1年間の大一番、全日本学生大会(全日本学生)が幕を開けた。6月の関東学生競技大会を総合成績3位で終え、団体出場権を獲得した早大。4カ月間準備を進めてきた日本一決定戦へとついに挑んだ。6日間の長期戦で3種目が行われた全日本学生。早大からは髙田雅主将(人4=大阪女学院)、坂藤仁美(教4=東京・順天)、吉田光佑(スポ4=東福岡)、鶴見汐花副将(スポ3=栃木・佐野日大中教校)の4選手が出場した。2、3日に全日本学生賞典障害飛越競技大会(障害馬術)が実施されると、4、5日(5日は決勝のみ)に全日本学生賞典馬場馬術競技大会(馬場馬術)、5、6日に全日本学生賞典総合馬術競技大会(総合馬術)を実施。3大会での個人ポイントと団体ポイント(各大会3人馬の出場が条件)を合計するかたちで総合成績が算出された。障害馬術で吉田とアルボアが早大史上14年ぶり2度目の個人優勝を果たすと、総合馬術では坂藤とココドロが個人6位、吉田とデクスターが個人7位入賞を果たし、団体でも過去最高の2位入賞。そして3種目では史上初の準優勝を決めた。大勝負となった全日本学生でも偉業を次々と達成し、早大馬術部の歴史の一ページに名を刻んだ。
最初の2日間で行われた障害馬術には髙田主将とプリンチペスコ、鶴見副将と稲嵐、吉田とアルボアの3人馬が出場した。計58人馬が出場した今回の障害馬術。早大は得意とする障害馬術で団体優勝を狙った。最初に登場した鶴見副将と稲嵐は関東学生で昨年は個人優勝、今年も個人2位となった名コンビ。しかし、今大会は直前に稲嵐が不調に陥り、出場が危ぶまれる状態であった。それでも出場を果たすと、2回の走行で合計減点は9。コンディションに恵まれない中で精一杯のパフォーマンスを見せ、18位となった。続く髙田主将とプリンチペスコは1回目の走行を1落下で完走するも、2回目の走行で4落下と大きく失速。合計減点は20となり25位に沈んだ。2組が上位に食い込めない中、ここで吉田とアルボアが健闘を見せる。1回目の走行を総減点0で駆け抜けると、2回目の走行も総減点0を維持しジャンプオフに進出。計8人馬による個人優勝争いでも障害を1つも落とさずに完走し、タイムは最速の35.00。見事個人優勝に輝き、早大に特大の個人ポイント100点をもたらした。しかし目標としていた団体優勝はかなわず、団体順位は5位に終わった。また、2日には団体成績には入らないオープン競技としてM-D 障害馬術競技を実施。早大からは吉實陽介主務(政経4=埼玉・昌平)とアイシングラーが出場した。障害の落下を1つに抑え経路を完走すると、タイムも上位に。5位入賞を果たした。
障害馬術で個人優勝に輝いた吉田とアルボア
障害馬術の表彰式後に全員でポーズを見せる馬術部一同
続いて実施された馬場馬術には髙田主将と如月、坂藤とココドロ、吉田とロッキーロイヤル、鶴見副将と稲彩の4人馬がそろい踏みで出場。馬場馬術は得意種目ではないものの各コンビが最善を尽くした。しかし、得点率60%の壁は高い。団体出場した他大学が最終得点率60%超えの人馬を輩出する中、早大は唯一60%の人馬が現れず、団体順位は5大学中5位となった。また、個人順位は吉田とロッキーロイヤルの14位が最高で他のペアはいずれも20位台。決勝進出は果たせなかった。ここまで苦戦する部分もあったが、各競技に3人馬以上が出場し団体ポイントを稼ぐと、各人馬も個人ポイントも着実に積み重ねた。上位入賞の可能性を十分に残し最終競技に挑む。
勝負を決する総合馬術には坂藤とココドロ、吉田とデクスター、鶴見副将とエオウィンの3人馬が出場した。馬場(総合馬場)、クロスカントリー、障害(総合障害)からなる総合馬術。3種目の総減点によって順位が決定された。3組いずれも総合馬場で60%付近の得点率をマークすると、坂藤とココドロ、吉田とデクスターはクロスカントリーと総合障害で総減点0にまとめ個人6、7位入賞を果たした。鶴見副将はクロスカントリーこそ5.6点失うも総合障害は総減点0に抑え、上位の13位に入った。各人馬が好成績を残した総合馬術では早大史上過去最高の団体2位に。最終競技で個人ポイントと団体ポイントを大量に獲得した早大は、障害馬術、馬場馬術、総合馬術による3種目総合で見事準優勝。全日本学生準優勝は早大史上初となり、全国の大舞台でも快挙を成し遂げた。
個人6位に入賞した坂藤とココドロ
全国2位に輝いた早大。各人馬が各競技でベストを尽くし、早大史上最高の成績に結びつけた。一方で、目標としていた障害馬術の団体優勝を逃し、絶対王者の日大を倒せなかったことについては悔しさを見せ、さらなる飛躍を誓った。しかし、このメンバーで迎える試合も残すところ来月の全慶應義塾対全早稲田定期戦(早慶戦)のみ。4年生部員は全日本学生でのリベンジは後輩に託すことになるが、引退試合となる早慶戦でもチームをけん引し、再び偉業を成し遂げてくれることであろう。
3種目総合の表彰式後、集合写真に納まる馬術部一同
(記事 横山勝興、写真 古賀有希氏提供)
ポイント算出方法
3種目総合の団体順位は団体ポイント、個人ポイントの合算により決定する。
団体ポイント表
順位 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 |
ポイント | 70 | 60 | 51 | 43 | 36 | 30 | 25 | 21 | 18 | 16 |
個人ポイント表
順位 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 | 11位 | 12位 | 13位 | 14位 | 15位 | 16位 | 17位 | 18位 | 19位 | 20位 |
ポイント | 100 | 90 | 85 | 81 | 78 | 75 | 72 | 69 | 66 | 63 | 60 | 57 | 54 | 51 | 48 | 45 | 42 | 39 | 36 | 34 |
順位 | 21位 | 22位 | 23位 | 24位 | 25位 | 26位 | 27位 | 28位 | 29位 | 30位 | 31位 | 32位 | 33位 | 34位 | 35位 | 36位 | 37位 | 38位 | 39位 | |
ポイント | 32 | 30 | 28 | 26 | 24 | 23 | 22 | 21 | 20 | 19 | 18 | 17 | 16 | 15 | 14 | 13 | 12 | 11 | 10 |
結果
▽3種目総合
優勝 日本大学 1113ポイント
2位 早稲田大学 631ポイント
3位 立命館大学 567ポイント
▽第72回全日本学生賞典障害飛越競技大会(障害馬術)
5位 早稲田大学 総減点29 36ポイント
個人優勝 吉田、アルボア 2回走行合計減点0 2回走行合計タイム142.26、JO総減点0 JOタイム35.00 100ポイント
個人18位 鶴見、稲嵐 2回走行合計減点9 2回走行合計タイム146.91 39ポイント
個人25位 髙田、プリンチペスコ 2回走行合計減点20 2回走行合計タイム129.27 24ポイント
▽第65回全日本学生賞典馬場馬術競技大会(馬場馬術)
5位 早稲田大学 団体合計(上位3名)170.808% 36ポイント
個人14位 吉田、ロッキーロイヤル 総得点率59.577% 51ポイント
個人22位 坂藤、ココドロ 総得点率56.000% 30ポイント
個人23位 鶴見、稲彩 総得点率55.231% 28ポイント
個人24位 髙田、如月 総得点率55.154% 26ポイント
▽関東学生賞典総合馬術競技大会(総合馬術、最終結果)
2位 早稲田大学 団体総減点(上位3名)118.0 60ポイント
個人6位 坂藤、ココドロ 減点合計33.9 75ポイント
個人7位 吉田、デクスター 減点合計37.0 72ポイント
個人13位 鶴見、エオウィン 減点合計47.1 54ポイント
▽M-D障害馬術競技大会
4位 吉實、アイシングラー タイム64.04 タイム減点0 障害減点4 総減点4
コメント
※インタビューは後日、オンラインで実施されました。
髙田雅主将(人4=大阪女学院)
――3種目総合で準優勝というチームの成績を振り返っていかがですか
3種目それぞれを選手が出し切った結果でおまけとして(準優勝が)ついてきたのかなと感じています。全国で3種目組める団体も少ないので、素直に喜ばしい結果だなと思っています。
――今大会ではチームとしてどのようなことを目標とされていましたか
障害(馬術)団体優勝と馬場(馬術)はあわよくば上位に食い込めればいいかなと思っていました。総合(馬術)は結果的には団体2位でしたが、そこは予想外でした。
――個人としてはどのようなことを目標とされていましたか
障害と馬場に出場させていただきましたが、障害はジャンプオフに進出すること、馬場は決勝に進出することを目標にしていました。
――障害馬術は個人25位でしたが、走行を振り返っていかがですか
第1走行は1落(1落下)でしたが、人と馬の調和があまり取れずに馬の能力で帰ってきたところが大きかったです。2日目の第2走行は落ち着いてやれることをやろうと思って出ましたが、初日の調子が響いてしまったかなと思っています。2日間振り返って考えてみると団体優勝を狙っていましたし、個人面でもジャンプオフ進出を目標としていたので悔しいです。ですが、これが自分の実力で、4年間この馬と一緒に頑張ってきてやれることをやり切った結果だと思います。
――馬場馬術は個人24位でしたが、演技を振り返っていかがですか
初めてその馬(如月)と三木ホースランドパークでの演技でした。周りに敏感な馬なので入厩日から運動をするようにしたら馬が(競技場に)なじんでくれて安心して演技に臨めました。ただ、本番となると妙な力も入ったりしたので、雰囲気的には良かったのですが小さなミスにつながったりして点数は伸びませんでした。
――各競技の団体順位についてはどう感じていますか
障害に関しては確実に私の2日目の結果のせいで表彰台を逃したと思っていて責任を感じています。障害の団体優勝が現実的で早稲田の快挙になるという意味でも目指していたところだったので、責任は私にあるなと感じます。その中でも一緒にやってきた馬のことは讃えてあげたいなと思っています。馬場に関しては他の部も評価をしていたので、団体3位以内はなかなか難しい目標だと思っていました。それぞれが自己ベストを出せたらと思っていましたが、なかなか結果が振るいませんでした。なので、次の早慶戦で自己ベストを出せたらなと思っています。総合は、私が去年からコンビを組んでいたデクスターが元々能力の高い馬で、吉田が一緒に出て障害で優勝できるような実力もあったので、若干若い馬ではありますが、経験のある吉田が乗ったら結果が出ると思っていました。布陣で考えると、エオウィン、ココドロ、デクスターで団体でいい成績になるんじゃないかと思っていて、不安要素はありましたが安定した走りをそれぞれが見せてくれたことによってつかめた第2位かなと思っています。
――引退試合となる来月の早慶戦に向けて意気込みをお願いします
昨年は同点となって中障害の勝負で負けて優勝を逃してしまったので、今年は勝って終わりたいなと思っています。あとはそれ以上に全員が早慶戦に勝ったことを祝福できるような状態で勝ちを狙いに行けるような雰囲気をつくって、選手それぞれの実力を整えたいです。あまり時間はありませんが、最後に主将としてそのような役目を果たしたいと思っています。
坂藤仁美(教4=東京・順天)
――3種目総合で準優勝というチームの成績を振り返っていかがですか
OBの方々やいつもサポートしてくださる方たちあってのこの結果だったと思うので、いい結果で終わることができよかったです。
――今大会ではどのようなことを目標とされていましたか
乗っている馬が全学(全日本学生)に出場する他大の人たちにも知られているような馬でした。その馬のすごさをその場で見せることができたらいいなと思い出場しました。
――馬場馬術は個人22位でしたが、演技を振り返っていかがですか
馬場は思っていたような演技ができなかったので、悔しい思いがあります。
――総合馬術では個人6位入賞を果たしましたが、振り返っていかがですか
総合の方は経験のある馬だったので馬の能力を発揮させることができてよかったと思います。
――引退試合となる来月の早慶戦に向けて意気込みをお願いします
昨年の早慶戦では負けていて慶大は今年も布陣がそろっているなと思っているので、自分たちのできることをそれぞれが発揮できるように、いい結果で終われるように頑張りたいなと思います。
吉田光佑(スポ4=東福岡)
――3種目総合で準優勝というチームの成績を振り返っていかがですか
早大としては史上初で快挙ということでうれしいのですが、絶対王者の日大を倒せずに優勝できなかったので悔しさでいっぱいです。
――早学戦を欠場されていましたが、実戦は久しぶりでしたか
いいえ、試合には結構出ていたので全然問題なかったです。
――今大会ではどのようなことを目標とされていましたか
僕自身障害馬術が得意なのですが、まずは障害馬術での団体優勝を狙って、その中で個人優勝も狙えたらいいなと思っていました。個人優勝はできたのでうれしく思いますが、団体優勝もとったうえで個人優勝をとりたかった思いがあるので、悔しさが残ります。
――障害馬術で団体優勝は逃してしまいましたが、個人優勝を果たせた点についてはいかがですか
夏に全日本(全日本学生選手権)があったのですが、そこで3位で終わってしまって悔しい気持ちが相当あったので、全日本学生は「絶対勝つ」と決めていました。練習も相当してきましたし、僕が乗った馬は学生の乗る馬の中では別格のいい馬だと思っていて、相当信頼を置いていたので、この馬となら絶対勝てると思っていました。有言実行で最後の最後に優勝できましたが、4年生ということでいろいろな思いがありました。それまで失敗もしてきてそこから学んだことも多かったのですが、これまで監督やコーチ陣をはじめいろいろな人に支えてもらった大学生活でこの1年は本当に大きくて、うれしさというよりも感謝の気持ちでいっぱいです。
――馬場馬術は個人14位でしたが、演技は振り返っていかがですか
馬場は馬の調子がとても良かったのですが、前日の調整に失敗してしまって、それが響くようなかたちで本番もミスが出てしまいました。本来ならば上位10人に残って決勝でも演技をするつもりでいたのですが、それができなかったので非常に悔しいです。
――総合馬術では個人7位入賞を果たしましたが、振り返っていかがですか
この馬(デクスター)に乗るのは初めてで、練習の期間も1カ月ちょっとしかなかったので不安要素が結構ある中でこの試合に来たのですが、馬の調子が当日良くてラッキーな部分が相当多かったので、(入賞できたことは)うれしいのですが、この試合限りの出来かなと思います。
――引退試合となる来月の早慶戦に向けて意気込みをお願いします
早慶戦も今回出た馬たちで出るのですが、勝つのを大前提で競技自体を楽しみたいです。早慶戦も楽しくいい感じで終われたらなと思います。僕はこれで馬術を辞めるわけじゃなくて、卒業してから海外でプロとしてやっていくので、ここがスタート地点だと思って、まずはきれいなかたちで大学生活を終わらせたいと思います。
鶴見汐花副将(スポ3=栃木・佐野日大中教校)
――3種目総合で準優勝というチームの成績を振り返っていかがですか
早大史上初の準優勝ということで、この代になってから六大学(東京六大学競技大会)に始まり快挙が続いていて上を目指せるチームだと思っていたので、満足いくようなかたちになってうれしいです。
――今大会ではどのようなことを目標とされていましたか
私は3種目出場しました。まず障害では試合前に馬の不調が続いてしまい、出場も危ぶまれていましたが、何とか出場することができたので、団体として結果を残すことができるようにしっかり帰ってくることが目標でした。馬場に関しては私が乗った馬はポジション的には4番手の馬ですが、それでも自分と馬のいい演技ができたらいいなと思って臨みました。総合に関しては経験豊富な馬だったので、上位を狙えたらなと思っていました。
――障害馬術は個人18位でしたが、振り返っていかがですか
(稲嵐が)試合前2週間くらいずっと運動できない日が続いて、会場入りしても腹痛で運動ができませんでした。調整できない中で2日間通してしっかり帰ってくることができたというのは、本当に馬が頑張ってくれたとしか言いようがないです。
――馬場馬術は個人23位でしたが、演技を振り返っていかがですか
自己ベストには及びませんでしたが、そのときにできることは全てできたかなと思います。
――総合馬術は個人13位でしたが、振り返っていかがですか
まず馬場(総合馬場)でいい点数がとれなくて、その次の日の野外(クロスカントリー)も障害減点はありませんでしたが、タイムが少しこぼれてしまって減点が増えてしまいました。最後の余力審査(総合障害)に関しては、馬も余裕のある馬なので安定して減点0で帰ってくることができてよかったと思います。結果的に総合の団体2位にもつながっているのでよかったです。
――最後に早慶戦への意気込みをお願いします
昨年は負けているので、今年はこの快挙を続けてきたチームなら勝てると信じて頑張っていきたいと思います。