び込んだ」(伊藤)という渾身の突きが勝負を決め、表彰台の座をも射止めた。

初の表彰台に笑顔を見せる伊藤

 山根は世界ジュニア代表選考の国内ランキングでも上位に名を連ねる実力者。しかし、今大会その力を見せつけることはできなかった。トーナメント初戦はオーストラリアから派遣されたシーム・アシュリーとの対戦。1セット目は3-4で押されてしまうが、「外国人だからこそ慎重に」試合をしていた山根は、その後2セット目で同点に追いつく。決着は一本勝負へもつれ込んだ。これを制し、8-7で勝利すると、そこからは順当に勝ちベスト8に進出。準々決勝は山根と何度も対戦し、すでに手の内を知りあっているという古田彩稀(立命館大)が相手。山根も「接戦になることはわかっていた」。試合は相手に先制点を取られ、前半から苦しい展開に。思い通りのプレーをすることができずに、なかなか点差を縮めることができない。「一本勝負でもいいから勝とう」(山根)と挑んだ第3セット。気迫の攻撃を見せ3連続得点をするがあと一歩及ばず。13-15で惜敗した。山根にとって今大会の目標は優勝。ベスト8という結果に「悔しい」と渋い表情を見せた。

まさかの敗退で悔しさをにじませた山根

 全体的に満足のできる結果を得ることができなかった早大勢。今大会活躍が光った伊藤も、うれし涙を流した結果だったが、準決勝で悔しい経験をした。トーナメントは負けたら終わりの一発勝負。この悔しさをばねにして、常勝軍団への道を進んでほしい。

(記事 松本理沙、写真 川嶋悠里)

結果

▽男子フルーレ

松山大助(スポ1=東京・東亜学園) ベスト16

2回戦:○10-1秋山拓輝(山梨・北杜市甲陵)

3回戦:○10-7坂田将倫(法大)

4回戦:○10-4松本渉(東大)

準々決勝:●6-10伊藤真(日大)

三好修平(社1=愛媛・三島) ベスト16

2回戦:○10-7田中智暉(和歌山・向陽中)

3回戦:○10-3根橋拓海(長野・箕輪進修)

4回戦:○10-2堀田健生(東京・法政二高)

準々決勝:●6-10竹田陸人(東京・法政二高)

山口理伎(創理2=東京・早大学院) 2回戦敗退

2回戦:●4-10佐藤篤志(福島・川俣)

▽女子エペ

伊藤由佳(スポ1=栃木・宇都宮中央女) 3位

2回戦:○10-8能瀬みずき(香川・三本松)

3回戦:○10-6富永恵美(栃木湘南)

4回戦:○10-8小林未来(東女体大)

準々決勝:○11-5川瀬彩加(立命館大)

準決勝:●6-15古俣潮里(宮城・気仙沼)

3位決定戦:○8-7上田果歩(埼玉栄)

山根司(スポ2=香川・三本松) ベスト8

2回戦:○8-7シーム・アシュリー(オーストラリア)

3回戦:○7-3伊藤真希(岐阜・大垣南)

4回戦:○10-3上田詩乃(東京・東亜学園)

準々決勝:●13-15古田彩稀(立命館大)

山村彩和子(教1=岡山・玉野光南)3回戦敗退

2回戦:○10-3小田みはる(ジュニア・フェンシング・OITA)

3回戦:●6-10池田五月(法大)

コメント

山根司(スポ2=香川・三本松)

――今回のベスト8という結果を振り返っていかがですか

悔しいの一言です。

――きょうはどのような目標を掲げて挑んだのでしょうか

優勝です。

――では、準々決勝の敗因は何だったとお考えですか

やればいい技がわかっているのにそれができなかったこととその技に持っていくまでの自分の作りとかが甘かったかなと思います。あと、できない技をやり続けてしまったかなと思います。こうすればいいとわかっていても、自分のミスで相手に突かれてしまう。

――準々決勝は終始追う展開でしたが、どのような気持ちで戦っていましたか

結構あの相手だった人は当たるんですよね。だから、接戦になることはわかっていました。それがどっちに転ぶかは、ミスの少なさとか試合の組み立て方とかどれくらい我慢するかとかだと思っていたので、取られても一本勝負でもいいから勝とうという気持ちでした。

――初戦がオーストリアの選手との対決でしたが

海外遠征などに行けば外国の選手とやる機会もあるので、別に珍しいことではなかったんですけど。逆に相手が外人だったことは良かったのではないかなと思います。たぶん、日本人だったら勝ちに行っていたなと。いつも(日本人相手に)勝てると思って試合に入っているわけではありませんが、外人だからこそ慎重に慎重にという意識があったかなと思います。

――一本勝負のときの心境は

やることが決まっていたので、相手が出てきたところを切り返してストレートと決めていたから、自分を信じて…。あとはもう気持ちをポイントに乗せて…という感じです。

――ジュニアで戦うことも少なくなってきました

スウェーデンの遠征が1月の最後から2月にあって、それでもうジュニアの試合が終わりなので、とりあえずそれで一区切りですね。次は大学の試合で勝っていかなければいけないと思っています。いままで結果を残せていないわけではないので、そこまで不安はないんですけど、常に勝てるようになるにはやはりあと何段階も強くならないといけないかなと思うので、とりあえずリーグで自分がポイントゲッターになって、さらに楽に後輩たちと団体ができるようにしたいです。

――では、個人としては来季どのような目標を持ってやっていきたいですか

インカレ優勝です!

伊藤由佳(スポ1=栃木・宇都宮中央女)

――今大会を振り返っていかがですか

今回、プールも上がりやすい訳ではなかったのですが、トーナメントがきちんと自分がすることをすれば取れる試合ができる山だったので。絶対無理という相手ではなくて、少しずつでも追いついて点数を取っていけるような試合展開ができる組み合わせで、良かったなという思いがあります。

――初の3位という結果に対しての心境は

嬉しいです!

――トーナメントは順調に勝ち上がっていましたが、試合についていかがでしたか

途中自分が負けている相手や苦手としている相手に当たったのですが、そこでも変に意識せずできました。いつもは焦って取りにいってしまったり、間合いが近くなって中途半端なことをして、相手のペースに飲まれてしまったりしているのですが、今回は突きやすい位置、突きやすい間合いで勝負しようとしました。そして無理せずに試合を展開していこうと心がけました。

――準決勝を振り返って

準決勝でも、後ろに入っている先輩や上から応援してくれているみんなからアドバイスをもらいました。でもそれを実行できないのがとてももどかしくて…。何もできないで終わってしまった、という悔しい思いがすごくありました。そういうことを言われてから、きちんと自分でプレーを工夫して点を取っていけるようになりたいなと思います。

――逆転勝利を収めた3位決定戦はいかがでしたか

最後はプライオリティ(優先権)が相手にあって自分は取りにいかなくちゃいけないので、どんどん動きました。相手に突かれてもいいから、とにかく最後、悔いの無いように思いっきり飛び込んだら突けたので、それは本当に良かったです。

――これからの意気込みをお聞かせください

上に行っても自身を持って試合に臨める選手になりたいなと思っています。そのためにも技術やメンタルを磨いていきたいなと思います。