昨年の東京六大学馬術競技大会(六大学)では、9年ぶりの団体優勝を成し遂げた早大馬術部。新体制となって挑む今大会では連覇の期待がかかる中、馬の不調や人のケガもあり、「結果よりもチーム力を高めることに重きを置きたい」(板橋真央主将)と臨んだ。六大学による団体戦である今大会では、新馬馬場馬術競技(新馬馬場)、新馬障害馬術競技(新馬障害)、新人馬場馬術競技(新人馬場)、馬場馬術(複合馬場)と障害馬術(複合障害)からなる複合馬術競技、学生章典馬場馬術競技(学典馬場)、新人障害馬術競技(新人障害)、中障害馬術競技(中障害)を行い、新馬馬場と新馬障害を除く5競技の、個人の順位に応じて与えられるポイントの合計点で勝敗を競う。早大は1年生から3年生までの出場選手それぞれが実力を発揮し、2日間にわたる戦いを見事2位で締めくくった。
冷たい雨が降りしきる中、初日には複合馬術競技馬場馬術、新人馬場、学典馬場の3種目に早大からは5組が出場。新人馬場では糸山大樹副将(政経2=熊本・済々黌)とココドロ、中山明弥主務(文構2=東京・東農大一)と稲彩がともに最終得点率62%を超える好成績を残す。それぞれ2位と3位に入賞し、幸先のいいスタートを切った。続く学典馬場でも出場した糸山とココドロ、鶴見汐花副将(スポ3=栃木・佐野日大中教校)とロッキーロイヤル、栗田春香(政経3=東京・頌栄女学院)と稲彩の3組すべてが10位以内に入り、チームに計21ポイントをもたらした。首位の明大とは3ポイント差と、優勝を十分に狙える位置につけ、初日を終えた。
新人馬場3位の中山主務と稲彩
2日目は晴天の下、複合馬術競技障害馬術、新人障害、中障害の3種目が行われた。初日に続いて2日目でも、糸山とココドロの活躍が光った。「タイム勝負なのでとにかく速く」と臨んだ新人障害ではタイム減点、障害減点ともに0点で2位と5秒差をつけるタイムで1位に輝く。糸山は出場したすべての競技で入賞し、今大会の個人で獲得した合計ポイント数では明大の選手に続いて2位の活躍。優秀選手に選ばれ、チームの2位入賞に大きく貢献した。一方今大会の最後を飾る中障害には早大から鶴見とエオウィンが出場。「自信をもって臨めた」と語るように、鶴見とエオウィンは障害減点、タイム減点ともに0点と安定感のある走行を見せる。しかし他にも4組が総減点0の走行をし、勝負はジャンプオフと呼ばれる優勝決定戦へと委ねられた。鶴見とエオウィンはジャンプオフの走行でも変わらず冷静で、一つ一つ障害をクリアしていく。結果1つだけ障害物を落としたものの、総減点4点で完走した。しかしここでも4組が総減点4点で並ぶという拮抗(きっこう)した戦いに。順位は走行タイムにより決められ、鶴見とエオウィンは3位となった。こうして六大学のすべての競技が終了し、早大は優勝の明大に続く2位で大会を終えた。
新人障害で優勝した糸山副将とココドロ
中障害ジャンプオフで障害をクリアする鶴見副将とエオウィン
新体制となってから挑んだ初の団体戦。万全とはいえないコンディションの中でも、チームの一人一人が役割を全うし、2位をつかみとった。この大会は確実に新体制の馬術部に自信をもたらし、結束力を高めたであろう。これから新入生を迎え、さらに進化していく早大馬術部の今後の活躍に注目だ。
団体2位の賞状を手にして笑顔の板橋主将
表彰式後、集合写真に納まる馬術部一同
(記事 梶谷里桜、写真 梶谷里桜、出口啓貴、横山勝興)
※記事中の学年は昨年度のものです。
ポイント表
順位 | 優勝 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 |
学生章典 中障害・複合 | 15 | 12 | 10 | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 |
新人馬場 新人障害 | 12 | 10 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
※各競技において各大学の上位3選手をポイント対象とし、大学内最下位の選手が10位以内に入った場合、繰り上げてポイントを与える。
結果
▽団体成績
優勝 明治大学 129ポイント
2位 早稲田大学 82ポイント
3位 慶応義塾大学 41ポイント
▽新人馬場馬術競技(第3課目A2022)
2位 糸山、ココドロ 総得点率63.264% 10ポイント
3位 中山、稲彩 総得点率62.500% 8ポイント
17位 阿曽村、アイシングラー 総得点率52.361%
▽複合馬術競技馬場馬術(ワンスター2021 馬場馬術課目)
3位 糸山、ココドロ 総得点率65.29%
8位 栗田、デクスター 総得点率57.75%
14位 鶴見、エオウィン 総得点率55.22%
▽複合馬術競技障害飛越
馬場3位 糸山、ココドロ タイム60.31 タイム減点0 障害減点4 総減点4
馬場8位 栗田、デクスター 2反抗E
馬場14位 鶴見、エオウィン タイム61.50 タイム減点0 障害減点0 総減点0
▽複合馬術競技(最終結果)
4位 糸山、ココドロ 9ポイント
7位 鶴見、エオウィン 7ポイント
失権 栗田、デクスター
▽学生章典馬場馬術競技(第5課目A2022)
5位 糸山、ココドロ 総得点59.753% 8ポイント
8位 鶴見、ロッキーロイヤル 総得点率59.321% 7ポイント
16位 栗田、稲彩 総得点率58.704% 6ポイント
▽新人障害馬術競技
優勝 糸山、ココドロ タイム53.16 タイム減点0 障害減点0 総減点0 12ポイント
6位 阿曽村、デクスター タイム67.75 タイム減点8 障害減点4 総減点12 5ポイント
失権 板橋、ケニー 2反抗E
▽中障害馬術競技
3位 鶴見、エオウィン タイム66.06 タイム減点0 障害減点0 総減点0、JOタイム44.47 タイム減点0 障害減点4 総減点4 10ポイント
▽新馬障害馬術競技
優勝 鶴見、ケニー タイム52.31 タイム減点0 障害減点4 総減点4
コメント
板橋真央主将(商3=早稲田佐賀)
――団体2位という総合結果を振り返っていかがですか
代が変わってから今まで選手として試合に出ていた方たちがたくさん抜けてしまって、みんな出場する試合の難易度に初挑戦という感じでどうしようか悩んでいました。そこで「今回は結果の良し悪しよりもチーム力が高まる試合になればいいな」と思っていたのですが、思っていたよりもみんなが健闘してくれてこんな成績を取ることができて驚いています。
――板橋さん個人の新人障害の走行を振り返っていかがですか
私は失権してしまって1ポイントもチームに貢献できなかったので、すごく悔しい気持ちと申し訳ない気持ちがあります。新人障害で出場したケニーという馬はつい最近早大に来た馬で、あんまりどう乗ったらいいかとか、どういう感じの馬なのかとかをあまりよくつかめていなくて、乗りこなすことが難しかったです。だから今後は瞬時にどんな馬なのかを感じ取って、対応できるような技術力を磨いていきたいです。
――関東学生競技大会(関東学生)に向けての目標を教えてください
次はまた新しい1年生が入ってきて部の雰囲気もまた大きく変わると思うので、上手くまとめながら、優勝を目指したいと思います。
鶴見汐花副将(スポ3=栃木・佐野日大中教校)
――団体2位という総合結果を振り返っていかがですか
大会が始まる前は2位なんて全く目指せるところにいないと思っていました。馬の不調があったり選手がケガしてしまったりなどで万全の状態では出られなかったので、正直びっくりしています。
――学典馬場の演技を振り返っていかがですか
特定の技でミスがみられたのですが、そこ以外は良かったので、そこを改善すればもっとよくなると思います。課題が見つかった演技だったかなと思います。
――複合馬術競技を振り返っていかがですか
元々気性が難しい馬だったのですが、それが今回馬場(馬術)でかなり前面に出てしまって、かなりの減点をもらいました。障害(馬術)では総減点は0点だったのですが、その減点が障害に響いてしまったので、次の課題は馬場かなと言う感じです。
――中障害についてはいかがですか
中障害と複合(馬術競技)は同じ馬で出たのですが、元々障害を得意にしている馬なので、障害がちょっと高くても、自信を持って臨むことができました。
――関東学生に向けて目標を教えてください
昨年関東学生では団体で優勝という、いい結果を残しています。また4月から新入部員を迎えて体制が変わるので、その子たちと一緒に団体は優勝を目指していけたらと思います。個人ももちろん優勝を目指します。
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糸山大樹副将(政経2=熊本・済々黌)
――団体2位という総合結果を振り返っていかがですか
昨年の4年生が主力だったので、4年生が引退なさると人数が少なくなって、層も薄くなってしまいました。だから六大学の目標を決める時に、2位も厳しいのではないかとなって、明大がセレクションもいっぱいいて厳しいのはわかっていたので、「2位を目指せればいいね」という話でした。でもこの選手層で2位になれたのはよかったな、と思います。
――新人馬場と学典馬場を振り返っていかがですか
新人馬場は去年からココドロとちょくちょく出させてもらっていたので、練習もあまりしませんでした。ある程度点が取れるのはわかっていたので、納得とまではいかないけど、ある程度できたかな、と思います。明大の1位だった「ザリーノM」という馬がいるのですが、とてもいい馬でその馬に勝ちたいな、と思っていました。でも勝てなくて、ちょっと悔しいです。学典馬場は第5課目Aという経路なのですが、本当にやったことがなくて、練習もできていなくて、誤魔化しに馬が付き合ってくれました。人的には「全然ダメだったな」と思いますが、5位がとれたのは馬のおかげだと思います。
――複合についてはいかがですか
ココドロは総合馬で複合が一番力を発揮できる馬だと思っていて、複合の馬場はワンスターという課目なのですが、それも馬が一番得意な課目だから、馬場で3位を取れたのは良かったです。でも障害競技で最後1個障害を落としてしまって一つ順位を下げてしまい、しかもいつも落としてしまうダブルという障害物の2個目で落としてしまったので、それは本当に人が成長できてなくて悔しいです。
――1位だった新人障害についてはいかがですか
新人障害はタイム勝負なので、とにかく押せ押せで走行しました。馬に負担はかけてしまったのですが、障害を落とさずによく飛んでくれたので馬に感謝です。
――今大会ではすべての競技にココドロと出場されています。ココドロとの相性についてはいかがですか
代替わりしてからずっと乗らせてもらっていますが、学生だけでなく社会人も含めたアジア大会などに出ていた馬だから、自分とは本当に不相応で、まだ全くその力を引き出せていないと思います。今はまだおんぶに抱っこという感じで馬に助けてもらっていますが、次の試合までに少しでも馬を助けられるような人になれたらな、と思います。
――優秀選手に選ばれたことについてはいかがですか
鶴見さんとかは新人競技に出ることができなくて、一方自分は4種目に出ることができたからポイントを稼ぐことができただけで、全然1番うまくないと思いますが、ポイントを最も稼ぐことができたことはよかったな、と思います。
――関東学生に向けて目標を教えてください
うまい子が4月からたくさん入ってくるので、試合に出る馬を取られてしまうことがないように日頃の練習からきちんと頑張りたいです。出場すればいい結果を出すことができるすごい馬たちなので、一緒に出ることができたらいいな、と思います。