2月の関東学生新人馬術大会で36年ぶりの団体優勝、4月の東京六大学競技大会で44年ぶりの完全優勝、6月の関東学生賞典障害飛越競技大会で13年ぶりの団体優勝を飾り、毎回のように偉業を成し遂げてきた今シーズンの早大馬術部。今年も毎年恒例の全学習院対全早稲田定期戦(早学戦)を迎え、早大は14連覇を目指す戦いに挑んだ。競技ごとに与えられる勝ち点の合計で総合優勝を争う早学戦。初日は第1競技・JEF馬場馬術競技 L1課目2013(L1課目)、第4競技・現役小障害飛越競技(現役小障害)で早大が勝利するも、勝ち点の高い第2競技・JEF馬場馬術競技 S1課目2013(S1課目)は学習院大が制し、両校同点で折り返す。2日目は第5競技・高校生障害飛越競技(高校生障害)、第6競技・OB・OG障害飛越競技(OB・OG障害)で早大が勝利すると、第7競技・現役中障害飛越競技(現役中障害)では圧勝。14連覇を見事達成し、約1カ月後に控えた全日本学生大会(全日本学生)へ向け大きな弾みをつけるかたちとなった。今年の勝利の結果、早学戦の通算成績は35勝33敗となった。
L1課目、S1課目といった馬場馬術を強みとする学習院大と、障害馬術を強みとする早大で接戦が予想された今回の早学戦。その予想通り、初日は両者譲らぬ展開となった。第1競技・L1課目では、熊田泰希(法4=東京・早実)と如月、糸山大樹(政経2=熊本・済々黌)とココドロが終始安定した演技を披露し、61%を超える得点率を記録。栗田春香(政経3=東京・頌栄女学院)と稲彩も4位にランクインし、早大は幸先よく勝利を飾った。しかし、勝ち点の高い第2競技・S1課目では学習院大が意地を見せる。終わってみれば1、2、4位を学習院大に独占され、敗北を喫した。それでも第4競技・現役小障害飛越競技(現役小障害)では、熊田とエメラルドフローラ、板橋真央(商3=早稲田佐賀)とデクスターが総減点0かつ好タイムで完走し、早大が再び勝利。この時点で両校の勝ち点数は5-5の同点となり、勝負の行方は2日目に持ち越されることとなった。なお、勝ち点が付与されないオープン競技として実施された第3競技・JEF馬場馬術競技 A2課目2013では、中山明弥(文構2=東京・東農大一)とグランダーマ、尾ケ井港久(スポ2=千葉・市川)とグランダーマの両組が健闘。いずれも61%を超える得点率で、それぞれ1位と3位にランクインした。
L1課目で落ち着いた演技を披露する熊田と如月
迎えた勝負の2日目は高校生、現役生、OB、OGによる総力戦となった。第5競技・高校生障害では、本柳香織(早実、1年)と稲蓮が最初に登場し総減点0で経路を駆け抜けると、中山颯慈(早実、2年)とラトゥールブリエも総減点を4に抑えて完走。総減点27の学習院大に圧勝し、優勝争いでリードする展開に。その勢いに乗るように、第6競技・OB・OG障害に出場した早大のOB、OGも続く。この競技は早学戦の中で唯一、両校の選手が1名ずつ同一馬に騎乗して減点の少なかった選手を勝者とし、その勝者の人数で競う持ち寄り半自馬戦として行われた。蒔苗知紀コーチ(令元国教卒=東京・玉川学園)とラトゥールブリエ、石山晴茄(スポM1=茨城・つくば秀英)と稲蓮、山下大輝氏(令2スポ卒)と桜小町(学習院提供馬)、田中俊司監督(平9教卒=東京・早実)と丹桜(学習院提供馬)の4人馬が出場し、3勝1敗と勝ち越しに成功。ここでも勝ち点2を重ね、総合優勝へ向けさらに勢いをつけた。そして、第7競技・現役中障害。この時点で両校の勝ち点は9-7。同点の場合は第7競技の勝者が優勝となるため、両校で勝ち点差が2点つくこの第7競技が優勝決定戦となった。その現役中障害は序盤から失権が相次ぐ波乱の展開に。そのような状況の中、坂藤仁美(教4=東京・順天)とココドロ、鶴見汐花副将(スポ3=栃木・佐野日大中教校)と稲嵐、髙田雅主将(人4=大阪女学院)とプリンチペスコの3人馬はいずれも経路を完走。特に鶴見副将と稲嵐は総減点0の圧巻の走行を見せた。対する学習院大は出場した2人馬がいずれも失権に終わり、第7競技での早大の勝利が確定。早学戦総合優勝も確定し、14連覇をかなえた。
中障害で最終障害をクリアする鶴見副将と稲嵐
総力戦を制した。試合直前には主力人馬が欠場するアクシデントに見舞われたが、それをものともせず多くの人馬が各競技でベストを尽くし、総合優勝につなげた。そして、これまで68年間守られてきた早学戦という伝統の一戦が今年も無事に閉幕したことも大きな意味を持つ。特別な定期戦でも安定した強さを見せ、全日本学生への期待をうかがわせた早大馬術部。約1カ月後に再び栄冠に輝く姿を期待したい。
総合優勝後、集合写真に納まる馬術部一同
(記事 横山勝興、写真 新井沙奈、荒井結月、田部井駿平、出口啓貴、湊紗希、横山勝興、梶谷里桜)
勝ち点表
競技 | 勝ち | 負け |
第1競技・第4競技・第5競技・第6競技 | 2 | 1 |
第2競技・第7競技 | 3 | 1 |
※全ての競技で得た勝ち点を合計し、合計得点の多い団体を総合優勝とする。同点の場合は、第7競技に勝った団体を総合優勝とする。引き分けの場合は双方に1点を与える。なお、第3競技は勝ち点が加算されないオープン競技。
結果
▽団体成績
優勝 早稲田大学 12点
2位 学習院大学 8点
▽第1競技 JEF馬場馬術競技 L1課目2013
早稲田大学 勝ち点2
1位 熊田、如月 最終得点率61.667%
3位 糸山、ココドロ 最終得点率61.067%
4位 栗田、稲彩 最終得点率57.400%
WD マギー、ロッキーロイヤル
▽第2競技 JEF馬場馬術競技 S1課目2013
早稲田大学 勝ち点1
3位 坂藤、ココドロ 最終得点率62.115%
5位 髙田、如月 最終得点率61.666%
7位 鶴見、稲彩 最終得点率56.410%
WD 吉田、ロッキーロイヤル
▽第3競技 JEF馬場馬術競技 A2課目2013(オープン競技)
1位 中山、グランダーマ 最終得点率61.547%
3位 尾ケ井、グランダーマ 最終得点率61.190%
▽第4競技 現役小障害飛越競技
早稲田大学 勝ち点2
1位 熊田、エメラルドフローラ タイム50.500 タイム減点0 障害減点0 総減点0
2位 板橋、デクスター タイム52.750 タイム減点0 障害減点0 総減点0
3位 栗田、アイシングラー タイム60.150 タイム減点0 障害減点0 総減点0
4位 金子、稲蓮 タイム63.320 タイム減点0 障害減点0 総減点0
5位 糸山、バックハウス タイム44.030 タイム減点0 障害減点4 総減点4
▽第5競技 高校生障害飛越競技
早稲田大学 勝ち点2
1位 本柳、稲蓮 タイム66.62 タイム減点0 障害減点0 総減点0
3位 中山、ラトゥールブリエ タイム56.95 タイム減点0 障害減点4 総減点4
▽第6競技 OB・OG障害飛越競技
早稲田大学 勝ち点2
○ 蒔苗、ラトゥールブリエ タイム51.39 障害減点0 タイム減点0 総減点0
○ 山下、桜小町 タイム49.23 障害減点4 タイム減点0 総減点4
○ 石山、稲蓮 タイム46.70 障害減点0 タイム減点0 総減点0
● 田中、丹桜 タイム51.14 障害減点0 タイム減点0 総減点0
▽第7競技 現役中障害飛越競技
早稲田大学 勝ち点3
1位 鶴見、稲嵐 タイム72.530 タイム減点0 障害減点0 総減点0
2位 髙田、プリンチペスコ タイム63.080 タイム減点0 障害減点4 総減点4
3位 坂藤、ココドロ タイム71.120 タイム減点0 障害減点4 総減点4
2反E 吉實、アイシングラー
WD 吉田、デクスター
コメント
髙田雅主将(人4=大阪女学院)
――総合優勝を果たしましたが、2日間のチームの成績を振り返っていかがですか
1日目は馬場の強豪の学習院相手に大きな戦力になる予定だったロッキーロイヤルが棄権になった状態で迎えたので、勝敗がギリギリになってしまって不安なところはありました。ですが、L(L1課目)で如月が優勝して、ココドロが3位入賞で何とか勝てました。S(S1課目)は最初から厳しい戦いになると感じていて、各自がベストを尽くせればいいなと思っていて、みんなそれなりにいい内容で終えられたと思います。負けはしましたが、全学(全日本学生)につながるいい内容だったかなと思っています。高校生とOB・OGの方々には楽しんで競技に挑んでもらえたらなと思っていたので、実際にいい雰囲気で終われて優勝者が出てチームとして勝てたことも良かったなと思います。中障害に関しては負けないと思っていましたが、私の中では全学のことを考えると総減点0で帰ってくることを想定していたので、内容としては次にどこかの試合でやり直しをしないといけないと思っています。
――今大会の目標としては優勝を掲げられていましたか
優勝ももちろんですが、関東学生や全学に出られない選手がこの場で活躍できたらなと思っていました。あとは、新たにA2(課目)が追加されたので、下級生が早学戦という伝統的な大会を体感できるようにしたいと思っていました。
――S1課目での演技を振り返っていかがですか
待機馬場にいるときから馬の調子がいいなと思っていて、その前のLもいい感じで帰ってきてくれていたので、そのまま上手く乗りたいと思っていたのですが、経路に入ると小さなミスや自分の経験不足で点を落としてしまったところが多かったので、全学までに馬の調整だけでなく自分の知識もしっかり増やしていきたいです。
――中障害についてはいかがですか
前回プリンチペスコと出た三木での試合が全然良くなくて、自分がコースを回る感覚を立て直さないといけないと思っていました。結局1個(障害を)落としてしまいましたが、全学の(障害の)高さは今日より20センチ上がるので、今日の110センチの高さで1個落としてしまっていたら団体優勝も目指せなくなってしまいます。残り少ない期間で人も馬もどれだけ上げていくかが重要だと思い知らされました。
――最後の全日本学生に向けて個人としての意気込みをお願いします
プリンチペスコの障害(馬術)と如月の馬場(馬術)だけの出場になりました。総合(馬術)は私の都合で選手を入れ替えることになってデクスターとのコンビはなくなってしまうのですが、2種目に専念できるので、障害も馬場も入賞圏内にしっかり食い込んでいけるように戦っていきたいと思います。
――チームとしては以前、障害での団体優勝を目標にされていましたよね
障害での団体優勝はもちろんなのですが、馬場も総合も馬自体はそろっているので、3種目総合でもいい順位に食い込めるかなと思っています。全体でいい成績を取れるようにしたいです。
坂藤仁美(教4=東京・順天)
――チームの成績を振り返っていかがですか
自分も含めてみんながそれぞれベストを尽くせた訳ではないと思います。それでも結果的にはほとんど勝つことができて良かったです。
――今大会ではどんなことを目標にしていましたか
1頭の馬でS1課目と中障害に出て、やはり意識したことや練習してきたことはそれぞれで全然違うので、やってきたことが出せるように頑張ろうと思っていました。
―― 1日目のS1課目を振り返っていかがですか
来月の頭に全日本学生があるので、そこでベストな演技ができるように今回は色々と試して調整できればと思って臨みました。
――今日の中障害を振り返っていかがですか
110センチといつもより高めなのもあって、馬の気合いが入ってしまい、馬自身が勝手に飛んでしまう場面が多かったです。それが(障害の)落下につながってしまったのが反省です。
――全日本学生への意気込みをお願いします
3月から試合に出てきた中で得られた反省点を全日本学生で生かして、ベストな走行と演技ができるようにしたいです。
熊田泰希(法4=東京・早実)※1日目終了時
――学習院大と同点ですが、振り返っていかがですか
S1は分が悪いと思っていましたが、L(L1課目)と小障害と二つ取れての同点で、明日は自信ある競技が多いのでいい感じだと思います。
――今大会の目標としてどんなことを掲げられていましたか
L1は、いい馬に乗せてもらっているので勝つことを目標にしていました。小障害は、直前に今日乗った馬と一緒に出た試合で僕の調子が悪くて失敗してしまったので、なるべく馬に負担かけないかたちで帰ってこれればと思っていました。
――L1課目を振り返っていかがですか
髙田が先に調整してくれてよい状態で乗せてもらったので、自信もありましたし勝ててよかったです。ただ、細かいところで自分の雑さが出て、馬の本来のポテンシャルを生かしきれずに点が伸びなかったと思います。今後早慶戦でも乗るので、そこは修正したいです。勝てたのはよかったと思います。
――小障害についてはいかがですか
馬が頑張ってくれて勝てましたが、内容や調整を考えるとまだまだ自分は足りていないなと思います。若い女の子の馬だが馬の気持ちもあまり考えられていないなと思っています。
――次戦に向けて意気込みをお願いします
早慶戦が引退前最後の試合になると思います。小障害は今日とは違う馬かもしれませんがL1は引き続き如月に乗せてもらいますし、小障害も馬に合った乗り方で結果を出せればと思います。
鶴見汐花副将(スポ3=栃木・佐野日大中教校)
――2日間のチームの成績を振り返っていかがですか
1日目は馬場と小障害ということで馬場は正直言って学習院大学には敵わないと思っていたのですが、チームのおかげでL1課目は勝ち点を取ることができたので良かったと思います。2日目はOB・OG戦もすごく盛り上がっていましたし、いいチームワークで全部勝つことができ、その結果連覇を途切れさせることなく今年も勝ててよかったです。
――今大会ではどんなことを目標にしていましたか
早稲田大学として勝つことはもちろん、個人としては来月行われる全日本学生に向けた調整と、前回出場した大会(みっきぃオータムホースショー)であまり結果が良くなかったので、それのリベンジをして、いい状況に持っていくことを目標にしていました。
――1日目のS1課目を振り返っていかがですか
あまり良くなくて自己ベストには全く及ばないような内容だったのでもう一回やり直して来月の全日本学生には間に合わせたいです。
――今日の中障害は1位で終えられたと思いますが、振り返っていかがですか
結果的に勝つことができただけで内容としてはあまり満足していないのでもっといい走行ができるように次は頑張ります。
――全日本学生への意気込みをお願いします
早稲田大学は関東(関東学生競技大会)で障害団体優勝しているので、この勢いのまま障害の団体優勝を目指して、他の馬場の走行でも優勝できたらいいなと思っています。
栗田春香(政経3=東京・頌栄女学院)※1日目終了時
――学習院大と同点ですが、振り返っていかがですか
Lは他の人馬が頑張ってくれて勝てたのが大きいと思っていて、明日は中障害があって早稲田が有利だと思うので、中障害で勝ち越してほしいです。
――今大会の目標としてどんなことを掲げられていましたか
Lで(得点率)60%を目標にしていましたが、自分のミスで届きませんでした。貢献はできなかったと思うのですが、他のペアが頑張ってくれました。
――L1課目全体を振り返っていかがですか
(出番が)1番だったというのもあって、もう少し思い切りよく演技がしたかったのですが、緊張からか縮こまってしまったのかなと思います。
――小障害についてはいかがですか
小障害は打って変わって順番がかなり後だったので、他の人の走行を見ながらまねできるところはまねしました。下乗りと言って、上手な人に先に乗ってもらった後に乗るかたちで今までは試合に出ていたのですが、今回は初めて自分が最初に馬に乗って前進気勢の状態(馬が前進する状態)になかなかできなくて、そんな中でもアイくん(アイシングラー)が助けてくれたので、アイくんには感謝しています。
――次戦に向けて意気込みをお願いします
次回出場するのは1カ月半後くらいの早慶戦だと思うのですが、もっと自信を持って馬に乗れるように、笑顔で乗り切れるようにしたいと思います。